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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.11
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:21cm/191p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-74019-5
紙の本
倉橋由美子 夢幻の毒想 (KAWADE道の手帖)
「聖少女」の原型となった単行本未収録作品「わたしの心はパパのもの」を収録するほか、エッセイ・コレクションを掲載。作家や作品をめぐる川上弘美と桜庭一樹の対談、小池真理子らに...
倉橋由美子 夢幻の毒想 (KAWADE道の手帖)
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商品説明
「聖少女」の原型となった単行本未収録作品「わたしの心はパパのもの」を収録するほか、エッセイ・コレクションを掲載。作家や作品をめぐる川上弘美と桜庭一樹の対談、小池真理子らによるエッセイ、論考なども収める。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
わたしの心はパパのもの | 倉橋由美子 著 | 10−51 |
---|---|---|
今、なぜ「倉橋由美子」なのか | 川上弘美 述 | 2−8 |
新しさとは何か | 倉橋由美子 著 | 60−62 |
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紙の本
私の中の倉橋由美子
2009/10/05 18:55
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
倉橋由美子夢幻の毒想
単行本未収録作品一挙掲載「わたしの心はパパのもの」
「聖少女」の原型となった中篇130枚 河出書房新社
表紙の白部分に書かれたこれらの言葉と倉橋由美子の写真に惹かれた。
私の中で、サガンと倉橋由美子は特別な作家だ。
サガンの売り出し方は皆さんご存知の通りで、私もはまりました。
そして、倉橋由美子というと、びっくりするようないやらしい性的な言葉を並べても倉橋流のリズムがあって、そのリズムに従って進め、もし驚くほどの言葉と表現で甘受できない場合は平気で飛ばし読みをした。
細かい表現などどうでもよく、倉橋由美子の雰囲気を感じるだけで、新しい潮流の中にいるような気がした。
まだ10代、されど10代で、その頃新しいといわれる流れの小説一つ読むにも、家庭環境や生き様が現れるものだと困惑したこともある。
早熟で先取りタイプの大人びた友達は倉橋由美子を読み理解しているというようなポーズをとり、自分的倉橋由美子論を語っていた。
私はと言うと、読んではいたけれど、飛ばし読みをするくらいだから、消化不良で語るのは苦しかったが、とにかくあの時代は
「あなたはー、倉橋由美子をわかっているの?」
とか、とにかく討論志向の名残が色濃く残っていたので、倉橋由美子の本を持っているのがわかると、軽く挑まれたものだ。
たくさんの未消化な物を抱えながら、悩ましげに生きていた時代だったと今でも思う。(消化不良、未消化は文学的死語)
この本には、今、なぜ「倉橋由美子」なのか、川上弘美×桜庭一樹の特別対談が収録されている。きらりと光る独特の表現、視点を持つお二人がどう倉橋由美子を見ているかということに興味があった。ちょっと短くて言い切っていないとは思ったけれど、言葉の選び方にそれぞれの感性を感じた。
倉橋由美子の性的表現など、倉橋由美子もほかの作品にインスパイアされて書いたものではあるが、これは真似をしようとしてもできない個人の素養となっていたはず。だから、この本の中の某オマージュに、真似をして性的な言葉を並べるのがお好きな方の作品がひとつあったけれど、目を覆いたくなる品のなさを感じて困った。
女性の書く静的で真面目な性的表現はねっとりしていていやらし過ぎる。子宮嫌悪じゃないと汚らしい。性的表現は軽いリズム感で辛らつに読ませてほしい。
過去、倉橋由美子を読んで、私はファザコンという言葉を自分の中に意識した。
それが私の場合はアンチとなり、アンチファザコンというべき嗜好となったこともはっきり覚えている。
ファザコンで何が悪いという感覚にはならず、即消去したのだ。
しかし、年月がたち、母が亡くなり、そして父も亡くなった。
そんな中、今となっては、自分のすべてを受け入れないと前に進めないという精神状態になっている。
はじめにファザコンありきという母との確執など、一つ一つを傷をなめるように思い出し埃をはらって、きちんと記憶の中を整理している。
少しずつインナーチャイルドを癒しながら、どんどん思考も身の回りもシンプルに変化させたいと思う。
69歳で亡くなった倉橋由美子さん。才能の終焉はもったいなく、切ない。
いつか枯れる時がくるとしたら、どういう風にどの部分が枯れてどのような文章が生まれるのか知りたかった。
最近、サガンが映画などで取り上げられたが、倉橋由美子はもっと取り上げてほしい作家だ。
サガンも倉橋由美子もその時代のセンセーショナルな作品もあり、それはあの時代、あの時間、あの場所にいないとわからない感覚でもあるけれど、エスプリの効いた文章よ、もう一度と願う。
この本は、倉橋由美子に興味があり、作品を読んでいる方はマストで読むべき一冊、本棚の一冊に加えておかないと見えない誰かに遅れていると言われかねないポイントの高い本です。