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商品説明
一流のマジシャンを目指したはずが、場末のマジックバーから抜け出すことができない35歳の晴夫。ある日テレビ番組のオーディションに挑み、審査員の反応に希望を抱くが、その帰り道、警察から思いもかけない電話を受けて…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
劇団ひとり
- 略歴
- 〈劇団ひとり〉1977年千葉県生まれ。92年デビュー。2000年にピン芸人となる。映画やTVで俳優としても活躍。著書に「陰日向に咲く」「そのノブは心の扉」がある。
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紙の本
この本は手品です。
2010/11/28 09:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
晴天の霹靂(へきれき) 劇団ひとり 幻冬舎
前作「陰日向に咲く(かげひなた)」は傑作でした。前作では登場人物がたくさん登場しましたが、今回は轟春夫(とどろき)35歳売れないマジシャン(手品師)のひとり語りが記述の大部分となります。
読書感想について、ページをめくりながらの経過に従って書いてみます。
晴天の霹靂(へきれき)、ずいぶん難しい漢字のタイトルにしたものです。読書前は、売れない芸人が突然売れ出したというような晴天の霹靂があったと受け取りましたが、小説の中身はまったく違います。
出だしの書き方は面白い。前半、テレビの話が多いのですが、テレビに出ることができない売れないマジシャンの轟(とどろき)春夫くんですから、小説の内容は地味です。場末のマジックバーで働く彼と彼の周囲の人間のやりとり記述は、一定の水準を超えています。轟くんはなんだかみじめな男です。最近はこういうタイプの男性像が主人公となる小説が増えました。
轟春夫くんの父親及び父子関係に関する構想のヒントは「ホームレス中学生」だと推測します。73ページ付近の記述には、おとうさんがあまりにもやさしくて、息が詰まります。82ページで、「晴天の霹靂」の意味が判明します。
社会の底辺で暮らす生活が続きます。ドラマの脚本のようでもあります。中盤は期待はずれになってきました。このまま尻すぼみになってしまうのだろうか。203ページにある手品の種明かしは、本来、ことが終わってから書くものではないだろうか。この内容を下地にして書き直したほうがいいとまで思いました。不完全です。
そして、最後にふーむとうなりました。よくできています。まんまとだまされました。読み手は完敗です。この小説自体が手品なのです。