紙の本
上巻のような策略は見えずただただ殺戮のみ
2011/03/23 13:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夜の0時頃で下巻の半分に差し掛かろうとしていた。そこから本を閉じることが出来ずに、結局、夜中の3時に読了。いやぁ、丑三つ時といわれる時間帯にこの本を読み終えるとはね。その夜に悪夢を見ずにすんでよかった。免疫がついてるのかな(苦笑)。
学校に潜り込んだ殺人鬼は、ただ一つのミスから自らの計画を狂わせていく。なぜ、あんなにも用意周到な人間がこんな単純なミスを犯したのだろうか。その後の女生徒を殺す際には、いつも冷静に愉しみつつ殺人を行ってきたヤツらしくなく、身体が思うように動かなくなっていくという現象が。そのときに重ねて犯したミスと偶然から、一気に一クラス全員皆殺しという発想に流れていくのが怖い。「木の葉は森に隠せ」。この言葉を思い浮かべて、「死体を隠したいのなら死体の山を築け」という発想に到る。
ストーリーの合間に、殺人鬼の昔話が語られていく。どのように育ってきたのか、どのように殺人を重ねてきたのか。失敗しないためにどんなことを学んできたのか。
その中で唯一、彼が殺せなかった人間が出てくる。「殺して欲しい」と懇願されたのにもかかわらず、だ。その後、その人は自ら命を絶つ。その経験が、上記の女生徒殺害時の邪魔をしたのか・・・。
しかしまぁ、高校生といえばもう体格も大人に近い。けれど、上手く恐怖心を煽られたせいなのか、次から次へと策略にはまっていき、殺される。利用される殺人鬼の同僚である教師もまた。後半部分はただひたすら、生徒を殺していく場面が続く。教師・生徒合わせて約40名。全てが一人の殺人鬼によって、短時間で殺戮されていくシーンはあまり気持ちの良いものではない。そこには上巻のような心理戦が展開されるというよりも、タガが外れた人間の欲望が爆発したという感じかな。
さて、この殺人鬼はどうなっていくのだろうか。著者ご本人からインタビューで続編もあり得るかも・・・というような言葉が出たように記憶しているけれど。
転んでもただでは起きない。いつも次の策を考えながら動いている殺人鬼だ。
文藝春秋の「悪の教典 特設サイト」で、口笛バージョンの「モリタート」を聴くことができる。夜、一人で聴いたのだけれど、かなり不気味。聴きながら、本書の殺戮シーンを想い出すと、更に不気味な雰囲気を味わえる。
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上巻のピカレスクもの風の展開の中くすぶり続けた火種が爆発。つい始まる、ハスミンのハスミンによるハスミンのための大殺戮。ノンストップのバイオレンスに興奮しっぱなしでした。
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学校、生徒、教師。
普段の貴志作品とは打って変わって軽快で明るい始まりだが、やはりそうは問屋がおろさない。
京都大学を一ヶ月で中退、アメリカの一流大学から経済界に進み、
何故かその地位を全て蹴って一高校教師となった蓮実。
生徒からの信頼も厚く、他の教師からも慕われる、まさに教師の中の教師。
彼の裏の素性が明らかになるにつれて、前半の明るさがむしろ狂気だったと気づく。
普通、第三者から見たほうが恐ろしいと感じるサイコパスをあえて一人称、
主人公に据え、淡々とした語り口で語るが故に恐ろしさは倍増する。
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あれだけ完璧にやってきたのに、突然暴走。
結局そうなるか・・・と思っていたけれど、やっぱり最後が一番怖い。
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木の葉は森に隠せ…
思ったとおりの修羅場が用意された下巻。
ハスミン視点中心の上巻に較べ、狩られる側の視点が加わることで、ハスミンのキャラが幾分薄れていくのは否めない。
それがひらすらに残念…
しかし「ララ♬ステップ踏んで〜♬」殺戮を繰り返すハスミンの狂気に瞠目!
これ、椎名桔平か堺 雅人あたりを主演にして、ワンクールもの深夜ドラマにするといいんじゃないかな。
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凄い殺戮
蓮実聖司に恐怖を覚えた!
でも憎めません。
ツイッターに本人がいるせいかも
ハスミン向井理賛成です。
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硝子でミステリーとか新世界でのSF的なもので、色々な方向性を試行されていたが、筆者十八番の、ただ単に怖い人を描くホラーの世界に久しぶりに戻っての大作。一気読み必須です。学校でのメインのストーリーもさることながら、回想として語られる過去の遍歴だけでもシリーズ化できそうなくらい盛りだくさん。表紙にも出てくる悪魔としての象徴的なカラスがラストにも出てくるかと思ったが、あくまでも人間を描くホラーなので超自然的なものは一切なし。ただし、何故、クライマックス間際で猟銃を擬人化されたのか、また、もてあそんだ少女を殺すのをためらうのか等、語りきれていない謎があるのも、また面白い。最後までサイコパスを生き残らせたということは、ひょっとするとレクター教授の様にシリーズ化を目論んでいるのか、続きを読んでみたい気持ちと、これで終わったほうが、この作品がよかっただけ、よいのではという気持ちが半々。
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上巻読了後、タイミング良く予約の順番がきた!よかった。
下巻も数時間で一気に読了。
あまりにも凄まじい蓮実の殺人鬼ぶりに驚嘆せざるを得ない。
その殺戮は凄惨の一言に尽きる。
下巻は殺戮を語るのがほとんどだったので、「読ませる」面白さという意味では上巻の方が上かなあ。
小説としては、ページを捲る手を止められず上下巻とも一気に読めた一流のエンタテイメントというべきなのだろうが、どうにもこうにも後味が悪すぎる。
ということで、全体の評価としては星4つだが、下巻は3つかな。
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下巻に入ってからはもう、
"悪"の大★洪★水 って感じで、
暗い黒いえろいぐろい…
"感情のない天才"ハスミンに共感できる要素は一切ない。
だけど、
追いつめられる側の恐怖とか、
かすかな希望が悉く潰えていく絶望感を確かに感じる一方で、
追いつめる側の視点に立って楽しんでる自分がいて、
それに気づく瞬間が(ハスミンの異常性そのものよりも)怖かったかな。
2つの感覚がないまぜになって手の汗がすっごいことに…
読み始めたのは8月1日2時くらいで、
読み終えたのは8月1日7時くらい。
所要時間は上下巻合わせて10時間くらいでした。
1つの作品を(ほぼぶっ通しで)こんな長時間読んだのって初めてかも。
読んだ後のぐったり感がすごすぎる。
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一気に犯行が大規模化していく下巻。
怖さを通り越して、淡々と描かれていることで、感覚が麻痺してしまったように感じる。
サイコキラーとしての残忍さは、宮部みゆきさんの「模倣犯」を思い出した。個人的には、「模倣犯」の方が怖かったですが。
好き嫌いのあるジャンルの本だと思いますが、映画化されたりしそうだし、面白いと思います。
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サイコパス教師の恐怖を描いたサイコホラー。最初からじわじわと怖さは感じましたが。終盤の展開は圧巻ですね。怖いったら! 何よりも事件を引き起こすにいたる思考回路が、まさしくサイコパスたる所以。まさかそんな理由で……?
ラストの展開も見事。あのことについてはしっかりと伏線がありましたね。それは知らなかったので、読んだときに「へえ、そんなのがあるんだ」と思ったにも関わらず。まるで思い至りませんでした。巧いなあ。
読後にもぞくぞく感が残ります。こんな怪物が実際に身の回りにいないことをひたすら祈るばかりです……。
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一応8月17日読了。
だんだん展開見えてきたので、間端折って最後だけ読んだ(貴志センセ、ごめんなさい)
上巻に比べると、唐突に終わりましたって感じ?
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上巻とは一転。
学園は血の海へ。
レビュー詳細↓
http://makapy.seesaa.net/article/158150643.html
かなり行き当たりばったりな犯行に、
読んでるこっちがひやひやさせられる。
ってことは、殺人鬼であるハスミンを応援してるってことか。
と改めて気づくと共に、でもやはり不謹慎ながらも
ハスミンを応援してしまう。
ラスト、頭の良いハスミンならあんな典型的なトリックに
引っかかるとは思えないのがちょっぴり残念。
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悪の経典は映像化したら怖そう…!残酷な描写抜きでも温度が下がるというか、淡々とした様が作品の怖い部分だから(と感じた)。象徴としてのイメージ部分や、回想の部分、あれ…この人…変かもと徐々に変化する空気とか、口笛などなど、もともと映像的な感じもする。
ラストへかけての思考回路の崩壊(?) 壊れ方が怖かった(彼的には崩壊してませんが) ただ読む前に想像していたよりは意外とあっさりしていた感じではありました。彼の過去や頭脳を思うと、崩壊後が少し甘いかな?っていう気も。 でも最後まで一気に読むくらい面白かった!!
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著者もインタビューで書かれていますが、とにかく登場人物が多い。
そんな点で『黒い家』との違いか。
ネタバレになるのであまり書けませんがその分、恐怖が分散されてしまったような気もします。
対象がある程度絞られてググッと迫り来る恐怖というのがちょっと欠けていたかなというのが正直な感想。
本作品も地味だけども「さすが」と思わせる伏線は見事です。
しかもそこの意味付けもありラストには脱帽です。
2010/8/17
startしました。