紙の本
スタジオ・ジブリを総括したような文章が収められているプロデューサー・鈴木敏夫の本
2018/09/16 23:08
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投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
あのスタジオ・ジブリのプロデューサーを長く務めている鈴木敏夫の本。
アニメーション映画のプロデューサーではあるが、それ以前は雑誌記者・編集者でもあった人であり、以前からいくつか本を出していたり、ラジオのパーソナリティをつとめたりしているので、もうこの人自身がジブリの顔であるかのような活躍をされているので、これまでにも著書を何冊か読ませてもらった。
本書は、ジブリでいうと宮崎駿の『風立ちぬ』が公開までの何年かの文章などが集められている。しかも、岩波書店から出版されているなんてのがある意味での特徴かもしれない。
なので、いくつかの文章はスタジオ・ジブリの30年を総括するようなものとなっているし、どうしても多くはジブリ作品やスタッフの話になっている。これまでにも別のところでも語られていたものもあるが、こうしてまとまっていると改めてスタジオ・ジブリがどんな存在だったのかというのを知ることができて面白かった。
そうした面白さは、後半に収められている5編の対談録でも表れているように思う。
そこには常に時代感覚といっていいような、世間の見方・感じ方が表われているし、その感覚こそが鈴木敏夫という人をジブリのプロデューサーとして際立たせてきたものではないかと思える。
そして、最後の章で自身の来歴などを語っている文章が収められてるが、そこまで読んでくると、上記の時代感覚を培ってきたものがわかってくるような気がする。
個人的にはスタジオ・ジブリのこぼれ話的なものも面白かったが、岩波少年文庫の解説文「思春期は終わらない」がなかなか示唆に富むもので面白かった。
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鈴木敏夫は「したたか」だなぁ、と感じる。
ラジオを聞いても、いろんな書籍やインタビューを読んでも、いつも飄々としていて、その雰囲気はとても日本を代表するプロデューサーとは思えない。まるで「近所のオジサン」である。しかし、実際にはジブリという日本を代表するアニメ企業の責任者の一人であり、数々のヒットアニメを手掛けた名プロデューサーである。本書ではその一端が垣間見える。
まず、鈴木敏夫には芯がある。
これはイコール「ジブリの企業理念」と言っても良いと思うが、まず、良質な作品を作ることを第一に掲げている。興行的な成功はそのあと。本書の中で、鈴木は「映画のことをコンテンツとは絶対言わない」、「いつから映画界はDVDやテレビ放映のために作品を作るようになったのか」と言っているように、映画の内容こそ最重要課題なのであり、興行的な成功はその後からついてくるものだという理念はジブリ創設当初から一貫している。
宮崎駿や高畑勲との付き合いも、「良い映画を作って見せたい」というシンプルだが、重要な共通理念があるからであり、彼らとの付き合いの中で必死に勉強したという膨大な知識も、その理念を達成するためだからこそ得られたものだろう。
第二に、鈴木敏夫は表舞台に立たない。
今でこそ鈴木敏夫の名前はジブリのプロデューサーとして有名だが、自分のことは徹底的に棚に上げる。本書には自分の経歴なるものや思想といったものが少ない。代わりに書かれているのは、その時起こったことや、エピソードの数々で、人の意見に賛成も反対もしない。徹底的に黒子となっている。これがプロデューサーという仕事を通して見に付けた処世術なのか、生まれ持った性格なのかはさておき、その微妙な距離感は絶妙だ。
最後に、鈴木敏夫はバランス感覚に優れている。
宮崎駿や高畑勲と言った盟友たちに囲まれて、鈴木敏夫も膨大な知識を有している。しかし、彼らと違って彼がするのはプロデューサー業である。アニメを書いていれば良いのとは違う。「良い作品を作る」という共通理念を持っているが、それが売れなければ意味がないという感覚、危機感は鈴木敏夫が一番優れていると思う。だから、ジブリ外との人との付き合いも多いし、宣伝プランも十分に練って考える。ともすれば作品価値を落とすことにもつながりかねない宣伝だが、鈴木敏夫は作品の価値を落とすことなく、そのメッセージを上手に抽出して、ターゲットとなる観客に伝えている。そのバランス感覚はとても見事だ。
一見して飄々としたオジサン。しかし、実際はバランス感覚に優れた名プロデューサー。天才アニメーター宮崎駿の傍らにいて、鈴木敏夫なくしてジブリなし。文章は軽いタッチで書かれているが、その一端が垣間見える一冊だった。
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鈴木敏夫抜きのジブリは有りか??
今まで鈴木さんが色んな方面で書いた文章を集めたものです。仕事道楽とかぶる個所もあります。しかし読んで損は無し。
鈴木さんは寺山修司の引用は全て読んだようですが、私は鈴木さんの引用を全て読んでみたい。
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ジブリを鈴木敏夫の目線で捉えた満載本。ショートエッセイしかり、対談しかり、日記しかり、思想しかりと本にすべく書かれたというよりも、何かを一緒くたにまぜたようで新鮮な感覚になった。特に良かったのは最終章。履歴に関するところは、やはり鈴木敏夫の思想、人間像がわかりジブリをさらに楽しめるスパイスが加えられた。思うに、ジブリの影に名プロデューサーあり。彼が健在なうちは、ジブリの一人勝ちはなくならないとそう思わずにはいられない。
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タイトルは「ジブリの哲学」だが、鈴木敏夫なのである。
これまでのジブリ作品のほとんどをプロデュースしてきた鈴木敏夫その人の思考過程が詰まっている。
ジブリをどのような考え方で率いてきたか、その時々でどのような葛藤があり決断をしてきたか。
ラジオ番組「ジブリ汗まみれ」で語られてきた内容の抜粋のようなものであるが、鈴木敏夫を知るには内容十分、切り口も多く複数の視点から彼を読み解くことができる良い本である。
ジブリ=宮崎駿が世間の認識だが、僕はジブリ=鈴木敏夫だと思っている。彼の功績なくしてジブリの繁栄はなかった。
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プロデューサーをじぶんの仕事に置き換えて読むと非常に興味深い内容だった
モノづくりができないプロデューサーがモノづくりに人生かけてるあの宮崎駿をどう納得させて、自分の戦略に乗せているのかが、事例を交えて書かれている。
結局は実績を残し続けて、クリエイターに信用されるしかないってこと。
あの人のいうことを信じて自分は納得できてないけどやるしかないと思わせること。
これに尽きるのね。
まさか『もののけ姫』ってタイトルを宮崎駿に相談なしで決めてるとはおもわなんだ。
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宣伝のプロフェッショナルの鈴木敏夫さんのいろーんな事が書いてある。
仕事はもちろんだけど趣味の事、青春時代に何を考えたかどんな人に影響を受けたか、とか書いてあって面白かった。もっとファンになりそうかも!
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一冊の書下ろしではなく、鈴木プロデューサーのこれまでの原稿集。
とはいっても一貫した哲学のようなものは垣間見える。
金の亡者にならず、良い仕事を追及する、会社はそのためにある。働くということはかくありたいと思う。
徒に自虐せず、グローバルスタンダードとやらに惑わされず、日本人であること。地に足が着いている。
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今 なぜ ジブリ なのか
そのとき なぜ「トトロ」だったのか
ジブリの作品を振り返ること
そのこと自身が
日本の「そのとき」の「雰囲気」を振り返ることにつながり
それ以上に
これからの「日本」の有り様を
考えるきっかけになっている
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これを読み終わった直後にラピュタとアリエッティが放送された時は嬉しかった。
まるで裏側から見ているような。
この本を読むと、ジブリ映画の作品の流れが良くわかる気がする。
監督によってこうも変わる印象もよくかわる。
でも底に流れてるのはジブリ魂で宮さん気質で鈴木さん経由なんだろうな。
ジブリで育っていまだジブリの単語に反応してしまう人にはたまらない一冊。
一緒にジブリを作っている気分に、
勝手になれます。
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スタジオジブリの名物プロデューサーとして宮崎駿・高畑勲両監督らと共に世界中で愛されているアニメ映画を筆者はどのように作ってきたのか。あの飄々とした外見からは想像もつかないくらい「熱い」ものがあります。
これはスタジオジブリの名物プロデューサーである筆者が自ら筆を執って書いたドキュメントタッチのエッセイです。
内容をざっとかいつまんで申しますと、第1章はスタジオジブリ草創期から千と千尋の神隠しの頃までのジブリの考え方。第2章では今までのジブリ作品と制作者達の紹介やエピソードの披露。第3章ではジブリに関わり、影響を与えてきた人達の紹介、4章では鈴木氏の遍歴といったところになります。
その一つ一つが非常に示唆に富んでいて、なおかつ面白い。僕は久しぶりに大笑いを何度もしました。やはり真剣であるからこそ、それが逆に滑稽になっていく、という感じでしょうか?特に徳間康快社長をはじめとする各界著名人との交遊録や、スタッフの何気ない会話たとえば「千と千尋の神隠し」ではキャバクラ好きのスタッフの話した何気ない話を宮崎駿監督と膨らませて「300億円の話」にしていくくだりは読んでいて非常に面白かったです。
さらに、自らが私淑する堀田善衛、加藤周一などから受けた衝撃や、実際にあって受けたインスピレーションも氏の軌跡を物語るもので、欠かせないものなんだということを知りました。筆者の持つあの飄々とした外見からは想像もできないくらいに熱い「思い」というものを感じ取っていただければ幸いに思います。
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宮崎駿監督は、一時「ワープロ=ノート型、パソコン=デスクトップ型」「ワープロ=まあ役に立つ、パソコン=ダメ」という認識な時期があったらしく、その結果としてジブリメンバーの机の上には PowerBook が並ぶことになったらしい。
宮崎駿監督の話は、こういう本で読んでも、テレビで観てもまったくおもしろいものばかりですねぇ。
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ジブリの哲学 鈴木敏夫 岩波書店 120227
初めの数十ページは歯切れのいい文に誘われてサクサクと読んだ
その内ノロケを聞いているようでバカバカしくなってくる
この本はまさしく商品である
哲学と言うよりも自閉症で言うところのコダワリを
惚れたがゆえの贔屓目で綴っているだけの本だと思った
このコダワリはモノづくりをする現場人間ならば
誰しも大なり小なり持っているもので
それが個性的発想を生み結果としてウンコとなる表現をさせる
そのウンコを肥料とできる人が役立たせてくれて世の中は回っていく
これはプロデューサーという職種柄か恥ずかしげもなく
いささか身内の欲目で自己宣伝をしている本のように思う
Tシャツに染め抜いたコカコーラやアップルのロゴを買った上に
気が付けば宣伝までしてあげるというアップサイドダウンな仕組みに
乗せられているようで嫌になってしまうという代物だ
ひょっとしてこのことを現代哲学というのかも知れない
これはまさしく資本主義まっただ中に生きながら
自分の思いを織り込んでいくという実践的作品なのだろう
しかし老若男女の様々な人々が共に暮らす共生環境で大事なのは哲学でなく
地に着いた倫理観であると私は思う
このことを実践に織り込めたらと思いながらはみ出して活きているのが
残念ながら私の現実である
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ジブリ作品は製作される時代性の背景を反映している。
例えば「平成狸合戦ぽんぽこ」の頃の政治情勢や、「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」の頃の女性達の心にある希望や挫折感など。
もう一度ジブリ作品をいろいろ観てみたくなった。
鈴木さんが強く影響を受けられた方々の紹介もされていて、加藤周一さんやE・H・カーの本も今後読んでみたいと思った。
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2012.3.23 図書館
日本の中小企業のモノづくりはジブリに学ぶところ多いですね。というか理想か。外注出さず一貫生産、全員正社員、最近の流れとは真逆。一番重大なのは後継者か、これも何年も前から取り組んできて、色んな監督が出てきている。