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商品説明
農作物の買い付け人を装って辺境の町に潜入した洪恭順。目的の人工眼球の胚を人語を話す犬に奪われ、窮地に陥った彼が取った最後の方法とは。異形の生物や機械が近未来のアジアを疾走するハイパーSFロードノベル。【「BOOK」データベースの商品解説】
農作物の買い付け人を装って辺境の町に潜入した洪恭順。目的の人工眼球の胚を人語を話す犬に奪われ、窮地に陥った彼が取った最後の方法とは。近未来のアジアを疾走するハイパーSFロードノベル。『文學界』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
このお話は『一つ目女』の流れをくむのでしょうが、『電脳コイル』的なイメージもあって、私としては好きですね、〈アブライタチ〉っていうのもいいなあ
2011/06/16 20:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
クボ桂太の装画がいいです。正直、私が近年見た装画のなかでもトップクラス、ではなくトップです。この狂気というか異常というか、叫び声をあげたくなるような、口から涎をたらし走り回りたくなるような、そういう雰囲気が溢れている絵、これを見ているだけで元が取れます。絵本にしてほしい、と思います。いえ、この小説自体を絵本にしてほしい。勿論、装幀は今回と同じ野中深雪で。いかがでしょう、こんな企画は、文藝春秋さん・・・
で、お話はスパイ小説です。そして不条理小説、いえ、超常小説、SF? ま、分類不能のシーナワールドというのが結局、唯一の正解ではないでしょうか。でも、このタイトルはいいです、〈チベットのラッパ犬〉なんて、フツー、つけないでしょ、作家は。それにしても、椎名さんには中国やアジアを舞台にしたSFが似合います。『ひとつ目女』がいい例です。そういえば、読んでいてどことなく『ラッパ犬』と『一つ目』は雰囲気が似ています。それと発表誌、どちらも「文學界」です。「オール讀物」じゃなくて、文學界っていうのが、なんていうか「凄い」・・・
帯には
*
異形のアジアへ
変幻自在の静物、見たことのない機械、
シーナワールドの決定版
*
とあり、HPを覗くと
*
人語を話す犬に変身させられたオレの冒険
ひょんなことから犬に変身させられたオレが、奇妙な動物や風景が息づくアジアを行く。目眩くシーナワールドが展開する近未来SF
人工眼球を作るために必要な胚を求めて地方の寒村に潜入した「おれ」は、ひょんなことから犬に変身させられ、犬の目でターゲット「ラッパ犬」を追うことになる。世界戦争後の荒廃したアジアが舞台のデッドテック・フューチャーSFであり、ロードノベルでもある本作。世界中を旅する著者だからこそ可能だった、リアリティに裏打ちされた驚異の想像力が、誰も見たことがないけれどどこか懐かしい近未来世界を作り上げました。(NK)
*
となっています。あらためて初出を書けば、「文學界」2007年1月号~2008年7月号、2008年9月号~11月号で、『ひとつ目女』の連載が終わった翌年からの発表ですから、一連の作品ととってもいいでしょう。そして、このお話にも奇妙奇天烈な名前が登場します。シャンバラ笹熊、泥濘トクサ、吠え六道、スルベ肉、知り球、タルバガン、チキチキエンジン、光受輝燐草、コバイケイソウ、メチルメルカブタン、ボシンタン、砂礫野犬、カニョッコ、醜女蓬などです。
『ひとつ目女』のパーキー・クーキー、イムノトキシン、モグラびと、つがね、エベナ、不子葛、ゾビヤック、東多族、葬海、蛇蠍、震天雷、炎澪濁飲、赤嘴、飛頭、裂蛇、赤蜘蛛、香脂鼬、水百脚、蓬莱虫、醜女蔓、覗きコブラ、婆婆蕾、水独楽、扶豆湿餅、胚種攪拌加速剤、イバラトクサ、ネゴ銃、ピーコブ、ピーピングコブラ、コバイケイソウ、エルのシッポ、タイツァイ、フーゼル油、カバショウとカブルものはありませんが〈醜女蔓〉が〈醜女蓬〉に掠っています。
『ひとつ目女』と『砲艦銀鼠号』には「つがね」「ネゴ銃」という共通語がありましたが、こちらには掠ったものしかない。それでも、話全体としては『ラッパ犬』と『一つ目』こそ双子の姉妹と言えるのではないでしょうか。特に、冒険小説的な側面から見れば、似ているわけで、軍事的な色彩の濃い『砲艦銀鼠』と比べると、これぞハードボイルドといいたくなってしまいます。そういえば、〈目〉という共通語が始めから示されていました・・・
人工眼球を作るために潜入した村で、犬の目を持たされてしまった男の小説の目次は、以下の通り。
象ノ口川
知り球
崖の下
囲み水田
塔のある家
クレーター
河原
窪地
巨無狗
水竜
ホロの女
牧羊犬
アブライタチ
アルキメデスのスクリュウ
濁流
泥濘帯
振動する記憶
水豚
脱出水路
サイバネテクス
タス
〈象ノ口川〉もいいですが〈アブライタチ〉っていうのもいいなあ。不可思議な、でも中国だろ、っていう雰囲気溢れる世界の、不思議な冒険譚、どうしてこんな話思いつくのかな・・・