紙の本
職業作家が忘れているものがここにある
2012/01/27 08:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
爆笑問題のラジオで紹介されていたので読んでみた。
思っていたよりもずっとよかった。短い短編がいくつもつながっていってひとつの大きな「物語」になっていく構成も見事だと思った。
また、金子みすずをほうふつとさせる部分やピーターパン、フランケンシュタインなど読書家としての太田さんの「間テクスト性」がいかんなく発揮されていた。
この本は芥川賞も直木賞もとらないかもしれないが、某団体が本気で文学の「振興」を考えているなら、こういう作品こそノミネートすべき、と思った。
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表題作は、ご存知、爆笑問題太田光の小説第二弾「文明の子」です。
この小説は、「人間とは」、「生きるとは」、「愛とは」といった事や
ある種の正義が大勢を占めた時に切り捨てられてしまう何か、
といったものを著者独特の無垢な感性でとらえ表現しています。
正直、「小説」としての巧拙は、私にはわかりませんが、
著者の表現者としてのストレートな愚直さや無垢な感性は、
巧拙を超えて、読み手を小説の世界に引き込んでいきます。
また表現の形は小説ですが、著者の想いと向き合う中で
様々なことを考えさせられる(考えずにいられない)という意味では、
ある種の哲学書ともいえます。
名作、手塚治虫「火の鳥」と似たようなの読後感を得られました。
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前作のマボロシの鳥では、何かのオマージュ短編で構成され、全体として何か物足りないものを感じた。
だが、今回の文明の子では、ちりじりにみえる短編が、ある大きな物語として展開していることに違いがある。
私たちがつくりあげてきたこの世界を、終わらせるのか、それとも続けるのか、問うことからこの物語は始まる。文明は破壊され、そして次に繋ぐことの意味を最後には訴える。文明を光のようにとらえることによって、この世界を強く肯定する。そのことに強く心打たれた。今、見えている星の光のその星は存在しないかもしれない、という言葉をくつがえし、いま、見ている星の光は永遠に続いてゆくことの美しさに焦点を当てる。美しい作品だった。
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〈内容〉地球、そして地球とは別の進化を成し遂げた星の過去と未来に秘められた謎。新たな文明に踏み出すために動き始めた子供たち。パラレルワールドが絡み合い紡ぎ出す壮大な物語。
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抽象的ではあるが、非常に良かった。
短編一つ一つも面白くてせつない。
藤子不二雄のSF、少し不思議な、物語です。
これは冒険小説ともサスペンスとも違いますが、いい物語ではないでしょうか。
5点中4点、10点なら8点。
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太田さんがインタビューで「尊敬する作家が原発問題について“人命よりも利便性を選んだ結果でとんでもない事件が起こった”と、海外へ向けて言及したのを聞いて自分たちの文明は否定したくないと感じて一年かけて書き直した。」というようなことを言っていて興味を持った。そんな作家は村上春樹しかいない。太田さんはアンチ村上春樹なはずなのに尊敬しているのだと嬉しくなった。
いくつかの短編の物語がだんだん繋がっていくのが面白い。総理大臣のシリーズが好きだった。
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太田らしい物語だった。文章は回りくどいし、まどろっこしい書き方をしているけど、マボロシの鳥よりもガツンときた。目次を見たとき、また短編かと思ったが、それぞれが繋がっていき、ひとつの大きな物語になっていった。パラレルな世紀への跳躍でみせたショートストーリーに近づいているのか、孤独からの立ち上がりを書かせたら心底上手い。
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未来の視点から、「今」を「過去」として見ているのが面白い。
多様な価値観が認められうる今の社会に、どんな価値観を持つのか。絶望を嘆くことは簡単だけれど、私たちは何を望むのか。
そんな問題提起を受けた気持ちになる。
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未来を担う子どもたちに、老人が希望を託す話し、と読む。彼方の星で、飛べなくなった翼を持つ老人とピピの会話から始まる。短編集?と思わせるバラバラの話が、ページを捲るにつれ、関連を持ってくる。お気に入りは「プレゼント」と「贈り物」。この二篇だけでも、読む価値あり。若い人々に何を残せるのか?先週観た、園子温監督『ヒミズ』にも繋がるテーマ。
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なんだろう、この読了感。終始、心地よくて、ずーっと浸っていたい感じだった。僕的にブレイクスルーな一冊だった。短編の良質な童話、SFの短編集が連鎖して終わったら最初にループしているような、また読み返したくなる構成。今度こそ、是非、賞を取っていただきたい。
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爆笑問題が大好きで購入。
普段では、見ることができない太田さんの一面が垣間見れたようで新鮮だった。
でも、私にはなかなか難しい、、、。サラサラ読めるような感じではなかった。形のないものを読んでいるような気分になった。
いつもミステリーばっかり読んでるからかな。
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評価:★★★★★(5/5)
太田光の書き下ろし。2作目になる。
もはや「爆笑問題の」と付けなくてもいい、太田光の世界観がにじみ出たよい作品だ。
今回は処女作「マボロシの鳥」にあったようなテレは省かれている。
一つのストーリを22の短編で編み上げてげている。
キーワードとなるのは、文明、光、子供、時間・・・。
大人も子供も、老人も登場するのだけども、誰もが無垢な心を持っていて、大人大人していなくて、童話のようにも感じた。
一冊を通して、始まりも終わりもない不思議な物語で、読者を惑わすような巧妙な謎掛けがあるわけでもなく、かといって短絡的でもなく、心に響く物語だった。
いくつもの短編が見事に絡み合っているので、一度読んだ後で、また読み返したら印象も変わってくるんだと思う。
何度でも楽しめそう。
太田光の思想のごり押しではなく、彼の見た、彼の見える世界を覗かせてもらえる話がいくつもある。
(ちなみに、僕は彼の政治思想は好きではない。)
時に胸を締め付けられるような悲しい話も登場するのだけども、またそれを中和するような道筋もあり、落ち着いて読めた。
読了後に何ともいえないよい気持ちにさせられる本だった。
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今、マナブとソラまで読んだところです。太田さん(著者)、すごい想像力だなと思っ・・・た瞬間、小さいころ?こんなこと普通に考えてたなと思いました。じわじわくる内容です。
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まず思ったのは、全体が「優しさ」で覆われているなぁ、
という事だった。
中には哀しいものもあるが、根底にあるのは優しさで
最後に希望に収束する。
人間というものを、その、きっと連続していく生の可能性に
希望を見いだしているように感じた。
良かったです。
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部分部分では、太田さんの伝えたいことがわかりやすく
書かれていて、納得できるしうなずけました。
短編小説の集まりが、実は1つになってるっていう形はわかります。
ですが、1つ1つの区切りが短すぎて物語の中に入っていけないというか
中に入るために頭が疲れるカンジがした。
私の理解力が乏しいのか、ピンときませんでした。