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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2010/05/27
  • 出版社: 文藝春秋
  • サイズ:20cm/319p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-16-329230-4

紙の本

小さいおうち

著者 中島 京子 (著)

赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。【「BOOK」データベースの商品解...

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小さいおうち

税込 1,739 15pt

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商品説明

赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。【「BOOK」データベースの商品解説】

【直木賞(143(2010上半期))】赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々。ノートに隠されたひそやかな恋愛事件。60年以上の時を超えて、語られなかった想いがよみがえる−。懐かしくて苦い記憶の物語。『別册文藝春秋』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

中島 京子

略歴
〈中島京子〉1964年東京都生まれ。出版社勤務、フリーライターを経て、2003年「FUTON」でデビュー。他の著書に「冠・婚・葬・祭」「桐畑家の縁談」など。

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書店員レビュー

ジュンク堂書店大阪本店

 お嬢様育ちの美しい...

ジュンク堂書店大阪本店さん

 お嬢様育ちの美しい奥様と女中さんのやりとりがほほえましく、いつの時代も変わらない女の子同士のおしゃべりと、この本の素敵な装丁に乙女心をくすぐられました。
 60年の歳月を経て明かされる想いと昭和の良き時代が女中さんの目線で綴られています。記憶の美しさと苦さを兼ね備えたノスタルジックな物語を是非ご堪能ください。

みんなのレビュー465件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

ある女中の、青春の輝きと後悔

2010/07/08 01:47

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品が、今回の直木賞候補のひとつだと知りました。
直木賞そのものを胡散臭く思っているので、中島京子がそれを受賞しようとしまいと、
正直なところ、どっちでもいいように思っていました。

けれど、直木賞を受賞するというのは、作家に経済的な革命が起こることらしいので、
今後もたくさんの人に読んでもらいたい人が選ばれるほうが、
まだ気持ちの収まりもつくというものです。
受賞しないかなと、読み終わった今は期待してしまいます。

主人公のタキは、10をいくつか過ぎた頃から女中奉公をしていました。
そのタキが、戦前、戦中の東京で奉公した先の、ある家族の物語です。

旦那さま、奥さま、奥さまの連れ子である少年、そして女中のタキ。
終の棲家にしたいと思えるほどの家で、熱心に誠実に務め、幸せな時を過ごします。

その回顧録めいたものから窺えるのは、戦争の影が落とす暗い影などではなく、
タキの家事の手腕、奉公先の家族の様子がほとんどで、
戦争を書物や映画でのみ知る甥の息子(大学生)に、不可思議な印象しか与えません。
実際に生活をしていた人たちの目には、日々のことばかりが映っているのですね。
家族の会話、食べもの、会社の景気、秘め事。

ただの老人の思い出話だと思いきや、背負ったものの大きさ、人とのふれあいなど、
ページが進むにつれ、どうにも涙がとまらなくなってしまいました。
淡々とした文章で書き綴られているにもかかわらず、です。

戦時中というのは、この物語の中のエッセンスのひとつでしかなく、
普遍的なものを描いているからこそ、なんでもない描写に胸が締めつけられるのかもしれません。

タキが愛した家、そこに住む人、自分の青春、そして後悔。
それらを順に追う作業が、ときに苦しく、ときに愛おしく思えました。

装丁も装画も、とてもステキなのですが、この絵にも意味があるようです。
最後の章で、タキが伝えられなかったことのいくつかが、
甥の息子の手であきらかになっていく仕掛けです。

人が墓場まで持っていく想いというのは、案外多いのかもしれません。
幾度となく、誰かに打ち明けたくなりながらも、
そうやって黙して生きた人たちの、とてもあたたかで、少し悲しい物語です。

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紙の本

「思ひ出」と、書いた紙を張り付けて大事にしていた洋菓子の空き缶の中にあったものは、

2010/10/19 20:57

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る

『タキおばあちゃんのスーパー家事ブック』を出版したタキに、出版社から次の本の依頼がありました。「女中」という言葉が消え去った今、女中奉公をしていた時代を書こうと、タキは思い立つのです。
タキは尋常小学校を卒業した昭和5年の春、女中奉公に上がるため親類のおばさんと東京へ向かいます。汽車の中でおばさんがタキに女中の心得を懇々と話す冒頭の文章に、わたしは惹きこまれてしまいました。

女中にとっていちばんたいせつなものは「ある種の頭の良さ」であり、その能力がタキにあることを見抜いた最初の奉公先の小説家・小中先生が語るイギリスにいた女中の話
「ご主人様のために、お友達の原稿を暖炉で焼いて差し上げた女中の話」は、この小説の導入部分であり、作者・中島京子さんの力量を感じました。

赤い三角屋根の洋館に住む時子奥様とタキの出会いの場面に胸が躍り、小児麻痺に罹った恭一ぼっちゃんを毎日毎日おんぶしてお医者様に通う場面に胸が熱くなり、板倉さんがお正月に「赤い屋根の洋館」を訪ねてきた場面に胸が騒ぎました。
戦争が激化するなか、タキは郷里の山形へ帰されます。そして戦争が終わり、タキが東京に戻って見たものは・・・・・。

タキの死後、想いはいちばん仲のよかった甥の次男の健史に届きます。健史は中途半端に終わっていた『心覚えの記』の最後の一行を読み、タキの想いを叶えるのです。

作者・中島京子さんは、昭和の激動の時代を女中として働いたタキの目を通して描き、そしてバージニア・リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』(石井桃子訳)を小説のなかに組み入れています。すごい作家が現れました。

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紙の本

作家のたくらみ

2011/02/17 08:13

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第143回直木賞受賞作。戦前の東京郊外にある中流家庭を舞台にしてとありますが、赤い三角屋根の洋館に住んでいるくらいですから、上流といってもいいのではないでしょうか。そんな家庭の住み込み女中として青春期をおくったタキの回想ノート「心覚えの記」を読む形で物語は進められていきます。
 その構成といい、時代描写といい、最後の仕掛けといい、読ませる作品としては抜群の出来ではないでしょうか。
 それはもちろん作者の中島京子のうまさですが、読者からすれば「心覚えの記」を書いたタキのたくらみのようにも感じます。

 タキは自身の青春の女中時代を「心覚えの記」に書きとめながら、タキの主人であった平井家の奥様時子の人生をもたどることになります。
 不思議なのは、タキは少しずつこ回想記を書きすすめながら、時にそのノートを盗み読む甥の息子である健史の言動を書きとめていることです。タキはあきらかに読者の視点を意識しています。読まれることを意識しながらタキはその文章をつづっていきます。
 タキの「心覚えの記」は個人的な日記ではありません。いずれどこかで発表されることも期待されつつ、彼女はそれを書いているのです。
 しかも、その途中途中で健史という青年の読者がいる。この健史の存在は物語ではとても重要です。実際未完となったタキの回想記の後日談として健史は読者にあっといわせるたくらみを開示してみせます。

 タキが健史という読者を意識しながら書きすすめたように、中島京子はけっしてひとりよがりすることなく、また読者におもねることなく、あきさせません。
 タキが回想記で書いた小さなうそは、読者を意識した作為的なたくらみでしょう。中島京子はタキの回想記にそれをいれることで、作家のささやかな満足を満喫したのではないでしょうか。
 作家のたくらみが実に鮮やかな作品です。

 ◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。

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紙の本

淡々と始まり、最終章で大きな広がりとみごとな収束を見せてくれる。

2010/09/19 15:19

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 戦前の、東京郊外で暮らしていた一家の生活が、その家の女中から見ての手記という形で語られる。
 秀逸なのは、その形式。年老いたタキが、自分が若く、女中をしていたときのことを思い出して書きだすという形をとっているのだ。書いているのは、現在で、タキの甥の息子が時々現れては盗み読みしているようで、それも意識におきながら、タキは、書き綴っているのだ。
 これが大きな伏線となっている。それが活きて来るのが「最終章」。それまで、平井家のこと~とりわけ、時子夫人と恭一ぼっちゃんのこと、タキの女中としての自負、当時の東京の様子などが、実に淡々と語られてきたのに、実は、その下に、とても大きなうねりが、起きていたのだということに、気づかされるのだ。深い愛情、心の葛藤と後悔の、大きなうねりである。
 最終章、タキの甥の息子の健二が、タキの残した手記を読み、様々な縁に導かれて、タキの書かなかった行間をみごとに埋めていく。ここがすばらしい。「あぁ、この小説は、ミステリーだったんだ」と思い知らされる。

 人の心のうちは、深くて、複雑でどうしようもない。どうすればよかったのか、後悔にさいなまれることも多いだろう。けれど、その後悔さえも、人生を深く豊かにしてくれて、どこかで、きちんと帳尻があうのでは。そんなことを読後、しみじみと感じさせてくれた。
 表紙、裏表紙とも、内容を髣髴とさせて、魅力的。本の題名、内容、装丁、装画が、みごとにかみあっていて、読後、あらためて手にとって、美しい本だ、と思った。
(「電子書籍」元年というけれど、この「手に取っての感動」は、紙の本ならではだろう。)

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紙の本

タイトルの示すものは

2010/07/19 17:45

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こぶた - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦前、戦中、戦後を生きてきたタキという女性の
思い出書きであり、
絵本ちいさなおうちへのオマージュでもある。
ちいさなおうちのなかで
暮らす人たち
穏やかな日々の中で
起きることの数々
その時は
気付かなかったであろうタキ自身の恋
最終章のちいさなおうちは圧巻の一言
はじめてこの題名が示すものにうなづくことができる

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紙の本

「小さいおうち」での秘めたる思い

2011/05/21 01:34

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kei-sho-mom - この投稿者のレビュー一覧を見る

家事代行サービスを利用されたこと、ありますか?

チラシを見る限りでは、料金もそんなに高くないようなので、1度頼んでみたいなぁ、と思わないこともないのですが、よく知らない人に家の中をウロウロされることを思うと、腰が引けてしまうのです。

根っからの庶民なので、仕方がないのかもしれません。

本書は、女中のいる家庭というものがそうめずらしくなかった古き良き時代の、女中とその雇い主である家族との物語です。



様々な家庭に女中として勤めてきたタキは、80歳を過ぎて、最も思い出深い平井家で働いていたときのことを書き残し始めます。

タキは、前夫に先立たれた後、幼い息子を連れて嫁ぐ時子にとともに平井家に入り、女中として働き始めます。

時子奥様、恭一ぼっちゃん、旦那さまと、赤い屋根の小さな家で暮らす日々はタキにとって忘れられない幸せな日々でした。

しかし、戦争の影が日ごとに増していき、そして、時子奥様の秘めた恋に気付いたタキは…。



舞台となった昭和初期は、女中というものの概念が今とは違い、未婚女性が結婚するまでの間、行儀見習いのために働く、という感じだったようです。

そして、そのお宅で婚礼支度を整えてもらってお嫁に行くということがめずらしくなかったそうです。

仕事の内容も、ただ家事をこなすだけではなく、一家の主婦である「奥様」と相談しながら、そのお宅を切り回す、いわば「奥様」の秘書的な役割も担っていたようです。

分をわきまえた態度と優れた家事能力で、平井家の人々から愛されたタキでしたが、平井家を去る前に初めて時子奥様の道ならぬ恋に意見します。

しかし、それは、時子奥様のためだけではなく、タキ自身が胸の内に秘めた思いのためでもありました。

思いを伝えることはできなくても、好きな人のそばにいて、同じ時間を過ごすということは、相思相愛になる以上に幸せなことなのかもしれません。

きれいな思い出だけしか残らないのですから。



しかし、女中って言葉、最近はあまり聞かなくなりましたね。

そういえば、息子に、女中って何?と聞かれたことがありました。

家政婦という言葉は、市原悦子のおかげで十分認知されているようですけど…。


おもしろいと思って下さった方、書評ブログ『本のはなし ホンの少し』にもぜひお立ち寄り下さい。

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紙の本

赤い三角お屋根の小さいおうちで起きた事件

2010/07/07 12:28

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

昭和5年、12歳の時から女中奉公をしてきた
タキおばあちゃんの手記。

東京の西郊に建つ赤い三角屋根の洋館での女中奉公は
美しい若奥様と、その連れ子の恭一坊っちゃん、
玩具メーカーの重役の旦那様という恵まれたものでした。
小さな家の階段下の、たった2畳の女中部屋が
唯一、タキが自分の居場所と思える空間で、
しかし、それがとてつもない幸せな時間でした。

そもそも女中を雇えるゆとりのある生活からして
今となっては豊かな日本を感じさせます。
そのほかにも、戦前の時代を存分に味わわせてくれる
ガジェットが盛りだくさん。
また、戦争の色濃くなる暗い時代も。
さらに、女中の心得や、タキがいかに家事に秀でていたかを
細部に至るまで丁寧に語ります。

資料を丹念に小説に織り込む筆者の手腕が
この小説でも存分に味わえます。

甥っ子を登場させて、現代の人が勘違いしている
昭和の初期を再現させるのもうまい。

最終章で、語りをこの甥にゆだね、
平井家の静かな事件が明らかになるに及び、
冒頭、女中奉公に上がったばかりのタキに
最初の家の主人が「女中にはある種の頭のよさが必要」と
語ったエピソードが活かされると同時に
表紙の絵までもが
この小説の大切な要素であったことに気づかされます。

イタクラ・ショージの「小さなおうち」を
探してみたくなる衝動に駆られた読者は私だけではないはず。

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紙の本

失われたイノセンスへの郷愁

2012/03/06 20:54

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちゃき - この投稿者のレビュー一覧を見る

14才の時から平井家に女中奉公していたタキは、60年が過ぎ、
終の棲家と心に決めていた赤屋根の家での思い出を綴りはじめる。
小さな秘密を胸に抱きながら。

優しい旦那様に美しい時子奥様、
病弱だけれど可愛らしい恭一坊ちゃん。
戦前~戦後という激動の時代を背景にしながらも、
どこか懐かしい昭和モダンの香り漂う風景とともに、
平井家の暮らしぶりがタキの強い郷愁を含んだ語りで綴られていく。

一見、まるで昼ドラの設定にありそうな昭和初期の裕福な家庭の日常を、
綺麗な奥様と女中の友情を軸に描いた時代小説のように見せかけながら、
その実、これは戦争を描いた小説である。

物語が牧歌的でノスタルジックに語られる中、
時折、ひょいと現れては話の腰を折るタキの孫代わりである健史の発言が、
授業で習う知識としての「歴史」と実際にその時代に生きた人々の
「生活」との対比を浮き彫りにしていく。

そして最終章、語り手が移るに至って、年老いたタキが古き良き日本の生活を
回想する物語かのように思えた本書の本当の姿が明らかになっていく。

昭和初期の中産階級家庭の暮らしぶりを、実際に体験したひとから
聞いているような、タキの懐古的な語りが心地良ければよいほど、
哀しさと共に恐怖にも似たうすら寒さを覚える。

ジャングルでの凄惨な戦争体験を持つ兵士が描いた「小さなおうち」の中で、
のどかに暮らす女達は、過酷な外の世界から守られるべき者として
彼の中に存在していたのだろう。

それは単に時子とタキという個人を示すものではなく、
彼自身の中にかつて存在したイノセンスの象徴だったのではないかと思う。
ちょうど、タキにとっての赤屋根の家のように。

あるいはまた、彼が描いたこの絵は、
外の世界でどれだけ悲惨なことが起こっていようとも、
そうとは気付かぬまま人々の生活は淡々と営まれ続けているという
現実を突き付けているようにも感じた。

読み終わってみると、当初想像していたのとは
随分趣きの異なる小説だったことに(良い意味で)驚かされた。

とはいえ、優しい登場人物達と、たおやかな語り口調によって、
全体の印象はあくまでもやわらかだ。

かつての日本の姿に哀しい郷愁を感じたり、
戦争と日常の対比に背筋を寒くしたり、
あるいはもしかすると、これは哀しい恋を描いた
歴史小説だと感じる人もいるかもしれない。

これは読む人によって、大きく印象の異なる
小説なのではないかと思う。

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紙の本

その感情に名前をつけるとすれば

2010/10/16 16:43

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:六月 - この投稿者のレビュー一覧を見る

家政婦のタキさんの、昭和の初めから戦争中にかけての覚え書き。
美しい奥様とかわいらしい坊ちゃんと恋愛事件の話なので「家政婦は見た!」になりそうなんですがそうはならない。
彼女が矜持で一流の女中さんであろうとするからだ。そしてそのことが彼女に一生、自分の幸せを許さないほどの、決断をさせる。
恋愛事件にしろなんにしろ、ものごとというのは、すべからく、ある日突然幕が降りてしまう。どんなことでもだ。はじまったものは必ず終わる。それがなんどもなんども、繰り返し出てくる。一見能天気な女の人たちの楽しい生活の話だと思って読んでると、酷い目に遭いますよ?
私は遭った。気軽に読み始め、げらげら笑いながら読むつもりだったのに、だばだば泣いていた。本読んで泣くことは珍しくないけど、久しぶりに他人の人生にどっぷりつかっていっしょに泣いちゃう読書の快楽を味わった。
タキさんは戦争を「それは正しくは兵隊さんのこととかなんとかいうべきだ」と言い切る。この感性にしびれる。
同性愛も含めての恋愛が、ちゃんと愛おしくたいせつにたいせつにされているところが良い。自分の立ち位置がわからなくても、感情の種類がわからなくても、それが恋愛だったのかどうかなどわからなくても、大切だったって思うことってある。それがたまたま「そう」であったことを、あとで振り返ってしまう喜びと悲しみがていねいに描かれている。
女の人は場所につくと思っている。橋のたもとの幽霊は女の人と相場が決まっている、かもしれない。それくらい居場所とか領分とかを選んで自分で居着いてしまうところがある。それが仕事であろうと家族であろうと人であろうと誰にだってそう思う瞬間はあるものだ。戦争によって、あるいは自分の決断によって、その場所が奪われてしまうことの残酷さ。場所の記憶が自分の愛情と分ち難く結びついていることのこの切なさ。
それから作品を貫いているのは、作中である絵本作家が守りとおそうとしたとされる「イノセンス」である。誰かが守ろうとしなければ、容易く壊れてしまうもの。誰かが、言ってあげないと、持っていることを忘れてしまうもの。でも誰もがたぶん間違いなく持っているもの。それをを思い出させてくれる作品であるので、ぜひぜひ読んでくださーい!

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紙の本

切なさを、存分に噛み締めることとなるでしょう。

2012/01/15 19:58

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る

「主」ではない「従」の人。
決して対等とは言えない、対等とはなりえない、あくまで従。光ではなく陰。
そのことを主も従も共にわきまえて成り立つ存在。

語り部を女中さんと設定した時点で、主のものすごく近くで、でも家族とも友だちとも違う立場、限りなく内側にいながらでも決定的に外側、という視点を得ることになる。

様々な障壁があって、ストーリーはうねりと深みを持っていくわけだけれど、男女の恋愛関係、対等な立場での友情関係などとは異なり、女中小説には最初から、主と従という障壁が組み込まれ、前提となっている。
つまり、もう最初から、切なさは決定済みになっている。
それを、この「小さいおうち」はまず存分に生かしきっている。

女中小説(執事含む)のジャンルで、「日の名残り」と双璧をなす、いや越えたと言ってしまってもいいかもしれない。

手に入らないものに焦がれ追い求める気持ちは、その対象がなんであれ「恋」と名付けてあげたい。
時に対象は人間でなくモノであったり、人であっても、許されない諸般の事情や条件があったりするわけだけれど。
いずれにしても、手に入らないものは、手に入らないからこそなおのこと焦がれ、なおのことうつくしい。

それさえ持たずに、一生を終える人だっている。
その後悔さえもが宝石のようにうつくしいのよ、と、タキさんに言ってあげたい。

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紙の本

知られざる時代のかけらを見事に結実させた作品

2010/09/23 11:55

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:プラチナ若葉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

時々お年寄りに対して「おばあちゃん」などと呼びかけ、幼児言葉で話しかける場面を目にすることがある。
話しかけているほうからすれば、きびきびと反応することのできない相手に対して優しく気をつかっているつもりなのかもしれないが、きびきびと反応することができない、というのはそのお年寄りのほんの一部分でしかない。
そのお年寄りの中には、幼児言葉で話しかけている者には想像のつかないくらい生々しい感情の動きがあり、人生を乗り切ってきた過去がある。
人をひきつけてやまない美しい奥様には自分を閉じ込めておけない恋心があり、かわいらしい坊ちゃまには冷静に母親を見つめる目がある。
戦争に巻き込まれたころの時代には、知らず知らず少しずつ人生を狂わせていく全く普通の人たちが存在し、そういった瑣末でありながらそこに存在していた生活のにおい、感情などの時代のかけらの多くは語る人、書きとめる人もいないままに通り過ぎていく。
この作品は、そんな時代のかけらを寄せ集め、現在に生きる健史の手ををとおして過去と今がつながる一つの見事な像として読者の目の前に見せてくれる。

直木賞受賞作としてふさわしい素晴らしい作品だった。

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紙の本

直木賞受賞作品。

2010/08/07 22:00

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る

直木賞受賞作品。

戦前戦後のちょっと上流家庭の生活の様子が物語の前半で軽やかに描かれています。日中戦争のさなかというと、かなり抑圧された国民生活を想像してしまいますが、それほど深刻ではないようです。

物語はタキという女中さんを通して、奉公している平井家のちょっと素敵なちいさなおうちで展開されていきます。

時代が進むにつれ、それほど深刻ではなかった生活も戦争の影響で徐々に暗さを帯びてきます。

それにしても、この時代の女中さんの仕事はすごい。料理にせよ掃除にせよ、細やかな工夫がなされ、それは職人技といいいくらいの水準のものです。

ストーリーは平井家を中心に進められていきますが、読んているうちに主人公の人生について考える機会が多くなります。

最終的なおちは、「あっ」というものでないにしろ、なかなかのもの。少しの感動と人と人とのふれあい、男女の関係など、様々な感情を抱かされます。

書き口がやわらかいので、激しく感情をゆすぶられることはありませんが、ジワリと心に響く感じです。

龍.

http://ameblo.jp/12484/

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紙の本

戦争の前と後は,本質的には変わらないのかも知れない

2018/11/05 23:51

8人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

私は、戦前の煌びやかさを謳歌していたのは,古き良き時代の
一部の特権階級のことと理解していた。
また戦争にのめり込むにつれ,悲惨な生活や軍の横暴に
追われた話ばかりが頭にある。

この作品は,女中のタキさんが昭和初期に平井家で
奉公するお話。みんな普通に幸せだったことが良く分かる。
そういえば我が家のおばあちゃんからも,子供の頃,
家にお手伝いさんがいたと聞いたことがある。
普通の家のごく自然なことだったらしい。

いつの間にか現代のものさしに当てはめ,
上流階級のお話と取り違えていた自分に気付く。

もう一つ。戦争の序盤は,イケイケどんどん。
軍が煽りまくるので,日本国内がお祭り騒ぎだったことは,
良く考えれば当たり前。
銀座の資生堂パーラーでお食事をし,映画なんか見たりして。
第二次大戦前は明治からの富国強兵と戦争の連続で
疲弊しきっていたイメージなのだが,どうやら根本的に
違っているようだ。

これまで捉えていなかった事実を楽しみ,昭和初期の
華やかさにあてられると,話の展開に期待が高まる。
孫が「きれいごとにすんなよ」的なセリフでカットインして
くるので,自分の無知が恥ずかしくなる。
幸せの価値観が微妙に異なるように感じるのも,
なんだか清楚である。

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紙の本

中島京子、技ありの一冊!直木賞受賞の「小さいおうち」。

2010/10/20 13:39

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 直木賞を受賞した中島京子の「小さいおうち」、これは戦前戦中の一
般家庭に女中として入ったタキという女性とその家の奥様、時子との交
流を描いた物語だ。一章から七章まではタキの語りと彼女が残した「心
覚えの記」を中心に書かれている。資料を徹底して読み込み、当時の普
通の人々の日常とその意識を作品に昇華させた作者の力量は相当なもの
だと思う。名手北村薫の一連の作品に通じるものがある。我々は単純に
戦争が始まればおだやかな暮らしなどあり得ない、と思っているが、そ
うではないことがこの物語を読めばよく分かる。特に、奥様とタキを中
心にした一家の暮らしぶりを知れば、誰もが納得してしまうだろう。と
はいえ、本当に追いつめられた「銃後の暮らし」がそのうちやってくる。
明から暗へ、グラデーションのような静かな変化の描写もまた見事だ。

 そして、最終章。語り手はタキから違う人物へと変わる。そこで明ら
かになる様々なことがら。この最終章はさすがと言うしかない。これが
タキの語りで最後まで続いたならば高い評価は変わらないとしても直木
賞は取れなかったかもしれない。この一章で語られる3人の人物のその
後、さらには、ある「想定」が、物語に奥行きを生み出し、見事なラス
トへとつながっていく。中島京子、技あり!の一冊だ。

ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より

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紙の本

第143回 直木賞受賞作品

2010/09/22 02:01

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投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 昭和初年、東北から東京へと女中奉公に出たタキ。奉公先は赤い三角屋根の家に暮らす3人家族の平井家だった。やがて日本が戦争に呑み込まれていく中でタキが垣間見た、家族の日々を回想した物語。

 日中戦争時以降の平井家の暮らしぶりとしてこの小説の中で描かれる様子は、タキの手記を現在の目で見る甥の息子・健史が訝るように、戦争を知らない世代にとっては日本史の教科書でわずかな紙幅で記される戦闘・戦場の様子とは縁づいていないように思われます。
 作者・中島京子がこの小説で直木賞を受賞した以後、様々なインタビュー記事で述べているように、当時の婦人雑誌などを渉猟して読みこんだ上で構築したというだけあって、おそらく確かにこのような暮らしぶりが実際に展開されていたのだろうなと思わせるだけの説得力をもって迫ってきます。
 またやさしい温もりを感じさせる文章は大変好ましく感じられました。今に比べればずっとゆったりと時間が流れていた時代、そこに生きる人々のテンポのようなものがその文章によって巧みに映し出されているように思います。

 しかし、女中さんのようにちょっと遠くてちょっと近い存在である人物の目を通してある家庭の暮らしと秘密を回想するという小説はこれまでもありました。小川洋子は『博士の愛した数式』や『ミーナの行進』でそうした物語を見せてくれましたし、北村薫の三部作『街の灯』『玻璃の天』『鷺と雪』も似た設定です。

 そうした作品に引き比べると、この『小さいおうち』は描かれている物語が若干大人しいと感じます。『博士…』のような奇抜な着想があるわけでもありませんし、『街の灯』三部作に比べると社会的メッセージの強さはさほど感じられません。
 また、平井家の秘密の内実が予想のつく範囲にとどまっているように思われ、驚きを感じるまでには至らなかったのです。

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