「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.6
- 出版社: 日本経済新聞出版社
- サイズ:20cm/401p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-532-35313-1
紙の本
アジア三国志 中国・インド・日本の大戦略
中国、インド、日本。かつて一度も、アジアで強国が3カ国も共存したことはない。この混迷の時代を、世界とアジアはどう乗り切るべきか? 国家戦略を描き出し、21世紀アジアの巨大...
アジア三国志 中国・インド・日本の大戦略
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
中国、インド、日本。かつて一度も、アジアで強国が3カ国も共存したことはない。この混迷の時代を、世界とアジアはどう乗り切るべきか? 国家戦略を描き出し、21世紀アジアの巨大な可能性とその裏に潜むリスクを解説する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ビル・エモット
- 略歴
- 〈ビル・エモット〉1956年イギリス生まれ。英『エコノミスト』誌東京支局長等を経て、同誌編集長を務めた。ジャーナリスト。著書に「日はまた沈む」「日はまた昇る」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
本書を読まずして、アジアの未来は語れない
2008/11/18 22:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
重厚な本である。『日はまた昇る』が二匹目のどじょうをねらっただけの安易な本であったとすれば、本書は一転して読み応えたっぷりな仕上がりとなっている。読書家の旺盛な知識欲に応えるだけのものが、ここには詰まっている。
日本、中国、インド3ヶ国の行く末を巧みに絡ませながら論じてあり、示唆に富むところが大きい。本書が書き上げられたのは2008年の冒頭であるため、11月現在、この3ヶ国を含む国際情勢は、当時とは違ってしまったところがある。しかし、その齟齬を来している部分を含めてなお、読むに値する洞察力を著者は披露している。
中国に関しては、20世紀の大戦のなごりのために、思わぬ反日感情がわき起こることがあり、当惑させられることが多い。経済的には緊密さを増す一方であるから、この部分に活路を見い出したいところであるが、なかなか簡単にはいかない。著者は、日中間に横たわる過去および現在の問題点をきれいに整理して提示してくれるので、二国間の関係を考察するのにとても役に立つ。
一方のインドであるが、IT産業が国力を押し上げているといった程度のことしか思い浮かばないかもしれないが、中印間のパワーゲームの複雑さを、これまたきれいに示してくれている。日本にとってのインドが重要性を増すのはまだ先のことかもしれない。ただし、ここに中国が加われば、非常に利害が錯綜することを教えられた。
本書を評価するのは、ビル・エモットという欧州人の視点から3国が論じられているからである。かなり中立的な視点で、大小の問題をひとつひとつ丁寧に解きほぐしてくれている。アジア全域の様々な事象をほぼ網羅的に扱ってくれているのは、リファレンスとして好適である。
アジア三国志といいながら、最後の提言の部分では米国の果たす役割の大きさが繰り返し出てくる。書名との相違に違和感を覚える向きもあるかも知れないが、これは事実としておさえておかねばならないだろう。
事実、サブプライムローンに起因する米国経済の変調は、世界全体を巻き込んでいる。依然として、米国の存在はとてつもなく大きい。当初、デカップリング論なるものがマスコミに登場して、もはや米国頼みの世界ではないから、世界経済に与える傷は浅くて済むという説がまことしやかに語られた。
ところが、リーマン・ブラザーズの破綻から世界経済全体が変調を来し始めている。著者は3国関係をはじめとするアジア地域にも、米国が適切に関与することを提言しているが、非常にネガティブな形で、このことを裏付ける現下の世界情勢となっている。皮肉なのは、本書を執筆するにあたって、リーマン・ブラザーズのエコノミストの力も借りている点である。
ひとつ気がかりなのは、本書に書かれている金正日の去就である。執筆当時は健在であったが、今ではどういう健康状態でいるのかも分からない存在となっている。金正日なきあとには、中国が朝鮮半島に関心を向ける可能性があることなどを著者は指摘しているが、思ったよりも早く金正日の健康問題が浮上している。
十分な準備がないままに、北朝鮮に権力の空白が生じているとすれば、著者が言うような利害の衝突が朝鮮半島で起きるおそれがある。ここでの有事は、中印間のそれとは違って、日本にも直接的に影響してくる。著者の示しているシナリオを早急に検討し、その時に備えなくてはならないだろう。それにしても、世界を覆う金融危機に関心を奪われて、半島情勢の危うさを指摘する報道の少なさに危機感を覚えるのは私だけだろうか。
チベット問題も中国国内の事情として片づけることができない困難さを秘めている。ダライ・ラマ14世が力を失った後に、どういう悲劇が待ち受けているか、国際社会は注視していなければならない。
さらりとは読めない重厚さを持ち合わせているが、これだけ広範にアジア地域事情を洞察して見せた書物にはなかなかお目にかかれない。着眼点のよさと、著者のたしかな取材力は素直に評価できる。