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商品説明
巨大な工場が建ち並ぶ川崎の臨海工業地帯に、約一〇〇匹もの野良猫が暮らす人工島がある。宮城将子さんとご主人の良教さんは、そんな「工場猫」たちの命を支え、「地域猫」としての共存を目指す活動を続けている。「これ以上、不幸な猫を増やさないために」という想いのもと奮闘する宮城さん夫妻と猫たちの、こころあたたまる愛情物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
これ以上、不幸な猫を増やさないために…。巨大な工場が建ち並ぶ人工島に暮らす100匹の野良猫たちと、その命を支え「地域猫」としての共存を目指す、ある夫婦の愛情物語を写真とともに綴る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
三島 正
- 略歴
- 〈三島正〉1964年東京生まれ。写真家。週刊誌の写真記者を経てフリーランスに。写真集「公僕」で第7回講談社週刊現代ドキュメント写真大賞「人物フォトルポルタージュ部門賞」を受賞。
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紙の本
「猫の問題」は「地域の問題」で「人間関係の問題」
2009/08/19 00:10
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
工場の景色を背景にこちらを見つめる猫の表紙。
見返しに説明があり、標題紙。
1枚めくると表紙と同じ猫。
今度は表紙の写真よりも背景がぼやけて、猫にピントがあっている。
表紙では座っていた猫が歩き出している。
じっとカメラを見据えているような目。
次のページはちがう猫。
さらにぼやけた背景に猫に焦点が当たっている。
次のページは、猫が4匹いる。
ぼろぼろだけど確かに生きている猫たち。
次のページは、伸びをする黒猫。
はじめにが来るまでに印象的な写真のページが続いた。
京浜工業地帯の中核をなす神奈川県川崎市の臨港地区に、
約100匹の野良猫が暮らす人工島がある。
この界隈には「始末に困ったもの」を捨てにくる人が後を絶たず、
自動車が粗大ゴミだけではなくて、猫も捨てられていたのだ。
捨てられた猫たちは、ここで野良として懸命に生き抜こうとしている。
著者である写真家・三島正は、そのたくましさに敬意を表し、
この猫たちを「工場猫」と呼んだ。
これが本書のタイトルである。
宮城将子さんと夫の良教さんは、人工島の一角にある公園を拠点に
野良猫の支援活動をしている。
毎朝決まった場所で餌を与える。
病気の猫がいれば動物病院に連れて行く。
飼い猫に適した猫がいれば保護して里親を探す。
野良猫を捕獲して動物病院に連れて行き不妊・去勢手術をしてもらう。
「いまある命を大切にして、これ以上、不幸な猫を増やさないように」、
「工場猫」たちの命を支え、
「地域猫」としての共存を目指す活動を続けている。
著者は、工場猫を通して浮かび上がる日本の姿を見たいと思い、
2007年の秋から人工島に通い始めた。
文章のページと写真のページが交互に続く。
写真のページには、注釈テキストが付いていない。
猫の生活と支援する宮城さんたちと工場地帯の様子が淡々とそこにある。
カメラに気づいている猫は、
どれもこっちをしっかり見つめているように見える。
きっかけは、2007年春のこと。
宮城夫妻は、お昼になると手作り弁当を持って
一緒に人工島の公園で昼食をとるのが日課だった。
いつものようにお弁当を食べていると一匹の野良猫が近づいてきた。
窓越しの猫は、じっと将子さんを見つめていた。
お腹が空いているのではと思い、お弁当のおかずをあげたら、
毎日のようにその猫がくるようになり、
しかも夫妻を待っている猫は日に日に増えていった。
そうすると自分たちを待つ猫の様子が気になるようになってくる。
よく見たら猫たちは、ただ汚れているだけじゃなくて、
病気で体中がぼろぼろだった。
こうして夫妻は「できることからはじめること」を決意した。
まずは、衛生的な餌場作りからはじめた。
餌やりを始めて3ヶ月。
餌場の常連に、野良猫にしては毛並みのきれいな一匹の猫がいた。
ある朝、ベンチの下に寝そべったまま、動かなくなっていた。
この一匹の猫の死が、
宮城夫妻の野良猫支援活動を本格化させることになった。
白血病を発症して膿胸になって瀕死の猫・さばたんを
入院させ看病したこと、
著者が雨の日に猫を捨てる人を目撃したこと、
釣り針が刺さった猫・すえ黒のこと、
そして、人口島から近いところで、野良猫の餌やりをめぐって
近所トラブルとなり殺人事件が起こったこと。
野良猫を捕獲して不妊・去勢手術をすることに関しても悩みは尽きない。
すでに妊娠した状態で捨てられる猫もいるのだ。
どのエピソードも重い。
本書では、横浜市磯子区の地域猫活動の
冊子『人と猫が共生できる町をめざして』も紹介されている。
冊子には、「地域猫活動」を行うにあたっての
理念や具体的な方法などが示されている。
1.猫を排除するのではなく、命あるものとして取り組む。
2.飼い主のいない猫の数を減らしていくために取り組む。
3.猫の問題を地域問題として、住民と行政が協働して取り組む。
4.猫が好きでない人や猫を飼っていない人の立場を尊重する。
著者は、地域猫活動には、住民が
「猫の問題」を「地域問題」としてとらえ理解することが不可欠だが、
「地域問題」である以上に、
そもそもは「人間関係の問題」ではないかと考えている。
井上ひさし氏の「みんな人類なら愛せるのに、隣の人は愛せない」
という言葉を引用し、
野良猫問題を考える上でも「隣人」は鍵だと。
著者は、宮城夫妻を「人類がはるかむかしから抱える難問に、
真っ向から取り組んでいる」人たちと捉えているのだ。
紙の本
もう少し、つっこんだ内容がほしかった
2009/10/30 01:19
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:marekuro - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の撮る写真はどうも猫を撮っているというより
景色の中の一部としての猫
という感が否めない。(ただし、これは良い悪いの問題ではない好みの問題だ)
中には瞼にルアーの刺さった猫の写真などもあるが
そんな状態の猫を見たら写真に納める前に
どうにかしてあげれなかったのか?と思う。
そして、本書を読み進めて思ったことがある。
地域猫に対して著者のスタンスが明確にされていない。
同情を寄せている記述もあれば、驚くほど距離をとっている
記述も散見される。キツい言い方をしたら他人事に読めるのだ。
テレビで報道される事件・事故に「かわいそうだね〜」って言っている
のとあまり変わらない印象を受ける。
立ち位置のはっきりしないルポはなかなか読みにくい。
それは「信者」や「アンチ」の立場から書いてほしいという事ではない。
記録者として書くなら終始、中立な立場から書いてほしいし
動物愛護の視点から書くなら徹底的に動物愛護の視点から書いてほしい。
あるいは潜入体験ルポのように色々と著者が経験して
気持ちが揺れていたり、そしてその様子を記述しているのか?
というと別にそうでもない。
要するに著者のスタンスが、そしてその揺れ動き方が
わかりにくいのだ。
そして工場猫という造語をした割には、いまいち”工場”を
絡められていない。
場所により生活環境は左右されるはずだ。
それを記述していない。
本文を見るかぎりでは
背景は工場だが、別にそれは工場ではなくても
どこにでもある公園でも路地でもいい。
人間の生活を見る上で地域特性を無視できないのと
同様に猫もまた然るべきだろう。
工場だからどうしたの?と質問しても
納得のいく回答を本文からは得られない。
著者はあまり猫に対して思い入れがないのではないか?
そのようにも読めた。
あくまで想像の域をでないのだが。
「工場萌え」という写真集が流行った事。
そして、その工場萌えの要素と一定の売上を上げれる「猫」の写真を
一緒にしてヒットを狙おうとしたのではないだろうか?
別に売上を上げようとすることを否定するわけではないが
いち購入者としては、やはり猫に対する愛情
あるいは地域猫問題に対する何らかの提言をしてくれる
著作にお金を払いたいのが正直なところだ。
そういう意味では本書の帯はちょっと煽りが過ぎる。
そして帯の煽りと著者との間に温度差がある。
残念ながら本書のラストは結局何を言いたい訳?的な結末を迎えた。
わざわざ、特殊な場所に足を運んで
工場と野良猫の写真を撮って
最後のメッセージが
驚くほど曖昧だ。
読了後の素直な感想は
あまりにお粗末ではないか?
に尽きる。
本書で述べられる地域猫に関する著者の意見は
「そもそもは人間関係の問題。」
「立場や主張を越えた人同士の信頼関係が大事」
もっともな意見だと思う。
じゃあそれをどのように実現するのか?
その問いに明確な答えを出すことは難しくても
ひとつの意見を述べることは可能だろう。
仮に上記を提案だと解釈するなら
あまりに抽象的ではないか?
上記にある著者の意見は
戦争にも当てはまるし、職場の人間関係トラブルにもあてはまる
環境問題にも当てはまる。当てはまる事柄を探していくと
無数に出てくる。そこが抽象的と表現した所以である。
地域猫という題材を扱うなら、現場を見て感じた疑問
ジレンマ等々色々あると思う。猫が好き嫌いとに関わらず
主張の異なる人同士のキレイ事ではすまない意見の対立も含めて。
当然、ダークサイドも存在するわけだ。
それら含めて今一歩
踏み込んだ解釈や見解。それが難しかったとしても
筆者の心の揺れなどを表現してほしかった。
ただし
個人的には本文中にある猫の保護活動をされていたご夫妻に
そして、猫の治療をされている獣医師には
尊敬の念を感じた。なかなか出来ることではないし
おそらく、本文中には書かれていいない苦労も多いことだろう。
最後に
評者から見ての本書の至らぬ点は厳しく評価したが
それと、本文中で紹介されている方々への気持ちは別であることを
明示しておきたい。