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茨木のり子
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wildflower/隠された「震える弱いアンテナ」の在り処
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本書のタイトルは著者51歳(昭和52年)花神社から発行された表題作『自分の感受性くらい』の一節。茨木のり子といったらこれ、というほどに強く雄々しい印象を放つ、今更言うまでもなく有名な詩である。「永遠の詩」と題された小学館発行のシリーズ2巻。図版の多い年表、各詩への鑑賞解説、巻末エッセイからなる、親しみやすい体裁の入門編である。遺作『歳月』収載の作品や未収録の数編を含め、年表に沿うように配列された36編の詩は読みやすくゆったり配され、鑑賞は各作品に添えて控えめに記される。選と鑑賞解説は詩人の高橋順子。さりげなく茨木作品と寄り添い、対話するような立ち位置が心地よい。 茨木のり子の生涯を追想するよ…
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庭の小径で
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wildflower/ことばの贈り物
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きたむらさとし(喜多村恵)さんの作、ロウラ・ストダート(Laura Stoddart)さんの絵による本書は、お世話になっている方から誕生日に贈られた1冊。 きたむらさとしさん自ら描かれる絵本はユーモラスで漫画的な画風が多いが、本書のロウラさんの絵と逢うとまるで別人の佇まいを見せる。作者たちの住むイギリスの薫りが漂う、淡々と静謐ななかにもふと口元が緩むような豊かな味わいのある詩が3章に分かれて語られる。 <すべての旅は、 引き延ばされた家路である> という言葉がある。 人はいつも どこかへ向かって急いでいる。 帰るべきどこかへ向かって 気ぜわしく、また同時に ゆっくり…
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教会ねずみとのんきなねこ
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wildflower/掛け合いの妙
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イギリス生まれのデザイナー・作家グレアム・オークリー(Graham Oakley)による"Church Mice"シリーズうちの1冊。本国では大人気のロングセラーなのだそうだ。トムとジェリーほど激しいじゃれっぷりは見られないけれど、牧師の飼いねこサムソンとねずみのアーサーのやりとりが細かいところまで描き込まれているから、ちくちくくすぐられているようなおかしさがある。 大好きな音楽がたっぷり聴けるので教会暮らしを満喫していたねずみのアーサー。みんなを呼び寄せるきっかけは、なんとなくさみしくなったある日、こそっと読んだ聖書に書かれていた「すみやすいばしょになかまをひっこしさせ…
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図書館ラクダがやってくる
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wildflower/届けたい本がある限り。
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あまり図書館が身近に利用できない場所に本を届けるのが移動図書館である。本書が伝える、本のない地域への真摯な取り組みについては、魅力ある先行書評2本が詳しいので、そちらをお読みいただきたい。本書の発行はさ・え・ら書房、作者は、子どもの読み書き教育におけるテクノロジーの利用に関心の高いカナダ在住の作家・教育者、マーグリット・ルアーズさんである。発行は国民読書年の昨年(2010)である。 ここでは本書の「面白い事例」を中心にご紹介したい。1、オーストラリアの場合 およそ全国で5000の図書館のうちの移動図書館は72(本書掲載)そのなかでもゴールドコーストをゆくトレーラーは、太陽光発電の設備完備であ…
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おとまり、おことわり?
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wildflower/気むずかしくて不器用な彼が、やっぱりスキだ。
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前作『おきゃく、おことわり?』で、おなじみのクマ×ネズミコンビの新作。(「ニューヨーク・タイムズ」誌絶賛の人気シリーズで、原著はあと2作有)今月の岩崎書店の新刊。作者ボニー・ベッカー(Bonny Becker)さんはシアトル在住。賑やかで活動的な大家族に育ち、多彩な職を経験されただけでなく、心理学士も持つパワフル母さんです。凸凹コンビのふたりを包み込むようなおおらかさが伝わるのも、きっとその経歴の賜物でしょう。ケイディ・マクドナルド・デントンさんのコミカルな画。ユーモアたっぷりな訳は、翻訳業とともにご自身も読み聞かせの活動をされている横山和江さんです。 よる、クマは なにもかも きちんとし…
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さあ、とんでごらん!
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wildflower/「そのとき」がくればきっと、だいじょうぶ。
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本書の作者はサイモン・ジェームズ氏、『としょかんライオン』を翻訳された福本友美子さんの訳で岩崎書店発行の今月の新刊です。甘えん坊スズメのジョージが、秋から冬にうつろうとする季節、巣立ちの時期を迎えています。まだ、まだ、巣から離れたくない気持ちでおかあさんに甘えるジョージ。 「まだ いいや。こわいもん」とジョージはいいました。 「すの なかに いるほうがいいの」 「おなかすいた。ママ、むしを とってきて」 「ぼく、ここに いるから」北風が強く吹いても、あったかくて馴染んだこの巣にいれば、きっといつまでもだいじょうぶ。安心しきってじいっとおかあさんの帰りを待っていたジョージでしたが…
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山月記・李陵
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wildflower/人の理性と、獣への狂いのはざまで
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満月に吠える男と虎の対比が鮮烈な表紙。高校の国語教材にも採り上げられることの多い中島敦著『山月記』ほか1編を収めたまんが版が本書である。ぎょうせいから2010年4月に刊行された、現代文学に馴染みない少年少女向けにつくられた1冊。未だに高校の国語教材に採り上げられることの多い中島敦著の短篇「山月記」と中篇「李陵」が収載されている。ここでは評者にとって印象に強かった「山月記」について語ろうと思う。 主人公は李徴。前半は早熟で切れ者の彼の独白による回想である。進士の試験に若くして合格するような気鋭のエリートでありながら、地方の役人となることを拒み、詩作の道を極めるべく鍛練を重ねる。その後詩作への挫折…
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パンプキン
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wildflower/まもなくハロウィーン♪
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ハロウィーンの季節が近づいてきたので、そこで本書『パンプキン』をご紹介。賑々しいお祭りを描いた本は多々あれど、こちらはかなり異色作。著者ケン・ロビンズさんはニューヨーク在住で子ども向けノンフィクションを20冊以上書かれている方。翻訳は北海道在住の千葉茂樹氏。07年10月BL出版刊。オレンジの色鮮やかなパンプキンが荷台から転がり落ちるほど盛られている表紙。夕暮れどきのように見える。遠くの空を渡り鳥が列をなして飛び去っていき、とうもろこし畑は枯れ色に、大地も枯れた葉で色とりどりに染まっている秋。荷台に積まれ、市場で売られ、やがてハロウィーンの季節を彩るために飾られる主役。そのハロウィーンの物語が始…
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まよなかのねこたち
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wildflower/黒々と、静かな一夜の物語。
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漆黒に黒猫が微睡んでいる。04年に残念ながらなくなってしまった新世研さんのご本。2000年刊。クリスティーヌ・ビュネルさんはフランスの方、翻訳された堀池悦子さんは出版元主催の絵本翻訳コンクール優勝者とのこと。(巻末より)前置きはそれぐらいにして、本書の黒々としたようすがいい。微睡みながらも眠れない猫。月明かりが明るすぎて、池に顔を映しては驚き、散歩に出かける…。やがてもう一匹、もう一匹と同じように眠れない黒猫がやってくる。しん……と暗く、音もない世界にわずかに浮かび上がるように描かれる猫たちの仕草、水面に映る瞳がいい。静かに眠りにつくまでのひとときがいい。彼らがある晩偶然出会い夜の怖さもするり…
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ぼくのねこみなかった?
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wildflower/ねこ、ねこ、ねこ! でも、ぼくのねこはどこ?
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エリック・カールさんの猫本! と偶然みつけて読みました。作者公式サイトによると原著の発行はなんと1973年。日本版はかなりおくれての1991年に初版、手許にある作品は翌年の3刷とあります。大附瑞枝さんの訳。ニスをつけた薄紙に彩色を施した色紙を切り貼りして仕上げるコラージュが、本作でも猫たちの毛並みの表現に存分に生かされています。 「ぼくのねこ みなかった?」と問いかけているのは主人公の少年。大切な大切なねこがいなくなってしまったのを探しに出かけます。問いかけるたび、その場にいるひとたちが親切に指さして教えてくれます。その先にはたしかに、ねこがいるのですが……。ページをめくるたびに、そのねこた…
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彼の手は語りつぐ
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wildflower/今はいない、もうひとりの少年の記録
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ときは南北戦争のころ、北軍の兵士として生きていた15歳の少年ふたりの出逢いがあった。冒頭各々の家族に見送られ出征していく様子が描かれている。このポラッコ家のものがたりは終始シェルダンのまなざしで語られていく。本書『彼の手は語りつぐ』は、作者パトリシア・ポラッコさんの高祖父(ひいおばあちゃんの父)の実話として、代々語りつがれてきたものがたりである。 敵軍に銃撃を受け、放置されていた重傷のシェルダンをみつけ、助け出してくれたのはピンクス・エイリー。マホガニー色の肌をもつ彼はシェルダンを手際よく介抱し、実家まで連れていく。母のモー・モー・ベイは温かい佇まいで、まだ幼さの残る傷ついたシェルダンを我が…
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みどりのしっぽのねずみ
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wildflower/ほんとうのすがた、と仮の貌と。
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読書好き仲間さんのお勧めで読んだ1冊です。先行書評の方も言っておられるように、レオ・レオニさんの作品を『フレデリック』『スイミー』の作家さんと意識して読むと、あれ?と思うかもしれません。 「マルディ・グラ」(懺悔の火曜日)というお祭をしようと、のねずみたちが盛り上がります。話をもちかけたのは町のねずみでした。都会風に賑わい、楽しもう!という明るい話かとおもいきや……。 仮面をつけ、馬鹿騒ぎを続けるうちに次第に心境の変化がのねずみたちに現れてきます。<仮面>は何の隠喩でしょう、身につけているのをやめた彼らが記憶からも忘れ去ってしまいたくなるほどの思いとは……。いつまでたっても緑の色が抜けないねず…
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ぼく、だんごむし
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wildflower/「だんごむし、キミが分かった!」と叫びたい。
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かがくのとも傑作選の1冊。虫があまり得意でない子どもでも、なぜか気になるだんごむし。我が家は娘が弄るので、軽い気持ちで手に取りました。数あるだんごむし本は写真があったり、視覚にもリアルを追求していますが、本書の絵はちぎり絵をつかっていて、やわらかい感触です。そのかわり、文章も絵も一切手抜きのない本格志向。 それもそのはず、絵のたかはしきよしさん、文章の得田之久さんともに、もともとは画家さんです。虫の生態に詳しく、それをちいさなお子さん向けに示すのは、案外簡単ではない筈ですが、子どもの目線と興味を離さない工夫はいろいろとなされていると感じます。(それでありながら、だんごむしの研究者さんに指南を…
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11をさがして
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wildflower/「ひとつ言っておくね。サムはずっとあたしの親友だからね!」
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夏恒例の読書感想文課題図書がならぶ季節、本書は静岡県の小学校高学年向けのコーナーにあった1冊である。作者のパトリシア・ライリー・ギフさんは20年あまり教師をなさっておられた方で、本書でも主人公たちへのまなざしが温かい。子ども達のまわりで支え手となるおとなたちの描かれ方も相俟って爽やかな読後感を残す良品。 誕生日のプレゼントを前もってみつけるために、そっと屋根裏に忍び込んだサムが、おめあての包みの代わりにみつけたものは、自分の名の記された古い新聞記事だった。ところが彼の特性からそれらをきちんと読み解くことができない。そこで……。 本好きのキャロラインと、造型が得意なサム。サムの傍らにいて、時折謎…
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津波!!命を救った稲むらの火
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wildflower/公に語り継いでいくということ
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本書を手にしたきっかけは、このたびの東日本大震災後の疵痕がまだ生々しく残っていた頃、5月の初旬のことだった。お世話になっている目上の方から紹介され、貸していただいた物語が本書である。齢80を越えるその方にとっては自明の、私自身にとっては初耳の話であった。それが本書に描かれている「稲むらの火」である。 本書は紀州和歌山藩広村(現在の和歌山県有田群広川町)に実在した長者、浜口儀兵衛をモデルに描かれた史実を濃く伝える物語である。「浜口五兵衛」はその海嘯の波の高さが最大30mを越したという安政元年の大津波(1854年12月24日の南海地震)の際、自らの稲わらを燃すことによって、ふもとの村人たちの注意…
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どんぐりと山ねこ
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wildflower/山ねこのしたたかさと、一郎の清々しさと。
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1985年初版、96年には10刷を数えた宮澤賢治の童話絵本。表紙には一面金色に耀く野原の中央に葉巻をくわえている山ねこの姿が描かれています。葉巻をくわえ、片眼を訳ありげに細めながらこちらをみつめてくるまなざしが良いのです。タイトルは、風が野原から吹きよせているように見える動きのある事体です。 一郎少年のもとに、ある日届いた1枚のはがきにはこんなことが書かれてありました。 あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。 あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。 とびどぐもたないでください。翌朝、一郎が谷川に添って歩くまでに出逢う者たち――くりの木、ふえふきの滝、白いきのこ、りす――の様…
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雪のひとひら
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wildflower/まだ地上に雪が残っているうちに……。
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ギャリコの代表作『雪のひとひら』。既に皆さんもご存じの通りひとひらの雪の結晶をひとりの女性の一生になぞらえた美しいものがたりです。手許にあるのは、矢川澄子さんの訳のものです。表紙の深い青に雪の結晶の輝く写真が美しく、本文のなかにも繊細なちいさな挿画が多数あるのが嬉しい1冊です。主人公の「雪のひとひら」が高い空の彼方から生まれ落ち、ふわふわと漂いながら地上に降りていくさま、そのさなかに、たったひとりの存在として象られた不思議に目覚めてゆくさまは、淡々とした絵本のような語りでありながらどこか哲学的でさえあります。 ――わたしはいつ、どのように他の者と違う唯一の者として創られたのか、そして何のため…
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トマシーナ
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wildflower/偶然のより糸を繰る存在は誰なのだろう?
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ギャリコの『トマシーナ』は、先行書評のみなさんが既に語っておられるとおり、『ジェニィ』を大叔母にもつ由緒正しき猫のトマシーナの物語である。筋立てや心を打つ場面についても既に語られているので、若干、気になったところを書いてみたい。 トマシーナは、少女メアリ・ルーの飼い猫であり、母亡き後に誰よりも親しみをもって傍らで愛した存在である。他方、メアリ・ルーの父親、マクデューイ氏は獣医だが、その仕事に就くまでの父との確執を抱え、さらに患畜のために妻を亡くしている。役に立つ動物を助けることには意義を感じるが、飼い主に甘やかされたペットの患畜と飼い主へのまなざしは辛辣としかいいようのない態度を隠さない。つ…
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だんろのまえで
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wildflower/「ろうそくの 火が ゆらっと ゆれました。いきてるようで ぼくは すこし うれしくなりました。」
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鈴木まもるさんの『だんろのまえで』は、奥さまの竹下文子さんとの共著『せんろはつづく』や「おてつだいねこ」シリーズの雰囲気とは、すこぅし毛色の違う大人びた示唆に富む作品です。 冬山をひとり彷徨う少年が辿り着いたのは、樹齢数百年くらいではと思わせる古くて巨きな樹の根もと。そこには一枚の扉があり、吹雪を凌ごうと少年は一歩、なかへと踏み入れるのです。中は真っ暗。彼がどこからか聞こえてくる声にうながされるままにろうそくの灯をつけると、煖炉の前に幾匹もの動物たちが集っている――。 帯のことばから連想するほどには、メッセージ性はつよくなく、淡々とどちらかというと、ことば少なに語られています。 静かに、温か…
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さとし、ぼくのサッカーエース
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wildflower/平和だった時代の、片隅でおこっていたこと。
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品切なので、図書館で”出逢えた”のはラッキーだった。サッカーをする息子にと軽いノリで図書館から借りたもののうち1冊。 表紙の少年たちは小学5年生のタク、その弟の眼鏡顔が4年生のツトム、さとしだ。住宅地のなかに最近になってできたので、校庭がちいさい小学校に通う兄弟は、6年生に負けないよう、サッカーの場所取りに苦労している。 早朝は校庭の取り合いで兄ちゃんが強気にがんばってくれるので、弟は兄の分の忘れものを代わりに運んでやったり、雑用を引き受けたりと忙しい。放課後の公園の場所取りはツトムの担当。持ちつ持たれつの兄弟関係が微笑ましい前半。 ある日、ツトムはまいごの仔猫をひろった女子に頼まれて、場所…
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ネコナ・デール船長
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wildflower/なんとものどかでゆるいのだ。
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タイトルからして、かなりゆるい本だとは予想していた。予想を決して裏切らない、かなり、ゆるい作品だった。でも、面白かった。以下、補足を少し。肩に猫を巻いて、にこやかに手を上げているのが、われらがネコナ・デール船長そのひとである。首に巻いたストライプのチーフが粋だ。その上にででーんと恰幅のよろしい黒地のくつした猫が乗っている。……その名も「くつした」。その親もそのまた親も「くつした」だ。それもみんな雄のねこたち。黒猫の足先だけがまっしろなあれだ。海の上でうまれた、生粋の海の男、ネコナ・デール船長。ネコナデール、ネコナデール、ネコナデール……そういいながら愛猫くつしたをいつだって撫でている。ネコナ・…
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人間になりたがった猫
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wildflower/「ご主人、わたしを人間に変えてください」
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劇団四季で4月末からはじまる名古屋公演が決定したミュージカル『人間になりたがった猫』の原作です。四季ファミリーミュージカル最多公演数を誇る人気演目だそうです。20世紀半ばのアメリカの児童書作家ロイド・アリグザンダー49歳の頃の作品です。 大魔法使いステファヌス大学士の飼い猫ライオネルは、どうしても人間になりたかったのでしきりとせがみます。少し前にとくべつな計らいで崇高な宝である「ことば」を与えられていた彼は、それ以来猫である自分に違和感がでてくる、というのが面白いです。 「いったいいつから、猫が猫である気がしなくなったのかね?」 「口がきけるようになってからです」根負けした主人にやっと人間…
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チョコレートパン
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wildflower/おいしそう……?
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図書館棚でみつけた1冊です。表紙にどどーんと描かれた茶色い塊に、タイトルが「チョコレートパン」。長新太さんの絵本は、説明なんて野暮。ほんとは……え、なんで?っていうのがないと半分しかたのしくないんです。評なんてほんとは要らないのかも。と思いつつ……。理屈ばっかりこねて合理的なおとなをやっているとふと、無性に食べたくなるものみたいに、手を伸ばします。だまされにいくのがたのしいんです。今回はとくにおいしそうでもあります。囓られたように手前がいびつ……ってことは、きっと巨大なこの塊がチョコレートパンでしょ? って思ったら違ってました。なんか遠くから、とことことやってくるのが「前:チョコレートパン」で…
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しあわせネコ
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wildflower/ほんのりとやさしい、ちいさなおはなしをどうぞ。
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きょうはネコの日。タイトルで選びました。東君平さんの切り絵のネコがしあわせそうな顔でこちらをみています。動物たちが主人公のたくさんの愉快な物語28篇のなかから、特に2つのネコの物語をご紹介します。 まず最初はp9の「おひなさま」。今ごろは桃の節句でちょうどご家庭に雛人形を飾っているお宅も多いのでは、というちょうどタイムリーなおはなしです。 のらネコの親子が出てきます。こどものネコは物置の屋根で寛いだり、お百姓の家のなかを覗いてみたりします。すると、そこに綺麗な雛人形が飾ってありました。 「きれいだ」こネコはおもいました。そしてさっそく おかあさんのところ へ かえってきました。 「おかあさ…
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猫楠
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wildflower/吾が輩は猫楠である……。
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『猫楠』は、水木しげる氏の書いたまんが版南方熊楠の伝記である。猫好きの友人に「子どもの宿題用に簡単に読めそうな南方熊楠入門みたいなのを教えて欲しい」と相談を持ちかけたのは昨年の暮れのこと。今ごろになって思い出しつつ、整理しつつの覚書である。 確か、勧めた友人は「こんなのあるけど?」といった気楽な調子だった(と思う)。ゲゲゲの水木しげるが熊楠?と当時は予備知識ゼロ。(実は相当に熊楠に影響を受けた方なのだというのはあとから知った。)南方熊楠の名は学生時代にアルバイトをしていた古本屋の書棚に別格のように鎮座していた珍しい名前の博物学者でしょうという程度で止まっていたので、小学生が初めて知るのと大し…
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ぼくがいちばん!
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wildflower/一番!のきもちは大切なままで。
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岩崎書店発行、メイシーちゃんシリーズでおなじみLucy Cousinsさんの作品です。『パックン!』の灰島かりさんとの名コンビが本作でもまた活きています。こんどはのびやかに、ちょっぴり自慢しいの犬くんが主人公です。社会生活を学びはじめる4歳くらいからがちょうどいいかもしれません。図柄がのびやかで、大きく描かれています。手書きのような文字は、ところどころ強調して書かれています。読み聞かせるときにも、少し離れたところからでもよく見えます。ひとり読みも、もちろん。絵本読み聞かせの会でも使いやすい大きめの版です。タイトルの「ぼくがいちばん」から伝わってくるテーマがいいんです。主人公の犬くんには、幾人か…
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ルラルさんのバイオリン
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wildflower/いつだって、また、はじめられる。
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「からだじゅうの たのしいきもちが ぜーんぶ おしりに あつまって おしりが かってに わらいだすみたいだよ。 こんな おかしなおと めったにきけないぜ。」ルラルさんのバイオリンの音色はいわゆる綺麗な音色ではありませんでした。オーケストラの団員だったおとうさんから譲られた大切なこのバイオリン、ほんとうはもっともっとおとうさんみたいに、巧く弾きたかったのに……。ずっと弾かず、手入れをしながら隠していたバイオリン。ねこに見つかってせがまれて、しかたなく弾いてみせました。意外にも嬉しいことばを、わにに言ってもらったルラルさん。だんだん、すこぅしずつ……きもちもほどけてきましたよ。 そんなもんかなと…
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ひいばあのチンチンでんしゃ
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wildflower/「ウッソー! ひいばあが うごかせるわけないじゃん」
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本書の著者は大阪出身のさくらいともか(桜井伴香)さん。まっかな古風の路面電車が表紙に描かれています。息子が電車小僧だったころを想い出し、懐かしさもあって手に取りました。岩崎書店刊、この11月の新刊です。 主人公の少年は、杖をついてゆっくりしか歩けない「ひいばあ」を伴って路面電車に乗ります。ひいばあがこれなら私も運転できるよ、というのをにわかには信じられない様子。 要所要所にはかんたんな運転操作の図もあり、鉄道好きの子どもたちの興味を引きます。ハンドルとブレーキ、足元の「チンチン」となるベルのなるしくみ……。細やかなことは脇の絵で語りながら、路面電車は街中をぬけて目的地へと向かいます。すれ違う路…
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あし にょきにょき
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wildflower/「号外! 大通りは大パニック!巨大なる足現る!!」
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……なぁんて新聞記事になってたんじゃないのか?と思わせる表紙。タイトルから明白な、これまたナンセンスな幼年絵本です。作者は『せかいいちのぼうし』の深見春夫さんです。漫画のようにコミカルな画風です。1980年以来のロングセラー。岩崎書店刊。一枚めくると、食いしんぼうのポコおじさんが、まさに食事の最中。世の珍しいものを食べ尽くしたその旺盛な食欲と好奇心(と財力)がおなかまわりをみればわかります。そこへ怪しげなセールスマンがトランクに入ったソラマメを売りに来ます。トランクひとつに一粒。相当の大きさです。いくらしたんだかわかりませんが、珍しいというソラマメに敬意を表してシンプルに塩コショウでいただくと…
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せかいいちのぼうし
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wildflower/たしかにそれは、せかいいちでした。
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ことし11月に復刊された『せかいいちのぼうし』は、絵本作家・深見春夫さんの作品です。1982年の初版、岩崎書店刊。およそ3才から5才くらいの子どもたちに好いのどやかな時間の流れる1冊です。帽子の大好きな人々の住む町で、あるとき一番素晴らしい帽子を決めるコンクールが開かれることになりました。それで街中のひとびとが銘々に趣向を凝らした逸品を頭にのせて集まってくるのです。表紙にみえる作者の名前が書かれた帽子などはまるでみたらし団子を連想させるまろやかなカタチ。お供4人を引き連れて、枝で支えられた長い長いものもあります。頭にかぶるものでさえないものまで……!最も大きくて奇抜なものに一等が決まろうという…
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