紙の本
ぜひ、人生のお伴に
2009/03/31 21:55
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西日本新聞に連載中の身の上相談を、著者いわく‘遠い下敷きにした’本書。
子供から大人まで、たくさんの女性(ときに男性も)が悩みを打ち明けています。
新聞の身の上相談というのは、回答を読んでもピンとこないものが多く、
どちらかというと「へえ、こういう悩みもあるんだ」的な見方をすることのほうが多い。
まず自分はここには相談しないだろうな、
誰かに聞いてもらいたい欲求はあっても、私が求める解決法(そんなものがあるのなら)は、
ここには載らないんだろうなと思っていました。
でも、回答者は伊藤比呂美です。
女の業、人間の業というものを真っ向から肯定するあっぱれな内容が想像できます。
軽い気持ちで回答しているわけではないことは、彼女の語りでわかります。
いろんなケースを並列してみたり、少しでも読者が、そして自分が納得できる答えを得ようとしていることも。
1冊通して得られるのは、気持ちの良い肯定感でしょうか。
さまざまな事情、業……世の中には仕方のないことがたくさんあります。
それでも悩まずにはいられなくて、嫉妬という感情などまさにその最右翼なのかもしれません。
自らコントロールできないことへの対処、第三者の冷静な意見で暴く愚かな関係。
それらを愛情こもった文章で、ばっさばっさと斬っていくのです。
途方に暮れていた自分を、この人はきちんと肯定してくれているという実感は、
おそらく下手な法律よりも即効性があるのではないでしょうか。
全篇、女性ならではの悩みで綴られています。
セックス、子離れ、不倫、閉経、更年期、離婚、老い、親の介護……。
女性が一度は直面すること、そして必ず男性が関わること。
ようするに‘人間の’悩みです。
そして詩人である彼女の、思わず朗読してしまいそうな言葉の流れが素晴らしい。
読んでいて音読したくなるのは、町田康を読むときに似ています。
身の上相談なのに。
『女の絶望』なのに。
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西日本新聞で「万事OK」という人生相談をしている経験から、よくある相談について、伊藤しろみとしてアドヴァイスをまとめて語っている内容。
自分の経験に即して、落語調の話言葉でさばさばと、笑わせてくれるので、重い内容もけっこう楽に読めます。
子どもがむかつきだしたとき、親の稼ぎが悪いなどと言い出したらこれは群れのリーダーとして罵り倒してでもやめさせなければならない。
ただ思春期は自分がなんなのかわからなくなることがある、そういうときにはしばらく寄り添って歩いていく。
ただ自分自身のことも長くは放り出さずにちゃんとかまってあげて。
若者の行動が気になって腹が立つとき、正義感はもっとも。危険だからやめようと言ってやるのはいい。だが自分と違う生き方が気にくわないというのは言っても無駄。
「あたしはあたし」人と比較してもしょうがない、のが基本。
難しいかも知れないけど、これ真理でしょうねえ。
悩んでいる人が多いというのを実感すると何となく元気が出てくるようでもあり。
何度も離婚し、更年期に突入し、介護もしている〜共感も交えて、なかなかキッチリ語っています。
詩人の著者は1955年東京生まれ。カリフォルニア在住。え、そこから介護に通ってるの?
2008年9月発行。
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軽妙な語り口で、老いと女と人生を語る本です。
伊藤さんの書く文章が本当にいいんだこれが〜!
他人への絶望よりも自分への絶望の方が深い。でも深くてどろどろした際の所に立っているのに笑っていられる女のなんて強いことか。こんな女性になりたいなあ。
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伊藤比呂美が「伊藤しろみ」の名前で女性読者のさまざなな悩みに答えて行く。悩みの内容は女性としてのパートナーとのもめごとや、老化、更年期に関するもの。文体が江戸弁で「ひ」と「し」が入れ替わっていて、真剣に答えているんだけど、暗くなりすぎず、声に出して読みたくなってしまう。江戸弁は最近使っている人は落語の世界でしか見られなくなりましたが、方言の一つなんですよね。著者も年齢を重ねて同じ内容の悩みの解答も以前のものとは変わってきたと書いてあります。パートナーとうまくいかない場合、以前は「話し合いなさい」とアドバイスしていたらしいけど、それができないから悩んでいるのですよね。
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これは男の人が好んで読む本ではないかと思ったぐらい
女の事が内臓の内側から書いてあると思った。
これは自分で買って読まなくては
人に貸してもらって読むと恥ずかしいと思った。
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(再読)
(2013/9/7了)
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(一読)
こないだ図書館で夏石鈴子の『虹色ドロップ』を借りたら、目次を見ているだけでどきどきウキウキしてきて、目次からとんで、ちらっとあちらを読みこちらを読み、「あとがき」を読んだりしていると、ああもうたまらんと、次の日に本屋へ行って買ってしまった。目次は版元のポプラのサイト(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=80006760)にある(「十二年」という文章の一部を立ち読みもできる)。立ち読みのできる「十二年」もいいのだが、「五月生まれの女の子」にずきゅーんときた(私も五月生まれやし)。
イッキに読むのがもったいなくて、ちびちびと読んでいる。
伊藤比呂美の『女の絶望』の紹介の一文もこの本にあり、図書館でまた借りてきた。この本が出た頃に、てっぺんのほうから途中まで読んだのだが、そのときはどうも乗らなくて、中途で返してしまったのだった。こんどはどうか。
「ひ」が「し」になる江戸弁のしゃべりで、伊藤しろみ(著者の伊藤比呂美ではない、ということになっている)が「身の上相談」にずんずんとこたえていくエッセイである。こんどは、ずんずんと読める。うひひと笑えて、ちょっとしっぽりする。この本も、目次(http://books.google.com/books?id=zZ-KPgAACAAJ)を読むだけでもおもしろい。
▼「あたしはあたし」と思い、「あたしが一番大切」とはっきり思えるようにならなきゃ、「人は人」へ、たどりつけない。(p.252)
▼「あたしはあたし」
これを唱えてるてえと、生き方にブレがない。苦労はするけれども、自分に真っ正直に生きられて、つまりは悔いが残らない、そう見極めました。
(中略)
ところがここにきて、呪文が効かなくなっちゃった。
それが介護。人の思惑なんか気にしない、「あたしはあたし」、と今までいいつづけてきましたから、今回もいいたいんですけども、そうはいかのきんたま。親といえども自分ではなく、自分ではないといえども、やっぱり気にかかる。(p.263)
そして、伊藤比呂美の本を読んでしまってから、また『虹色ドロップ』をちらりちらりと読む。
この『女の絶望』のことを、夏石鈴子はこんな風に書いている。
▼…この本の良さ、伊藤比呂美の正しさを、果たして男や若い女がどれだけ理解できるのか大変疑問に思う。これがわかったら、ちゃんとした大人、とわたしは思う。一度、読んで下さい。(p.251)
(2010/8/27了)
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友人で、何かにつけて閉経や老いに結びつけ恐怖に思い喚き散らす女がいる。
そいつに読ませてやりたいと思った。
でも書いてあることはその実当たり前の事であり「わたしはわたし、他人は他人」とか「人は変わらないので自分が変われ」とか。
ここで自分が青いと思うのは、人は変わらないとは思っていながらも、つい口で攻める所だと思った。わかっちゃいるんだが傲慢故に止めらんないんだな。
それにしてもこういう人生相談ってみのもんたでも思うけど、周りに友達とかいないのかね。
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母の本。母っていうものを知りたくて読んでみた。
ただ身内から借りるもんじゃなかった…(笑)
最初は口語すぎて読みづらかったけど、リズムを掴むと一気に読めた。
絶望ってすごい。読んで希望が湧いた!っていうよりやっぱり絶望は絶望だった。
おもしろい本。自分じゃ買わない。
ちょっと泣いた。
苦労は買ってでもしろってもので。
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タイトルがまずいい。そして中身も。落語調で女(と男の関係が主だけど、親子関係などもあり)の絶望的な悩みに回答していく。
色恋沙汰とか性とかの話が多いので、電車の中で読むのは若干気後れするのと、江戸っ子調なので、「ひ」が全部「し」になるのが若干読みにくい(ときどきよみ間違える)けれど、いちいち言うことはもっともだとうなづいてしまう。
結論としては、「あたしはあたし ひとはひと」ですね、しろみねえさん。
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楽しく読めた。そうか、話し合っても分かり合えなくて当たり前か。と、パートナーもいないのに思ったりした。結婚も離婚も、出産も妊娠も子育てもしていないので、それをしたら、もっと深く読めると思う。
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紫式部文学賞などを受賞した『とげ抜き』の延長線上にある、伊藤しろみさんのお話。
自分も老いてきて、両親も老いてきて、旦那も老いてきたしろみさんが、新聞で連載している人生相談に答えながら「更年期の女」の絶望を江戸訛りで景気よく喋る。長い間人生相談を受けてきたからこそ、だんなさんをとっかえひっかえして、外国に住みながら熊本の両親の介護をしながらの海千山千のしろみさんだからこそ得られた真理、惜しげもなくであります。この「惜しげもなく」というのがいい女なんだなぁと思うのでした。
本の宣伝には「更年期」だの「絶望」だのあるけれども、いやこれは二十代三十代の男子が読むとよろしい。読んで久々に、中高生依頼の「耳年増」になって彼女なり奥さんなりとつきあっていくと、きっと家庭円満なんじゃないかなぁと思う次第です。なんだろうね、この「これさえ肝に銘じておけば大丈夫な気がする」という安心感。
いいものです。
夫婦関係、困ったときの常備薬におひとつ。
「わたしはわたし、他人は他人」。
本文にあるとおり、「わたしはわたし」ができても「他人は他人」がなかなかできねぇんだよなぁー、というの、よくわかります。
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あ~更年期、誰もが通る女の道。悩める相談内容に絶望を感じるばかりだけど、それを淡々とかるく語ってゆくしろみさん。やっぱり女は強い。「がさつ、ずぼら、ぐうたら」を合言葉に絶望を乗りきりたいな。
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表現が直截すぎて、露悪的。あんまり男女のことに興味がないまま年を取ってしまったからかもしれない。
介護のところは親殺しをもう一度(場合によってはもう何度も)することだ、と書いてあり、ある意味で覚悟ができた。
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今回はいつもに増してサバサバと、ざっくざくと自分の意見を勢いよくだーっと書き殴ったような印象。
人生相談、しろみさんにしたい人じゃなきゃひるむかも。
好き嫌いが分かれるところ。
ちなみに嫌いではない。
が、文章に負けず、だーっと流し読み。
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何でも書く詩人の伊藤比呂美さん「女の絶望」、2008.9発行。これは、小説か、エッセイか、経験談か?! 海千山千の著者の身の上相談、セックス相談。サラッと流し読みぐらいがいいと思います(^-^)