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商品説明
町の中に、家の中に、犯罪の種は眠っている…。普通の町に生きるありふれた人々にふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえ、現代の地方の姿を鋭く衝く全5編を収録。『オール讀物』ほか掲載作を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】 望むことは、罪ですか?彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい。そんな願いが転落を呼び込む。ささやかな夢を叶える鍵を求めて5人の女は岐路に立たされる。待望の最新短篇集。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
仁志野町の泥棒 | 7−43 | |
---|---|---|
石蕗南地区の放火 | 45−85 | |
美弥谷団地の逃亡者 | 87−119 |
著者紹介
辻村 深月
- 略歴
- 〈辻村深月〉1980年山梨県生まれ。「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。「ツナグ」で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に「凍りのくじら」など。
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紙の本
リアルな日常
2012/05/24 11:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひととき - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作集か何かかな~と思っていたら、まんま短編集でした。
いつも思っていることですが、人間の負の部分を書き出して、こちらの心を乱すのがうまいな~と、この作品でも感じました。女性の心理描写を描くのはピカ一だと私は勝手に思っています。
見栄を張ってみたり、取り繕うと思うとドツボにはまっていく、あの恥ずかしい思いとか、そのままリアルに書かれています。
自分がイヤだな~と思っている部分をまるまるさらけ出してくれるので、主人公に感情移入できちゃう自分にちょっと反省です。
お話は日常ミステリーといったところなのでしょうが、謎というものはありません。
それに読んでいれば、多分結末はこうだろうな~と予想がついてしまいます。
結局、これらの主人公はこの先どうなるんだ?・・・という疑問はありますが、それはご想像におまかせします・・・といったところでしょうか。
お話はきちんと完結しているとは思います。ある意味、怖いですけどね。
5編中、最後の話がとくに怖かったです。
やっとできた子どもが誘拐された?とパニックになり、結婚から出産育児にいたるまでを回想していくのですが、だんだん軸がずれていく主人公に静かな怖さを感じます。
結末は、とっても気持ちがわかってしまい、途中から読むのが苦しかったです。
他作品も、泥棒、放火、DV、殺人と、ちまたでニュースになるような題材ばかりです。
4本目の殺人モノはちょっと私にはあいませんでしたが、リアルに感じました。
辻村作品のいつもの遊び心のある登場人物は、「これがそうかな?」と思うところがありましたが、けっこう著作数が増えてくると覚えていられないものですね(笑)。
電子書籍
地方に流れる倦怠感
2012/07/27 13:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ほんやら - この投稿者のレビュー一覧を見る
この短篇集は、地方に共通して流れるぼんやりとした倦怠感で包まれている。
都会でも田舎でもない土地(作者の故郷は山梨県)で暮らす、やや被害妄想ぎみな女と身勝手な男。駅前のシケた名前のスーパー、学校を卒業してそのまま地方に就職する同級生たち。そこで起きるDV、男女のもつれ、いじめ等・・・。
ここで起きる事件はせいぜいテレビのニュースに一瞬流れて、何の感想もなく記憶にも残らず過ぎていくような類のもの。それが当事者の立場で描かれると妙にリアルで
読み手の心に芯を残すような感覚を覚えされられる。
才能溢れた主人公が成長する類の小説は読んでいてスッキリして面白いけれど、こうした救いのない余韻を残す、ロードムービー的な小説もまた面白いし自分はその方が好きかもしれない。個人的には佐藤泰志「海炭市叙景」と本作に共通する灰色の雰囲気を感じた。
紙の本
第147回直木三十五賞
2018/09/23 02:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takashi - この投稿者のレビュー一覧を見る
時間は掛かったけどやっと読了。
辻村さんのファンになり直木賞作品まだだったと読み始めたけど苦しすぎて途中で置いた。
全5話の短編集。3話から動悸がして、4話途中で置いた。これをハッピーバッドエンドと言うのかな。5話で何とか救われた感じ。ドラマ化されてる。
息切れしながらも、いい加減読みきらなきゃと最後まで読んで何とか5話はホッとしたものの、改めて第3・4話チラ見したらやっぱりワンシーン読み返しただけで心臓がキュッとなり苦しい。
女性視点だが、一歩間違えると幸せを開ける「鍵」を見失うという話だが、自分から見るとバッドエンドでも彼女たちからすればそれがハッピーエンドなのかもしれない。
紙の本
ノワールをライトに描いた直木賞
2012/08/16 10:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
五つの短編のタイトルどおり登場人物は全員が何らかの犯罪者であり、その犯罪者と拘わる女性が語り手でミステリー風に進み、「最後はどうなるの?」という筋追いだけですぐに読了できる内容だった。
犯罪者とそれとかかわる女性たちにはいくつかの共通点がある。
社会人としての資格がない未熟児がそのまま成人した。
精神が病的に歪んでいる。
罪と罰の意識を持ち合わせていない。
つまらぬことに強いこだわりをもっている。
自分勝手な思い込みの世界と現実の世界とを区別できない。
誰かを頼る、誰かから頼られる関係がないと生きている心地がしない。
こういうレベルの人たちですから、つまらぬことを深刻に語り合いあるいは悩みぬきますが、逆に深刻な事態を前にすると軽口を飛ばして逃避するのです。
「どうしてだろう、と歯を食いしばる。どうしてだろう。私には、どうしてこんな男しか寄ってこないのだろう。―石蕗南地区の放火―」
「岐路に立つ5人の女達。望むことは罪ですか」
「恋愛、結婚、出産。普通の幸せ、ささやかな夢を叶える鍵を求めて魔が差す瞬間」
どうしてだろうと自問するまでもないだろう。これでは普通の幸せやささやかな夢など、はじめからつかめるはずがない。わたしらの年代からすれば、共感はもとより同情の余地がない馬鹿者どもなのだ。
どうしてこの作品が賞に値するのか、著者は何を言いたかったのかもよくわかりません。
たしかに異常な、動機不明の凶悪犯罪が頻発している。いつなんどき身近で起こるとも限らない。ありうるお話!日常に潜む狂気に背筋が寒くなる………との効果を狙ったものかとも思うが、それにしてはリアル感がない。
彼ら彼女らは「怖い夢」を見ているのだ。著者はその「夢」を丹念に描写している。
「夢」とは多様な意味合いがある(スーパー大辞林より抜粋)
1 睡眠時の幻覚体験。非現実的な内容であることが多いが、夢を見ている当人には切迫した現実性を帯びている。
2 将来実現させたいと心の中に思い描いている願い。
3 現実とかけ離れた考え。実現の可能性のない空間
4 心の迷い。迷夢
5 現実を離れた甘美な状態。
将来に希望を託せない世界に彼ら彼女らは閉じ込められている。現実にこういう閉塞感はあるのかもしれない。第一話から第五話まで登場人物はこの「夢」のどれかの組み合わせで、まさに「夢を見ている」。現実の世界と「夢」の世界には扉があって、普通の人は両世界間を出入りするのに「自覚という鍵」を持っているのだが、鍵を持たない彼ら彼女らはどちらの世界に立っているのかがわからない。そして衝動的に閉塞状況を突破しようとする瞬間、陥穽にはまり現実社会では転落してしまう。
著者はあえて自分の価値判断を回避し、その状況をそのままに描いているのではないだろうか。人間に潜む悪意や差別、嫉妬、異常、暴力などノワールな内面を今風にライトに描いたところが評価されたのかもしれない。ただライトに描写しているものの本質的にはそこに救いはないのだ。
わたしのような年寄りには何も意味を見いだせない作品であった。