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政権交代論 (岩波新書 新赤版)
著者 山口 二郎 (著)
民主政治にとって政権交代とはどんな意味があるのか。なぜ日本ではほとんど起きなかったのか。そして、民主党は政権を担えるのか。アメリカやイギリスの事例を考察しながら、有意義な...
政権交代論 (岩波新書 新赤版)
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商品説明
民主政治にとって政権交代とはどんな意味があるのか。なぜ日本ではほとんど起きなかったのか。そして、民主党は政権を担えるのか。アメリカやイギリスの事例を考察しながら、有意義な政権交代の条件を探る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
山口 二郎
- 略歴
- 〈山口二郎〉1958年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業。北海道大学法学部教授。専攻は行政学・政治学。著書に「大蔵官僚支配の終焉」「一党支配体制の崩壊」「危機の日本政治」など。
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手段としての政権交代、目的としての政権交代
2009/08/28 19:34
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般論としての政権交代必要論と、著者の政治的立ち位置が要請する政権交代必要論が同伴している。
別言すれば、「ときどきは政権交代があったほうがよい」という考えと、著者が念願する中道左派政権(第三の道・社会民主主義)を誕生させるために「いまこそ政権交代が必要だ」というアピールの同居である。両者が渾然一体となっているとまではいわないが、ちきんと切り分けられているかは疑問だ。
「ときどきは政権交代があったほうがよい」という考えからすると、中道左派政権もいずれは澱んで行き詰まってくるのであって、そのときは第2勢力に民主的に権力を移譲するのが至当ということになるだろう。しかし時の第2勢力は、カウンターとして強固な市場原理主義志向+改憲タカ派の政党である可能性もありうる。著者の信念からして、それでも「いいよ」とおっしゃるとは思えないのだが。
「ときどきは政権交代があったほうがよい」という政権交代論を掲げるなら、すくなくとも一冊中では「中立的」な立場を貫いたほうが説得力は高まるように思う。しかし、多少目をつむって「いまこそ政権交代が必要だ」論として読むなら、時宜にかなったものだという評価も成り立つだろう。
次に、2007年あたりでの政治状況を《こうして、民主党自体は社会民主主義という言葉を使わないものの、政策内容に即してみれば、新自由主義と再分配という対決の構図ができあがった。》としている。それから現在まで民主党は「生活が第一」というスローガンを保持しているが、いつまで中道左派路線を続けるのかは定かではない。
著者も《もちろん、民主党が党の哲学として社会民主主義を採用したとまで言うことはできない。(中略)党内の政策論議を経て、全体として「生活第一」という理念を共有できるかどうか、民主党の今後の行き方が問われている。》という。
民主党が社会民主主義であると自己規定できないのは、そこまで党内組織が収斂していないからだが、はたしてその方向に固まるだろうか。《民主党内に新自由主義者がいることは確かだが、それは多数派といえるほどの勢力ではない。》というのは楽観的かなと思える。かならずしも新自由主義か分配かという対立がすべてではない混在派がいて、ばあいによっては新自由主義的な政策をとるということがありえる。
たとえば、著者が批判する公共サービス部門で進行している民間の参入・請負についてだ。いくらか待遇改善はなされても大きな流れは変わらないかもしれない。なぜかというと、すこし視角を変えるが、「ニュー・ポリティカル・カルチャー」論が把握するところの市民像が関係してくる(いずれ書評にあげます)。その政策選好は、日本では「財政的にコンサーバティブで社会的にリベラル」であるからだ。この層は第三の道路線と親和性があり、民主党も無視できないところだろう。
いっぽうで、対政党の次元における「新自由主義と再分配という対決の構図」は、自民党の「変節」により、ここ2年くらいは以前ほど明瞭なものではなくなってきている。そうなると、民主党がどこまで議席を伸ばすかということにも左右されるが、政界再編が課題の一つになってくる。
ちなみに、哲学・思想界では二項対立型の思考を戒めていて、おおいに理はあるのだが、現実政治から完全にパージすることはできないというのもむずかしいところだ。
消費税増税論者だからということなのか、著者は竹中平蔵氏から「健全な社会民主主義者」と評された(お世辞ぶくみ?)。続けて「頑張ってください」とエール(社交辞令?)を送られ、妙な面持ちになったようだ。著者ほど民主党に期待はできないが、竹中氏とは(おそらく・たぶん)違った意味で山口氏のご活躍をお祈りしたい。