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時間封鎖のRCウィルスンの新刊。とはいっても、スピンより前に書かれたもの。今作でも人々は時の流れに翻弄されつつ、それに対峙する。原因と結果が時の流れで渦を巻くタウ・タービュランス。ウィルスンの描く登場人物たちは、いつも危機に立ち向かうだけじゃなく、その中で人生を過ごして行く。
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圧倒的な破壊力をもつ「時のモノリス」による時間侵略という設定が秀逸。クロノリス出現の因果関係とか理屈はよくわからないけど、登場人物の造形や心理描写が上手いなぁと思った。
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未来から送り込まれる巨石により、都市が次々と破壊されていく。
侵略(?)の目的が語られていくのかと思いきや、荒廃する世界の中で政府が、群衆がどのように行動していくのか、そっちがメインに語られます。
そして、主軸になるのはあくまでも主人公の個人的な家族関係。混乱する社会の中で親子の結びつきが弱まったり強まったり。
人間ドラマとしての語り口はなかなか秀逸であります。
よくわからないままアクロバティックに収束するラストもなんだか凄い。
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20 年後の未来から続々と送り込まれるオベリスク。
ワクワクする滑り出し。
しかし物語の本筋は、巻き込まれた人々のドラマ。
タイムパラドックスを乗り越えてしまう
タウ・タービュランス理論が興味深い。
因果応報というか悪因悪果というか、魔法の理論。
舞台は「ねじまき少女」と同じタイから始まるのも、
単なる偶然ではなく、
タウ・タービュランスに巻き込まれたのかも。
時間 SF としてイイ味を持った作品。
「阿諛追従」とか難しい 4 文字熟語はもっと砕いた訳の方が好み。
2002 年 ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作品。
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以前読んだ『時間封鎖』が面白かったので、今回この本を手に取ってみた。『無限記憶』をまだ読んでいないので、本当ならそっちが先のような気もしつつ。面白かったです。普段そんなにSFを読んでいないような自分でも楽しめました。回想の形をとっているせいか、全体を通して何か諦観じみたものが流れています。それはそれで味になってると思うけど。『無限記憶』も近いうちに読みたいな。
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確かに面白いんだけど、私の好きなタイプの「SF」ではないなあ。人間ドラマの方がSFネタより格段に良くできている感じ。時間モノだ!という期待の仕方が悪かったんだろう。
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20年後の未来から打ち込まれた巨大な記念碑が、現在を侵略していくという時空の捻じれたSFの話。
主人公の人生を振り返る形で話が進み、主人公がタウ・タービュランスとかクロノリスより娘を意識上優先しているので必然的にSF的要素よりも、親と子・妻と夫・同僚・友人という人間関係のドラマに意識を奪われる。
ヒッチ良いやつじゃないか!とか。
主人公と周囲の関係性が物語の情緒バランスを全面的に持っていくので、途中まではそれで良いのだけど終盤の演出でやや失敗してるかなと思う。スーと主人公の関係が微妙だったおかげで、ラストの衝撃があんまりなかったのは残念。
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相変わらず叙情的なウィルスンのSF。場面の描写も然ることながら人の感情の捉え方に他の作家には無い才能を感じる。
この本もSPINシリーズと同様、読後に独特の余韻を感じずにはいられないカタストロフと哀愁を持っているが、今回はそこにもう少し劇場的な演出も含まれているなと感じた。特に登場人物のキャラクターや展開のドラマ性など。もしかすると映画化も意識したのかなという気がするが、これは映像化されても非常に面白い作品になりそうな気がする。
テーマを一言で言ってしまうと、「避けられない人の運命」ということかなと思うが、知っていてもなおその道を進まざるを得ない「人の性」を色んな立場の人たちから丁寧に描いている。
ストーリーとしては、ホーガンの「未来からのホットライン」にもちょっと似ている感じで、そちらと比べるといわゆるSF的な理屈やプロットの完成度は負けているかもしれないが、「運命」というテーマについて十分描ききった傑作ではないかと思う。
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サイエンスフィクションのお好きな人には
こたえられない一冊かもしれませんね。
近未来から
現代へ不気味なメッセージが
地表を破って世界各地に出現する。
近未来の支配者からのものか。
支配を磐石にするためのパフォーマンスなのか。
それに立ち向かう科学者たちの運命は?
閉塞状況にある世界に不満を持つ若者たち。
彼らは近未来の指導者へ傾倒していく。
サイエンスフィクション(SF)も文学に近づいてきた?
そんな印象も。
そんなことはない?
ハードSFは、そのままSFでいいではないか。
楽しければいい。
宇宙の彼方へ、
はるか古代へ、
別世界へ。
ファンタジーかはたまたサスペンスか。
それも問うまい。
わたしが何かを感じ
ご機嫌な気分になればいい。
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突然未来からモノリス送られてきた。送り主はクイン。巻き込まれた主人公は次の地点を予測する研究などに深く関わって行く。展開が地味で時間経過が早いため、説明文が多い。ストーリーは面白いし、オチもなかなか。
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フツーに面白かった!
SFとしても面白い。
未来から送られてくる謎のクロノリス。
どうやら将来は送り主の「クイン」に
支配されるようだが、果たして…。
また人間ドラマの小説してもなかなか面白い。
各キャラクターがよく描かれており、
SFも、一つの味付けでしかないような感じもする。
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願えば願うほど実現しやすくなるといった願望の法則にタイムワープを応用した悪巧みの物語。正直、理系的な話はさっぱり分からなかったが、哲学や文学的な素養でほぼ文脈を繋げることができる。クロノリス出現などドキドキハラハラするシーンはいくつかあるものの、期待していたのはドンパチするアクションものだったのに対し、内容は哲学的な考察に富んだSFミステリーといった感じ。ただ読んでて飽きなかったし、最後までエンディングを楽しみに読めたので、よく構成された内容だったと思う。
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一冊だけ、ぐいぐい系なのが悔やまれる。もうちょっと丁寧に書いていればもっと面白かったろうに。時間もの、タイムパラドックスもので、時空を超えて仕掛けられる戦争が、そこまで遠くない未来というのも良い。でもまあ、ウィルソンにとって、というか大多数のアメリカ人にとってアジアなんてほんっとに遠いおとぎの世界の話なんだなあと実感。ヒッチが良いヤツ過ぎて泣ける(笑)意識の集合体、みたいなところをもっとぐっと、突き進めて欲しかった。
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東南アジアの空気感を見事に描いた時間系SF。
20年先の日付が刻まれた石碑が突如出現。続々と送られる石碑がアジア、ヨーロッパ、アメリカの都市を破壊していく。
つかみどころのない現象の実態に迫るべく研究を重ねる物理学者らの姿。
◯「タウ粒子統合エネルギー仮説」いったいこれは、なにを意味しているのだろう?
宇宙の仕組みについて、スーがひたむきに考えたことを意味しているのだ。ものごとの根源について考えているときが、彼女はいちばん幸せなのだ。
◯レイは、臆病者ではなかったのである。孤独な若者ではあるが、その原因の大半は彼の知能の高さにあった。会話をしていても、相手が自分についてこられないと見るや否や、すべての話を途中でやめてしまうのだ。特にいじけた様子を見せるわけではないがー落胆を顔に出すことはあったー自分の考えを他者と分かち合えないことに、哀しみを感じているのは明らかだった。
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題名の勝利である。クロノリス。否応なく『2001年宇宙の旅』のモノリスを思い起こすし、それに「時間」がつくのだから、どんな壮大な話になるのだろう。
2021年、タイの山中に四角錐の石柱が突然現れる。タイ南部とマレーシアが「クイン」と名乗る者の軍門に下ったことを賀する碑文が刻まれていた。しかも日付はちょうど20年後。次に旧ソヴィエトの彫像のように抽象化された非人間的な人物像の石柱がバンコクに現れるが、石柱の出現時の衝撃波でバンコクは壊滅する。続いて、平壌、ホーチミン市、マカオ、札幌、関東平野、中国の宜昌。石柱の出現と都市の破壊がアジアを席巻していく。20年後のクインの軍勢の侵攻を示すとともに、現在の都市をも破壊していく。
プログラマーの「わたし」は最初のクロノリスの出現時に居合わせ、やがて、政府のクロノリス研究機関に加わることになる。プライヴェートには冒頭から夫婦の不仲と離婚の物語が語られ出す。
アジアを席巻するクロノリスは次にどこに出現するのか。クインとは何者で、何のために20年前に干渉しようとするのか。20年後の未来と「わたし」の現在とはどのような関係を結んでいくのか。そして「わたし」個人の物語はどう進んでいくのか。本書の発表は2001年。舞台はその20年後で、さらに20年後からクロノリスが送り込まれるという設定。日本語訳が原書出版と作品の舞台のちょうど真ん中の2011年というのはちょっとした洒落のようなものか。
先が読めないプロットに惹きつけられる。20年前の過去に干渉するということは必然的にクインのいる未来にも影響を与えずにはおかないはずなのだが、クインはクロノリスを送り込むことで未来を望む方向にねじ曲げようとしているのだ。つまり、20年後に示されるであろう圧倒的と思えるクインの力にひれ伏すしかないという思う人々、クイニストたちが現れ、クインの登場を待ち望むようになり、社会は混迷の度を増していく。
この混沌としたタイム・パラドックス状況でいったい未だ存在しない敵とどう戦うのか。時間は2041年、クインのタイ南部とマレーシア征服の時へと迫っていく。
ひとつの作品としては面白いのだが、『時間封鎖』と引き比べると同工異曲的、あるいは『時間封鎖』への習作という感のあるのが若干興をそがれる。まず大きな構造として、人生のかなりの部分を費やすようなスパンの、地球規模の大事件と、主人公の愛情関係の物語を併置する構造、絶望的な状況に陥っていく社会とそれをいささか諦観を持って見つめる主人公、といったあたりである。また、細部のプロットも『時間封鎖』と似たところがあれこれ目についてしまう。
もっともそれは『時間封鎖』を読んでしまっているからで、大胆なアイディアと丁寧な人物描写で読ませる作品であることは確か。