bk1 オンライン書店ビーケーワン

送料無料キャンペーン10,000円以上(税抜)、30,000円以上(税抜)、50,000円以上(税抜)購入でもれなくポイント進呈!寄付コースもあります

> トップ > 書評一覧

1 - 30 / 290 件
写真への旅 写真への旅
toku/写真を通した『私』の微分積分が、『私』を新たな境地へと導く
 本書は、昭和50(1975)年、『アサヒカメラ』に連載された『荒木経惟の実戦写真教室』をまとめたフォトエッセイ。 天才アラーキーが全国のアマチュアカメラマンと撮影合戦を行った実戦写真教室。 そこから伝授される写真の極意とは果たしてどんなものか。 早速、天才の神髄をモノにしてやろうとページをめくった。 ところが……。 ダジャレとジョーク、そしてマシンガントーク。 意味があるのかないのか、真剣なのかテキトウなのか。 氾濫する言葉。 言っていることの半分程度しか理解できない。 ここで挫けてはならぬ! 天才の言葉なら多少の意味不明もしかたない。 じっくり言葉を噛み砕いてやる! 途端に言葉の渦に巻き込…  全文読む 評価する

冤罪 冤罪
toku/嬉しくても悲しくても丸みを帯びた感情の突起が、心地よく心を刺激してくれる短編集。
 武家もの九編の短編を収録。 藤沢周平の短編集の書評を書くとき、収録作品に共通するテーマのようなものを見つけ、コメントを付けることが多い。 しかし、あとがきにあるとおり、収録作品にはまとまった傾向がなく、共通点は見つけられなかった。 代わりに感想的な共通点を挙げるなら、「嬉しくても悲しくても丸みを帯びた感情の突起が、心地よく心を刺激してくれる」ということだろう。 そんな刺激の心地よい収録作品の中で、暖かな春の心地をもたらしてくれる【冤罪】が一番気に入っている。【証拠人】 佐分利七内は、荘内藩が新規召し抱えを募っているという噂を聞いて、人足をしていた上州高崎からやってきた。 七内の頼みの綱は、二…  全文読む 評価する

吉田自転車 吉田自転車
toku/ばかな自転車エッセイは、ナイスバイク号との蜜月の日々を綴ったものだった。
 吉田戦車のイラストエッセイ『なめこインサマー』があまりにも面白かったので、同じくイラストエッセイの『吉田自転車』を手に取った。 本書は、主に調布界隈を、マウンテンバイク『ナイスバイク号』でぶらつきながら綴った自転車エッセイ集。 自転車での散歩をポタリングと言うらしいのだが、著者のポタリングは八方へと広がり、珍エピソードを量産する。 中年男三人組で寄った喫茶店。二つの甘い物を味見しあう男たち。女性店員は顔をそむけた。 多摩川サイクリングロードを満喫したあと、深大寺温泉に向かった。口ずさむ『北の国から』のテーマソングが洞窟の湯に響きわたる。 我が子の補助輪外し大作戦。子供を見守る著者は、歩道でぐ…  全文読む 評価する

なめこインサマー なめこインサマー
toku/「伝染るんです。」の作者吉田戦車の虚実入り交じったシュールなエッセイ。
 ファミレスでの昼食。 著者はなめこそば、娘はお子さまランチ。 食べ終わったあとに、娘は悲しそうな顔で言った。「私もなめこが食べたかった!」 著者は娘に言った。「じゃあ今日のおやつはなめこにしよう」 娘はニッコリうなずいた。【なめこインサマー】 これが、このイラストエッセイ集のタイトルの由来である。 こんな常識の枠を外れたエッセイが、この本には詰まっている。 それもそのはず、著者はシュールすぎるマンガ「伝染るんです。」の作者なのである。■大まかな目次・ニューボンボン・吉田戦車の珍ごはん・その他エッセイ * * * まずは『ニューボンボン』 この意味不明のタイトルについては、各自好きに考えて欲し…  全文読む 評価する

ふしぎ盆栽ホンノンボ ふしぎ盆栽ホンノンボ
toku/道教的宇宙観に基づいてつくられているという、ユルい雰囲気漂うふしぎ盆栽ホンノンボの正体とは。
 まず鉢に水を張る。 そこへ岩山に見立てた石を置く。 つぎに、その石の所々に植物を植える。 仕上げとして、いい加減な造形の人や動物、建物のミニチュアを置く。 ベトナムの盆栽ホンノンボの作り方だ。 全体的にユルい雰囲気が漂っているからといって侮ってはいけない。 ホンノンボは道教的宇宙観に基づいてつくれれており、 碁を打つ老人は寿命を司る神を表象し、 囲碁は時の流れの外にある桃源郷のシンボルであり、 虎やワニは……。 こうして著者は、ベトナムで出会ったユルい雰囲気漂う不思議な盆栽ホンノンボの虜となった。 掲載されているホンノンボの写真を見ていくと、ユルい雰囲気と不思議な時間の感覚に自然と癒されてい…  全文読む 評価する

仏壇におはぎ 仏壇におはぎ
toku/自然体で、自分の時間の流れを持っている著者は、まるで猫のようだ
 毎年十二月に、動物写真家・岩合さんの猫カレンダー目当てで買っているアサヒカメラ。 残念ながら、今年の2012年1月号には猫カレンダーが付いていない。 毎年楽しみにしていた岩合さんの猫が見れないとは……。 と、気がつけば猫関連の本を二冊買っていた。 一冊は、岩合さんの猫写真集『きょうも、いいネコに出会えた』 もう一冊は、写真家・武田花さんのフォトエッセイ『仏壇におはぎ』 このフォトエッセイは猫中心のものではないけど、猫がたくさん映っている。 写真はすべて白黒ばかりだけど、色がついて感じられるから不思議だ。 もしかしたら、淡々と綴られたエッセイが写真に色をつけているのかもしれない。 子供の頃、乗…  全文読む 評価する

かぼちゃの馬車 かぼちゃの馬車
toku/人は外見だけでは判断できないが、外見がその人に大きく関与していることも否めない。
 28編を収録したこのショートショート集には、外見に関わる作品が多数収録されている。 自分はペキ星人だと言い張る、見た目が地球人の男。彼が犯罪を犯したら裁かれるのか。【なるほど】 醜い姫が幼い頃から美しく映る鏡を見続けて育ったら。【虚像の姫】 交通事故で瀕死の社長を外見は気にせずサイボーグ化し、金の義手義足を付けたら。【外見】 本人の識別を高度に認識する機械に頼った世界。それが壊れたとしたら。【確認】 これらを読んでいると、人は外見だけでは判断できるものではないが、外見がその人に大きく関与していることも否めない、とあらためて思う。 収録作品の中から気に入ったものをいくつかピックアップ。【樹】 …  全文読む 評価する

ゼロの焦点 ゼロの焦点
toku/なぜ夫と打ち解けていない妻が夫の失踪を追うのか。制作の謎を楽しんだ。
【あらすじ】 板根禎子(いたねていこ)は人に薦められるまま、鵜原憲一(うはらけんいち)と結婚した。 鵜原は広告社に勤務する北陸方面の出張主任で、月に二十日は金沢、十日は東京で過ごす生活をしている。 しかし、今度の出張を最後に東京の本店勤務となる予定である。 禎子は鵜原との新婚旅行に北陸を希望した。 夫が二年の間、月に二十日も生活している土地を見ておきたかったのだ。 ところが鵜原は、いかにも飽き飽きしているというように別の場所がいいと言った。 その言い方には拒絶めいた響きがあった。 新婚旅行から帰って十日後、鵜原は最後の出張に発った。 夫は一週間後に帰ってくる。 夫には多くの未知があったが、それ…  全文読む 評価する

のんのんばあとオレ のんのんばあとオレ
toku/水木しげるの少年時代を描いたマンガ。心の栄養の詰まったこのマンガが近くにあることの幸せ。
 近所に住んでいた『のんのんばあ』との交流を中心に、水木しげるの少年時代を描いた自伝的マンガ。 水木しげると妖怪の関係を決定づけた少年時代の出来事が描かれつつ、心の栄養が詰まったマンガだった。 妖怪や『見えんけどおる』ものの存在、さまざまな言い伝えをのんのんばあに教えてもらった少年水木しげる。 水木しげるは少年時代、さまざまな出来事に心を痛めた。 好きだった女の子の死、売られていく女の子、ガキ大将の座をめぐる仲間同士の争い。 そんな出来事に傷つくしげる少年を、のんのんばあや父は優しく慰める。 その言葉は的確に心の傷をいたわり、心が強く優しくなっていくように癒していく。 好きだった女の子が死に、…  全文読む 評価する

きょうも、いいネコに出会えた きょうも、いいネコに出会えた
toku/とにかくいろんなネコに癒されました
ボクは犬派。なのに近頃なぜかネコが気になる。写真家・岩合さんのネコ写真集を手に取った。猫。ねこ。ネコ。全国のネコがいる。港町のネコ。古都のネコ。雪国のネコ。幸せそうなネコがいる。ノラネコ。飼いネコ。自由なネコ。じゃれあうネコ。じっとこっちを見つめるネコ。くたーっと伸びてるネコ。あぁ、癒される。マイペースの気楽さが伝わってくる。心がほぐれる。心地いい。ネコをなでる。気持ちよさそうに目を細める。でも本当はネコたちがボクの心をなでているに違いない。きょうも、いいネコに出会えた。***岩合さんの撮影旅話にオールカラーのネコ写真。とにかくいろんなネコに癒されました。とくに『裸のマハ』ネコには癒されたなぁ…  全文読む 評価する

ユーラシア横断1万5000キロ ユーラシア横断1万5000キロ
toku/ユーラシア横断の旅にロシアの愛すべき人たちを見た。
 本書は、2003年7月30日から9月4日にかけて、中古カルディナでロシアを横断してロカ岬までを走破した旅の記録である。 東京から富山伏木港まで日本を縦断し、ウラジオストクからサンクト・ペテルブルグまでロシアを横断、フェリーでドイツに入り、そこからロカ岬まで南下した。 この旅に同行したのは、カメラマンの田丸氏とロシア人通訳の二人。 本書はロシア横断の旅が中心に描かれている。 無愛想な接客のサービス業、ワイロ警官、フレンドリーな中古車ブローカー。 日本ではまず見られないクセのありそうな彼らが、なぜだか愛すべき存在のように思えてくる。 この気持ちは、その国を通過し回想する旅ならではの感慨なのかもし…  全文読む 評価する

吉岡清三郎貸腕帳 吉岡清三郎貸腕帳
toku/武蔵のせいで一門断絶となった吉岡の嫡流が活躍。ハードボイルド風エンターテインメント時代小説。
 おれは吉岡清三郎。貸腕屋をやっている。 腕を元本として貸しつけ、返却の時に利息を取る。 言ってみれば、金貸しの親戚のようなものだ。 利息は、相手が誰であろうと容赦なく取り立てる。 利息の形に、おさえという小娘を下女として働かせているが、同情からじゃない。 おさえを女郎屋へ売り飛ばせば、複利すら払えないこいつの父親が首をくくりかねなかった。 利息を完済する前に成仏されたのでは、こっちが浮かばれない。「お客さまです」 噂をすれば、だ。相変わらず陰気な声を出す。 よく働くが、作る飯も不味い。おれは味にうるさいのだ。 さて、今度の客も気にくわなければ追い返してやる。 さっきも勝二とかいう小悪党を追い…  全文読む 評価する

きまぐれ博物誌 きまぐれ博物誌
toku/好奇心おもむくままのきまぐれエッセイ集。【SFの短編の書き方】は本書のメインディッシュ。
 本書は昭和43年から45年の3年間に書かれたエッセイを収録したもの。 文庫本化に際して二冊に分けた『きまぐれ博物誌』の下巻エッセイ集。 内容は多岐に渡る。 収集に凝ったアメリカの一駒漫画のこと、幼い頃の思い出、SFのこと、宇宙のこと、火星人のこと、など他のエッセイと同様、好奇心のおもむくままのエッセイ集となっている。【小松左京論】 興味深いSF論が語られているエッセイである。「小松左京のユーモアは開放的であり、星新一のは閉鎖的である」 開高健氏がある雑誌に書いたという、この批評を星新一本人が分析し、解説する。 ある時、小松左京は、SFはいかなる分野とも接触できる性格を持っていると、星新一に語…  全文読む 評価する

鬼太郎夜話 鬼太郎夜話
toku/あれこれ悩みすぎず、その場の感覚で行動する鬼太郎が心地いい。墓場鬼太郎は水木しげる自身なのかもしれない。
 この『貸本版 鬼太郎夜話 完全復刻版BOX』は、かつて三洋社から出版された、貸本版鬼太郎夜話全四集をセットにしたもの。 再び鬼太郎・水木しげるウェーブを起こした、テレビドラマ『ゲゲゲの女房』で説明すると、村上弘明演じる深沢洋一氏の出版社から出された本になる。 その後、社長入院のドタバタで消えてしまったあの原稿は、第五集になるはずのものだったらしい。 収録の物語はというと、各集それぞれにタイトルがついているものの、重なりながら連続しており、長編に山場がいくつもある構成になっている。 物語自体シンプルなのに非常に楽しめるのは、この構成の妙もあるのだろう。【第一集 吸血木と猫娘】 歌手のトランク永…  全文読む 評価する

時間はだれも待ってくれない 時間はだれも待ってくれない
toku/東欧文学は他と接触するのも距離をおくのも自由であるSFのような存在
 本書の解説の中で沼野義満氏は、東欧の作家について「(西の形式と東の崩壊の)境界上の存在であると自覚した作家は、ときに内にこもってアイデンティティを確立し、ときに境界を越えて前衛性を発揮する」 と論じた。 ちょうどそのとき、星新一のエッセイ【小松左京論】(『きまぐれ博物誌続』に収録)を読んでいて、沼野氏の解説との関連性を覚えた。 星新一はエッセイの中で以下のように語る。----- ある時、小松左京が私に言った。「SFというのは、いかなる分野とも接触できるという不思議な性格を持っている。SFととなりあわせでないものを探すのに苦労するほどだ」 ちょうど同じころ、私もそれと似てまったく逆のことを思い…  全文読む 評価する

勝負 勝負
toku/新緑のにおいがむせ返る初夏のように、剣客の哀歓が濃厚に立ちこめる。
 とうとう、大治郎と三冬に念願の子が生まれた。 なのに大治郎ときたら、その頃剣客と勝負をしていたとは。 まぁ、大治郎にも言い分はある。 常陸笠間八万石、牧野越中守は剣客・谷鎌之助を剣術指南役として召し抱えようとしていた。 ただし、「秋山大治郎に打ち勝つこと」という条件つきである。 実は大治郎、以前に牧野越中守の誘いを断っていた。 牧野越中守は、「大治郎より強い剣客を」という意地もあり、田沼意次を通して勝負の申し入れをしてきたのだ。 意次曰く、「こたびは立ち合わねばなるまい」であった。【勝負】 子が生まれたら生まれたで、なかなか名が決まらない。 小兵衛はあれこれ考えているのだが、鯉だとか鯛だとか…  全文読む 評価する

春の嵐 春の嵐
toku/剣客は恨みを買うことも覚悟のうえ。しかし恨みとは関係のない企みが秋山父子を襲う。
 剣客商売シリーズで初めての長編作品。 剣の道を通して、人の哀歓や欲望、苦悩などを描き出してきた剣客商売。 しかし本作品では、少々毛色の違う事件が秋山父子を襲う。 三冬が念願の子を身籠もり、小兵衛も大喜びで、年が暮れようとしていたある日。 八百万石の旗本が、頭巾の侍に斬り殺された。 供をしていた小者の権蔵は生き残り、頭巾の曲者が、「あきやま、だいじろう」 と名乗るのを、確かに聞いた。 それから十日後。 権蔵は、金王八幡の近くで、頭巾の侍を見かけた。(あっ、たしかに、あの畜生だ) と確信した権蔵は尾行を開始。 ところが、その日、権蔵は屋敷に帰らず、翌日になって、血まみれで息が絶えようとしていると…  全文読む 評価する

隠れた脳 隠れた脳
toku/我々の行動の影に隠れた脳の姿あり。その事実をドキュメンタリー風記事で紹介した行動心理学本。思考のたたき台として楽しめる。
 非常に楽しめる充実の一冊だった。 本書は、脳の無意識の働きを明らかにした脳科学の本ではなく、行動心理学の本という印象を受ける。 著者は、無意識のバイアスの作用である『隠れた脳』を次のように定義した。「私は隠れたところで人に影響を与える力を、”隠れた脳”という造語によって表したい。隠れた脳とは要するに、気づかないうちに私たちの行動を操るさまざまな力のことを言う」 そして、「大勢の人に、私たちは隠れた脳に操られているということを伝えたいと思った」と語る。 しかし、私は『隠れた脳(無意識のバイアス)に操られている』ということに、反発を覚えた。 あたかも、自分の行動に自分とはまったく関係のない力が働…  全文読む 評価する

はて、面妖 はて、面妖
toku/クローズアップされた七人の面妖な行動。そこから垣間見える人間臭さは、哀れで滑稽で痛快。
 岩井三四二の作品は、戦国時代を舞台にした作品に珍しく、ある人物や集団にクローズアップしたものが多い。 そのせいか、登場人物の生々しい声が聞こえてきて、その時代の人物が身近に感じるし、ユーモラスな描写が非常に面白い。 そして本書では、書籍名のとおり「はて、面妖」と言いたくなる登場人物の行動にクローズアップ。 その登場人物の奇妙な行動から垣間見える人間臭さは、哀れで滑稽で痛快である。 心地よい読書タイムだった。 ところで、信長を『あの人』と表現した【花洛尽をあの人に】や、『毒を呪わば穴二つ』をもじった【人を呪わば穴ひとつ】のタイトルのうまさは、何度見てもため息が出る。 他の著書の作品にも味のある…  全文読む 評価する

歴史REAL 歴史REAL
toku/豊臣大坂城下復元図に驚嘆し、大坂冬の陣図屏風に面白さを見いだし、新しい知識に出会うのが楽しい一冊。
 表紙をめくって度肝を抜かれた。 A4二枚分に描かれた『豊臣大坂城下復元図』である。 この鳥瞰図は、町まで飲み込む惣構を外郭とした大坂城と、その外側に築かれた真田丸、そしてその周辺の町などを復元。 城や町屋などの建造物が描かれていることで、相対的な大きさが認識でき、大坂城郭の巨大さが圧倒的迫力で迫ってくる。 全体像だけを確認できる配陣図では得られない迫力がある。 その裏をめくって、心を奪われた。 大坂冬の陣における、さまざまな場面を一つに描いた『大坂冬の陣図屏風』である。 本丸内の秀頼、キセルをふかす足軽、鉄砲の手入れをする足軽、汁物を売る商人、馬を届けに来た馬の仲買人、そして天満口の攻防戦や…  全文読む 評価する

きまぐれ博物誌 きまぐれ博物誌
toku/思い出話、プライベート、仕事、小説、社会、未来。さまざまなことをあれこれ語るきまぐれエッセイ集。
 昭和四十三年から四十五年に書かれた星新一のエッセイ集。『きまぐれ星のメモ』に続く第二弾。 文庫本にする際、量が多いため『きまぐれ博物誌』と『きまぐれ博物誌・続』の二冊に分けたそうだ。 本書は気の利いた一文で始まる。「ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九.七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたを起こさないよう祈りましょう」 これは、星新一が友人たちに宛てた年賀状の文面。 年賀状はデザイン重視にしてしまいがちだが、こういうユニークでユーモラスな文面重視の年賀状もよさそうだ。 …  全文読む 評価する

待ち伏せ 待ち伏せ
toku/皮膚感覚のような季節感を伴う剣客商売。晩秋から冬の、もの悲しい雰囲気漂う作品。
 剣客商売を読んでいると、それぞれの巻が季節を纏っていることに気づく。 そして、その季節は、物語に皮膚感覚のようなものを与えてくれているように思える。 例えば、第四巻『陽炎の男』は春から夏。 三冬の中に大治郎の存在が芽吹き始め、心がくすぐったく、どこか落ち着かないような気持ちとともに、作品全体に暖かさと、徐々に増していく夏の暑さのようなものが感じられる。 本書の季節は、晩秋から冬。 夜の空気が冷気を帯びだした晩秋から、その厳しい環境に備えて生命たちが活動を弱める冬の感覚は、そのまま物語全体に、もの悲しく、感傷的な雰囲気を漂わせている。【待ち伏せ】 とある橋の上、大治郎は闇に潜んでいた二人の曲者…  全文読む 評価する

メモリークエスト メモリークエスト
toku/三度の飯より未知が好き。高野秀行の未知好きは他人の記憶にまで。困難で滑稽で意外な顛末の記憶探索プロジェクト。
 本書は、一般の人から世界各地の記憶に残るモノか人を募集し、著者がそれを探しに行くという、まったく新しいノンフィクションである。「なんて面倒くさいことを」とか、「そんなのが面白いのか?」という疑問をお持ちの方は、以下を充分お読みの上、本書をご購入ください。 そうでない方は、迷わず本書をご購入ください。 前置きはそのくらいにして。 常に未知の動物や土地、民族を探索し続けてきた著者。それゆえ多くの読者を惹きつけ、高野本ファンを獲得してきた。 にもかかわらず、ここにきて他人の記憶探索である。「もうネタ切れに違いない」とか、「とうとう他人のふんどしで相撲を取るとは」など、高野秀行の斜陽を心配する声もあ…  全文読む 評価する

文豪てのひら怪談 文豪てのひら怪談
toku/時代とカテゴリーを越えた、バラエティー豊かな怪奇選集。
 本書は、さまざまな作家によって書かれた、怪談・奇談を100編収録したアンソロジー。 その選択の基準は800文字以内。そこから選ばれた100編の作品は、古典から平成まで、そして典型的な怪談から奇怪な詩、果てはユウレイノウタまで、時代とカテゴリーを越えた、バラエティー豊かな選集となっている。 ただ個人的には、夢の中で完結しているもの、詩、ユウレイノウタなどは、怪談とは思えず、これらの作品を収録するならタイトルを「文豪てのひら怪奇選集」とでもして欲しかった。 というのも、文豪たちによって紡がれた、ラフカディオハーンの「怪談・奇談」のような作品が凝縮されたアンソロジーだと思って購入したからだ。 この…  全文読む 評価する

蟲たちの家 蟲たちの家
toku/人間の強い精神活動が時として不思議な現象を引き起こす。
 本書に収録のマンガは、人間の強い精神活動によって引き起こされた不思議を描いた作品である。 どの作品も濃厚な叙情の中に不思議な出来事が組み込まれて、深い余韻を残すラフカディオ・ハーンの『怪談・奇談』のような雰囲気が漂っている。 その中でも、殺人の冤罪で死刑に決まり、残り三時間となった男の牢の中に現れたロウソクの不思議を描いた【ロウソク】が気に入っている。 ロウソクに刻まれた、「時間とは感覚にすぎない。生きたということは単なる記憶にすぎないのです」という言葉が、牢から出ることが叶わない男の身に起きた不思議な出来事に強い説得力を感じさせ、命の尽きようとしている男の心が、わずか三時間で救われたことに…  全文読む 評価する

暗殺の年輪 暗殺の年輪
toku/デビュー作と直木賞受賞作を含む、完成度の高い初期の作品たち。これらは暗いが快く心を撫でる。
 本書はデビューしてから二年の間に書かれた作品を収録している。 藤沢周平の作品が、初期から完成度が高かったことに驚かされた。 収録している作品は、どれも暗い色調の物ばかりだが、嫌な感じは受けない。 むしろ、快く感じられるのは、登場人物たちが、心の声に従って行動する自分に素直な姿が、羨ましく感じられるからだろう。自分の素直な心に従って行動すれば、たとえ結果が悪かろうと、それをしなかったことを後悔するより、心は幸せなのだ。【黒い縄】 おしのは、幼馴染みの宗次郎に出会った。姑にいびり出された形で、出戻ってきたある日のことである。 そのことを母に話していると、植木職人として家に来ていた地兵衛が口を挟ん…  全文読む 評価する

つねならぬ話 つねならぬ話
toku/つねならぬ状態となった作者が綴る物語。
 粗いなぁ、といった感じ。 星新一作品の味わいは、人物の心理描写などを省いたシンプルさと、絶妙に組み立てられた物語の構成、ユニークな着想、意外な結末などが、高度にバランスされていること。 しかし、本書に収録の作品は、どれも、まとまった形を成しているが、文章や構成に、かなり粗い印象を受ける。 そう思うのは、「できそこない博物館」で紹介されている、作品にならなかったものの、それなりに物語として出来上がっているメモの文章と似ているからだ。そして、そこに共通するのは、思い浮かんだ着想と話の展開を、そのまま文章にしていった、という感じなのだ。 と、思っていると、それを示唆するようなものがあった。「二月九…  全文読む 評価する

狂乱 狂乱
toku/人は絶えず狂気と正気のバランスを取りながら生きている。
【狂乱】で、狂犬のような石山甚市について、このように語っている。「あのときの石山の、あの狂暴な所行。狼のごとく光っていた両眼。全身から噴き出す凄烈の殺気。心身の均衡が、いったん破れたときの人間の恐ろしさを、小兵衛は何度も見てきている」 この「心身の均衡が破れたとき」というは、正気を失っているときということだろう。言ってみれば、正気の対義語である狂気ということ。 この心身の均衡が破れた狂気というものに着目して、本書を読んでみると、実にさまざまな狂気があるものだと驚かされる。魔が差して……というのも、この状態ではないだろうか。【毒婦】では、ウツボカズラに引き寄せられる昆虫のごとく、おきよに惹かれ、…  全文読む 評価する

隠れ簔 隠れ簔
toku/武家の苛酷な掟の果てに生まれる人の情
 本書に収録されている七話の作品は、非常にバラエティに富んでいる。●小兵衛が殺された愛弟子の敵を討つ【春愁】●盗人に見込まれ、小兵衛宅に押し入る羽目になった下っ引き傘徳の顛末【徳どん、逃げろ】●盲目浪人と彼を支える老僧の苛酷な掟と、それによって生まれた奇妙な情【隠れ簑】●大治郎の道場へ通うこととなった男の秘められた真実と、亡き師にまつわる事件の真相【梅雨の柚の花】●囲い女が一夜で手を切り、手付け金を手に入れる方法【大江戸ゆばり組】●孫を誘拐されかかった蝋燭問屋越後屋の秘密【越後屋騒ぎ】●大身旗本二人の立場をわきまえぬ行動から決められた、高田の馬場での決闘の顛末【決闘・高田の馬場】 悲しく、楽し…  全文読む 評価する

新妻 新妻
toku/おのれの胸の内を打ち明ける術を知らない二人の結婚
 まだ早いのではないか。大治郎と三冬の結婚である。 もう少し、おのれの胸の内を打ち明ける術を知らない二人の初々しさを見ていたかった。少々意地悪だが、そういう二人の姿が妙に新鮮で心地よく、こちらまで胸の高まりを覚えるようで、それをもう少し味わっていたかったのだ。 ところで、胸中を打ち明ける術を知らない二人が、結婚するに到ったのは、あまりに突然。 作者は、二人のあまりの朴念仁ぶりに、「これでは、どうにもならぬ」と思いきわめ、二人を強引にくっつけてしまったように思われる。 また、「もはや、かくなっては、大治郎殿をおいて、ほかに、おたのみをする人とてござらぬ」 と三冬の父・田沼意次は言ったこの言葉は、…  全文読む 評価する

page: 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  次へ→