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商品説明
赤坂で殺人事件発生—被害者は右翼団体に所属する男。警視庁公安部の倉島は、なぜか特捜本部に呼ばれる。二日後、今度は暴力団構成員が殺された。さらに、第3、第4の事件が…。殺人者はプロ、鍵はロシア。倉島が、敵に挑む—。【「BOOK」データベースの商品解説】
赤坂で殺人事件が発生した。被害者は右翼団体に所属する男。さらに次々と事件が起き…。殺人者はプロ、鍵はロシア。警視庁公安部の倉島は、公安捜査官の意地と誇りをかけて敵に挑む。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
今野 敏
- 略歴
- 〈今野敏〉1955年北海道生まれ。上智大学卒業。同大学在学中「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞しデビュー。「果断」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞をダブル受賞。
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紙の本
正直いって、書店に本が並び過ぎていると、買う気失せるんです、私。今でいうと、今野敏、東野圭吾、もっといるんですけど、飽食。そんなに傑作ばかりあるわけないだろ、なんて思う。で、その勘は正しかった・・・。ちょっとロシア人、バカにし過ぎじゃね? B級ミステリ?
2011/02/04 20:28
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
何となく敬遠気味なのは、今野作品の出版点数が多い、っていうところに原因があるような気がします。イメージだけで書いてしまうと勘違いがあるかもしれません。早速調査、ですが、こういうとき便利なのが bk-1 の詳細検索。で、発売日順に100冊をチェックすると、なんと今年だけで41冊ヒット。勿論、文庫本もあるので乱作、とは言えませんが、なかなかの量であることは間違いありません。
でも比較ができないと点数の重みがわかりません。そこで役立つのが同じbk-1の作家マップ。そこに登場する人気作家、東野圭吾と石田衣良と比較すれば雰囲気はわかります。東野6冊、石田14冊。無論、これには重版が含まれていないので、売れ行きを示しているわけではありません。でも、凄いです。ちなみに、この冊数には、検索には引っかかったものの、著者名に今野、東野、石田の名前がないものは除いてあります。
それにしても、こんなに差が出るとは思いませんでした。これに納税額を考慮すれば売れ行きとしてもっとはっきりしたことが言えるのでしょうが、それは私の仕事ではありません。ともかく、月に3冊強のペースで出ていれば、何が新刊か否かもわからなくなって、逆に売れ行き、落ちるんじゃないか、なんて思うんですがどうなんでしょう、ここにも護送船団方式の日本出版界の姿がある? とりあえず、全26章構成。
閑話休題。関口信介が装丁を担当しているいいカバーデザイン、いい、って言いたいんですがどこか安っぽい。理由が分からなくて困るんです。カバーの紙質はいいです。色もいい。釜谷洋史の写真も悪くない。ま、ナイフはともかく、後の銃の置き方は変かもしれません。これではワイヤーで吊ったようにしか見えません。しかもです、ナイフは角度を振らずに真正面から写しているのに、銃は角度を振っています。それなら二つとも机の上か何かに置いてそれをすっきり真上から撮る。
ま、そうすると早川書房の本みたいになっちゃうんですが、それのほうが素直でしょう。手錠だけカバー後に持ってくるんじゃなく、一緒にまとめる。できればラップアラウンド形式にする。ま、そうなるとカバーの地の色が不要になるので、それであれば思い切ってカバー表の上の方にボックスを作って、白で枠どりしてそこに写真を置く、それでもいい。画期的ではないけれど、今よりは絶対によくなる、私はそう思います。
お話のほうですが、まず出版社のHPを覗くと
*
いま最も熱い著者の最新警察小説!
殺人事件の捜査に呼ばれた公安部の倉島警部補は、日本人ではありえないプロの殺し屋の存在を感じる。やがて第二、第三の事件が…
公安部外事一課の倉島警部補が、殺人事件の捜査本部に呼ばれた。殺しの手口はプロ。さらに数日後、ロシアとの密貿易を資金源にしている暴力団員も殺された。捜査を進めるうち、第三、第四の殺人も起こる。実行犯は元極東ソ連軍の特殊部隊に所属していた人物と推定されたが、はたして犯人の目的は何なのか……。いま一番乗ってる警察小説の書き手である著者の最新作。既刊の『曙光の街』『白夜街道』では公安の仕事に馴染めずにいた倉島が、本作では公安部の警察官としての矜持(きょうじ)を自覚します。一人の男の成長譚としても読みごたえ充分です。(YB)
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とあります。主人公は倉島達夫、公安部外事一課警部補で、主にロシアの事案を担当しています。彼は、この捜査自体が自分に対するゼロの試験ではないか、と思っています。ゼロというのは警察庁の警備企画課内にある情報集約のための組織で、全国の公安捜査官からの情報を吸い上げ、それを分析し集積しています。そこでは選ばれた公安の捜査員が研修を受け、エース級の捜査員になる、といわれている、ある意味都市伝説のような存在です。
倉島は、自分がここで手柄を上げればゼロから認められたことになる、と張り切るわけですが、私にはこの心理がわかりません。これは、今野の筆の問題だと思いますが、ゼロの存在自体にリアリティがないわけです。ゼロ、っていう名前がコミックスレベルです。今時、こんなダサイ名前を名乗る組織があるわけがない。しかもです、そのことについて話す人間が周囲にいない。
私などは、これは倉島が狂っていく話ではないか、って思うわけです。しかも、大木天声という理論右翼の大物に倉島が接近して、様々な情報を得てきて、捜査している仲間たちが「よく、あんな大物に会えたな」と驚く。おいおい、まるで陰謀史観を鵜呑みにする小中学生じゃないんだから、安易にフィクサーなんか出すなよな、なんて思います。
ちなみに、大木天声は、指定団体などの理論的後ろ盾となる陰の実力者で、保守系の政治家にも影響力があるが、街宣活動は一切せず、マスコミに登場することもない伝説の人物だそうです。ゼロもですが、大木天声っていう名前も、どういうセンスなんだろ、なんて思いますよ、実際。無論、右翼や暴力団にはあえてこのような芸能人のような目立つだけの名前を名乗る人間がいないわけではありません。あの世界って、目立ってナンボでしょうから。
でも、です。小説におけるリアリティっていうのは、現実を単にコピーすればいい、っていうもんじゃあない。ともかく主人公の考えが甘い。それがテーマかと思ったら、それなりに事件が解決し、上からの覚えもめでたい、となると「うそだろ」っていいたくなります。逢坂剛の描く公安の厳しさと比べてみればいい。それにしてもですだ、なんでこんなにもロシアの連中は口が軽く、わきが甘いのでしょう。小説の中でくらい毅然としろよ、なんて思います。
初出「オール讀物」2009年2月号~7月号 だそうです。