少女 （ハヤカワ・ミステリワールド）

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：はぴえだ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

最初に、ミステリだという認識があって、読み始めた作品。
けれど、読み進めていくと、これは上質な青春小説なのでは？と。
思春期の悩み。
丁寧な友人関係の描写。
ぐらぐらと日々揺れ動いていく少女たちの想いがリアルに描かれていて圧巻だった。
感動すら覚え、すごいなあと感心していたら、最後にまた驚愕が待っていた。
無駄が何一つとしてなく、すべてがつながっていた。

ラスト、作品中に出てきた、因果応報、という言葉が私の心に突き刺さり、重くのしかかってきた作品だった。

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投稿者：由美　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

この人の本は本当におもしろい！！前作の本がおもしろく今回のも読んでみたのですが、やはりおもしろい。

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投稿者：みーちゃん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

この写真のセーラー服の雰囲気は、高校生というよりは中学生、しかも都会ではあっても決して東京ではない、というのがなんとも言えない面白さを感じさせるけれど、でも、どこか清潔な感じが、この小説に登場する「死体を見たい」という少女たちの異常さにマッチせず、弱い気がします。

ま、そのアンバランスがテーマである、とも言えるんで、単純に否定はしませんが、このソフトフォーカスっぽい明るさは、変でしょう。写真／Junichi Kusaka／MIXA／ゲッティイメージズ、装丁／ハヤカワ・デザインとあります。昨年暮から、今までGetty Images と表記されていたのが、突然、ゲッティイメージズとカタカナになりました。こんなところでアルファベットと混在させるくらいなら、全部日本語表記にすればいいのに、美しくないなあ、って思います。

カバー後の案内は

高２の夏休み前、由紀と敦子は転入生
の紫織から衝撃的な話を聞く。彼女は
かつて親友の自殺を目にしたというの
だ。その告白に魅せられた二人の胸に
ある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間
を見たい」。由紀は病院へボランティ
アに行き、重病の少年の死を、敦子は
老人ホームで手伝いをし、入居者の死
を目撃しようとする。少女たちの無垢
な好奇心から始まった夏が、複雑な因
果の果てにむかえた衝撃の結末とは？

です。最後の一文に拘らずに読むのがいいでしょう。全体は、目次、第一章～第五章、終章、という構成です。お話の中心にいる三人の少女について、少し詳しく書きましょう。

草野敦子は、小学校六年生の時、剣道で全国優勝をしたことがある女子高生です。中学三年生の時、県大会の決勝戦で彼女負けたことで剣道部が優勝できなかったことから敦子に対する苛めが始り、スポーツ推薦で決まりかけていた、隣の市にある文武両道の名門私立、黎明館高校の進学を断り、普通の女子校、桜宮高校に入りました。今は頻繁に過呼吸を起こし、体育なども休むことが多くなっています。

由紀は、小学校一年から通い始めた剣道教室で敦子と知り合い、今も桜宮高校で同じクラスにいます。小学校五年生の時、元小学校の教師で痴呆の始った祖母に切りつけられ、左手の握力が3という状態になり、それは今も回復していません。敦子のことを書いた原稿用紙100枚にのぼる小説「ヨルの綱渡り」を学校に置き忘れ、何ものかに盗まれてしまいます。

紫織は、敦子が当初進学する予定だった名門の黎明館高校から、なぜか二年生のとき桜宮高校に編入してきた成績優秀な同級生です。夏休みの間は東京で過ごすなど、桜宮高校の生徒とはどこか違う雰囲気を持っています。彼女の告白が、敦子・由紀の二人を動揺させ、このお話が動き出します。

他にも、由紀たちの去年の担任の国語教師で30歳前の小倉、特別養護老人ホーム〈シルバーシャトー〉で働くリーダーの大沼、トロいおっさん、或は読み聞かせボランティア〈小鳩会〉の代表で宗教している岡田、Ｓ大付属病院小児科病棟に入院しているタッチー、昴の二人の、少年などが登場します。

最後まで読むと、一見広がっているこのように見えた世界が、きわめて閉じたものだったということになって、やけに作り物めいてしまうのは、この手のミステリの欠点だと思うのですがどうでしょう。確かに、伏線の張り方、というか連環のさせ方はうまいと思いますが、作為が目立ってしまうのがもったいない気がします。これがユーモア小説であれば楽しんで終わりなんですが・・・

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：月乃春水　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

高校二年生のふたりの少女の友情物語。「死」をめぐる思いと、夏休みの出会いと出来事が折り重なって、スパイスが効いた、ひとすじ縄ではいかないストーリーになっています。

とびきり繊細、なのにおどろくほどに残酷で、思い込みや自分中心の考えや言い分がある。けれど親や家族、まわりの大人の都合に否応なくふりまわされてしまう十代。

『彼女たちの年代は「無責任に」思い切ったことができて、それは十代の特権なんですよね。自分とその周りの世界だけを楽しんでいた女子高生が「死」を知ることで、新しい自分探しをする。そこにドラマがあると思って書きました。』（著者、湊かなえ氏による「『少女』の読みどころ」より）

由紀と敦子、それぞれが一人称で、交互に語っていきます。
似たような語り（口調）だけれど、視点のちがい。思いの行きちがい。
そういったことが浮き彫りになっていき、ぐいぐいと引き込まれながら読み進みました。


小学校から剣道教室でいっしょだった幼なじみの由紀と敦子。高校は女子高の桜宮。それぞれの事情があって、入学しています。

二年になって、名門、黎明館高校から編入してきた紫織。
紫織に声をかけたふたりは、「何かがあったにちがいない」と思っているのですが、それが親友の自殺だったということがある日、紫織の口から語られます。
親友が無断欠席したので、マンションに訪ねて行き、合い鍵を使って中に入って、バスタブの中に倒れていた姿を発見した紫織。

『目の前で起きていることが理解できないのに、なぜか、彼女がそこにいないってことだけが実感できた。目の前に姿は見えているのに、いないってわかるの。それが、本当の死なんだよ。』

死後に親友の母親から送信された、紫織宛に書かれていて、送られないままになっていた遺書。

『このまま生きていくのって、ちょっとムリっぽい。リセットするね。バイバイ。』

紫織の語ったことに、強く心を動かされた由紀と敦子。

「身近な人が死ぬ瞬間を見てみたい」と由紀。
『自分が触れた死を、誰かに自慢したいと思うだうか。』
『死は究極の罰ではない。それなら、死とは何だ。』

「死体を見て、死を悟りたい」と敦子。
『裏サイトに悪口を書かれても、死ぬよりはマシ。なのに、こんなにも意識するのは「死ぬ」ってことがわかっていないから。あたしも強くなりたい。そのためにはやっばり、死を悟ってみたい。』

夏休み中、由紀は大学付属病院の小児科病棟へ朗読に行くボランティアグループに参加。入院しているふたりの男の子、タッチー＆昴に出会う。

敦子は体育の補習の代わりに、ボランティアで老人ホームに行き、さえない中年のおっさんと組んで仕事をすることになる。

それぞれの新しい出会いと、これまでの人間関係が交差していきます。
そして、夏休みが明けた九月一日に…


「因果応酬、地獄に堕ちろ!」

これは、痴呆症になった由紀のおばあちゃんのことばです。

十代特有の「無責任な思い切りのよさ」でなにげなくやったことが、人を傷つけるのみならず、思いもよらないかたちでまわりの人に波紋を投げかけていく。
登場人物それぞれの耳に、この言葉がささやかれている、もしくはそれぞれが無意識のうちに叫んでいるような気がしました。

本は「遺書」ではじまり、最後は「遺書・つづき」で終わっています。
この遺書はだれが書いたものなのか…

最後になって、最初の思い込みが覆されます。

けれども、由紀と敦子がそれぞれを大切に思っていること。
これまでに自分がいちばんつらかったときに助けてくれたお互いのことを覚えていること。
その思いに救われます。

これは、高校二年生のふたりの少女の友情物語なのです。

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投稿者：みす・れもん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

同じ著者の作品である「告白」が、かなり好みのタイプだったので、他の作品も…と手にしたのが本書。「人が死ぬところを見たい」と望む女子高校生が２人登場。期待は膨らむ。

第一章の前に、名前は明かされないが二人の女子の語りが入る。「序章」というところか。
「子どもなんてみんな、試験管で作ればいい」「自殺は敗北宣言だ」と強く言い切る女子が一人。
「自殺する前には、こんなこむずかしい遺書を書かなきゃいけないの？　彼女が死ぬなんて思わなかった」と無邪気に語る女子が一人。
そうして、第一章が始まる。

第一章から第六章までの間に、夏休みの出来事が綴られていくのだが、幼なじみの由紀と敦子の視点で交互にストーリーが進行する構成になっている。
長い付き合いの二人だが、ある時からギクシャクし始め、高校２年生のときに転校してきて仲間がいなかった紫織に声をかけ、緩衝材のような役割を与えた。その紫織が夏休み直前の７月17日の昼休みに語った内容が、以前に通っていた高校で親友が自殺した…ということだった。それを語る紫織が自分たちの知らない何かを持っているように思えたのだろう。由紀と敦子は、紫織を羨ましく感じた。そして、自分も「死」を身近に感じたいと願う。

由紀は、小学生のころから同居していた祖母が認知症になり、辛い思いを長い間味わってきた。親友が自殺しているのを発見したという紫織は、そんな自分よりも、全てを悟ったような顔をしている。
「アナタノツラサモワカルワ…」。そんな風に見られることに我慢ができなかった由紀は、紫織と同じように身近な人の「死」を見てみたいと願う。

敦子は中学生の頃に学校裏サイトで陰口をたたかれているのを知った。そのショックからまだ立ち直れていない。そのときから異常に人の目を気にするようになってしまった。「死」を知れば少しは変わるかな…。そんな気持ちから、敦子は「死体」を見たいと願う。

そうして夏休みに、由紀は病院へボランティアに通うことを決め、敦子は老人ホームで補習代わりの手伝いをすることになる。どちらも「死」に近い場所だ。

彼女たちの言葉で交互に語られるストーリーはとても読みやすく、本当にサクサクッとページをめくってしまう。少し軽いかな…という気がしないでもない。「告白」のような重さを期待していたぶん、肩すかしをくらったという感じだ。

けれど、由紀と敦子の物語がいろんな部分で交差していき、最後に一つの物語へと繋がっていく様は、パズルのようで面白い。現実にはこんなに偶然が重なることはないのだろうけれど、何も現実と比べる必要はないように思う。

彼女たちの言葉に共感するか？と尋ねられたら、答えは難しい。ある場面では共感できるし、ある場面では突拍子もなさ過ぎて共感どころではないのだ。けれど、まだ大人になりきれていない二人だからこその言葉なのだろうなと想像することはできる。

「冗談じゃない。私たちはこんなに幼くない」という高校生もいるだろう。同年代でも「こんなこむずかしいこと、考えてないよ」という人もいるかもしれない。何をどう感じるか。それは、読む人、読むタイミングごとに異なる。今の私のタイミングでは、この”少女”二人の言葉はストンと胸に落ちてくる。あぁ、そういうこともあるよね…と。

このまま軽めで終わっちゃうのかな…と思わせておいて、終章でズドーンと落とすのはさすがだ。伏線が張られていたので、繋がりは見えていたけれど、まさかこういうことになろうとは…。
終章を読んだ直後、すぐさま序章を読み返してしまった。やはり、この著者は面白い。

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投稿者：まき　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

映画化されるとの事で、遅まきながら読みました。二転三転、結末には驚きでした。映画では、どのような感じで表現されるのでしょうか。

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投稿者：へげさん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

「人が死ぬところを見たい」というちょっとタブー視されそうな内容。しかし読んでいてなぜか気持ちよかった。一回読んだだけでは誰が誰なのかよく理解できず、二回読みました。いい気分にも悪い気分にもならなかったけどおもしろかった。