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商品説明
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた—。【「BOOK」データベースの商品解説】
【中央公論文芸賞(第5回)】社長の夫と軍艦のような広い家に暮らす美弥子は、家事もしっかりこなす主婦。だがやがて、大学の先生でアメリカ人のジョーンズのことばかり考えている自分に気づき…。『週刊現代』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
江國 香織
- 略歴
- 〈江國香織〉1964年東京生まれ。小説のほか童話、詩、エッセイ、翻訳作品で活躍。「号泣する準備はできていた」で直木賞、「ぼくの小鳥ちゃん」で路傍の石文学賞、「がらくた」で島清恋愛文学賞を受賞。
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書店員レビュー
魅力的な文体を持つ江...
ジュンク堂書店岡山店さん
魅力的な文体を持つ江國さんらしさがまた一つ恋愛を物語った。
主人公は外国人、主婦に片想い。
と言葉にするのは容易だが、そこに江國さんの手によって日常と彩りが加わると、途端に物語内に住む人々が動きはじめる。
ジョーンズさんはアメリカ人。大学講師。美弥子さんは専業主婦。
どうして彼らは出会い、恋をしたのか?
夕暮れ時を散歩する。看板を見て、変なことを連想し、笑う。隣を歩く人も同じ気持ちだとわかることの安堵。一緒にいるのに全然話を「理解」してくれない夫より、そうだよなあ、そういう人に惹かれるよなあ、とこちらも同意する。劇的な出会いが全てではないのだ。変化はいつも何気ない日常で、ふとした瞬間に起こるのだ、ということが伝わってくる。
ドロドロ?なんてつまらない感情はこの人の作品には不似合いなのだ。
だから、こうして贅沢な時間を本の中で過ごすことができる。
最後の一文にはものすごく考えさせられたが、それもふとしたことがきっかけで。まったく人の恋心には何が起こるか分からない、ということなのだろう。
文庫担当 中原
紙の本
水は少しずつ滲みだして
2010/05/31 08:43
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
嫌な言い方を承知のうえで書けば、不倫小説である。
不自由のない暮らし、それも夫が会社の若き社長という上流の生活を営む美弥子が大学の先生である近所のアメリカ人ジョーンズ、彼にはアメリカに離婚をしたいと願う妻がいる、といつの間にか「世界の外に出て」しまう。
そういう二人の関係を世の中では不倫と呼ぶのだが、美弥子自身が自ら「不倫妻だわ」と気づくまで、物語はゆったりと二人の日常を描いているにすぎない。
この物語の面白さは、あるいは怖さといってもいいのだが、そこにある。
愛によって結ばれ結婚しともに生活を行うこと、それはふちいっぱいまではられた水甕のようなものだ。美弥子と夫の浩もそうであった。
しかし、二人の会話が微妙にずれ、感情が交差しなくなり、いつの間にか少しずつその水が滲みだし、もれていることに気づかない。そのあたりの江國香織の描写はさすがにうまい。
そんな美弥子のそばに別の水甕があらわれる。それがジョーンズだ。美弥子はジョーンズといると、「何もかも単純にたのしく、輝やかしく、お互いに相手といると、自分がとても身軽に、いっそ子供になったように、感じる」のだが、そういった感情が少しずつ水甕に水を満ちてきていることもまた彼女はほとんど気づいていない。
不倫とは既婚の生活の水位と別の生活の水位が逆転することでうまれる。
ゆるやかな水のもれはある時、大きな損傷で大量に流れ落ちる。そのとき、別の水甕に水が満ちていれば、新しいそれは自身にとってゆるがないものとなる。
人はそんな水甕をいくつももっている。時にこの物語の主人公たちのように新しいものに変えることがあるが、ほとんど底にたまりのようになった水甕であってもそれを捨てることはない人もある。あるいは、もれていく水をくいとめようとする人もいるだろう。自ら叩き割る人だっている。
ただいえることは、どんな立派な水甕をもっていても、人は新しいそれを欲しがるものだ。ただ、美弥子のように、そこに水が満ちるかどうかはわからない。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
恋愛小説に擬態したホラー
2021/10/14 20:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
こぉわっ……
おとぎ話のような語り口で
それが恋と気づく前から落ちるまで
瑞々しく丁寧に紡がれていく物語のラストは
それはそれは恐ろしい男と女の相違でした。
恋愛小説に擬態したホラーでしたよ。