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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.5
- 出版社: 徳間書店
- サイズ:20cm/299p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-19-862529-0
紙の本
世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃
著者 ジョセフ・E.スティグリッツ (著),リンダ・ビルムズ (著),楡井 浩一 (訳)
イラク戦争にかかった費用は3兆ドル。この膨大な経費は、アメリカ経済、そして世界経済にいかなる衝撃を与えているのか? ブッシュ政権によるコスト隠蔽操作を暴き、戦争という巨大...
世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃
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商品説明
イラク戦争にかかった費用は3兆ドル。この膨大な経費は、アメリカ経済、そして世界経済にいかなる衝撃を与えているのか? ブッシュ政権によるコスト隠蔽操作を暴き、戦争という巨大ビジネスが引き起こす負の連鎖を看破する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョセフ・E.スティグリッツ
- 略歴
- 〈ジョセフ・E.スティグリッツ〉1943年米国生まれ。コロンビア大学教授。経済学者。ノーベル経済学賞受賞。
〈リンダ・ビルムズ〉ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。財政のエキスパート。元商務次官補、首席財務官。
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紙の本
責任をとれ!
2012/01/19 04:24
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いったいあのイラクでの不毛な戦争にアメリカはいくらつぎ込んだのか。
イラク政策の真の戦費とそれがアメリカ経済、世界経済に及ぼす影響を分析を行ったレポートを書籍化したものが本書である。
『慎重に、粘り強く算定されたその額が、三兆ドル。ただし、これはあくまで、計算可能な具体的コストの控えめな見積もりに過ぎない。イラク政策がもたらした原油高、財政逼迫、アメリカ経済の低迷、そこから派生したサブプライム問題など、波及的かつ長期的な“見込損失”は計上されていないのだ。』
三兆ドルという数字だけでも、気の遠くなるようなものであるが、これには上記の様々な派生的費用は含まれていない。また、本書を読めば、この数字でさえ、かなり“控えめな”算定であることがはっきりする。
誰が、何の権利を持って、これだけの“壮大なるムダ”を実行に移すことができるというのか。
そして、現在のイラクの姿を見たとき、この出費がほとんど意味の無いもの、むしろ世界に害をもたらすものであったことが明確に立証される。
あの時、開戦を主張したアメリカに対し、国連をはじめフランス、ドイツなどきっぱりと反対した勢力も確かにあった。これだけの反対があれば、アメリカ単独の意志では決して開戦を決断できなかったはずだ。
しかし、同時に、即様、アメリカに賛同し、アメリカの開戦を後押しした勢力もあった。それは、特にイギリスと日本である。
ちなみに本書の試算によると、この戦争での日本のコスト負担は3070億ドルらしい。これは軽く30兆円を越える。
全く“ムダな”“バカげた”“自分勝手な”戦争に荷担した人々は、誰一人として当たり前のように責任をとっていない。
その代わりのように死んでいったのが、多くの末端の兵士と、イラクの一般の人々である。
また多くの人たちが、この戦争によって、肉体的・精神的ダメージを受けている。本書では、退役軍人にかかる医療や障害補償、社会保障といった費用の算出にもつとめているが、これもまた膨大な数字になる。そしてイラクの街には、この数字にカウントされないまま、いまだに苦しみ続けている人々が多くいる。
この責任を誰がとるというのか。
本書での試算に当たって、筆者は言う。
『多岐にわたる支出の、輪郭が曖昧、内訳が曖昧、出所が曖昧なうえに、過小な計上、項目のすり替えや除去、現金主義会計による将来的コストの隠蔽など、出費を小さく見せる操作の網が、何重にも張り巡らされている』
責任の所在どころか、責任の大きさそのものさえ曖昧にしようとする権力の横暴が許されてはならない。
さらには、もう一度、あたまに帰って考え直す必要がある。戦争のもたらす害悪は、本当は、お金の問題では無いこと。
戦争によって粉々に壊されてしまうのは、人々の命と尊厳と希望なのだということ。
紙の本
イラク戦争のコスト分析と、同じ過ちを繰り返さないための提案
2009/01/10 15:26
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル経済学賞受賞(2001年)のスティグリッツ教授とビルムズ女史によるイラク戦争のコスト分析。2003年にアメリカが始め、未だ収拾がつかないイラク戦争。その戦争にかかったコストを3兆ドルと見積もったのがサブタイトルにもなっている。その額も控えめな見積もりと著者は書いている。開戦当時はそんなにコストがかからないとブッシュ政権は世論を誘導した。しかしそれは今では暴走、失策と批判されている。現実には大義であったイラクの民主化どころか、治安の改善も果たされていない、という。
本書では戦争には兵器や兵士の給与など直接的でハード面のコストだけではなく、様々なコストが隠されていることが分かる。そのコストをこと細かく分析している。負傷兵の治療費、退役軍人への補償金・恩給・障害手当、復興費用、兵士採用コストなどなど切りがないほど。それを忍耐強く分析して算出したのが本書である。過去・現在だけでなく将来の引き揚げコストもある。
死傷することで兵士が本来稼げたであろう収入や、収入が減ることによる生活水準の低下(国の補償では不十分)、精神的負担。また負傷した帰還兵を母国で看病する家族や地域が支払うコストも忘れてはならない。兵士には過大なストレスがかかり精神的な障害を負う者も多いという。最も思いコストを背負わされているのは兵士たちで、それは金額では表せない。価値のある、有意義な戦争があるかどうか分からないが、イラク戦争に限って言えば、まさに壮大なる空費であり、人命・人権の軽視だろう。
それらのコストはアメリカ国民だけでなく、世界各国にも背負わされている。3兆ドルというのはアメリカに課せられる分だけのコストなのだ。しかも将来に渡って付けを支払わされる。例えばイラクの近隣諸国などは大量の難民を受け入れ負担を強いられている。イスラム圏ではアメリカを世界平和に対する脅威と感じ、不快感を高めている。
イラク戦争は単にイラクを破壊し、イラク人や兵士に死傷者を出しただけでなく、アメリカ経済・世界経済にも大きな影響を与えた。中東情勢が不安定化し原油が高騰したこともその一つ。
著者はイラク戦争に投じられた資金を別の事業に回せていたら得られたはずの利益についても考えている。3兆ドルあれば深刻な危機にあるアメリカの社会保障制度の改善や住宅、教育、代替エネルギー技術の開発への投資、途上国への援助が出来ただろうという。「たられば」になるが経済成長率も押し上げられたはずで、もっと有意義な使い方があり、そっちにこそ必要とされていたのだ。
サブプライム問題でアメリカが深刻な経済危機に見舞われたため、アメリカの有権者の多くはイラク問題を最重要課題と見なさなくなっている。次の大統領にとってはいつ、どうやって米軍を撤退させるかが課題となる。難しい判断を迫られる。
第8章ではイラク戦争と同じ過ちを繰り返さないための18の改革案を提起している。大統領の権力濫用を防ぎ、のちのち高くつく判断ミスを未然に防ぐのが目的だ。
最後に書かれている「戦争を気軽に始めてはならない。最大の冷静さ、最大の厳粛さ、最大の注意深さ、最大の慎み深さ・・これらをもって臨むべき行為が戦争」という言葉は国のリーダーは勿論、国民もしっかり認識しておく必要があるだろう。