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つくづく、莫言はすごいし、小説というのは大したものだと思う。
一人っ子政策。こういうことはこういうふうにしか書けないのではないだろうか。政治や経済、もしくは道徳正義倫理、宗教、素朴な因果応報論、どれでもどうしようもない。
しかし、はじめて莫言の小説を読んで泣いた。前妻の王仁美が亡くなるシーンと、彼女のことを思い出しながらちびライオンとの婚姻届を出しに行くシーンは、泣いてしまった。
莫言ほど筆の立つ人が泣かせるシーンを書こうと思えば今までいくらでも書けただろうに、あえて避けてきた。泣けない作家だった。しかし今回、それにやられて、それがうまいこと話の前半と後半をつないでいる。
やっぱりこの人はうまい。
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莫言氏の新作
一人っ子政策に切り込んだ小説、
一人っ子政策についてはいろいろ取り上げられているが、男児尊重の中国の農村でどのように進められえいたのか、現場を見ているような臨場感がある小説、
タブーを打ち破る中国作家に期待したい。
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ノーベル賞とられたのでしたっけ
いつかは、とりそうな、そんな大河的な小説をお書きの方です。
今の中国を見ていると、自分の国礼賛の作家か?などと思っちゃいそうですが、この方のはそうじゃありません。
というより、作家というのは、本来、批判的なものかも
そんな、昔ながらの作家像を体現されているような気もします。
読むときは長編なので腰をすえるという感じですが
ずしーんと腹にきます。
「一人っ子政策」という響きが可愛らしく
また、人口増加の抑止のためという、
言葉面では、いいもののような感じがしますが
血肉、感情を伴う人間たちがそれを行う
悲喜こもごもが書かれています。
主人公のおたまじゃくし(精子を表している?)の
伯母さんは、腕のいい産婆(助産師)
そして、一人っ子政策の推進委員として、
堕胎を率先して行う立場となります。
これは正しいこと!正義なのだ!という行政と
子供がいなかったら、働き手、後継ぎがいないじゃないかと
反発する農家との壮絶なバトルの歴史です。
正しい、正しいと言い張っていた伯母さんは
自分の子をもたず、そして蛙の鳴き声が
赤ちゃんの泣き声に聞こえます。
タイトルはそこから来ています。
人形のシーンにうるっときました。
無駄な伏線もなく、全て国の政策に翻弄される人たちを描いています。
どうして、そこに芝居の脚本が入ってきたのかちょっと戸惑いましたが、そこは作家の実験だったのかも。
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莫言「蛙鳴」読んだ。ぐったりつかれた… http://tinyurl.com/3n4hn4j 一人っ子政策に翻弄される一族。読み出しはガルシアマルケスの「百年の孤独」を思わせるほど奇怪で、第2部以降は混乱の極み。人々の際限まで激しい気性と粗野な言動習慣風俗が描写される。(つづく
会話の大半に「!」がついてるし笑。違法妊婦の家を倒壊させたり強制中絶させたり、対応が強硬すぎて妊婦を殺すなんてザラ、逃げるほうも身重で川を泳ぐわ(挙句死ぬ)無戸籍児にするわ障害者を買って代理母にするわ。日本の感覚での倫理や人道や人権は、少なくともこの本の中には無い。(つづく
政策推進担当である女性は狂気の執念で遂行し続ける。その鉄女の唯一の弱点が蛙、主人公のペンネームは蛙の変態前の「オタマジャクシ」、蛙は多産の象徴、赤ちゃんと蛙が同音語、人類を創生したといわれる伝説の女性の名前も蛙と同音、などのエピソードが本の題名へ考えを至らせる。(も少しつづく
最後)携帯メール、メラミン粉ミルク、フリーラジカルなどの単語に触れるたびこれはまるっきり現代話なのだと意識し直すけど、それがなければ100年前の話かと錯覚するくらいに野生が強い。ああつかれた…。中国、さすが大国、悠久の歴史、ガキ大将米国をも黙らせる国。恐るべし。。。
※「蛙鳴」を読み終え、中国を相手にがっぷり四つに組む不毛さを考えているところにこのポスト。『百年の孤独』が中国でバカ売れ: http://courrier.jp/blog/?p=8122 百年の孤独は焼酎じゃないほうで、ガルシアマルケスはバッグじゃないほう、もちろん。
※※莫言は「紅いコーリャン」の原作者なんだ。知らずに読んだ。http://ja.wikipedia.org/wiki/莫言 あ、でやっぱりガルシアマルケスの影響受けてるのか、どうりで。
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中国の「一人っ子政策」を、産婦人科医である主人公の伯母の半生を軸に書いた、重みのある作品。登場人物の性格や生き様が生々しく描かれていて興味深く、また文章に思った以上の疾走感があるので、分厚い本だが読むのは難儀ではない。まだまだ「過去の話」や「史実」にはならないテーマで、詳しく知らないままに感想を述べるのも躊躇するが、一読の価値はあると思う。
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大江健三郎氏がモデルと思われる日本の小説家にあてて、中国の田舎町に暮らす劇作家「オタマジャクシ」は、高名な産婦人科医であった伯母の生涯を書き綴る。
日本軍占領下から、産めよ殖やせよの掛け声のもと、次々と子どもが生まれた時代へ、一転して「一人っ子政策」のもと、不妊手術と堕胎に邁進し、文革の下の裏切り、そして金さえあれば、自然の理をゆがめてまで子をもつことが可能になった現代へ――。
とても同じひとつの国、ひとりの人間の生涯に起きうることとも思えぬほどのすさまじい社会変動だが、それは多かれ少なかれ、日本もたどってきた軌跡でもあった。しかし、子宮にまでおよぶ国家の統制権力に身を捧げたことによって、優れた産婦人科医であったこの女性は、「子授け娘娘様」の権現、血に汚れた手をした悪魔という、2つのイメージに引き裂かれてしまうのである。
国家の人口統制を遂行した伯母たち、それに巻き込まれた多くの男女が心身ともに傷つくのに対し、語り手の「オタマジャクシ」は、そのペンネームが示す通り、責任を自らはとることなく、流れに身をゆだねて生き残ってきた知識人の罪悪感を終章で劇のかたちで吐露するのだが、それでもどこか余裕を感じさせる語り口は、自ら血を流してきた女たちの恨みや罪悪感とは遠い。今後、よりさまざまな書き手により挑まれるべき主題だろう。
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中国の「一人っ子政策」をめぐる悲喜劇を描いた小説。二人目を妊娠したときに中絶させるという役割を担った「伯母さん」を中心とする。
莫言作品としては、シリアスな部分が多く、それだけ作者の思い入れが深い作品であることが感じ取られる。終盤になって、現代が舞台になるのもこの著者としては珍しい。
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中国の一人っ子対策が出来た時、民衆はどうしていたのか。
どうにかして産もうとする人達と、堕胎させようとする伯母の戦いを
子供の頃から大人になるまで、の甥の目線でかかれた日常。
読んでいて、あぁ中国だな、という感じでした。
何が何でも命令は遂行する、という行動が。
一人っ子対策は、人が多くなればなるほど
しなければいけなかった事、なのでしょう。
しかし、それを推奨して、今のあの状態。
1人が…最高6人を支えなければいけないという。
男が家族を養うのが当然なので、男の子を産まなければ家が途絶える。
では女の子は、継ぐことができないのでしょうか?
男尊女卑がすごいのか、それとも農家だからなのか。
もうちょっとその辺りの常識を知ってから読むと
何の疑問もわかずに読み進められるかもしれません。
後半は劇の台本、になっています。
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体制派という批判もあるようだけど、この作品は中国の一人っ子政策に対する鋭い批判あり、親日な発言ありで、体制派とは感じなかった。面白かった。ノーベル賞。
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ノーベル文学賞を受賞した莫言の小説。一人っ子政策の中で行わなわれた様々なことを、中国の中から描いた。無惨でもあり、人間の内面も描いている。
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一人っ子政策を文学の力で理解しよう。
一人っ子政策は倫理的に問題があるけれど、それを実施しなければ社会は維持できなくなる。
そういう究極の選択をしてきたのが中国人である。
我々(中国人目線で言えば)外国人は当事者意識もなく、単に中国人を非難してきただけだろう。
「まったく、中国人は計画性もなく子供を産んで。これじゃあ奴らのせいで人類は存続できなくなるで」
「まったく、中国人は一人っ子政策なんて、人間の命をどう考えているんだか。」
外からものを見ている輩は何とでも言える。しかし、実際問題に直面している人たちのことをどれだけ考えながら意見できているのだろうか。
この本を読んで、社会問題をどう読んでいくべきか、よく考えさせられた。
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この作品に登場する中国人って本当に卑しい。たぶん、民族的に中国人ってのは賤しいんだろう。
ヨーロッパ人はその点非常にスマートだ。と思う。
まぁ、みんながみんなってことではないけれど。
でも、中国人って賤しいんだけど、その分人間味が強いと思う。
嫌いになりきれない。
ヨーロッパ人のように高貴だけど、
中国人のように多少賤しくも、愛嬌ある人間に
私はなりたいと思いました。
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中国のノーベル文学賞作家、莫言の最新(2011年)長編。
現代中国が抱える大きな命題の一つ、一人っ子政策(計画生育政策)の物語。
作者の故郷である山東省高密県を舞台に、一人っ子政策が実施されてゆく過程を描く。
主人公の家族・親族、近所の人々との婚姻関係の中で、人々がこの政策の必要性と、子供を産むべきという自然の摂理(あるいは儒教道徳)との間で葛藤。
一人っ子政策の実施=中絶という悲しい行為を、国の政策として冷徹に実施する元・産婦人科医の伯母。
それを逃れて産もうとする人々との騙し合いがコミカルに描かれてもいますが、一方では子供のいない夫婦のための代理出産という暗部も。
主人公の一人称で、日本人の作家(大江健三郎をモデルにしていると思われる)への手紙という形式で物語を展開。
そのため台詞は「」で囲まれていないという珍しい形式。
そしてやはり、最後はイマイチ不明w
主人公の息子を産んだのは、どっちの女性?(^O^;
ニン、トン♪
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「堕せば命と希望が消える 産めば世界が必ず飢える」
この本の帯の言葉の真意が気になるのです。
読みかけたけど数頁で挫折。
今じゃないみたい。
また読もう。
ノーベル文学賞を受賞した莫言さんの作品。
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2013/4/30(火)の中国語教室でこの本は読みやすいと紹介があり、いつか読んでみようと思ってます。
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中国の小説をたくさん読んでいるわけではないが、今まで読んだものはどれも、登場人物それぞれの生きるパワーにあふれていて、そこに圧倒される。妬んだり、悪いことをしたり、それを悔やんだり、苦しんだり、いろいろするが、それらを踏みしだいていく生の力。この作品は、それに加えて、一人っ子政策と現代中国社会の変貌ぶりがよくわかること、そして物語の構成のすばらしいことで、読んでよかったと思える作品であった。