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星の王子さま
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野棘かな/ワープする王子さまの秘密
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星の王子さまという題名にひかれ岩波書店『星の王子さま』(訳者:内藤濯氏)を初めて読んだのは中学生の頃だった。たぶん雑誌かなにかで夢いっぱいに紹介されていたのだと思う。どんな王子さまが登場するのかとワクワクして読んでみたが、話が意外な方向に飛ぶ、展開が見えないという印象で、部分的なイメージだけが残った。でも、星の王子さまはずっと気になる存在となり、その後、何度か起こった「星の王子さま」ブームの時も、そのたびに特集などを読み、著作権切れ後におこったムーブメントでは、シンプルでかわいい刺絵に魅かれ展覧会へも足を運んだ。ここまでくると自分なりのサン・テグジュペリ星の王子さま像がしっかり根付いていたため…
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シズコさん
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野棘かな/柔らかな眼差し
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自分すら呆けはじめ、体も弱り、視力さえ衰えると、視界と同じで感情の振れ幅が狭くなり、物象は曖昧に見え、柔らかな眼差しで見えるようになる。こんなこと、そのお歳になって書かなくてもいいのでは、枯れて楽になるはずの頃に、と、はじめは思いながら読んでいたが柔らかい眼差しになった、その時だから、今だから書けるというタイミングなのだろうと理解した。いくら、自分で自分を冷淡だと言っても、その時々に、わかりやすく書いたとしたら、生々しすぎて、奮って斬りおろした包丁で、逆に斬り返され、倍以上の力、倍以上の数の包丁がふりおろされ、あえなく絶命。なんてことが、100万回とは言わなくても、何十回かあったかもしれない。…
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生きるチカラ
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野棘かな/生きるチカラの見つけ方
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本書は、生きるヒントや生きるための助けを享受してくれる本ではない。筆者を含むいろいろな人のエピソードや人生話、それら引用などを羅列し、読ませながら、どう感じ、どう思うかはあなたの自由であり、読後も、どう思いどうするかもあなたの自由だから、あなたなりに自分で気づきなさいと言っているようだ。「ええ、わかりますとも、教頭先生。ご熱心なのはよーくわかります、ええ、わかりますとも。それって、文部省のスローガンですものね」「でもね、教頭先生、とにかく手を上げて発言しろとか、それって、生きる力じゃなくて、”目立つ力”っていうんじゃありませんこと?」何度もそう言いたかったあまり好きじゃない文部省時代のスローガ…
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のっぽのサラ
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野棘かな/明日に希望が持てる本だ。
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不器量でのっぽのサラが、アンナとケイレブの家にやってくる。二人のママは、ケイレブを産んですぐに亡くなっていた。隣のマシューさんが広告でよいお嫁さんを見つけたので思い切ってパパも新聞に花嫁募集の広告を出し、サラから手紙がきた。サラは、パパ、アンナ、ケイレブとの往復書簡で、親交を深めもしよければ、1か月ほど一緒に暮らしてみたいと手紙が来る。そして・・・このストーリーは、著者の母の体験をベースにしている。著者の祖母は、祖父の新聞広告に応じてきた人で、母は祖母を好きになったのだという。電話も、ネットも、メールも、携帯電話もない時代に、新聞広告と手紙の交換で始まった。手紙の中の言葉は宝石とまでは言わない…
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さぶ
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野棘かな/昔も今も。
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本棚を整理してみつけた山本周五郎「さぶ」。内容を思い出せないまま読み始め、直ぐにおぼろげな記憶が浮かんだ。裏表紙を確認するとおおよその筋が浮かび、ちょっと安心して読んだ。人間には運、不運がやはりあると思う。それは生まれ持った宿命と切り開けるかもしれない運命などがある。この物語の流れは、栄二の成長する道程で描かれているため、さぶは脇役に過ぎないが、「いい味だしてますね」的な重要なキーパーソンとなっている。男前で器用な栄二と愚鈍で不器用なさぶのま逆ともとれる二人を通して繰り広げられる人間模様。問題を抱えながらも一件順調そうにみえた栄二がとんでもない不運に見舞われ、やけっぱちになり自分で自分の運をつ…
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視えるんです。
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野棘かな/かわこわい実話ホラーコミックエッセイ!
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かわいくって、怖い?そんなコピーのこの本は、メディアファクトリー怪談専門誌「幽」での掲載分をまとめた霊感マンガ家伊藤三巳華さんの実体験に基づく実話ホラーコミックエッセイで、ホラー初心者の人にも、マニアの方にも、幅広く楽しめる怪談マンガだと思う。小さい頃に地元で有名な「オバケ団地」で育ち、半透明な乳母たちに恐怖と現実では理解できない世界を教え込まれたという三巳華さん。「幽霊って本当にいるの?」とよく聞かれます。正直、「います」とは言いきれないけれど私には視えて、時に聞こえて、時に話して・・・ごく日常的情景と同じく、周りに自然にありうること、視える日々を綴った禍々しくも可笑しい実体験、16篇。見つ…
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怪談実話コンテスト傑作選
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野棘かな/現代の恐怖の語り部作家誕生だ。
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実話怪談という言葉にちょっと違和感を感じていたので、入賞作品がどのような内容構成なのか、どこまで本当で、どの辺まで書いちゃうのかしらと興味深々だった。この本は、第一回「幽」怪談実話コンテスト入選8作品すべてと入賞者8人が新たに書き下した各1篇を含めそれぞれ2編ずつ、14作品を収録したMF文庫ダ・ヴィンチ怪談シリーズ「幽」編集部編の本だ。BK1から届いて2日後、何気に、それほど期待もしないで読み始めたのだが、意外な面白さに驚いた。実話怪談というジャンルでありながら、一等最初の「黒四」という骨太の小説やワンステップ上の語り部怪談とでもいうような枠を超えた作品に怪談の可能性を感じた。三輪サチさん、谷…
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夜のピクニック
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野棘かな/小さなノスタルジックな旅をする。
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この本が過去話題になっていたのは知っていたけれど高校生ものにはもう興味がなく今まで手にとることはなかった。それをいまさらなぜと聞かれると、ちょっと恥ずかしいのですがひさしぶりにノスタルジックな気分にひたりたかったとでも言っておきます。「夜のピクニック」は読み始めてすぐ困惑した。物語のシチュエーションがわからず、だらだらとした文章だったし、これは困ったと正直思った。何度も前のページをめくって登場人物の名前を確認する必要もあったからだ。しかし、やがてそんな困惑も霧が晴れるようにすっきりと消え、そこには高校生たちの今が息づいていた。修学旅行の代わりのこんな歩行祭って、楽しいだろうなーと自分の思い出と…
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誰か
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野棘かな/暗いと思うから暗いんだ。
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「あれは偶然に起こった轢き逃げなんかじゃなくて父は狙われてた。そして殺されたんじゃないかと思うんです」財閥会長の個人運転手を長年務めてきた梶田信夫が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く杉村三郎は義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。妹の梨子が父親の思い出を本にして、犯人を見つけるきっかけにしたいというのだ。しかし、姉の聡美は出版に反対している。聡美は三郎に、幼い頃の誘拐事件と、父の死に対する疑念を打ち明けるが、妹には内緒にしてほしいと訴えた。姉妹の相反する思いに突き動かされるように梶田の人生をたどり直す三郎だったが・・・。(帯の文章)この本の主人公杉村三郎は、いま…
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夜がはじまるとき
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野棘かな/ちょいエロ、超グロ、やっぱりナンセンス?
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N魔性の猫ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で聾唖者アヤーナどんづまりの窮地以上、6編の短編集。N精神科医ってこんなに治療方法をとるのかなーと、20年ほど前の受容のカウンセリングを思いだしながら読み進んだ。高名な精神科医ジョン・ボンサントが患者の闇に引き寄せられ、妹、友人と連鎖していく。魔性の猫使命としての仕事を忠実にこなしているのか魔性の猫。違う部分、サイクロン・スポイラーの特注エンジンを搭載した1973年型プリマスに、プ、プリマスですか、プリムス、プリウスと連想ゲームのように反応してしまった。ニューヨーク・タイムズを特別割引価格でそういうことだと悲しいけれどうれしい、生きる希望がわくよう…
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律子慕情
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野棘かな/ずっと気になっていた。
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ずっと前から気になって仕方なかったけれど、いわゆる大人の恋愛小説だろうとこの本を手にすることはなかった。恋愛自慢の域からでない私的な恋愛小説に興味はなかったし、自分の中から排除していたのだ。しかし、昨年秋頃から女流作家の書く私小説的恋愛小説でも何でも読むということを自分に課した。歴代女流作家の系譜を調べる中で、小池真理子さんの著書をチェックし、何冊か選んだ。その中に、どうしても外せないこの律子慕情がやはりあった。なぜこの本が気になるのかというと、わかりやすい理由だが、亡くなった実母の名前が律子だからだ。律子と慕情という2つの言葉が私の琴線に触れたのだろう。だが、内容はきっと律子という女性の大恋…
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アホの壁
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野棘かな/面白かったけど一つ忘れ物をしています。
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この本、筒井康隆氏の新潮新書『アホの壁』は、BK1のツイッターの書き込み「養老孟司『バカの壁』を読んで「期待した内容と違ったというので筒井康隆が筆を執った『アホの壁』」という紹介文を読んで即購入した。人生を達観している著者だから書ける痛快な面白さがあり、どんどん読み進み、やはりいろいろと考えさせられた。序章「なぜこんなアホな本を書いたか」や本文中で著者なりの言い訳を書いていたが、二匹目のドジョウでもこんな角度からの本なら愉快で意外に有益だと思う。第1章、「人はなぜアホなことを言うのか」強迫観念症的アホ発言、甘えのアホには、なるほどと思い、真のアホによるアホには、ええっと妙な感心をし、お笑い番組…
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ふたたびの恋
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野棘かな/今できる鎮魂祭。
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再放送のドラマを見た。いろいろ思い出してしまった。それは、出演している俳優たちのことではない。ドラマがキーワードとなりよみがえる感覚は脚本を担当した野沢尚氏、故人への妄想だ。ただの読者でも、少なからず衝撃を受けた野沢尚氏の死への思いだった。どうしてもまた読みたくなって文庫になっていたこの「ふたたびの恋」文春文庫などをBK1で購入して読んだ。脚本を書く方だからということもあるけれど、そのテンポの良さに引き込まれ読む。内容としては比較的平凡な話だが、作りこまれたプロット、重なり合う意図に、ここまで丁寧に作りこんでいくのかと驚く。作家は、文字、文章でしか表せないものを書く。だが、同じ書くという行為で…
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深泥丘奇談
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野棘かな/怖さも、奇怪さもいい塩梅。
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「あやつじさんって結構読んでいるし、好きなんだよな」と誰かが言った。暗いバーの止まり木での常連仲間との会話だった。あやつじさん、あやつじさん、綾辻さん?頭の中が高速回転しながら検索した。その夜、積ん読の中から綾辻さんのこの本を捜し出してひらいた。過去一度開き、限りなく私小説の匂いを感じてすぐ閉じてしまった本だ。ちちち・・・・・・と、最初はそう聞こえた。ーような気がした。で始まる「顔」「丘の向こう」「長びく雨」「悪霊憑き」「サムザムシ」「開けるな」「六山の夜」「深泥丘魔術団」・・・・・・ちちっ、ちちちちちちち・・・・・・ち。で終わる「声」怪談専門誌「幽」の創刊2004年の春から短編創作怪談として…
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蛇・愛の陰画
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野棘かな/あの頃を思い出す
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そう、この感じだ。あの頃を思い出した。懐かしい音楽を耳にして、その時代を思い出すように、この本を読むと、あの頃を思い出す。夢見がちで、可能性を秘めたあの頃。ハートの片割れの半分、LとKのように、より良き半分を求めていた頃。現実とかけ離れた、偽りの世界を目の前に突きつける倉橋由美子。経験からの感覚もないとは言えないだろうが、ここではない、虚飾の世界で遊ぶ。そして、その世界に私は引きづり込まれる。ええ、ええ、わかりましたとも。十分、あなたの世界に浸りました。「蛇/愛の陰画」万歳です。
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聊斎志異
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野棘かな/聊斎志異は宝の山だ。
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一話読みきりタイプ(当たり前ですが)なので、一日、一話というわけではないのですが、ちょっと数話読んで、ほかの本を読んだり、ほかの事をしたりというスタイルで読み続け、この調子なら、マイペースで、エンドレスに読めるかもしれないなんて思ったりもした。この聊斎志異四では、「異志氏曰く」の部分が長い話を見つけた。異志氏、誰それ、という感じではあるが、これは、どうやら蒲松齢で、どうしても一言言いたいことがある時など、話の最後に異志氏の名をかりて書いているようだ。だが、「無茶な裁判」という話、これは珍しく長かった。怠慢な役人への進言というか、役人の在り様を語る語る。。さぞかし平素からいろいろと感じ思うことが…
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孤宿の人
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野棘かな/ほうはそうして宝になった。
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孤宿の人(上)で、ほうの9歳までの生い立ちと後半への伏線となる事件が語られ、この孤宿の人(下)でさらに話は進む。不穏な事件や噂の中、流罪となった政府要人、加賀殿が丸海藩に入領し、やがて、大きくほうの現実も変わり、狭い丸海藩は、さらに、不幸な事件、噂、自然災害に混乱していく。後半、一気に畳みかける展開には感動したし、力作だと思った。といっても、時間軸としては、春から秋までに起こった話のようだ。加賀様入領が決定し、不穏な空気の中、入領された加賀様が亡くなるまでの話だ。愚鈍に思えるがその分無垢な少女ほうは、加賀様が幽閉されている涸滝の屋敷に下働きとして入ることとなる。加賀様を幽閉し、堅固な護衛で守る…
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孤宿の人
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野棘かな/感動の種があった。
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「夜明けの海に、うさぎが飛んでいる。」それは瀬戸内海の波のイメージだと頷いた。外海の高い波では表現できない文章だ。でも、その言葉以外は、ずっと物語の終わりまで、まるで暗い日本海のイメージが浮かぶだけだった。弧宿の人(上)は、説明的な部分が多く、もどかしい感じを持ちながらもきっと面白くなるはずと思わせる何かがあった。引き込まれると、次の章では視点が変わる、そんな視点移動の多さで、筋が追いづらかったが、それでも、(上)は一気に読んだ。「遠目で見ると、小さくて白くてきれいなうさぎだけれど、それは、空と海が荒れる前触れなのです」その予兆をなぞるように、起こる事件。何の意図か、流罪となった政府要人、加賀…
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月下の恋人
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野棘かな/表紙の色がきれいだった。
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書店に並ぶ文庫化されたこの本に気がついて「色がきれいだな」としばし足を止めてみつめた。表紙と同じくらい、ちょっと題名にもひかれる「月下の恋人」は11の短編が収録されている。最初に「月下の恋人」から読んだ。どこにでもあるような恋人同士の別れのはずだった。海を見に行こうよと、雅子は言った。海岸を走り導かれるように見知らぬ岬の付け根の入り江に着き、海辺の旅館に泊まった。そこから先は、スポットにでも入り込んだように、一夜の不可思議な体験をする。ぐずぐずと独りよがりな想像ばかりしている男と悲しい目でそれをみつめる女。だが、関係に終止符をうつに足りるというべきだろう心象風景に出会った二人。これは男側の目で…
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恋愛中毒
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野棘かな/何が彼女を壊すのか
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Love holic話題になったけど、読んでないと言うと「絶対読みなさい」と友人が言った。10日ほど後、一緒に飲んでいる時「ところで恋愛中毒読んだ」と聞かれ、まだ読んでないのよと言ったら「絶対面白いから読みなさい」とまた言われた。Love holic正直言うと、先入観があり、あまり期待していなかったのだが、思いがけず最初から引き込まれた。若い井口という男性の視点から入った文章はテンポがいいし、心理状態と言葉がうまく回っている。やっぱりこの作家はうまいと思った。読み進むと、急に、視点が変わる。上司らしい女性水無月の視点だと気がつくのに少し時間がかかった。作家の計算だろう。面白い話の展開に少しずつ…
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真鶴
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野棘かな/なぜ真鶴なのかわからない。
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「歩いていると、ついてくるものがあった。」最初の一文で、これは面白そうだと思い、好きなジャンルかしらと読み進む。だが、日常を綴る平坦な言葉の中に、突如現れるついてくるという言葉、霊能者だといいたいのか、もしかすると殺人を犯し隠した抑圧からくる幻影なのか、ちょっと理解に苦しみながら我慢して読み進む。困惑し、もしかしたら、森瑤子的組み立て方なの?とまた読み進むがよくわかない。残る結末だけを期待しながら、残りを一気に読んだが、やはりあまりにも乱雑で、最後をまとめただけのような気がした。どのように理解したらいいのかととまどったが、落し所は、解説者が書いている一文だろうと思う。「十二年前に夫が失踪したた…
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愛に似たもの
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野棘かな/なんかいやだ。
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「愛に似たもの」は、2007年9月に刊行され、第21回柴田錬三郎賞受賞している。8人の女たちを主人公とした8編の短編集だ。愛に似たものは、決して愛ではない。愛もどき、恋愛もどきのいかにもありそうな話が、いかにもありそうな人間関係の中で、いかにもそれらしく見え隠れする。読み始めると、ちょっといやな感じになった。鈍感でいたいと思うどこかの部分がピリピリして、落ち着かない。ぐずぐずしていると巻き込まれる、これはまずい、早くとっとと、読んでしまおうと、一気に読んだ。案の定、読み終わるとぬぐいきれない後味の悪さが残った。なんだかねー、こんなんでいいの?と独り言。マイナス思考も、コンプレックスも、妬みも、…
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聊斎志異
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野棘かな/物語のチカラって深くて素晴らしい
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生きているとこんなにいろいろなことがあるんだな、と本書に収録されている怪異話を読む度に思う。人は泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しんだり、怨んだり、意地悪したり、嫉妬したり、愛したり、恋したり、好きになったり、嫌いになったり、不可解な気持ちを抱きながらも黙々と生活をする。人だけでなく、動物も、植物も、昆虫も、自然も悩ましいのである。聊斎志異一、二と読み進み、やっと三、まできましたと、言ってもまだまだ続く聊斎志異の世界かな。ある時は、スーパーマンのような壮士が現れたり、恐妻家がいたり、豚になったり、馬にされたり、現代の夫婦のあり方みたいな教訓めいた話もあれば、不運をものともせず賢く生き抜く聖妻も…
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熊野 神と仏
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野棘かな/神と仏の話をしよう!
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本書は、宗教学者植島啓司氏の「熊野考」で始まり、金峯山寺執行長の田中利典氏「あまたの神と仏」、熊野本宮大社宮司の九鬼家隆氏「熊野という原点」と続く3部構成で半分、残り半分の紙面に三人による鼎談が収録され、熊野市、本宮、吉野のきれいなカラー写真や文中のモノクロ写真、挿絵もあり、文字も大きく読みやすい本だ。それぞれの立場で世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」への研究や歴史、思いを綴りながら、タイトル通りの神と仏の話をわかりやすく紐解いている。植島氏は、「紀伊山地の霊場と参詣道」が他の世界遺産と決定的に違うのは、熊野三山、吉野、大峯、高野山というそれぞれ異なる宗教の聖地を中心にして、まるで網の目のよう…
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屍鬼の血族【バーゲンブック】
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野棘かな/ヴァンパイアなあなたはもう読んでいるのでしょうか?
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過去、東雅夫氏と『夜想』の今野裕一編集長による『夜想』×『幻想文学』のコラボ企画「800字吸血鬼掌篇」に応募したことある。ヴァンパイアは密やかに惹かれていたモチーフだったので、楽しんで書いた記憶をまだ覚えている。その後、ヴァンパイアに関する本を何冊か購入した中にこの本があった。「屍鬼の血族」出版桜桃書房ヴァンパイア・ジャパネスクの豊穣とその偉業をまとめた日本吸血鬼小説大全。江戸川乱歩、中河与一、城昌幸、柴田錬三郎、日影丈吉、岡部道男、半村良、梶尾真治、新井素子、赤川次郎、三島由紀夫、倉橋由美子、中井英夫、須永朝彦、菊池秀行、岡本綺堂、都筑道夫、夢枕獏、大原まり子、種村季弘の作品を収めている。収…
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倉橋由美子
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野棘かな/私の中の倉橋由美子
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倉橋由美子夢幻の毒想 単行本未収録作品一挙掲載「わたしの心はパパのもの」「聖少女」の原型となった中篇130枚 河出書房新社表紙の白部分に書かれたこれらの言葉と倉橋由美子の写真に惹かれた。私の中で、サガンと倉橋由美子は特別な作家だ。サガンの売り出し方は皆さんご存知の通りで、私もはまりました。そして、倉橋由美子というと、びっくりするようないやらしい性的な言葉を並べても倉橋流のリズムがあって、そのリズムに従って進め、もし驚くほどの言葉と表現で甘受できない場合は平気で飛ばし読みをした。細かい表現などどうでもよく、倉橋由美子の雰囲気を感じるだけで、新しい潮流の中にいるような気がした。まだ10代、されど1…
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聊斎志異
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野棘かな/月下独酒する寂寥の文人
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中国は、目を閉じて象を触って想像するのと同じで、尻尾を触れば太い綱かと思うし、耳を触れば大きなうちわかと思う、おしりを触れば広い皮の壁だと思うし、足先を触ればごつごつした大きな岩かと思う。それほど、広大で、他民族の国で、いろいろな地形、風景があり、様々な民族、人々がいるため、切り取った切り口でみせる顔が違う。タクラマカン砂漠を行けば、三蔵法師の道筋を見ることができるし想像もできる、中国のどこかには不老不死の薬といわれる何かがあるかもしれない、、天女が水浴びしているかもしれないし、雲をいただく山では仙人が修行をしているかもしれないと思わせるような未知の自然の奥深さも果てしなく残っている。だから、…
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聊斎志異
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野棘かな/そこはかとなく忍び寄る寂寥を振り払うかのように
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序文となる聊斎自誌を読む人。心ある人なら彼の寂寥を知るだろう。よくある序文だと思い込み、先に本書を読むうちに、すでに何話になったのだろうとふと心がとまり、淡々と綴られる話の多さにやっと驚き、あわてて振り出しに戻った。よくここまで集めて書いたものだと、感慨深く本をめくり、最初に戻り、聊斎自誌を読んでみると、さもありなんと納得した。半分くらい読み進めてから聊斎自誌を読んだせいか、良くぞここまでと彼の辛苦がわかる気がした。そこはかとなく忍び寄る寂寥を振り払うかのように、なんといわれようとこれが使命とばかりに打ち込む蒲松齢氏の姿が月下にうつしだされて見えるようだ。中国怪奇譚聊斎志異一の背表紙から。人間…
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幽霊殺し
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野棘かな/御宿かわせみの世界にひたる
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平岩弓枝さんの旅籠「かわせみ」を舞台にした御宿かわせみは、連作の時代小説シリーズだ。一話完結タイプの人情捕物帖で、リズムのある文体だったのでさくさく読み進み、それらシリーズの中で、今回は「幽霊殺し」というタイトルに惹かれてこの本を選んでみた。恋ふたたび、奥女中の死、川のほとり、幽霊殺し、源三郎の恋、秋色佃島、三つ橋渡った、以上一話完結の7作品が収録されている。「恋ふたたび」は、ある意味BL話で、主人と番頭の関係から振り回される内儀となった女のことが中心などと、あらすじも紹介したいのですが、なにせ捕物帖ですからこれ以上ネタばれしては申し訳ないのでやめることにした。本当に話の組み立てがうまく、面白…
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イノック・アーデン
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野棘かな/海は物語の古典的必須要素です。
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一つの愛の形の原型がここにある。時代が変わり、取り巻く風景も人間模様も変わってしまったけれど一人の女性を二人の男性が愛してしまうという関係性はいつの時代もあるだろう。一人の男性を二人の女性が愛してしまうという置き換えも含めて、初めてこの本を読んだ中学生の私は、本当の恋をした大人の人たちはみんなイノックのように潔く相手の幸せを思い続けるものだと信じたこともあったが、現実の世界では、それが思春期の妄想であって、愛の形は様々で、愛の表現方法も人それぞれ違っているものだと気がつく。このテニスンの叙情詩は、前ラファエル派の彫刻家だったウルナーからテニスンが聞いた実話だという。二人の少年、一人はイノックで…
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