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1 - 30 / 34 件
太陽を曳く馬 太陽を曳く馬
KU-/読むことはまるで修行のよう
合田シリーズだと思っていたが、読み始めてから違うと気付いた。合田雄一郎の視点から物語は進められるが、実際は福澤彰之とその家族の物語となっている。息子はなぜ人を殺し、僧侶はなぜ死んだのか。オウム真理教や9.11テロ事件を交えながら、前半はひたすら赤い絵画、後半は宗教で埋められている。とにかく難しく、テーマは生と死への問いだろうかとかろうじて思えるくらいで、どこまで読んでも終わりが見えず、理解できたとも思えない。けれど、なぜか最後のページで理由も分らず涙が出た。読む過程は辛く苦しくまるで修行のようだが、挫折することなく最後まで読む価値のある作品。  全文読む 評価する

生命徴候あり 生命徴候あり
KU-/医療と人生の激動
久間十義という作家は「刑事たちの夏」の印象が強い所為か刑事小説や男くさい社会派の作品が得意な作家だと思っていた。それは「聖(セント)ジェームス病院」を読んでからも変わらなかった。あぁこういう作品も書くんだと思った程度だった。今回「生命徴候あり」を読んで考えを改めた。社会が向ける目線の先にあるものを書く作家なのだ。社会が医師不足など医療に目を向ける中、著者の関心はそれ以前から医療に向かっていたのだろう。その医療の内実を緻密に書いている。健康である間は医療の実態を外側から見ることしかできないと最近痛感した。家族が入院し、また自分自身も数日入院生活を味わったが、患者の家族になって分かる医療の実態や患…  全文読む 評価する

ジーン・ワルツ ジーン・ワルツ
KU-/妊娠・出産の抱える多くの問題
産婦人科医・理恵が非常勤として通う閉院間近のマリアクリニック。閉院前の最後の患者として5人の妊婦が訪れる。5人の妊婦は長い不妊治療や、高齢出産、仕事と出産の両立など様々な問題を抱えている。また出産までの過程でも、様々な問題が出てくる。この物語を読んでいると、妊娠・出産が決して簡単なものではないと理解できる。また、子供が健康に生まれるということがどんなに奇跡的なことかが良く分かる。これは物語の中だけのことではなく、多くの女性が経験するもので、結婚すれば子供が授かるわけでもなく、妊娠したからといって出産まで順調に進むとは限らない。長い間子供が授からなければ不妊治療をするかどうするか?妊娠すれば産む…  全文読む 評価する

あのひととここだけのおしゃべり あのひととここだけのおしゃべり
KU-/よしながふみの真摯な対談集
『よしながふみ』といえば私の中ではBL漫画家なのだが、「西洋骨董洋菓子店」でドラマ化されたり、BL以外のところにも進出して魅力的な作品を描く漫画家だなと思っていた。ある日コンビニに行くと、目の前にあるのがどう考えても『よしながふみ』の絵の表紙なのだが、それが青年誌のモーニングの表紙なのだ。私はモーニングやイブニングのコミックも読むのだが、BL漫画家がモーニングに・・・と驚愕した。BL以外にも書いているし絵柄もいいのだが、BL以外の場所で描いたとしても、ゲイが出てこないにしても、ジェンダーに対するきっちりした考え方の基に作品を描く人なので、モーニングを読む人に受け入れられるのかと心配した。しかも…  全文読む 評価する

女王国の城 女王国の城
KU-/待っていました。江神さん
有栖川有栖といえば、火村&大人アリス作品が多く、江神&学生アリス作品は忘れがちになってしまう。なにせ江神&学生アリスの前作より15年。15年前といえば私はまだ大学生にもなっていなかった。初めて江神&学生アリス作品を読んだのは大学生の頃。それがいまや学生時代もはるか昔になり、アリスどころか江神よりも年上になってしまった。長い年月の分だけ中身も本の厚さもみっちり。大学に顔を見せない江神部長。推理小説研究会の後輩アリスは「城」と呼ばれる新興宗教の総本部がある神倉へ向かったと思しき痕跡を見つける。アリスにマリア、望月、織田とおなじみのメンバーで江神を追って神倉へ向かう。「城」で江神の安否は確認したもの…  全文読む 評価する

ビター・ブラッド ビター・ブラッド
KU-/刑事の父子の微妙な関係
私は刑事小説が大好きだ。同じ雫井脩介の書いた「犯人に告ぐ」も読んでいる。「犯人に告ぐ」と同じ刑事小説だが作風を変えている。最近お騒がせの映画の原作「クローズド・ノート」ラブストーリーで、「犯人に告ぐ」と「ビター・ブラッド」は同じ刑事小説でも色が違う。雫井脩介という作家は多彩な引き出しを持っている。「ビター・ブラッド」は「犯人に告ぐ」より軽い調子で話が進んでいくが、物語自体は繊細に組み立てられている。新米刑事の佐原夏輝は初の現場で実の父親明村とコンビを組むことになる。父親と行動をともにし驚いたり、助けられたり、あきれたりし、少年時代に別離して以来ほとんど接点のなかった父親に対して複雑な感情を持つ…  全文読む 評価する

有頂天家族 有頂天家族
KU-/たぬきのはなし
最近京都発信の小説が熱いような気がするのは私の気のせいか?万城目学の「鴨川ホルモー」を読み衝撃を受けたのはつい最近のこと。「鴨川ホルモー」も京都を舞台にした奇怪な話だったが、またしても京都を舞台にした話に衝撃を受けた。森見登美彦の作品は「きつねのはなし」を読んでいた。「きつねのはなし」は、あたりに濃密な空気が漂いちょっと怖いような雰囲気があったが、「有頂天家族」は随分雰囲気が違う。「有頂天家族」が本来の作風なのかもしれない。狸の下鴨四兄弟をはじめ狸・天狗・人間が入り乱れた話だが、とにかく面白い。時間を忘れて読み進めてしまう。下鴨四兄弟の父はある日、狸鍋にされこの世を去り、長兄は頭が固く、次兄は…  全文読む 評価する

おおきく振りかぶって おおきく振りかぶって
KU-/すての子達が愛おしい
先日、歳の離れた従兄弟の野球の試合を観に行った。試合前に観客席から声を掛けると恥ずかしそうにそっぽを向いた。自分が高校生の頃は野球に興味もなく、クラスメートの応援にも行かなかった。実際に試合を観ると、案外面白いものだった。若い彼らの一生懸命さが良いし、ナイスプレーだけでなく、ミスをしても、相手側のチームの選手さへ可愛く見える。試合だけでなく、応援も凝っていて非常に楽しかった。このマンガを読むと、そのことを思い出す。スポーツマンガにありがちな完璧な天才は出てこない。運動神経が良く天才的なバッティングセンスを持っている子も初球から全て打てるわけでなく、主人公にいたっては、コントロールは素晴らしいが…  全文読む 評価する

パズル・パレス パズル・パレス
KU-/暗号の居城
ダ・ヴィンチ・コードの著者のデビュー作。謎に包まれた史上最大の諜報機関、NSAが対テロ対策として開発したスーパーコンピュータ「トランスレータ」は一般市民の通信全てをも監視可能にする。テロリストだけではなく、一般市民も監視可能な状況に憤った元スタッフが、解読不可能な暗号ソフト「デジタル・フォートレス」を楯にコンピュータの存在を公表せよと迫った。この暗号ソフトが一般に流布されれば、アメリカは無防備となり国家の危機に瀕してしまう。暗号ソフトを「トランスレータ」で解読しようとするが、解読どころか、「トランスレータ」そのものの機能さえも麻痺してしまう。主人公達はソフトを凍結させるパスワードを求め暗号解読…  全文読む 評価する

Op.ローズダスト Op.ローズダスト
KU-/たまにはこの国のあり方を
ネット財閥の役員を狙った連続テロが起こる。実行犯は入江一功をリーダーとする「ローズダスト」を名乗る五人グループ。警視庁の並河警部補は防衛庁の非公開組織ダイスの丹原朋希と捜査にあたるうちに、朋希と一功の間の深い因縁を知る。スケールの大きなアクションシーンは臨海副都心を中心に繰り広げられる。福井晴敏の得意とするネタである。こういう話にありがちなのは、主人公が犯人を執拗に追いかけ壮絶な戦闘が繰り返されるだけというもの。しかし、この作品では各人の心の揺らぎがしっかりと書かれている。もともと福井晴敏作品は人間の心情がちゃんと描かれることが多かったが、この作品での心理描写は今までより確実に進歩している。互…  全文読む 評価する

はじめてでも編める!あみぐるみ はじめてでも編める!あみぐるみ
KU-/あみぐるみ・はじめませんか?
最近編み物が人気らしい。ニットアウトと呼ばれるカフェや公園などで皆で編もうというイベントがあちこちで開催されているようなのだ。編み物は昔からやっていたのだけれど、あみぐるみは初めて。犬やウサギなどのかわいい動物がかぎ針1本でできると言うのが良いです。この本は非常に安い値段なのに、載っている作品も可愛く、しかも簡単に出来る作品が多く、おまけに作り方が詳しく載っています。編み物が初めての人は、編み方が分からず本を見ても分かりにくい場合が多いですが、この本は他の本より詳しく画像付きで説明があり分かり易いです。実際にウサギを編んでみました。あみぐるみは編み手によってそれぞれ違った味のあるものが出来面白…  全文読む 評価する

99%の誘拐 99%の誘拐
KU-/現在だからこそのリアリティ
ある男が、病床で息子をさらわれた時の手記を遺して生涯を終えた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。それはコンピュータによって制御された前代未聞の犯罪だった。この作品は1988年の作品の文庫化。私がコンピュータを使い始めたのが10年前。その時、コンピュータはまるで夢のような道具だった。それよりも以前、叔父達の家にあったコンピュータは白い色をした不思議な箱だった。この箱の中には、いったい何が詰まっているのかとドキドキして見つめたものだ。この作品は、コンピュータがそんな白い色をした不思議な箱だった頃に書かれている。まだコンピュータが一般的でなかった時代に、コンピュータを駆使…  全文読む 評価する

聖ジェームス病院 聖ジェームス病院
KU-/日常の隣に口を開いた異界
それほど期待していたわけではなかったが、読み始めたら小説の中に惹き込まれてしまった。最近読んだ作品の中では久々のヒットだった。夜間の救急外来に腹痛を訴えてやってきた患者は、研修医の翔平が帯状疱疹の治療をした患者だった。症状は悪化し翔平は帯状疱疹の治療に使用した新薬の副作用を疑うようになる。これを契機に翔平の周りで次々と問題が起こり始める。医療ミスや新薬の承認に絡む問題、院内感染、医薬品メーカーのインサイダー取引。医療ミス事件を軸に書かれていくので、最初は白い巨頭の二番煎じかと思いながら読んでいった。それでも面白いからいいかと思い読み続けると、段々二番煎じなどではないと分かってくる。個人的に一番…  全文読む 評価する

扉は閉ざされたまま 扉は閉ざされたまま
KU-/完璧な構成に酔いしれる
ミステリという分野において、その作品の判断基準はトリックの内容であったりキャラクターの個性であったり、ストーリー構成であったりすると思う。このストーリー構成ということに関して石持浅海は天才的であると思う。ミステリの多くはどんなトリックを用い誰が犯人なのか解明していく展開だが、この作品はトリックも犯人も最初から分かっている。大学の同窓会。成城の高級ペンションに7人の旧友が集まった。犯人である主人公は事故を装って殺害する。室内の電気を付けるか?ドアストッパーは?時計は?服は?あらゆる可能性を考え完璧な密室をつくった。犯行は計画通りに成功したかにみえた。犯人は旧友たちを巧みにコントロールし、犯行の発…  全文読む 評価する

DZ DZ
KU-/人間は進化するのか
アメリカで、夫婦の冷凍死体が発見され、五歳の息子は行方不明。一方、日本では、異常な兆候を示す少女がいた。あらすじと「DZ」というタイトルから、かってにプチ・ホラーを想像していた。けれども実際は、進化という壮大なテーマが遺伝子を軸に描かれた化学系ミステリだった。瀬名秀明の「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01367215&volno=0000" target="_blank">パラサイト・イブ」はミトコンドリアが扱われたが、本作では遺伝子そのものを扱っている。アメリカと日本の2軸で物語が進んで聞くが、中盤から2つの話が絡み合う…  全文読む 評価する

中途採用捜査官 中途採用捜査官
KU-/転職先は警視庁
読み始めて最初に驚いたのは、今までの佐々木敏の作風と180度変わってしまっていることだ。舞台が海外であったり、他国のスパイとの攻防であった物が、一転、舞台は日本、登場人物も日本人で、扱うテーマはIT犯罪。スケールは小さくなっているように感じられるが、作中いたるところにユーモアが溢れ、今までの堅苦しい作風を考えると、まるで別人が書いているようだ。しかし、本作のほうが読みやすく、ソフトバンクOBという経歴の所為か、内容も充実し、幅広い読者に好まれるのではないかと思う。内容は、SEから捜査官になった男がかつての会社の知能犯を追い詰めてゆくものだが、捜査とは関係ない会話が面白い。ある日会社をクビになっ…  全文読む 評価する

ラスコーリニコフの日 ラスコーリニコフの日
KU-/揺れ動く悲しきテロリストの正体は
要人狙撃事件が発生。異国から送り込まれた刺客の、たった1発の銃弾に、騒然となる警察上層部。若き女性刑事は突出した勘で事件の黒幕へと近付いていく。実際に起きた警察庁長官狙撃事件をモデルに現代史の裏側をリアルに描いている。パチンコ店への拳銃発砲事件を機に女性刑事(知恵)は事件に巻き込まれていく。彼女はそれがただの発砲事件ではなく、民族に絡む複雑な事情が根底にあると知る。一方、幼い頃から国家によりスナイパーに育て上げられたコードネーム(エフゲニー)は日本に潜入し、日本人になりすます。事件を動かす黒幕ラスコリーニコフからの指示は警察庁長官狙撃。自らの生い立ちや自らに流れる血に心が揺れる。知恵はやがてラ…  全文読む 評価する

六機の特殊 六機の特殊
KU-/気絶した警部、土岐の6つの事件
警察小説は数多くあるが、黒崎視音という作家は前作で心理捜査官を書き、今回は視庁警備部第六機動隊−別名SATと、毎回実に特殊な職業を題材にしている。タイトルもマニアの興味を惹き、カバーをめくると迷彩柄の本体が出てくるという小憎らしい仕掛け。第1話から第6話まであり、時系列に沿って1話毎事件が描かれ、長編としても短編としても楽しめ、第6話へと物語が収束していく。主人公は同僚キャリアの不祥事の目をそらす為、人身御供のように最も危険な部署へと転属させられる。売り言葉に買い言葉で思わず承諾してしまうのだ。キャリアでありながら前線に立ち、キャリアとノンキャリアの間で警察組織の矛盾そのものの主人公土岐。綿密…  全文読む 評価する

黒を纏う紫 黒を纏う紫
KU-/テーブルの上には人生がある。
「夜の都」東京。派手なネオンや肌寒くなるような冷房。日々消費されていくエネルギーは「特殊物質」によって支えられている。溢れかえる移民たち。広がる闇賭博。テロを目論むカルト教団。「特殊物質」を狙うカルト教団にそれを一掃しようとする日本政府に米軍、それに便乗して「特殊物質」を売り大金を手にしようとする移民たち。読んでいる間どこまでが現実でどこまでがフィクションかわからなくなるほどリアルに描かれている。もしや日本の未来はこうなってしまうのではと恐怖すら覚える。正直、今の膨大なエネルギーにのみ支えられている社会の脆さを痛感した。特殊物質の運搬資格を持つ鶴見は、プールバーでマキというバンダの花の刺青を持…  全文読む 評価する

警視庁心理捜査官 警視庁心理捜査官
KU-/新たな視点から犯人追い詰める
警察小説大好きな私としては「警視庁心理捜査官」というタイトルにとても惹かれるものがあった。しかし、聞いたことの無い作者の為買うのをためらっていた。文庫化されたことを知り読んでみたが、1900円出して買っても良かったと思うほど面白かった。事件は一見して異常殺人と解り、心理捜査官である爽子が駆り出される。プロファイリングにより犯人像を推定して行くが、周りの捜査員達は信用せず孤立していく中、第二の事件が発生する…心理捜査官が主人公というのが新鮮味を覚える。それと同時に、刑事物の醍醐味というか面白味である、キャリアとノンキャリアの対立であったり、部署同士の対立、上層部の思惑が絡み合う。孤立していく爽子…  全文読む 評価する

アヒルと鴨のコインロッカー アヒルと鴨のコインロッカー
KU-/神様を閉じ込めに行かないか?
僕はモデルガンを持ち書店の裏口に立ってボブ・ディランの「風に吹かれて」を歌っている。2回歌うたびドアを蹴飛ばす。広辞苑を奪う為。僕はなぜここにいるのか考える。たった2日前、引っ越してきた日を思い出す。-現在-初めての一人暮らし、記念すべき最初の訪問者は引っ越してきたアパート黒猫。次が悪魔めいた長身の美青年河崎。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ち掛けてきた。彼の標的は—たった一冊の広辞苑。隣の隣に住む彼女と別れて元気の無い外国人にプレゼントしたいと言う。-2年前-私こと琴美とブータン人のドルジは連続ペット殺しの事件に巻き込まれる。それと時を同じくして女好きで元彼の河…  全文読む 評価する

逆風の街 逆風の街
KU-/逆風かそれとも…
今野敏という作家は、刑事物を書かせたらピカイチだ。今回は横浜みなとみらい署暴力犯係が舞台である。暴力団を誰よりも憎む、係長の諸橋。諸橋とは長い付き合いで、諸橋の降格人事のとばっちりで異例の係長補佐という位置にいる城島。典型的な暴力犯係の刑事浜崎、直情型の日下部・署内一の逮捕術を持つ倉持・コンピュータに強い八雲という4人の部下。ある日、諸橋が町の印刷工場が恐喝を受けていることを耳にすることから物語は進んでいく。調べを進めていくうちに、恐喝をしている男の過去がなかなか見えてこないことに気づく。ただのチンピラではないらしい。やがて警察内部の暗部まで見えてくる。全てが悪い方向へと流れているように見え、…  全文読む 評価する

陽気なギャングが地球を回す 陽気なギャングが地球を回す
KU-/読めば読むほど味が出る
私は伊坂幸太郎という作家が大好きだ。ポップな文体に見え隠れする、登場人物それぞれの人生。重苦しい内容も軽く受け流し、最後には救いが待っている。「陽気なギャングが地球を回す」は「重力ピエロ」や「オーデュボンの祈り」よりもミステリ色を前面に出し、エンターテイメント性を追求している。作者自身、あとがきで“九十分くらいの映画が好きで、あまり頭を使わないで済む内容のほうが好ましく、現実味や社会性はあってもいいが無いからと言ってあまりきにならない”と語っているが。本作はまさしくそんな内容になっている。・嘘を見抜くことが出来る公務員・動物好きの天才スリ・喋りだしたら止まらない喫茶店のマスター・電波時計より精…  全文読む 評価する

白い兎が逃げる 白い兎が逃げる
KU-/比類の無い神々しいような瞬間
有栖川有栖の火村・アリスシリーズ中編集。「不在の証明」「地下室の処刑」「比類の無い神々しいような瞬間」「白い兎が逃げる」「不在の証明」では双子を使ったトリック、「地下室の処刑」では意外な犯行動機がテーマとなっている。有栖川有栖の作品はミステリ作家アリスの視点で書かれていることが特徴だが、今回は、「比類の無い神々しいような瞬間」と「白い兎が逃げる」の2作で他の人物の視点からも書かれている。「比類の無い神々しいような瞬間」ではダイイング・メッセージが2つ登場する。人間には“死の直前に神々しい瞬間が訪れる”という言葉通り、偶然とも何とも説明出来ないような、まさしく神々しいとしか言いようの無いダイイン…  全文読む 評価する

四季 四季
KU-/天才と女の境界線
「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02360351&volno=0000" target="_blank">四季 春」に続く森博嗣 四季4部作の2作目。森博嗣を初めて読むなら「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01597949&volno=0000" target="_blank">すべてがFになる」からはじまるS&Mシリーズや「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02198516&volno…  全文読む 評価する

オーデュボンの祈り オーデュボンの祈り
KU-/喋るカカシの見る未来
新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。重力ピエロなどで話題の伊坂幸太郎処女作。警察から逃げる途中で気を失った伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。鎖国を続けているその孤島では、喋るカカシが島の預言者として崇められていた。翌日、カカシが死体となって発見される。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?鎖国・喋るカカシ・嘘しか言わない画家…とんでもない設定に伊坂幸太郎独特の文章が冴え渡る。人物設定は重力ピエロと同じでどれも重い過去をうかがわせる。非常に救い様の無いような出来事を所々に織り込む。しかし、文体が軽い所為で重苦しくならない。そして結末には救いが用意されている。全ての悲しい出来…  全文読む 評価する

竜の契り 竜の契り
KU-/香港は誰の手に。
英国情報部が外交文書を撮影中、スタジオが全焼した。二年後、香港返還交渉に臨んだ英国首相は、それまでの強気な姿勢から一転し、なぜかほぼ無条件で返還に合意した。そこには、スタジオから焼失した機密文書が絡んでいた。香港返還前夜、機密文書を巡り英、中、米、日の四カ国による熾烈な浄奪戦が開始された。文書を誰が手にするかによって、歴史が大きく変わる。文書を誰が手にするのか。ハリウッド女優・日本の外交官・巨大財閥・各国のスパイ…色々な人物の思惑が絡んで物語りは二転三転する。一人一人さまざまな過去があり、結末は最後までわからない。それぞれの心の動き、心情については上手く書けているとは言えない。しかし、政治的な…  全文読む 評価する

北京故事藍宇 北京故事藍宇
KU-/衝動と恋情
雑誌ダウィンチを見て衝動的に買ってしまった。インターネットで話題になり、映画化もされた作品。遊び人でバイセクシャルな実業家が田舎から北京へ出てきたばかりの学生藍宇と出会い真実の愛に目覚める。ストーリーとしてはありふれていて、日本のBL小説では、いくらでもありそうな内容だ。しかし、読んで損はない。舞台は北京。中国語で出版され、かなり問題になったという。たしかに男同士の恋愛で、おまけに多くの部分が彼らの情事で構成されている。こういった作品がついに中国から出はじめた事がとても衝撃を受けた。実際に読んでみると、とても読みやすく、ほとんどの部分にあたる情事についてもそれ程過激ではない(日本の媒体に慣れて…  全文読む 評価する

本の虫 本の虫
KU-/あなたもわたしも感染している!
私はね、ほとんど毎日近所の本屋に行くのですよ。たいして大きくも無いし、品揃えもイマイチ。だけど、本屋の明かりが手招きをしているんです。それは私だけではないはず。だってあの人も、この人もいつも見るもん。そんなに暇なの? いや私もそうなんだけど。なぜでしょう、それは本の虫に感染しているから。活字虫症候群読み癖症候群読書環境依存症書籍購入症候群文学物品フェティシズムぜったい読み虫に感染しているのです。もしかしたら本屋の明かりが手招きをしているのじゃなく、本の虫が手招きしているのかも…  全文読む 評価する

異邦人 異邦人
KU-/不条理といふもの
中学・高校の頃いつも死への欲望を感じていた。あの頃、常に感じていた焦燥感というか説明のつかない心の中の蠢きは思春期というものの特質だろうか?それが不条理というものだろうか?不条理というものが今でもよくわからない。だけどこれを読んだ時の私は確かに理解していた。太陽のせいで人を殺したことも母の死に涙しないことも。今でも気を抜けば死の淵を覗きそうになる。大人になった私は、それをごまかす方法を覚えただけだ。こういった純文学というのか、名作というものは、国内外問わず若い頃に読んだほうがいいと思っている。無駄な知恵をつけてから読むのとは身体への染み込みが違う。ただ、それだけにこの本は、危険でもある。染み込…  全文読む 評価する

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