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文明の子 文明の子
K・I/職業作家が忘れているものがここにある
爆笑問題のラジオで紹介されていたので読んでみた。思っていたよりもずっとよかった。短い短編がいくつもつながっていってひとつの大きな「物語」になっていく構成も見事だと思った。また、金子みすずをほうふつとさせる部分やピーターパン、フランケンシュタインなど読書家としての太田さんの「間テクスト性」がいかんなく発揮されていた。この本は芥川賞も直木賞もとらないかもしれないが、某団体が本気で文学の「振興」を考えているなら、こういう作品こそノミネートすべき、と思った。  全文読む 評価する

弱者の居場所がない社会 弱者の居場所がない社会
K・I/いい本
書評を書くのは半年ぶりだ。半年前からひとりぐらしをしている。今、この文章を投稿しているのもネットカフェからだ。僕は専修大学の唐鎌教授の講義に感銘を受けた。それからもう6年以上の歳月が経っている。この本は多くの人に読んでもらいたい、とくに若い人に。近いうちに日本の「成人」は18歳になるかもしれない、自分たちの「意見」を表明するために多様な意見にふれるということは必要だ。アルフレッド・マーシャルは「ウォーム・ハート、クール・ヘッド」といった。この本にはそれも通底している。たんなる「研究者」としてではなく、一人の人間としてまた、社会保障の専門家としての「思い」がつまっている。(ちなみになぜ、AVがこ…  全文読む 評価する

生首 生首
K・I/時(とき)の重みに耐えうる詩文集
辺見庸『生首』を読んだ。中原中也賞を受賞した詩文集。僕は丸山三角という筆名で、詩を書いていて、「詩と思想」という雑誌に今のところ1回だけ採用された。それを読んでもらった大学時代の先生から「暗いというかホラー」ということを言われた。先生はそれを決して否定的に言ったのではなかったが、他人が読むとそうも読めるのか、と意外に思った。そんな僕が言うのもなんだが、この詩集は「暗い」。モチーフはいくつかあるが、「生首」と「自分の死体」だろうか。いくつかの詩が連詩のように物語的につながっていて、そういう書き方もありなのだな、と学ばせてもらった。辺見庸さんは、「破局が近い」ということをずっと言っていて、実際に東…  全文読む 評価する

ともしびマーケット ともしびマーケット
K・I/「文学」としては評価できない
『ともしびマーケット』を読んだ。「ともしびマーケット」というスーパーを中心に据えた連作短編集。「中心に据えた」と書いたが、スーパー自体が主人公なのではなく、ゆるい人間のつながりが見えてくる作品集だと思う。僕は同じ作者の『田村はまだか』を好きになれなかった。ツイッター上でかなり話題になっていたが、読んでみて、「評価はできない」と思った。今回も最初のほうは、「お、いいかな?」と思ったが、最後まで読むと、「よかった」とは思えない。作者の文章は独特のクセがあって、匂いもきつい。言葉づかいも乱暴なところがって、同意できなかった。「エンターテイメント」としてはこれでいいのかもしれないが、「文学」としては評…  全文読む 評価する

頼むから静かにしてくれ 頼むから静かにしてくれ
K・I/作家という人
読んだ本を再読するということを去年ごろからしている。本を自由に買えるだけの金があればいいのだが、そういうわけにもいかないので、図書館の本を借りている。読書は読むはしから忘れていっている。だから再読という行為が可能になる。カーヴァーの初期の世に出た作品には編集者による「手」が入っているということは明らかにされていて、だから『愛を語るときに我々の語ること』のオリジナル原稿版である『ビギナーズ』も刊行されたのだ。『頼むから静かにしてくれ』にも編集者の手が入っているのだとしたら、こちらも原稿が残っているのだとしたらオリジナル版を刊行してもらいたいな、と思う。カーヴァーの短編はカーヴァーのものでしかない…  全文読む 評価する

月野さんのギター 月野さんのギター
K・I/古くて新しいテーマ
二人の人間を同時に愛することはできるか。それはあるいは文芸の古くからのテーマかもしれない。作者の寒竹泉美はこの「問い」に一種の「思考実験」のような姿勢でのぞんだのだと思う。主人公の「俺」は京都にいる大学生だが、東京にいる恋人が別の男といちゃいちゃしているのを見てしまう。「俺」は恋人をおどろかそうとして、予定よりも早く東京に来たのだ。そこから話は始まる。京都に戻った主人公は自分の部屋の本棚に手を伸ばす。そこにはカセットプレイヤーがあり、テープには女性が歌う声が入っている。実は「俺」にも別に好きな人がいて…。本書のカヴァーには「さわやかな恋」と書いてあるが、けっこう性的な描写も多く、そのまま出てく…  全文読む 評価する

明るいほうへ 明るいほうへ
K・I/いのちそのもののあたたかさ
『金子みすず童謡集 明るいほうへ』を読んだ。とてもよかった。ACのコマーシャルで金子みすずの詩が流れていたが、図書館の「ちょっと前に話題になった本」のコーナーにあったので借りてみた。今僕は体の不調で夜、ベッドに入ると、死ぬことばかり考えている。精神科医にもかかっているが、2回目の重いディプレッションにひきこまれつつあるようだ。死ぬことばかり考えていると、複雑な文学作品など読めなくなる。みすずの詩は本質的だ。この本では小学校4年生までで習う漢字以外はひらがなにしてあるようだが、それが逆に言葉の強さをひきたてている。「強い」という言葉はみすずの詩に対して不適当だろうか?だけどここに出てくるのはまぎ…  全文読む 評価する

終わりと始まり 終わりと始まり
K・I/大したことない(と一度は思ってしまった)
『終わりと始まり』を読んだ。訳と解説は沼野充義。「解説」にこうある。「そして、小説やエッセイなどの「不純な」 ジャンルに手を染めたことはほとんどなく」これはシンボルスカの紹介の部分だが、この「不純」はシンボルスカの言葉なのか、沼野自身の言葉なのか分からない。もし、シンボルスカの言葉なのだとしたら、僕は強く抗議したい。以下のように。「小説やエッセイを「不純」だというのは 詩人のおごり高ぶり以外の何物でもない のではないか?」詩自体は初読ではすらすら読めた感じだが、詩集を離れてもそこに存在する世界というものがある。シンボルスカがもしかしたら、狭量な詩人だとしても、その詩の世界は確立したものだ、と思…  全文読む 評価する

神の子どもたちはみな踊る 神の子どもたちはみな踊る
K・I/作家の役割
『神の子どもたちはみな踊る』には6つの短編が収められていて、それらはすべて1995年2月に舞台が設定されている。これは1995年1月の阪神・淡路大震災と3月の「オウム真理教」による地下鉄サリン事件の2つが戦後日本の大きな転換点だと村上が考えるからである。田中康夫は阪神・淡路大震災後、印税を寄付しなかった(少なくともそう表明しなかった)村上春樹を激しく批判したが、はたして、大きな災害があったときに作家にできることは、お金を送ることだけなのだろうか?2011年3月の東日本大震災に直接の影響を受けた小説というものは主だったところではまだ見られていない。しかし、村上のように作家として大災害にフィクショ…  全文読む 評価する

天才アラーキー写真ノ愛・情 天才アラーキー写真ノ愛・情
K・I/『天才アラーキー 写真ノ愛・情』を読んで
最近、体がだるい。微熱が続いている。吐き気もする。そういう日が何日か続いている。もしかしたら、白血病じゃないのかとすら思ってしまった。ちょうど、住宅顕信についての本などを読んでいたこともあって。bk1の送料無料キャンペーンが終わってしまって、再び手数料がかかることになった。でも、僕は本を買うときは、bk1を使いたい、と思う。サイトも使いやすいし、書評も充実している。気分も落ち込みがちだが、新聞広告で、新書でアラーキーの本が出ると知って、買ってみた。写真もかなり入っていて、文章は聞き書き。写真集を見る、ようでもあるし、アラーキーの発言を聞く、という要素もある。夫人の陽子さんについて。チロについて…  全文読む 評価する

どこから行っても遠い町 どこから行っても遠い町
K・I/中年の文学
僕はこの書評でひどいことを書くと思う。でも冷静に受けとめてほしい。これはたぶん「事実」だから。*『神様』は衝撃的だった。だって、「くま」とピクニックに行くんだもの。そのくせ、その「くま」はやけに人間くさい。その他にも人間ではない生き物が出てきて、それが違和感なく小説の中に溶け込んでいた。『神様』は川上弘美のデビュー作。作家の処女作にはその作家の全てがつまっている、というよく言われる言い方はあんがい当たっているかもしれない。で、『神様』が出てから、、もう月日は流れている。『どこから行っても遠い町』を途中まで読んで、「何か物足りないナ」と思った。出てくるのは人間ばかりで、もちろん、連作短編のよさや…  全文読む 評価する

疾走 疾走
K・I/重いものをそのまま重く描く
春でしょうか。まだ暖かいという実感を得ることができません。心の中に重苦しいものがたれこめています。窓を開けます。風が入ってきます。夕方のそれは身を切るような冷たさです。私はどうしたらいいのでしょう?孤独な私から孤独なあなたへ、お手紙を差し上げます。お元気でしたか?『疾走』に出てくる登場人物たちも孤独です。重松さんの作品はあまり読んだことがないのですが、どちらかというと、重いテーマをあまり重くならずに描く作家だと思っていました。『疾走』は重いものがそのまま重く描かれています。ウィキペディアかどこかに中上健次へのオマージュというようなことも書いてあった気がしますが、「なるほどなァ」という感じです。…  全文読む 評価する

重松清 重松清
K・I/現代を描く作家
『はじめての文学 重松清』を読んだ。重松さんの小説は入っていくまでに時間がかかる。あるいは僕が世の中を悲観的に見すぎているからだろうか?もちろん、重松さんの小説は思春期の少年・少女、差別、いじめなど難しい事柄を扱っているのだけれど、その視線は上から見下ろしたような視線ではない。かなりくだけだ現代的な言葉づかいもしながら、〈現代〉を描く。重松清という作家はそういう作家なのだろう、と思う。直木賞をとった『ビタミンF』は以前途中で読むのをやめてしまった経験があるのだが、もう一度、手に取ってみようかな?と思った。重松清は〈現代〉を描く作家だ。  全文読む 評価する

久坂葉子作品集 女 久坂葉子作品集 女
K・I/再び読まれるべき作家
『久坂葉子作品集 女』(六興出版)を読んだ。『百年文庫1』から久坂葉子を追ってきたが、今まで、読んだものもこの本には含まれているので、「入梅」と「灰色の記憶」の2つだけを読んだ。「入梅」はフィクションで、「灰色の記憶」は私小説である。「入梅」はそれなりに完成度が高い。10代の時期にこれだけのものを書いたということは久坂葉子に才能があったことを示している、と思う。でももっと、印象に残ったのは、「灰色の記憶」だった。以前読んだ「久坂葉子の誕生と死亡」は久坂葉子というペンネームを使ってからの自伝的な作品だったが、当然、それは、比較的短い期間についての話だった。一方、「灰色の記憶」は、生まれてから20…  全文読む 評価する

旧約聖書を知っていますか 旧約聖書を知っていますか
K・I/『旧約聖書を知っていますか』を読んで
『旧約聖書を知っていますか』を読んだ。阿刀田さんのこのシリーズを読むのは2冊目だ。1冊目はシェイクスピアについての入門書。僕がまだ大学生だったころ、大学の書店で、そのシェイクスピアについての文庫がある講義のテキストになっていた。僕はそのときは見ているだけだったのだが、大学を卒業して、一人で文学を読むようになってから、買い求めて読んだのだった。阿刀田さんのこのシリーズは親しみやすい。語り口から、ときに俗な方に話が行くところなど、するすると読める。この本は旧約聖書について書かれた本だが、かみくだいて、エッセンスを抜き出すことに成功している、と思う。僕は、旧約聖書は最初から読み始めて、「創世記」の途…  全文読む 評価する

太宰治と聖書 太宰治と聖書
K・I/『太宰治と聖書』を読んで
『太宰治と聖書』を読んだ。みなさんは、ベッドに入ってから、考え事をしないだろうか?夜になり、夕食も食べた。歯を磨き、風呂にも入った。人によっては、寝る前の薬を飲んで、さあ、あとは寝るだけ…。でもベッドに入ってもすぐに眠れるわけではない。少なくとも僕はそうではない。のび太くんのようにふとんに入って3秒で寝られるわけではないのである。色々なことが頭に浮かんで、小説のタイトルや、思いついたことについてかんたんなメモをとったりする。その中に「太宰治の小説ってよく聖書の言葉が出てくるんだよな」という思いがあった。みなさんは図書館に行かれるだろうか?行くとしたら、週何回くらい?僕は自慢ではないが、週6日く…  全文読む 評価する

ぼくのともだち ぼくのともだち
K・I/『ぼくのともだち』を読んで
『ぼくのともだち』を読んだ。エマニュエル・ボーヴは『のけ者』がすばらしかったので、また同じ作者の小説を読んでみた。「ぼく」は戦争で傷を負い、年金で暮らしている。一人暮らしで友だちがいない。この小説はそんな「ぼく」が必死に友だちを求めようとしながら、そのたびに失敗していく話だ。文体は陰惨な感じはなく、ユーモアがただよっている感じ。「ぼく」は自意識過剰でそのために「友だち」になりかけた人と別れてしまったり、あるいは女好きのせいで、うまくいかなかくなったりする。身体障害者や「黒人」の人に対する視線には気になる部分も感じるが、それは、1920年代の小説だから仕方ないのかな。完成度としては『のけ者』の方…  全文読む 評価する

ドミノのお告げ ドミノのお告げ
K・I/『ドミノのお告げ』を読んで
久坂葉子『ドミノのお告げ』を読んだ。『百年文庫1』で「幾度目かの最期」を読んだので、他の作品も読んでみようと思った。この本は、比較的最近出版されてもので、2003年に出ている。(でも、絶版のようだ。残念…)。「ドミノのお告げ」という短編、「華々しき瞬間」という中編、「久坂葉子の誕生と死亡」というエッセイ、それに「幾度目かの最期」が入っている。「ドミノのお告げ」は芥川賞候補になったもの。僕はこの中で、「久坂葉子の誕生と死亡」を一番、興味深く読んだ。(それは、久坂葉子本人にとっては、とても不本意かもしれないが…)。「久坂葉子」はペンネームであり、彼女がこの「久坂葉子」のまさに「誕生」と「死亡」を書…  全文読む 評価する

俺俺 俺俺
K・I/21世紀日本の思弁小説
星野智幸『俺俺』を読んだ。この小説が2011年の大江健三郎賞をとったということで、読んでみた。今まで星野さんの小説は少し読んだことがあったのだが、あまりいいとは思わなかった。本作も「いい」とは思わなかったが、強烈な作品であることはたしかだ。これは一種の思弁小説だと思う。だから、「俺」が殺されても、次の「俺」が出てきて、それは以前の「俺」の記憶の、のこりかすをかすかに持っている。著者も気づいていると思うが、日本社会が「俺俺社会」にならないために大切なのは、「外国人」の存在だと思う。この小説でも外国人は「俺」にならない。日本の社会がある種の行き詰まりに陥っているのは、たしかで、多くの人がそういうこ…  全文読む 評価する

パリ パリ
K・I/多く見受けられるアナクロニズム
ゾラの『パリ』を読んだ。水準としては高いと思うが、内容には同意できなかった。1.ゾラは明らかに反宗教の立場に立っており、僕の立場と相容れない。2.ゾラは無政府主義を暗に認めており、僕の立場と相容れない。3.ゾラは科学が「新しい信仰」の対象だとしているが、これは素朴すぎる科学崇拝で幼稚すぎる。福島原発の事故を見ても分かるように、科学を推し進めれば、人は幸福になれるわけではない。4.小説自体がプロット通りに作られている気がして、小説が作者の手を離れていない。小説のおもしろさとは、作者自身を小説が「裏切る」ところにあるのであり、登場人物の考えがほとんど根拠も示されずころりと変わったり、小説としてのお…  全文読む 評価する

目覚めよと彼の呼ぶ声がする 目覚めよと彼の呼ぶ声がする
K・I/元気の出るエッセー集
『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』(石田衣良)を読んだ。石田衣良さんのエッセー集。石田衣良さんの本は、『ブルータワー』を読んだことがあり、これはとてもおもしろい小説だった。徳間書店の創業何十周年記念かの出版と書いてあり、装画もよかったので、買って読んでみたのでした。今は文庫になっているから、興味のある方は読んでみてください。このエッセイ集はとても文章が読みやすくて、するすると読んでいけた。作家のエッセイ集だから、自分が読んでおもしろかった本や、影響を受けた本のことも出てくるのだが、その中から、藤沢周平『用心棒日月抄』や田村隆一「秋」なんかを、読んでみたい、と思った。細かい部分には反感を抱く人もいる…  全文読む 評価する

ホワイト・ノイズ ホワイト・ノイズ
K・I/20世紀アメリカ文学の傑作!
ドン・デリーロの『ホワイト・ノイズ』を読んだ。これは圧倒的な小説だ。評論家で作家の小谷野敦さんが、ブログで、ドン・デリーロをほめていたのを目にしたことがあって、いつか、ドン・デリーロを読もうとは思っていた。また、『イー・イー・イー』の作者が『ホワイト・ノイズ』に言及していたのでその題名は頭の中に入っていた。この小説は一種の「家族小説」であり、放射能にまみれた現代を描くという意味で「現代小説」であり、また、主人公が「死」について思考を深めるという意味で、「成長小説」でもある。主人公はアメリカの大学で「ヒトラー学」を教えている。これだけで、主人公に対する共感というものができなくなるだろう。だが、彼…  全文読む 評価する

百年文庫 百年文庫
K・I/『百年文庫1』を読んで
『百年文庫1 憧』を読んだ。bk1の書評ポータルで「夏の雨」さんが紹介していて、興味を持ったので、買って(!)読んでみた。前にも書いたことだが、bk1の書評ポータルは、こういうゆるい「読書会」の役割も果たしていると思う。3つの短編が入っている。太宰の「女生徒」は十年ぶりくらいに再読したが、昔読んだときには、見落としていた部分や、やけに鮮明に覚えている部分などがあって、おもしろかった。ラディゲの作品は訳が古いせいか、それとももともとそういう作品なのか、よさがあまりよく分からない。特筆すべきは、三つ目の久坂葉子「幾度目かの最期」だろう。これは小説ではなく遺書である。この作品だけからは彼女の抱えてい…  全文読む 評価する

生としての文学−高見順論 生としての文学−高見順論
K・I/文学研究書を読む
『生としての文学―高見順論』を読んだ。笠間書院という出版社があって、ツイッターをやっていたときに、フォローしたら、リフォローされて、メッセージのやりとりをさせてもらった。そしてそこで紹介されていた「笠間リポート」という冊子に申し込み、先月、新しく創刊される歌のシリーズの案内が来た。これは斎藤茂吉などの歌人の歌を紹介するというシリーズなのだが、そのパンフレット以外にも笠間書院が出した新刊の広告があり、その中にこの本があった。どこかで話題になっていたのであろう。父親が高見順の『死の淵より』を読みたいというので、bk1で検索した。そういうきっかけがあったので、僕自身、講談社文芸文庫の高見順の短編集を…  全文読む 評価する

深読みシェイクスピア 深読みシェイクスピア
K・I/「中・上級者向け」シェイクスピア読み本
『深読みシェイクスピア』を読んだ。図書館にリクエストして取り寄せてもらった。松岡和子さんのシェイクスピア個人全訳はちくま文庫から出ているが、この本は新潮選書である。ちくま文庫から増補版が出た『快読シェイクスピア』もおもしろい本だったが、この本は戯曲の言葉に深くこだわって読みこんでいった本だった、と思う。小森収という方が松岡和子さんにインタビューするという形でこの本は進んでいく。取り上げられている戯曲は多くはないが、それだけ深い「読み」がなされている。この本は中・上級者向けの「シェイクスピア読み本」かな、と思った。まずこういった読み本を読むとしたら、新潮文庫から出ている阿刀田高さんのものもいいと…  全文読む 評価する

シェイクスピア全集 シェイクスピア全集
K・I/「悪」の内容
白水社Uブックスの「シェイクスピア全集」の中の『リチャード三世』を読んだ。自分で買ってシェイクスピア作品を読んでいたときは、ちくま文庫の松岡和子訳で読んでいたのだが、経済的に苦しいので、図書館でこの翻訳を借りて読んだ。初版が出たのが1983年だが、訳がとくに古いと感じられることはなかった。これと同時期にちくま文庫の『悪いやつの物語』を読んでいて、「悪いやつ」というキーワードから『リチャード三世』を連想して借りたのだった。歴史劇なので、シェイクスピアの悲劇や喜劇にくらべてとっつきにくい部分もあるが、シェイクスピアのセリフというのはいきいきしている。だが、日本人が見るものとしては、言葉のいい間違い…  全文読む 評価する

血液と石鹼 血液と石鹼
K・I/出版社との関係
『血液と石鹸』を読んだ。自分の中で相性のあまりよくない出版社というのがあって、僕にとっては早川書房がそういう出版社の一つだったりする。この本はたしか『ロング・グッドバイ』を買ったときのチラシに載っていた気がする。柴田さんの訳で少し気になったのだが、買うことはなく、それから何年か過ぎた。今、計画停電が実施されている中で、満足に本を買うこともできず(とはいっても、それは僕の財政力に大きな制約があるからでもあるのだが)、図書館で偶然、目に入ったので、借りてみた。37つの短編が入っている。前半は〈言葉〉というモチーフが何度も表れる。ベトナム戦争末期に母国を逃れ、アメリカに移住した著者のバックグラウンド…  全文読む 評価する

ほかに踊りを知らない。 ほかに踊りを知らない。
K・I/「五分の四はほんとうのことです」
『東京日記2 ほかに踊りを知らない。』を読んだ。この本に収められている文章は「東京人」という雑誌に発表されたものだが、川上弘美さんの「東京日記」は2011年の今も続いていて、今は平凡社のサイトで連載されている。「あとがき」で「中の五分の四くらいは、うそみたいですが、ほんとうのことです」と書いてあるが、本当に、「日記」を読んでいるというよりも日記体の小説を読んでいるという気持ちになる。適度に肩の力が抜けていて、それでいてユニークな観察もあったりして、読んでいてあきさせない本だった。文章に添えられた絵も雰囲気にマッチしている。  全文読む 評価する

ちくま文学の森 ちくま文学の森
K・I/『悪いやつの物語』を読んで
「ちくま文学の森」の『悪いやつの物語』を読んだ。ちくま文庫で出たばかりだったが、図書館で偶然出会うことができた。貸し出し期限は3月17日なのだが、やっと3月14日に読み終わることができた。この間に東日本大震災という大きな地震が起こった。まだ被害の全容は分からないし、関東では計画停電も実施されている。個人的なことでも、ポスティングのアルバイトに応募し、採用され、研修などを行った。そういうときに、この本を持ち歩いて、移動先のマクドナルドでコーラやコーヒーを飲みながら読んだ。この本には文字通り、「悪いやつ」の話が収められている。少し笑えるコミカルなものからゾッとするものまで。はたしてこんな時期に書評…  全文読む 評価する

夜
K・I/『夜』を読んで
エリ・ヴィーゼル『夜』(みすず書房)を読んだ。非常に重く、だが、重要な本だった。エリ・ヴィーゼル氏はユダヤ人で住んでいた町からゲットーに移され、さらに強制収容所に移される。そういう現実に体験したことを書いた小説だ。当時15才の少年だったヴィーゼル氏は強制収容所についた1日目に自分の中で〈神〉が死ぬのを感じる。それは幼児が焼却炉に投げ込まれているのを見たからだ。以前はヴィーゼル少年は敬虔なユダヤ教徒だったのに。僕の周りにユダヤ人の人はいないが、この体験は想像を絶している。そして、それは現実に起こったことなのだ。決して忘れてはいけないことだと思った。文章は読みやすく、中学生くらいなら読めると思う。…  全文読む 評価する

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