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うまれてきたんだよ うまれてきたんだよ
うっちー/その思いが、加害者である大人に届くのか。
 30年以上前、アメリカの児童虐待の記事を読み、驚きと嫌悪感でいっぱいになったが、今や、日本でも、日常的に「児童虐待」の記事を目にするようになった。そして、わかってきたのは、日本でだって、表には出てこなくても、昔からあったのだということ。事実、自分も虐待されていた、それで傷ついていたと語りだす大人もたくさん出てきている。 この絵本の作者も、講演会で彼自身が語ったことによれば、そういう経験を持っているそうだ。自分もそうだった。しかし、老いた母親がそのことを詫びたので、今、こうして、このテーマで書けるようになったのだ、と。 恐らく、人は、その記憶があまりに生々しい間は、それに触れることなどできない…  全文読む 評価する

シズコさん シズコさん
うっちー/愛されないことの悲しみ、愛せないことの苦しみ。そのえぐられるような思いが赤裸々に。
 壮絶な母娘の葛藤の記録である。自分と母親の関係を子どもの頃から振り返り、いかに母「シズコさん」が自分にひどかったか、自分もまた、いかに反抗的だったかを、後悔と憎しみと痛みとを伴いつつ書いている。 残酷なものだ。他人なら離れれば解決することが、親子だから逃げようもなく、日々痛みにさいなまれ、それだけ、煮詰り、塊となって残る。 著者は、実に冷静に容赦なく家族のことを書いている。なるほど、彼女の書く作品には、それが児童書であっても、人の心の暗さや意地の悪さもぴりっと入っているのは、こうしたことゆえか、と変に得心もした。 子どもを虐待し、愛情を示さない。ひどい母親である。しかし一方、家事能力にたけ、…  全文読む 評価する

ラン ラン
うっちー/この世で生きていくことは、どんなにすてきなことか。そう、素直に思えるすてきな物語。
 「千の風になって」では、「私は、お墓の中にはいません…」と歌う。私は、死んで、風になって、あなたのそばにいるのだ、と。 死ねばどうなるのか、私たちの親しかったあの人は、死んでどこにいるのか、それは、生きている者の永遠の問いだ。そして、死ぬことを考えることが、今、生きていることの大切さを感じることでもある。 この物語のなかでも、作者の死生感が感じられた。主人公があの世とつながることで、この世でも強くなり、真っ直ぐに生き抜こうと再生するまでが描かれる。 主人公の環は、13歳で、父、母、弟を亡くし、その後一緒に住んでいたおばさんとも20歳のときに死別する。家族のいない一人暮らしの環は、人とも交わら…  全文読む 評価する

ひかる! ひかる!
うっちー/なんでも「マジ」な主人公のひかるがステキ! パワフルでコミカルで、温かいストーリーがとても楽しい。
 さすが後藤竜二。児童書のつぼを押さえている。とにかく、主人公ひかるのキャラクターがとてもいい。今の子が共感できる人物像だ。彼女の一人称で話が進むのだが、会話といい、心の内の独白といい、イキが良くて、スピーディーで笑える。また、スカイエマの表紙の魅力的なこと!「ひかる」そのものをばっちり表している。こんなイラストがあると、本の魅力5割増しである。 ひかるは、なんでも「マジ」な、小学4年生の女の子。負けず嫌いで、運動神経バツグン。でも、怒るとすぐに手が出るし、エラソーだし、口は悪いし、ひとりでツッぱしるので、なんとなく、みんなから敬遠されちゃったりするのだ。 そんなひかるが、ドッジボール委員とし…  全文読む 評価する

食堂かたつむり 食堂かたつむり
うっちー/おいしいものは、生きていくエネルギー。せつなく、優しく、そして、とても温かい再生の物語。
 倫子が恋人に裏切られて、故郷に戻り、大嫌いな「おかん」のそばで始めたのが、一日一組のお客しかとらない「食堂かたつむり」。山間の静かな村で、料理人としての倫子は、村で採れるものを食材に、お客様のために腕をふるう。 メニューを考え、食材を自ら調達し、相手を思い、物言わぬ材料の声に耳を傾け、一心に料理する。もう、それだけで、ドラマ! 生きていくということは、こうして、日々、他のものから、命やエネルギーをもらっていることなんだということを、しみじみうれしく思う。 ザクロカレー、林檎のぬか漬け、比内地鶏を丸ごと一羽焼酎で煮込んだサムゲタンスープ、子羊のローストと野生のキノコのガーリックソテーなど、おい…  全文読む 評価する

どうなっちゃってるの!?クレメンタイン どうなっちゃってるの!?クレメンタイン
うっちー/びっくり、苦笑い、大笑い、そして、ホロッ。すてき、クレメンタイン!
 いいなぁ、クレメンタイン! 実際、もし私が先生だとして、目の前に彼女がいたら、正直「ヤレヤレ」と思うかもしれないけれど。このお話は、クレメンタインの一人称でストーリが進んでいくので、彼女の心情がとてもよくわかって、何が起こっても(何を起こしても?)共感できて、「イヤハヤ、そりゃ、大変だったね。クレメンタインは、悪くないのに」と、ばっちり彼女の肩を持ちたくなった。 彼女がなぜ「困った子」なんだというと、まず、授業中に集中できない。それだって、彼女に言わせると、「いろいろなことにちゃんと集中している」から。授業中も、外でなにが起こっているのかもわかるぐらい、まどの外にまで集中しているんだって。な…  全文読む 評価する

ヤクーバとライオン ヤクーバとライオン
うっちー/絵と物語の力強さ、深さに圧倒される。ヤクーバよ、よくやった!
 黒一色で描かれた力強い絵に魅了される。一見無表情のヤクーバ。しかし、そのまなざし、姿勢に魂が表れ、ライオンもまた、その体の線、たてがみ、きばが、すべてを語る。 勇気とはなにか? それが、この絵本のテーマだ。 少年ヤクーバは、戦士になる証として、ライオン狩りに出かける。彼の村では、ひとりでライオンと戦って、それを仕留めることで、戦士として、大人として認められるのだ。 ところが、ヤクーバが出会ったのは、傷ついたライオン。ライオンは、ヤクーバの前に身を横たえながら、彼の取るべき二つの道を示す。それは、真に「勇気がある」とは、どういうことかを、彼に問うものだった。 ライオンは、もちろん言葉は話さない…  全文読む 評価する

スリースターズ スリースターズ
うっちー/子どもたちの閉塞感を、時代を背景にうまく描いている。しかし、救いがない。
 中学生の女の子3人の物語なのだが、どうしようもない親、無責任な大人だらけの物語ともいえる。 弥生の親はお金持ちだが、すべてお金だけで解決しようとし、子どものことには全く無関心。愛弓の親は、貧しく、典型的なネグレクト。ついには、子ども一人を置き去りにし家出する。水晶の親は高学歴でインテリ。自分の敷いたレール以外は認めず、徹底的に子どもを管理し、「あなたのため」と称し、思い通りにさせようとする。家庭環境も性格も全く異なる、しかし、いずれも、満たされない思いをもったこの3人の女子中学生が、ケータイを通じて知り合い、その虚無感から、自殺を企て、そして、自爆テロリストになろうとする。 こう書けば、いか…  全文読む 評価する

トビー・ロルネス トビー・ロルネス
うっちー/舞台となる「木の世界」観も主人公のトビーも魅力的!楽しい冒険ファンタジー。
 身長1.5センチの少年トビー・ロルネスは、13歳。彼の住む世界は「木の世界」。そう、大きな木が、彼らの世界なのだ。それが、とても魅力的にリアルに描かれているので、違和感なく、その世界に、この物語に入っていける。 たとえば、下枝の世界は、こんな風に描写されている。「そこは、湿気を帯び、曲がりくねった枝が迷路のようにからまる場所だった。」「見渡す限り続く湿った木の皮。だれひとり足をふみいれたことのない、底知れぬ深い木の股。重なった枝の間にできた、いくつもの小さな湖や、うっそうとしげるコケの森。小川や小道がたて横に交差する、深くひび割れた木の皮。」…。 あぁ、なるほど、確かに、木にはこんな世界の広…  全文読む 評価する

果断 果断
うっちー/「相棒」の右京さんもいいけど、この「果断」の竜崎もいい!
 この作者の警察ものの完成度の高さは、言うまでもないこと。本筋の警察の捜査の緊迫感はもちろんのこと、組織内部の人間関係、本庁と署の人間描写の巧みさにあらためて脱帽した。だからこそ本筋が生き生きと動き出すのだ。 今回は、竜崎と妻の夫婦関係にも、ほろりときてしまった。警察キャリアの竜崎は仕事一筋。けれども、それを支える妻の大きさに、今回彼ははじめて気づく。妻の支えがあってこそ自分が仕事に打ちこめたのだ、と。二人きりになると、なんだか妙に照れくさく、うまく口には出せないが、彼が妻を思うなかなかいい場面があり、ぐっとくる。 プライドは高く、まっすぐで、まじめ。人間関係には疎いが、不正や隠し事はしない。…  全文読む 評価する

武士道セブンティーン 武士道セブンティーン
うっちー/ああ、武士道!この、熱さ、ひたむきさに、にんまりし、ワクワクし、心躍る。
 北京オリンピック、柔道惨敗! しかも、「柔道はスポーツだとは思っていない。闘いだ」と言う石井慧が100kg超級で金メダルをとってしまった。柔道は、スポーツではないというのは同感。でも、本当は、「闘い」ではなくて「武道」なのだ! そもそも「武道」の勝ち負けを判定するのは、至難の業なのである。この本の前作である「武士道シックスティーン」の中にも「あれは審判がヘボなんだよ。見てもないくせに、音と声だけで(旗を)上げやがって」というせりふがある。 武道における攻撃は、速ければいいのではなく、ましてや、倒せばいい、当たればいいものでもなく、文中にあるように「『気剣体』が一致したものでなければならない」…  全文読む 評価する

ママ、ぼくのことすき? ママ、ぼくのことすき?
うっちー/もうすぐ二人目が生まれるおかあさんと、上の子に。ほのぼのあたたかい絵本。
 子どもが一番安心するのは、親からしっかりと愛されているとき。かわいがってもらえないと、とても不安になるもの。このお話の主人公しろくまのポロは、さいきん、ママもパパもちっともかまってくれないので、悲しくてたまりません。どうしてなのかな、ぼくのこと好きでなくなったのかなあと、悩んだポロは、友だちに相談します。 この絵本の作者のバロニアンは、子どもどうしの会話を表すのがとてもうまい。子どもたちの会話は、無邪気で、でも自分の経験を交えるので、そこに真実も含んで! オオカミ、アザラシ、ペンギンたちは、ポロの悩みにそれぞれ答えます。 ポロは、オオカミのカミカミに「ママをよーくみてごらん」と言われたので、…  全文読む 評価する

世界一ばかなわたしのネコ 世界一ばかなわたしのネコ
うっちー/キュートな「ネコ(ゾウ?)」に笑ってしまう!このユーモアと皮肉はフランス的?
 この絵本を読んで、「おいおい、いったいこの絵本のどこにネコがいるのかね」なんてことを言わないように。確かに、これは、「ネコ」のはなしなんだけど、「ネコ」ではないのです…。 なんとも、フランス的(?)なユーモアと皮肉に満ちていて、一読目は、「へっ…?」。二読めに「ニヤリ」、そして、三読目に、すみからすみまでなめるように楽しんで、ニコニコしてしまう絵本なのだ。イヤハヤ…やっかいなフランス人。それでも、まだ、諸説紛々、ああでもない、こうでもないと大人は見解を論じ合いたくなるかも。 お話は、「わたしのネコは とっても太っていて とってもかわいいけど、とんでもない おばかさんです。」とはじまる。バスケ…  全文読む 評価する

宮部みゆき 宮部みゆき
うっちー/作家入門にぴったり!大人も楽しめるみごとなミステリー集。
 当代一流の売れっ子作家たちの作品を、若い読者(小・中学生)に向けて届けよう、というこのシリーズ。それぞれの作家が、「小中学生に読んでもらえるなら、これ」と自選するというのがおもしろい。作家がどう思って選んだか、その選択のあり方、方針にも興味津々。 宮部みゆきは、「主要な登場人物たちが少年少女であるということだけを条件にして」作品を選んだと書いている。時代が違っても、「この主人公は、あたしに似てる」「同じようなことで悩んでる」と感じ、心を動かしてくれるのではないかと思ってのことだ、と言う。ま、妥当な線だな、と納得。 そうして選ばれた作品(カッコ内は、底本)は、「心とろかすような」(『心とろかす…  全文読む 評価する

うえにはなあにしたにはなあに うえにはなあにしたにはなあに
うっちー/空間の広がりと視点の移動がみごと!
 「もし、きみがもぐらだったら、うえには…」という問いかけで始まるこの絵本。「うえには、なにがある? 土。土のうえにはなにがある?草。くさのうえには…」。こんな風に問いかけながら、話は進み、ページはめくられていく。視点はどんどん上に、そして、空間はぐんぐん広がって行く。その心地よさといったら!  土の中から、地上に出て、高く木の上に、そして空に昇り、月まで行く。その間、視線は上に向かうので、たとえば高い木の梢ごしに空が見えるなんていう画面はとても気持ちがいい。そして、月まで昇ると、今度は、逆に降下していく。「つきのしたにはなにがある?雲。くものしたには…」。すなわち、今度は高いところから、下を…  全文読む 評価する

かえるのじいさまとあめんぼおはな かえるのじいさまとあめんぼおはな
うっちー/かえるのじいいさまの懊悩と優しさが心憎い
 動いているものは食べてしまう、かえるのじいさま。その生きていく本能で、思わずあめんぼを食べてしまったために、とんでもないことに‥。 飲みこんでしまう前に、あのあめんぼ夫婦は、なにやら言っていたな、とじいさまは、気になってはいたが、なんと、その夫婦の娘のおはながやってきた。おはなは、言うのだ。「両親に会わせて」と。 おはなとて、喰う、喰われるの関係はわかっているので、涙はこぼしても、けっして恨みはしない。ただ、口の中をのぞいて、両親に別れを告げるのみ。「おはなは、元気に生きていくから」と。 かえるのじいさまは、食べたくもなかった、にがいだけで、おいしくもないあめんぼ。でも、おはなには、「おいし…  全文読む 評価する

流れ行く者 流れ行く者
うっちー/あのバルサとタンダが、ここに!
 「守り人」シリーズの、あのバルサとタンダの子どものころのお話。4つの短編が入っている。 父を王に殺され、父の親友であるジグロとともに、追われる身になったバルサ。まだ13歳の少女とはいえ、生き抜くために、闘うすべを学び、ジグロとともに、用心棒や護衛をしながら、住むところを定めぬ「流れ行く者」として生きている。 そんなバルサが、少しでも息をつけるところが、呪術師トロガイのところだった。そこに身を寄せている間は、近くに住む心優しい少年タンダとも交流があり、ふつうのくらしに思いを馳せてしまうのだった。 村の暮らしの描写のリアルさ。風や匂いや音までも、目の前に浮かび上がる表現の確かさ。上橋菜穂子のみご…  全文読む 評価する

地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル 地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル
うっちー/子どもたちが、環境問題を身近なものとして捉えるためにぴったりの本
 ため息が出るほどの美しい海の写真の表紙。その表紙を繰ると、こういう問いかけの言葉がある。「いちばんたいせつなものはなんですか?考えてみてください。」-わたしたちの今、一番大切にしているものはなんだろう? そして、そのページには、この問いの答え、日本の子どもたちが描いた「たいせつなもの」の絵がある。お金、ゲーム機、家族、ペット、テレビ、野球道具、乗り物…。 一方、ツバルの子どもたちの「たいせつなもの」は、なんだろう。次のページからは、ツバルの子どもたちが描いた「たいせつなもの」の絵が続く。「今よりも地球がもう少しよくなるという夢」「ツバルの美しい砂浜」「ツバルの美しい夕暮れ」「人々のつながり」…  全文読む 評価する

にいさん にいさん
うっちー/読み終わった後、思わずため息が出るほど、美しい。絵も、人を思う心も。
 美しく深い群青色、金色を中に含んだかのような黄色-まず、その美しい色彩に圧倒される。 ゴッホとテオの兄弟愛を軸に、あまりにも有名な画家ゴッホの生涯を描く伝記絵本。視点は、あくまで弟テオであり、彼の兄への思いにせつなくもいとおしくなる。こんなにも慕い、思い、支え続けたテオ。でも、それは、実ることなく、ゴッホが生きている間は、その絵は、大きな評価は得られなかった。 でも、‥と思う。こうして後に、世の人がゴッホの絵に圧倒的なパワーを感じ、心打たれるということ。それは、彼の絵と人をこよなく愛したテオがいたからこそなのだ。テオの思いは、かなえられたといえよう。 ふたりの生涯、その風土や歴史も含めて、彼…  全文読む 評価する

オオカミ オオカミ
うっちー/危うし、ウサギ! どっきり、ニヤリの大人の絵本。
  ウサギが、西バックス公立かくれが図書館で借りた本は、「オオカミ」。ちょっとシミのついた、赤い布の装丁の絵本。 貸出方式は、ちょっと古い。なんせ、ブックカードがついていて、返却日がスタンプで押されるタイプ。実際に、絵本「オオカミ」の表紙の裏にブックポケットやブックカードをつけていて、とてもリアル!そして、次のページから、ウサギといっしょに、この「オオカミ」という絵本をページを繰って読む形にしている。なかなか凝った構成なのだ。 ウサギは、歩きながら、一生懸命、絵本を読みすすめる。その絵本の中から、そして、ページの間から、ウサギをうかがうオオカミ!ウサギに迫る危機。ついには…! 後に残…  全文読む 評価する

かわのたび かわのたび
うっちー/森の小川から海まで。ページをめくるごとに変わる景色が楽しい。
  小さい頃、川の中に葉っぱや枝を投げ入れては、その流れ行く先を見るのが、どんなに楽しかったことか。ゆらゆら流れていく様子を見るのもおもしろいし、いったいどこまでいくのか、先を想像する楽しさもあった。 そんなことを思い出させてくれたなんともかわいい絵本。 作者の間瀬なおかたは、「景色のうつりかわり」ということをテーマとする絵本が多いのだが、今回もそうである。 女の子のゆかちゃんがおもちゃのアヒルを持って、山にあそびにいく。ところが、小川の橋をわたるときに、アヒルをおとしてしまう。どんどん流されていくアヒル。どこに行くのか、どうなるのか、子どもの興味をひきつけつつ、お話はすすむ。 森の…  全文読む 評価する

らも らも
うっちー/中島らも、なぜ、そんなに壊れなきゃいけなかったの?
  中島らもの書くものが好きだった。しかし、彼の生活や日常が、ここまで破滅的であったとは‥。シンナー、睡眠薬、酒、暴力、セックス‥。 著者は、らもの妻である美代子さん。ふたりの出会いから最後の日までが綴られているが、ここまで正直にあっけらかんと書けるのかと驚いた。らもとのすさまじい日常、葛藤。貫かれているのは、らもへの愛情だけれど、その表し方は、とうてい普通では考えられない。 愛し合って結婚したのに、妻の前でも他の女性とつきあい、妻に他の男と寝るように勧めたり、なぜ、らもがそこまで虚無的になったのか、自暴自棄ともいえる生活をしなくてはいけなかったのか、その点については、もはや知りよう…  全文読む 評価する

よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし
うっちー/印象的なイラスト、色彩!よしおくんの語る不思議におかしい冒険譚。
  空の青、草や木の緑、そして牛乳の白が、なんともあざやかで、そのストーリーとともに、強い印象を残す絵本。 表紙をめくれば、見返しからすぐ、お話は始まる。オレンジ色のテーブルの上に、真っ白い牛乳びんと、こげ茶色のチョコレートパン、そして、主人公のよしおくんの腕が画面いっぱいに描かれている見返しには、こんな文章。「それは ぼくが あさごはんの チョコレートパンを たべて ぎゅうにゅうを のんでいたときのことです。」うまいなぁ~。画面には、静かだけれども、何かが起こりそうな不安定な感じがよく出てるし、何かが起こったと予感させるこの言葉で、お話への期待をあおる。果たして、次のページでは、倒…  全文読む 評価する

不肖・宮嶋メディアのウソ、教えたる! 不肖・宮嶋メディアのウソ、教えたる!
うっちー/経験から語る「情報の受け取り方」。さすが、宮嶋、わかりやすい!
  「情報」には、様々なものがあり、現場で自分で見て判断することが大事で、メディアのウソも見抜く力をつけなければダメ、など、情報の受け取りかたのあれこれを、伝授してくれる。 とにかく、あの数々の修羅場を潜り抜けてきた「不肖・宮嶋」が書いているので、机上の空論ではない。カメラマンとしての経験をもとにした具体的な例があげられ、説得力がある。しかも、中学生向けとあって、わかりやすい。 たとえば、調べたいことがあるなら、図書館に行けばいいと語るくだり。「図書館にあるのは、書籍になった情報です。書籍というものは、(中略)編集者や校閲者のチェックを経て世の中に送り出されますから、その場の思いつき…  全文読む 評価する

山田詠美 山田詠美
うっちー/8つの話がすべて生き生きと心に届く。みごとな選書と組み合わせに満足!
  読んだことのある物語でも、他の物語といっしょに再構成され並んでいると、また、違った感慨があり、面白さがでてくるものだ。このシリーズは、つくづく、選書と組み合わせ、並べ方がうまいなあと感心する。 この1冊もまた、山田詠美のうまさとすごさ、内面の豊かさまで示すものとなっている。やっぱりいいなぁ、山田詠美!と言わせる仕上がりだ。「海の底」で、ほのぼのとしたと大人の恋を描き、「ひよこの眼」では、生の中の「死」を見つける一瞬を描き、「アニマル・ロジック」では、社会の不条理とそれへのいらだちを、「ME AND MRS.JONES」では、大人の女を恋の相手にし玉砕する少年を、「涙腺転換」では、…  全文読む 評価する

ファイヤーガール ファイヤーガール
うっちー/過酷なことから目を背けず、自分としっかり向き合う。そのことから成長する少年の姿を描く。
  一見可愛らしく見える表紙。でも、よく見ると、真ん中の女の子の片手は、隣の子とつながれていない。そして、他はみんな白い紙でできているのに、この女の子だけ、茶色くこげている‥。背景は炎の色「赤」。そう、この表紙は、本の内容をそのまま表しているのだ。 物語は、主人公トムの語りですすむ。トムは、クラス一の美人であるトレーシーにあこがれる、クラシックカー好きの、おとなしく目立たないふつうの男の子。彼には、仲良しのジェフという友だちがいるが、ジェフは、トムとちがって、きまぐれで目立ちたがり。 物語は、「ぼくとジェフの関係がふつうだった」日から、ほんの3週間ほどの間にトムに起こった大きな心の変…  全文読む 評価する

午前4時、東京で会いますか? 午前4時、東京で会いますか?
うっちー/哲学的かつ文学的なこの書簡集は、至福の時間を与えてくれる。
  北京生まれで10歳で処女詩集を出し、17歳からフランスに住む小説家であり画家でもあるシャンサと、フランス生まれでシャネル日本法人社長として30年余り日本に住むリシャール・コラスとの、この往復書簡集は、哲学的かつ文学的であり、読む者に至福の時間を与えてくれる。 それぞれの生い立ちと人生が語られ、その地理的広がりと、過去から未来を見晴るかす時間的深さに圧倒され、酔わされる。読むことで、世界を一望できる大海原に漂っているかのような茫洋とした感覚と、一方で、ある時点をしっかりと見据えさせられる覚醒感がある。それは、ふたりの経験と知性と文章力のなせる技なのであろう。 二人とも日本とは深い関…  全文読む 評価する

オチケン! オチケン!
うっちー/謎解きの道具は、落語?!ほのぼの笑える学園ミステリー。
  大阪では、落語の定席である「天満天神繁昌亭」が名前通りに大繁盛!朝のNHK連ドラ「ちりとてちん」も絶好調。落語って、ほんまにええんです。 落語で「おもしろい」というのは「おかしい」「笑える」というだけでなく、人情話、こわい話、ほろっとさせる話など、本当に幅広い。もちろん、語り手の人間味も出ますし、落語家が語るだけで、どうしてあんなに話が立体化し、物語が浮かび上がるのかと、感心します。 で、この「オチケン!」。 これは、大学の落語研究会に入れられてしまった主人公の学生、健一郎が、落研の存亡をかけ、様々な事件の謎を解決せざるを得ない状況に追い込まれるという、学園ミステリー。歴史はある…  全文読む 評価する

さてさてきしゃははしります… さてさてきしゃははしります…
うっちー/カラフル、リズミカル、ユーモラス!絵本ならではの楽しさがあふれている。
もう、このリズム感、この色彩、好きです。たまりません!何がいいかって、まず、このカラフルな駅、汽車!そこに乗車している人たちの、ちょっととぼけておかしな雰囲気。何より、言葉がユーモラスでリズミカルなことがすてき。読み進むうちに、なんだかどんどん楽しくなってくるのです。たとえば、汽車には、車両ごとに色々な集団が乗っているのだけれど、「ケーキはいかが。紅茶はいかが」なんて言い合っている奥様がたの車両では、汽車は、こう走ります。「ケ・キ・コ・チャ、ケ・キ・コ・チャ」。兵隊さんたちの車両では「ヒダリン・ミギン、ヒダリン・ミギン」。「ねえ、まだつかないの?」とうるさい生徒たちの車両は、「マダン・ゴトン、…  全文読む 評価する

ラークライト ラークライト
うっちー/海賊あり、恋あり、友情あり!ユーモラスな冒険活劇ファンタジー。
  主人公や登場人物のキャラクターがとてもいい!そして、彼らの性格そのまま、物語は、始めから終わりまで、生き生きと温かく、ユーモラス。とても楽しい冒険活劇ファンタジーだ。時代設定は、イギリスで第1回万博が開かれた1851年。とはいえ、この物語世界では、人類は宇宙に進出しているので、月や木星、土星が冒険の舞台となる。ただ、登場人物の服装や考え方は、1851年風で、レトロ。これが活きていて、史実を織り交ぜながらのお話は大成功である。また、イラストも、否が応でも想像力をかきたててくれる。登場する奇妙な生き物も、「なるほど、こうきたか!」と納得させる、説得力あるすばらしいイラストである。 1…  全文読む 評価する

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