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  • みんなの評価 5つ星のうち 3.7 726件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2010.7
  • 出版社: 新潮社
  • サイズ:20cm/232p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-325921-3

紙の本

ふがいない僕は空を見た

著者 窪 美澄 (著)

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮ら...

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ふがいない僕は空を見た

税込 1,540 14pt

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商品説明

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。【「BOOK」データベースの商品解説】

【山本周五郎賞(第24回)】ずっと好きだったクラスメートに告白されても、高校1年の斉藤卓巳の頭の中はコミケで出会った主婦・あんずのことでいっぱい。16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく−。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧

ミクマリ 5−26
世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸 27−70
2035年のオーガズム 71−125

著者紹介

窪 美澄

略歴
〈窪美澄〉1965年東京都生まれ。フリーの編集ライター。妊娠・出産を主なテーマとし、雑誌や書籍で活動。「ミクマリ」で第8回「女による女のためのR−18文学賞」大賞を受賞。

掲載中の特集

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書店員レビュー

ジュンク堂書店新潟店

5つの連作短篇から構...

ジュンク堂書店新潟店さん

5つの連作短篇から構成される、著者渾身のデビュー作である。
この話の登場人物は、全員何か変わった特徴をだしていて、それぞれが絶妙に絡み合っている。
テーマは「性」と「生」。物語の冒頭は多少性描写がきつい印象もあったが、次第に物語に引き込まれていき。ラストはなぜか心地良かった。
卓巳とあんずの今後もかなり気になるところである。
文芸書担当 小松

ジュンク堂書店吉祥寺店

なんといってもこのタ...

ジュンク堂書店吉祥寺店さん

なんといってもこのタイトルが抜群に良い!!
息をつくヒマを与えない畳み掛けるような描写で、どんどん話しに引きずり込まれてしまう。
登場人物たちを繋ぐ糸が、か細くもしっかりと結ばれている。
読み終えると思わず「ふがいない僕は空をみた」とつぶやいてしまう。

文芸担当 川合

みんなのレビュー726件

みんなの評価3.7

評価内訳

紙の本

父の不在

2010/09/09 08:45

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書冒頭の、第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞した作品『ミクマリ』の「ミクマリ」とは、主人公の少年の家の近くにある「水分(みくまり)神社」からとられている。水分神社は子守りの神様といわれているらしいが、これはみくまり、みこもり、こもりと転訛したものだという。
 物語の終わりちかく、父親が出て行ったあと、少年と助産院を始めたばかりの母親がその水分神社に詣でた思い出が描かれる。
 「何をおいのりしているの?」とたずねる少年に母親はこう答える。「子どものことだよ」「ぜんぶの子ども。これから生まれてくる子も、生まれてこられなかった子も。生きている子も死んだ子もぜんぶ」。
 『ミクマリ』を起点にして本作品集で描かれる五つの短編もまた、たくさんの「子ども」が描かれている。かつての子、生まれてこない子、いじめられた子、親から見捨てられた子、母親の庇護から抜け出せない子、そして生まれてこようとする子。ぜんぶの子ども。

 『ミクマリ』は高校生の少年卓巳と人妻あんずの異常な性を描いた作品だが、一度は普通の高校生にもどることを決意した卓巳があんずのもとに自ら進んでもどるきっかけがある。(そのことがたくさんの事件をもたらし、あとの作品のなかで描かれている)
 それが、隣町のショッピングセンターのベビー用品売り場で見かけた、異常性愛の相手あんずである。卓巳はベビー用の靴下を手にしたあんずに、単に遊び相手ではない、恋愛対象としての感情を持つことになる。
 卓巳は自身が父親になった(これは彼の勘違いなのだが)ことで、初めて相手を深く愛することになる。

 子どもは母の胎内から生まれてくる。しかし、母はひとりで生むのではない。男と女の性があって、受胎し、生まれてくるものだ。女は母となり、男は父となる。
 主人公の少年が性愛の相手に子どもができ、自分が父親になったと勘違いしたことをのぞけば、この短編集では父親の存在はしずかに、そして作為的に排除されている。
 しかし、それは逆にいえば、父親の存在とはという疑問を問いかけることにもなる。

 父親が不在なのにもかかわらず、子どもがまた生まれてくる。
 まるで女たちがたった一人でこの世界を作ろうとしているかのように。そして、それがぜんぶの子どものためであるかのように。

 ◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。

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紙の本

世の中の隅っこで足を踏ん張って生きている人たちの目を通して、世の中の理不尽を考えて欲しい。そんなR-18文学。

2011/09/09 20:31

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mieko - この投稿者のレビュー一覧を見る

目次
・ミクマリ
・世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
・2035年のオーガズム
・セイタカアワダチソウの空
・花粉・受粉

「ミクマリ」で第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。

「ミクマリ」は主人公の高校生・斉藤卓巳の語りで進む。
「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」は斉藤卓巳の不倫相手であるあんずの語り。
「2035年のオーガズム」は斉藤卓巳に思いを寄せる同じ高校の松永七菜の語り。
「セイタカアワダチソウの空」は斉藤卓巳の高校の友達・福田の語り。
「花粉・受粉」は斉藤卓巳の母の語り。

こんな感じで短編連載の形になった一冊です。

 「女による女のためのR-18文学賞」っていうのがあるのは知っていましたが、その受賞作っていうのを読んだことがなかったので、受賞作っていったいどんな内容になっているんだろう?どんなところが良くて受賞するんだろう?と全然想像がつきませんでした。

 正直、「ミクマリ」を読んだときはかなり引いてしまいました。そして「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」も昔話題になったTVドラマの冬彦さんを思い出したりして、これって文学っていうのかな?と首を傾げながら読み進めました。けれど読み進むにつれて、「これは……。スゴイな」って。
 特に心を持っていかれたのが「セイタカアワダチソウの空」です。連鎖する貧困ってどうやったら断ち切れるのか。高校生の福田には荷が重すぎる生活を強いているのは、もちろん福田の母親であるけれど、それだけじゃなくきっと周りの大人全部だと思うんです。なのに読んでいる私はそんな彼らを他人のようにしか見れないという罪悪感に苛まれて自己嫌悪に陥りそうでした。それでも最後には一条の光が差してきたので、私が救われました。

 「ミクマリ」や「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」でドン引きした波が、一気に押し寄せるように、そして最後は海が凪いでいくように終わります。でもどの話も解決していなくて、というか、完全な解決ってきっとなくて、その先を想像すると辛くなるばかりです。それでも人は生まれて、死ぬまで生きていくんですね。

「性と生」の極限を描いた作品だと思います。

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紙の本

窪美澄「ふがいない僕は空を見た」、これは「命」の物語。

2010/12/13 11:00

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 これはもしかしたら今年のベストかもしれない、とブログに書いたら、
「本の雑誌」のベスト10で1位になり、心底驚いた。「女による女のた
めのR-18文学賞」を受賞した短篇「ミクマリ」他4編が収められた連作
短編集だが、登場人物はつながっているのでひとつの長編といってもい
い。中心になるのは斎藤という高1の男の子。コミケで会ったあんずと
いう主婦とコスプレセックスに明け暮れている。「R-18」という文学賞
は「性全般をテーマにした小説」というのが応募条件なので、ハードな
描写もけっこうある。そういうのはダメっていう人がいるかもしれない
が、それだけでこの傑作を読まないのはもったいなさすぎる。

 ここに出てくる高校生たち、そして、彼らを取り巻く大人たち、みん
なとてもとてもリアルだ。早くも自らの人生から脱落しそうな若者たち、
がけっぷちのところでなんとか生きている彼や彼女、作者の窪美澄は彼
らがいる場所のまっただ中からこの物語を発信しているように思える。
だからこの小説はパワフルなのだ。「ふがいない僕は空を見た」は青春
小説というより「命」の物語といった方が正解だろう。その命の揺らぎ
に僕らはどうしようもなく震えるのだ。魂を揺さぶられ、同時に少しだ
け元気をもらうのだ。斎藤の母が助産婦で出産場面が何度か登場する。
この設定が非常に効果的だ。

 5編の中では斉藤の友人福田とバイト先の先輩田岡の物語に心を惹か
れた。田岡の造形がとてもいい。それにしても、この作家、文章もうま
いし、構成も巧みで新人離れしている。窪美澄、恐るべし!彼女が次に
何を書くのか、とても楽しみである。

ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より

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紙の本

「性と生」を軸に、人間のおかしさ、おもしろさ、せつなさを描く短篇連作集。骨太で濃く、深く、満ち満ちている傑作。2010年ベスト本!

2010/08/05 05:47

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:月乃春水 - この投稿者のレビュー一覧を見る

喉の奥が締めつけられて痛い。胸が押しつぶされて涙が出てくる。読後、しばらくそんな苦しさが続きました。さらりと読めて、感動するタイプの小説とはちがいます。芯のある骨太な、濃く深く、満ち満ちたストーリー。何に満ちているかは、読み手によって受け取り方がちがうかもしれません。
わたしの今年読んだ本のベストです。まだ8月ですが断言します。
人間のおかしさ、おもしろさ、せつなさ。人が生きていくこと。「性と生」を軸に、高校一年の斉藤卓巳をとりまく人々の短篇連作小説です。

第8回 「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作の「ミクマリ」は、卓巳の一人称で書かれています。
一学期の終業式後に向かうのはコミケでナンパされた主婦のあんずのマンション。卓巳は用意されている衣装とウィッグを身に着け、あんずが書いた台本通りにセックスをする。生まれて初めてのセックスをしたときから、コンドームをつけていない。あんずは「妊娠できないから」と言っている。
卓巳の母親は自宅で助産院を開業している。子どもの頃からお産のときの産婦さんが苦しむ声を聞いて大きくなった。産婦さんが許可したときは、お産にかりだされ、仙骨(尾てい骨の上にある平たい骨)をやさしくさすったりする。
高校に入ってからずっと好きだった松永に告白されたものの、あんずのことがあり「少し待ってて」と伝える。
あんずに別れを告げたのに、ある日ベビー用品売り場で靴下を手にするあんずにばったり会って…

以降の作品は、別の視点から、その後が描かれています。

「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はあんずこと里美が語り手。生い立ちから結婚に至るまで、結婚生活に義母が介入してくる様子、そしてなぜコスプレをするようになったのか。ですます調の告白。

「2035年のオーガズム」は松永七奈の立場から。これからうまくいきそう、というときに卓巳は夏休みの市営プールのバイトに突然来なくなってしまう。同級生で同じバイトの福田良太といっしょに卓巳の家を訪ねる。
卓巳のコスプレ画像や動画はネットにさらされ、ばらまかれていた。
避難勧告が出された大雨の日、気持ちをぶつける。七奈は卓巳に、七奈の母親は、子どもの頃から勉強ができたが、大学に入ってからますますねじれ、奇妙な行動をするようになった息子、七奈の兄に。

「セイタカアワダチソウの空」は卓巳と七奈と同級生の福田良太について。背が高く、セイタカアワダチソウにも見える良太は「セイタカ」と呼ばれている。
父親は首をつり、母親は再婚する、と出て行き、たまにお金を置きに、別の日は取りに来る。痴呆症が進むばあちゃんとのふたり暮らしで良太は、朝は新聞配達、夜はコンビニのバイト、その間に学校に通い、毎日の生活を乗り切っている。
コンビニで仕事を教えてくれたバイトの田岡は元予備校の講師で、ふとしたきっかけで良太の勉強を見てくれるようになる。七奈の友だち、あくつは同じコンビニでバイト、良太と同じ団地に住んでいる。ふたりは田岡の作成したプリントをやり、どんどん勉強がわかるようになっていく。

「花粉・受粉」は卓巳の母親の仕事ぶりと苦悩が描かれています。助産院の出産小説としても読める作品。
卓巳の話は、街の大人たちにも伝わっている(前作でその理由がわかります)。元々、この場所に助産院を開くことをよく思っていない人が多い町内会の会合では、誰一人話しかけてこなくなった。メールで罵詈雑言も送られてくる。助産院でお産の介助だけでなく入院中の食事作りを担当して働くみっちゃんは「……しっかし、いちいち、くっだらねー ばかな恋愛したことない人なんて、この世にいるんすかねー」と憤り、あきれつつメールを削除する。
卓巳は二学期が始まっても学校に行かない日が多くなったが、みっちゃんと七奈との関わりで少しずつ学校に行くようになる。けれどいやがらせはやまない。


高校生の男子が主婦とアニメのコスプレをしてセックスをする。それがこの連作集のはじまりですが、5つの作品を通じて、登場人物のバックグラウンド、抱えているものが明らかにになり、季節はめぐり、物語は重層的に深まっていきます。
「セイタカアワダチソウの空」はなんともせつなく、いちばん苦しさを感じるのですが、最後の「花粉・受粉」ではのっちーと呼ばれている高校の担任の先生の出産、卓巳の母が通うようになった漢方薬局のリウ先生とのやりとりも描かれ、もう一度やってくる春の季節同様に、明るさ、希望を感じるラストになっています。

著者の窪美澄さんは、出産後、フリーの編集ライターになり、妊娠・出産を主なテーマに執筆活動しているそうです。
女の子は、生まれたときから卵巣の中に卵子のもとになる数百万個の原始細胞が詰まっているのを知り、ショックを受ける卓巳の姿や、里美と慶一郎夫婦の不妊の原因、更年期障害の七奈の母親の言動など、人間の性、そして生に関わる事柄が登場人物にからめて描かれています。
これらは一連の物語の何本かの軸としてしっかりと機能しています。

「ふがいない僕は空を見た」というタイトルも秀逸。
帯に書かれた「女による女のためのR-18文学賞」選考委員の唯川恵、山本文緒、角田光代 各氏が感嘆しているコメントもぜひご覧ください。

人は完全無欠であるはずがなく、自分でもどうしてこんなことしてるんだ、と思いつつ行動してしまうことがある。特に理由があるわけじゃない。
おかしなことをしてしまっても、その人のすべてがおかしいのではない。思いやりややさしさを持って、他人と関わるし、あるいは何もかもいやになってひきこもったりもする。そうこうしながら毎日をなんとか過ごしている…。
全体を通して、そんな思いがめぐりました。


本についてのよもやま話。 <ブログ> 本のことあれこれ

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紙の本

最後まで読んで、命の眩しさを知る。

2011/01/20 18:54

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ルルシマ - この投稿者のレビュー一覧を見る

第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞・・そんな賞があったことも知らない。
そしてふがいない私は途中なんども泣きそうになった。

この物語は、5編の連作短編形式で、語り手は毎回違う。
まず最初は、その「R-18文学賞」受賞の「ミクマリ」、
語り手は、高1の斉藤卓巳。
同じ学校に通う七菜のことが気になっている。しかしコスプレ主婦との不倫進行中。これは誰にも内緒。

その次の「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」ではその主婦、里美の不遇な青春時代と、
ある意味怖くなる結婚生活とその不倫の末路。

続く「2035年のオーガズム」では、卓巳に好意を寄せる七菜の家庭。
ささやかな家とその家族を必死で守ろうとする両親と、優秀であるがゆえに方向をまちがえてしまった兄、
そしてなかなか届かない七菜の卓巳への想い。

「セイタカアワダチソウの空」卓巳の唯一の友達・福田の貧しい家庭。
父が無く、母も出て行ってしまった家で痴呆の祖母と暮す彼の生活で、
唯一の光があの男だった。

最後「花粉・受粉」助産院を営み女でひとつで息子を育てる卓巳の母。
息子が生きる気力を失くしてしまっていることに心を痛めながらも、
新しい命を世に送り出す仕事に追われる。

個人的には「セイタカアワダチソウの空」がよかった。
卓巳の章ではあまりぱっとしない福田がここでは際立つ。
切羽詰まった貧困と、徘徊を繰り返す祖母との板ばさみになる彼を、バイト先の先輩・田岡が手を差し伸べる。
思わず応援したくなる彼の毎日に胸がつまる。
どうして自分にこんなによくしてくれるのかと尋ねる福田に田岡。
「おれは、本当はとんでもないやつだから、それ以外のところでは、とんでもなくいいやつにならないとだめなんだ」
たしかに彼も心に闇を持つ人間だったのだけど、それがどうした?そういいたくなる。


エロい高校男子の不始末は、それだけに終わらず大きな波紋を起こす。
その年齢ではとても生きていく気力を無くしてしまうような事がおこるわけだが、
その彼を取り巻く人間誰もが少なからず人には言えない罪深さを持っている。
でもそれは悪人の罪深さではない。
「いじわるな神様」から与えられた試練とでもいうべきかもしれない。
妊娠や出産という聖域に踏み込んでいって、あからさま過ぎるほどの赤裸々なストーリーが、女性の手によって書かれたのなら充分に納得のいく出来だと思う。

そして誰もが苦しみながら生きている場所で、生まれてくる命の眩しさとか尊さが、
このお話の未来をほんの少し明るくしているのかもしれない。

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紙の本

哀しくて痛い、孤独とねじれた愛の物語。

2017/05/31 20:59

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

五編の連作だ。
「ミクマリ」「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」「2035年のオーガズム」
「セイタカアワダチソウの空」「花粉・受粉」

一本目のミクマリでR-18文学賞を受賞し、ぽこぽこっと後続
短編をつなぎ、単行本になったら本屋大賞の2位、
さらに山本周五郎賞まで取ってしまった。
デビュー本だというのに、大変な評価だ。

その時の本屋大賞は「謎解きはディナーの後で」という
超強力球だったので負けるのも致し方ないが、それがなければ
この本だったかもしれない。受賞すればよいというものでも
ないけれど、この本には確かに人を惹きつける力がある。

これは趣味の問題だが、私は性描写がきつい作品は苦手だ。
それどころか、キスをするかしないかのウブなくらいで充分なほど。
その代わり、青くさく心で悩む描写が好きだったりする。
なので、この作家さんが世に出ることになった「ミクマリ」は、
何がなんだか分からなかった。
やっぱりR-18文学賞というだけはある。

でも、何か登場人物に痛々しい感情を覚え、
心が反応するものがあった。

そして、二本目の「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」で確信した。
心が壊れている。その壊れ具合が、どうしようもない哀愁をさそう。
ねじれた愛情の、裏返しのようにあふれる孤独な哀しみ。

例えがいまいちで申し訳ないが、西村賢太の苦役列車に通じる、
突き抜け感を感じた。苦役列車には、苦みとあまりにも狭量な
人間の小ささに笑いすらこみあげた。
ふがいない僕は空を見たには、あまりにも痛い人間の孤独と
偏愛に、自分の常識の枠を超えていかれたという感覚を
味わった。

読んでいて、茫然自失としてくる。
救いようのない人たちに、心を揺さぶられる話と書けば、
イメージが湧くだろうか。
頭で理解する前に、こころの反射神経で涙が伝ってしまう。

三編目、四編目とページをめくる指が止まらなかった。
性描写が控えめになるのに呼応し、どんどん凄味を増していく。
最後の五編目は、着地を意識したのか、少し常識の世界に
戻ってきた。

登場人物たちの心の動きに、深く感じるものがあった。
でも感情移入とは、ほど遠いものである。とても不思議な感覚だ。
直感だが、いつか直木賞候補になる作家さんのように思った。
本当だったら、短編のどれかで芥川賞の候補になってもよかったと
思うのだが、残念ながら文芸五誌の掲載ではなかったので、
暗黙ルールにより対象外。

そうこうしているうちに山本周五郎賞みたいなエンターテインメント
の大きい賞を受賞したので、残念ながら芥川賞はもう無理だろう。
それにしても、R-18文学賞で見出した編集さんや選考委員の
人たちはすごい。よくぞ見つけ出してくれたと思う。

個人的な希望であるが、性描写に突き進まないで欲しい。
みんなが評価しているのは、きっとそこじゃないから。

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紙の本

一気読み

2019/03/15 23:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Sota - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作家さんの短編を読んで興味を持ったので、今回、代表作を読んでみました。
一番、可愛そうだと思った登場人物は福田、一番、嫌悪感を抱いた登場人物があんずでした。
そして、田岡の「そんな趣味、おれが望んだわけじゃないのに、、、」が、彼の人生を表しているようで、胸が熱くなりました。ペドフィリアに関しては、「ラブセメタリー」を読んで以降、一概に悪者扱い出来なくなったからでしょうか。
みっちゃんのセリフ「ばかな恋愛したことない人なんて、この世にいるんすかねー」も、印象的でした。

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紙の本

書籍「ふがいない僕は空を見た」何もかもうまくいくことなんかあり得ない

2011/12/24 14:49

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る

2011年本屋大賞第2位

「本屋大賞って何だと最初思っていたが
売れ行きのランキングはあっても
こんなふうに本に関わる人達の
オススメランキングを何冊か読んで
最近ではすごく参考にしている、
そして初めて知った作家の本を読んだ」


高校一年生の斉藤卓巳は
コミケで出会った主婦あんずと
彼女が用意した台本に従って
アニメキャラになった彼女とセックスを繰り返す。

彼女のことが本当に好きなのか?
好きだったクラスメートに告白されても
「ちょっと待って」
自分の心の内を探るが
それが一番分からないようだ。

不思議な読後感の短編が
これに関連する登場人物によって繋がっていく。


次はあんずのお話、
そしてまた彼らは繋がり
すれ違って行く。

斉藤卓巳という高校生の周囲の人たち
誰もが懸命に生きている
明るい未来を思い描いたり
自分の理想を求めたり。

けれど人は誰かと関わることで
そんな理想や夢の形が変わってしまうことも
経験して知ってしまう、
「どうしようもない」
そう言ってしまえば簡単だけど
でも諦めきれない。

そんなもどかしさを感じた、
強烈に心を揺さぶられるようなものは無いが
自分達の日常もこんなもの

正しい方向と思って踏み出しても
それが本当に正しいかなんて
誰も分からないし
だいいち踏み出す最初の一歩さえ
なかなか踏み出せないのが真実だたりする。


今後どんな作品を書いてくれるか
楽しみな作家がひとり増えた
これも「本屋大賞」で紹介されたからだ。




★100点満点で75点★

soramove

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電子書籍

ふがいない僕は空を見た

2017/04/19 11:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:tourist - この投稿者のレビュー一覧を見る

出品の都合からかエロティックな描写も前半多いものの、読ませる小説。あまり美しくはないけれど、リアルな情景が浮かぶ文章。理想的とはとても言えない厳しい現実が、登場人物それぞれに重くのしかかる。それでもほのかな希望の灯りが手もとを照らす。少しだけでいいから、より良い人生が皆に訪れますように、と心で祈った頃に読了した。

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紙の本

「性」から見える「生」――好き。だけど…よくわかんないっ!!

2010/11/17 21:52

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「女による女のためのR‐18文学賞」受賞作。この賞のタイトルを聞いてまっさきに思いつくのは宮木あやこ。というか、宮木さんしか出てこないっていうのがホントのところ。「R-18」って聞くと淫靡で性描写がこれでもかっていうくらい無駄にあって…というイメージがあって敬遠するところなのだけれど、その偏見をとっぱらってくれたのが宮木あや子の『花宵道中』だった。


さて本書。形態としては連作短編集の形をとっている。

初っ端に登場する高校一年生の斉藤くんは、「なにかのアニメのなんとかいという役」のコスプレをして、10以上も年上の主婦、あんずと学校帰りにセックスをする。それも、あんずが書いた台本通りに。この性描写にちょっと怯んみはしたのだけれど、読み進めてみる。

すると、少しずつ見えてくるのは、「性」ではなく「生」(のような気がする)。性は生に繋がってるもんね…と訳知り顔で語ろうと思えば語れなくもないような気もするのだけれど、正直に言いますっ!!


よくわかんないっ(笑)!!!



でもね、ここで言う「わからない」は否定的な意味ではない。よくわからないんだけれど、わたしははっきり、そしてきっぱり「いい」って思った。


本書を読み終えてすぐに記録したメモはこんなの。

「いびつ」だなーって思った。じゃ、「いびつ」じゃないものってなんだろう?考えてみたけれどわらなかった。読んでるときも、読み終わってからも、余韻に浸りながら、思い返しながら、なんだか泣きたくなった。それは哀しいからでも嬉しいからでもなくて、ただ泣きたくなった、それだけ。好きだなー。


コスプレしなきゃイケないあんず。そんなあんずにハマっていく斉藤くん。斉藤くんとの関係に激怒して、盗撮写真をばら撒くあんずの夫・慶一郎さん。慶一郎さんの母のマチコさんは早く孫が欲しくってたまらない。しかもその孫を自分の思い通りに育てたいと切望している模様。盗撮写真が流出しても斉藤くんのことを想い続ける七菜。七菜の友だちのあくつちゃんは斉藤くんの写真をコピーして配り歩く。そのあくつちゃんと同じ団地に住む福田くんは斉藤くんの友だち。ふたりとも、お世辞にも「恵まれた環境」とは言えない生活。ふたりのバイト先の先輩、田岡さんは熱い志を持った塾の先生志望…だけれど、悪い噂がある。


うーん。「正統派」の登場人物がひとりもいないぞ?? でも、これも考えてみたけれど何が正統派で、何がそうでないかがわからない。

わからないことばっかりっ!!!でもやっぱりこれだけは言える。


好きです、この作品。




『ふがいない僕は空を見た』収録作品
・ミクマリ
・世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
・2035年のオーガズム
・セイタカアワダチソウの空
・花粉・受粉

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2012/01/05 17:59

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