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魂萌え!
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サムシングブルー/書店に並ぶ 『OUT』 を手にしたその日から
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桐野夏生さんの著書に魅了されてしまいました。何故そんなに惹かれるのか、もやもやしながら読んでいくと、ストーリーの面白さよりストーリーのなかに潜んでいる彼女の魂に魅了されていることに気づきました。そしてそこには根幹のワードが潜んでいます。『グロテスク』は「怪物」。人は誰しも怪物になりうる危うさを持っていることに慄きました。『魂萌え!』は「恙無く」。自宅で倒れた夫・隆之は心臓麻痺で息を引き取り、「恙無く」暮らしていた敏子(59歳)に孤独の影がひたひたと忍びよってきます。残された家族はバランスを崩し、敏子を苛めます。追い打ちをかけるように葬儀の後に発覚した愛人・昭子の存在は敏子の精神のバランスを崩し…
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まゆみのマーチ
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サムシングブルー/重松清さんの自選短編集は昔のお話の主人公たちに勇気をもらって編んだ短編集です。
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未曾有の東日本大震災から七ヶ月が経とうとしています。誰もが自分の人生を見つめ直し、自分にできることを探し続けた七ヶ月間でした。重松清さんは9月に二冊の自選短編集を出版されました。二冊の著者印税を全額、あしなが育英会に寄付されることを知り、ひとりの読者として賛同し、また本を読むことでその趣旨に参加できる、と思いました。女子編『まゆみのマーチ』は既成の短編から5編、大震災から生まれた1編からなる短編集で作家・重松清さんならではの温かさを感じる作品ばかりでした。そのなかの2編は既に読んだ作品でしたが、選ばれて良かったね、と作品に話しかけながら読みました。母の危篤を知り、飛行機の最終便に飛び乗った僕は…
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猫を抱いて象と泳ぐ
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サムシングブルー/チェスにたとえるなら小川洋子さんの棋譜は神々しい。
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小川洋子著『人質の朗読会』は言いようのない悼みを引きずりながら読み終えました。小説ってなんだろう、と思い悩んだ一冊でした。小川洋子著『猫を抱いて象と泳ぐ』は言いようのない感動を覚えながら読み終えました。小説ってすごい、と思いました。この小説はチェスの盤下の詩人「リトル・アリョーヒン」と呼ばれた少年の物語です。その物語は七歳になったばかりの少年が祖母と弟と三人でデパートへ出かけるシーンから始まります。少年が一人向かう先は屋上の一角、そこはデパートの屋上に印度からやってきた象・インディラの臨終の地でした。少年の友達は死んでしまった象・インディラと寝る前に語りかける架空の少女・ミイラだけでした。少年…
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向田邦子全集
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サムシングブルー/夏の終わりに、向田邦子全集第三巻を読んでみました。
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飛行機事故で亡くなった向田邦子さんは毎年夏になると注目を浴び、今もなお輝いている作家です。昨日でドラマ「胡桃の部屋」の放映が終わりました。先日は向田邦子さんの愛猫・マミオがテレビに出ていました。向田邦子生誕80年を記念した『向田邦子全集』のカバーの猫はきっとマミオでしょう。全集第三巻『隣りの女 男どき女どき』はみーちゃんの書評に書かれていたとおり秀作ぞろいでした。向田邦子さんは小道具を巧みに使い、擬音語を効果的に使っています。「隣りの女」ではミシンを小道具にカタカタカタとミシンを掛ける音に主人公・サチ子の気の高ぶりを表していました。「下駄」では朴歯のような高い下駄を小道具に階段を上ってくるガラ…
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インパラの朝
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サムシングブルー/「私の耳には届くことのなかった小さな声の限りない広がりと、そこに示される意味の深遠さについて」
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悠然としたインパラの目を見た瞬間、『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』の本を手に取っていました。本書は中村安希さんの684日におよぶバックパッカーの記録です。それはわたしの想像を超えた旅の記録でした。安希さんは26才の女性であること、2006年から2年間に渡る長旅であったこと、その当時のユーラシアの世界情勢を知れば、本を読む前は無謀な旅のように思えました。お金をかけない旅は、寝るところも決まっていない、移動手段はヒッチハイクか、より安い交通手段にするために現地の人と値段交渉することであり、強靭な精神力と肉体を持っていないと続けられません。ユーラシア・アフリカ・ヨーロッパ大陸と47…
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プリンセス・トヨトミ
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サムシングブルー/映画を観る前に、万城目ワールドを。
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大阪城を見たことのある人は『プリンセス・トヨトミ』を読みたくなるのではないでしょうか。わたしもその一人です。環状線の電車の中で見た大阪城はそこだけ異次元の空間が漂っていて、その迫力に圧倒されながらも見とれてしまった記憶があります。東京からやってきた会計検査院「鬼の松平」「ミラクル鳥居」「美貌のハーフ旭」の3人が実地検査に訪れたさきは空堀商店街にありました。その社会法人OJOは「大阪国」となって松平の前に現れます。全面戦争勃発か、というストーリーになっていますが、万城目さんは目に見えない父と子の絆の象徴を「大阪国」にしたかったのではないでしょうか。『プリンセス・トヨトミ』に登場する会計検査院の3…
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ソフィーの世界
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サムシングブルー/『ソフィーの世界』は1991年に出版され、全世界で約2300万部を売り上げたベストセラーでした。
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ソフィーは14歳。父親は船長でいつも不在、仕事している母親と二人暮らしのソフィーはネコやカメやたくさんの動物を飼っているごく普通の少女です。ある日、ソフィーが学校から帰って郵便箱を見るとソフィー宛てに 「あなたはだれ?」と書かれた差出人も切手もはってない手紙が入っていました。もう一度、郵便箱を開けると 「世界はどこからきた?」とだけ書かれた手紙が入っていたのです。そしてもう一通、謎の手紙が届きます。一日に三通の手紙を受け取ったソフィーは、その手紙を持って庭にあるソフィーの秘密のほら穴へ逃げ込むのでした。アルベルトから一方的に送られてくる哲学入門講座を学習しながら、三通目に届いた手紙の正体の核心…
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ようこそ、絵本館へ
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サムシングブルー/『ようこそ、絵本館へ』 おススメです!
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「仕事に明け暮れているおとなの皆さんにぜひ絵本の魅力を知ってもらいたい。そのガイド本として、この本はオススメです。」夏の雨さんの書評を読み、さっそく『ようこそ、絵本館へ』を読んでみました。ページをめくると、はじめに「絵本館の歩き方」が紹介されていました。絵本館は3つのテーマパークになっていて、カラー図版と解説のコーナーに別れています。第一章は プレゼントしたい絵本「愛にひたる。」のカラー図版には、木のベンチに三冊の絵本が並んでいて、とてもすてきです。そのなかで『しろいうさぎとくろいうさぎ』はとっておきの一冊になりました。第二章は 大好きな絵本作家そのなかでバージニア・リー・バートンの本を三冊…
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あなたにめぐりあえてほんとうによかった
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サムシングブルー/あなたにめぐり逢えて
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先日の朝日新聞にみつはしちかこさんのコメントが載っていました。昨年の春にご主人を亡くされたこと、その一ヶ月後に意識不明になり生死をさまよったこと、相田みつをさんとの詩画集のお話があって休刊していた“チッチとサリー”を書けるようになった喜びのコメントでした。さっそく手にした詩画集は思い描いていた以上の素晴らしいものでした。いつだったろう、“チッチとサリー”に胸をときめかしたのは。東京フォーラムにある相田みつを美術館には何度も足を運びました。そこには心が癒される空間があります。詩画集をひらくと、そこには相田みつをさんの温かい肉筆と、“チッチとサリー”の世界がコラボしてました。みつはしちかこさんのあ…
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風に舞いあがるビニールシート
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サムシングブルー/春風に乗ってやってきた 『風に舞いあがるビニールシート』
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季節の中で一番好きな季節は、と聞かれたらわたしは春と答えるだろう。春は別れと出会いの季節、なんとなく不安でくすぐったい。本棚を整理していたら、一年以上前に購入した『風に舞いあがるビニールシート』を見つけました。直木賞作品と他5編の短編からなる本書は、すべて良質の作品でした。風に舞いあがるビニールシートを懸命に追っていたエドの死から始まる『風に舞いあがるビニールシート』は、心を揺さぶられる作品でした。高い理想を持ち賢く生きてきた里佳は、国連難民高等弁務官事務所に転職した職場でエドと出会い、二人は結婚をします。しかし里佳の思い描くぬくもりのある家庭は、難民地で暮らすエドをしだいに追いつめていくので…
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冬の童話
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サムシングブルー/半分に千切られた二枚の一万円札が起こした奇跡の物語
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『冬の童話』というタイトルと美しい装画に惹かれて手にした本は「ある雪の降る寒い夜に、寂しがり屋の一頭のキャメルと、どうしようもなくなってしまった小さなメスのノラ猫が、寒さと孤独に吸い寄せられて会った」名高そらと稲垣聖人の物語でした。義父への憎しみ、父親の違う弟・光の病、お酒に溺れるクリスチャンの母親への絶望とで神様を信じることができないそらと、松本盆地の一角に位置する梓橋にある養護施設の玄関に捨てられた聖人(まさと)は、「運命の絆」に吸い寄せられていきます。そして、そらにとって聖人は『かたあしだちょうのエルフ』のエルフとなり、聖人にとってそらは聖人のすべてを知る人となりました。悲哀に満ちた純愛…
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佐野洋子対談集人生のきほん
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サムシングブルー/対談の中で佐野洋子さんは小説家になりたかったと語っていました。 それなら『クク氏の結婚、キキ夫人の幸福』は彼女の最高峰であろう。
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昨年11月佐野洋子さんの訃報を知り、『シズコさん』を読みました。母との葛藤、母への想い、胸にあるものすべてを書き記したものを読み、佐野さんは強くて弱いひと、佐野さんの潔さに胸を打たれました。『佐野洋子対談集』は武蔵美のデザイン科を卒業した佐野さんと後輩の西原理恵子さん、後輩のリリー・フランキーさんとの二つの対談が収められています。対談中は、武蔵美を選んだ三人の共有する空気が始終漂っていました。西原理恵子さんとの対談(2007年)はテンポがいい。男は精密機械、女はトカレフ(旧ソビエト軍が採用した軍用自動拳銃)と西原さんが言えば、佐野さんは男はちゃんとたっている木、女は柳とおっしゃる。二人の人生観…
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大きな木のような人
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サムシングブルー/いせひでこさんの絵本は芸術作品である
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パリには2本の樹齢400年のアカシアがあるそうだ。その1本は植物園にあり、そこには世界中の草花が咲いているという。題名は『大きな木のような人』ですが、この絵本の主人公は植物園です。ページをめくると、植物園の門をはいり、木々の茂る緑のトンネルの小路を歩いているような、木漏れ日が漏れ、葉っぱを揺らす風の音が聞こえてくるような感覚に陥りました。いせひでこさんは少女・さえらと『大きな木のような人』である植物学者を登場させます。どこからともなく現れたさえらは、おじいちゃんの誕生日にひまわりの花をプレゼントしたくて、一本の花をひきぬいてしまいます。そのときの絵が表紙の樹齢250年のプラタナスの両脇でたたず…
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KAGEROU
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サムシングブルー/KAGEROU を読んで年の始めに思ったこと
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子どもに本を読んで聞かせる「読み聞かせの会」という会があるそうですが、基本的に読書は『個』であると認識しています。『個』は『己』であるため、日常生活のなかで本の話題に触れることは私の場合、皆無に等しいです。それが先日、何気ない会話の中で突然「そうそう『KAGEROU』読んだー?」と聞かれたのです。「まだ読んでないわ、どうだったー」と、わたしは目を輝かせて彼女を見ました。彼女とは旧知の友ですが、本の話をしたのは初めてでした。第五回ポプラ社小説大賞受賞作は話題作となり、たくさんのひとに読まれました。『KAGEROU』は茶の間までやってきました。それは喜ばしい社会現象だと思います。本はコミュニケーシ…
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清冽
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サムシングブルー/わたしと詩人・茨木のり子さんとの出会いは
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二年前、親友から一冊の詩集をプレゼントされました。開けてみると『倚りかからず』(ちくま文庫)でした。その詩集がわたしと茨木のり子さんとの出会いでした。彼女の詩は、わたしの心を解き放ってくれるところまではいきません。しかし、山根基世さんの解説のなかにあった茨木のり子さんのコメント「詩は生る。生るまでにかかる時間は、それぞれの詩によって違うけれど、『倚りかからず』は40年余りかかっている」を読み、詩の崇高さ、壮大さ、彼女の志の高さに感心しました。今年の7月に『永遠の詩 茨木のり子』(小学館)を読みました。詩人・高橋順子さんの選・鑑賞解説と、彼女の年譜を辿りながら詩を読みました。詩集『見えない配達夫…
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シズコさん
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サムシングブルー/母さんの小さな手
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わたしにも母がいる。そしてわたしも母親になり、母のことを一人の女性として理解できるようになってきました。佐野洋子さんは昭和13年父・佐野利一と母・シズコさんの長女として生まれました。中国から引き揚げ終戦後、2つ違いの兄と2人の弟を亡くし、19歳の時に父親を亡くしました。そのときシズコさんは42歳、まだ一番下の妹は7歳でした。それからシズコさんは母子寮の寮母になり、女の手で4人の子どもを大学まで行かせます。自分が建てた家を弟の嫁に追い出され、認知症の症状が現れたシズコさんは自ら老人ホームへ入居します。幼い頃、母に愛されていないと感じたときから母を愛せなくなり、ホームで最期を送る母を自業自得と思い…
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かたみ歌
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サムシングブルー/懐かしい昭和の薫りを醸し出している『かたみ歌』
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『かたみ歌』は東京・下町にあるアカシア商店街を舞台にした7つの連作短編集です。アカシア商店街という名の通り、レコード屋の流星堂からは「アカシアの雨がやむとき」の曲が流れ、商店街は賑わい、まだご近所づきあいのあったころのお話です。第1話『紫陽花のころ』は、三十年前に都電の線路沿いにある古いアパートの二階に越してきた小説家志望の青年が体験した話です。第1話を読み終えて、温かさと同時に異質な怖さを感じ、不思議な感覚を受けました。全編に登場するアパートのすぐ隣にある寺・覚智寺と、古本屋・幸子書房の気難しい店主はキーパーソンです。そして最終話『枯葉の天使』になって、新たに古いアパートの二階に越してきた若…
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小さいおうち
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サムシングブルー/「思ひ出」と、書いた紙を張り付けて大事にしていた洋菓子の空き缶の中にあったものは、
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『タキおばあちゃんのスーパー家事ブック』を出版したタキに、出版社から次の本の依頼がありました。「女中」という言葉が消え去った今、女中奉公をしていた時代を書こうと、タキは思い立つのです。タキは尋常小学校を卒業した昭和5年の春、女中奉公に上がるため親類のおばさんと東京へ向かいます。汽車の中でおばさんがタキに女中の心得を懇々と話す冒頭の文章に、わたしは惹きこまれてしまいました。女中にとっていちばんたいせつなものは「ある種の頭の良さ」であり、その能力がタキにあることを見抜いた最初の奉公先の小説家・小中先生が語るイギリスにいた女中の話「ご主人様のために、お友達の原稿を暖炉で焼いて差し上げた女中の話」は、…
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ひそやかな花園
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サムシングブルー/人と人とがつながり、生まれるもの。
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今年の7月、都の男性最高齢111歳の白骨化遺体が自宅から見つかった事件は、全国に衝撃を与えました。この事件は行政の問題だけではなく、家族の在り方を考えさせられました。「一人で暮らしている老人は他人が関与していますから安心ですが、家族と一緒に暮らしている老人は危ないです。家族が社会から隠してしまいますから」とコメンテーターが語っていました。いま、家族の存在が危ぶまれています。『ひそやかな花園』は帯に書かれているように「親と子、夫婦、家族でいることの意味を根源から問いかける」角田光代さんの渾身の一冊でした。夏になると弾の別荘に集まってくる6組の家族たち。子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきます。それ…
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おおきな木
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サムシングブルー/「しあわせ」って、なんですか。
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シェル・シルヴァスタイン作『おおきな木』は1976年に、本田錦一郎さんの翻訳で出版されました。その翻訳者の本田さんが物故されたこともあり、村上春樹さんの翻訳で『おおきな木』が出版されました。この絵本は、アメリカで1964年に出版され、30以上の言語に翻訳され、世界中で読まれているロングセラーであることを知りました。少年はおおきな木がだいすきです。おおきな木と少年はいつも一緒です。かくれんぼをしたり、こかげでねむっている少年の絵は、とてもとても愛らしい。でも時間がながれて、少年はだんだん大きくなっていき、おおきな木はひとりぼっちになることがおおくなりました。大人になったぼうやがやってくると「しあ…
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うつつ・うつら
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サムシングブルー/赤染晶子さんの作品のなかに、京都の「かまい」をみる。
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第143回芥川賞受賞作は『乙女の密告』。芥川賞選考委員である川上弘美さんは「全体にただよう諧謔が、とても好きです。」と選評しています。「諧謔」の意味を調べると「こっけいみのある気のきいた言葉」とありました。確かにバッハマン教授の存在は強烈でしたし、乙女たちの会話は諧謔的でした。そんなわけで赤染晶子さんの作品に興味を持ち、著書『うつつ・うつら』のなかの『初子さん』を読んでみました。舞台は昭和50年代の京都。あんパンとクリームパンしか売っていないパン屋に住む初子さんは若い洋裁の職人です。初子さんは自分の作った洋服をよく覚えていて、スーツの上下の柄がずれている人をみつけると、たまらなくなり「ずれては…
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パスタマシーンの幽霊
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サムシングブルー/川上弘美さんの文体は美しい。
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美しい文章には余韻が残ります。その余韻は感性を豊かにします。しばし文章に釘づけになってしまいます。恋にははじめとおわりがあり、それはつないでいた手が、するりとほどけてしまったり、もう一度手をのばしても、つなげないのと似ています。そんなせつない恋物語に、川上弘美さんは魔術をかけます。その魔術がとっても好きです。逸品は『修三ちゃんの黒豆』です。 「しわしわの黒豆はアン子に似ている」と修三は言います。情けないアン子とおかまの修三ちゃんの会話がいいです。『てっせん、クレマチス』の最後の文章 「さっきよりもうちょっとていねいに、おやすみ、とつぶやいた。目を閉じたけれど、なかなか眠れなかった。白い花が、い…
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走ることについて語るときに僕の語ること
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サムシングブルー/レイモンド・カーヴァー著『愛について語るときに我々の語ること』を、本書のタイトルの原型にした村上春樹さんを敬愛します。
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読書は恋愛と似ている。カバーに触れ、目次を読む。その行為は人を好きになるのとよく似ている。2007年に出版された『走ることについて語るときに僕が語ること』は村上春樹さんのメモワール(個人史)であり「あくまで僕という人間にとって走り続けるというのがどのようなことであったか、それについて思いを巡らしたり、あるいは自問自答しているだけだ」と、語っています。第1章 誰にミック・ジャガーを笑うことができるだろう? では「長距離ランナーは個人的な勝ち負けは問題ではなく、個人的目標を達成したかどうか、走り終えて自分に誇りがもてるかどうかが大事な基準となる」「同じことが小説家という職業にも言える、小説を書くこ…
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羊男のクリスマス
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サムシングブルー/羊男の冒険は、とっても愉しい絵本。
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みーちゃん(敬称略させていただきます)の本のカバーの蘊蓄はとてもおもしろい。そのおもしろさを知って、さらに本を読む愉しみが増えました。『羊男のクリスマス』の絵は佐々木マキさんです。村上春樹さんはプロローグに佐々木マキさんと一緒に絵本を作れた喜びを熱く語っています。それは大学に入ってすぐの頃、佐々木マキさんがデザインしたビートルズ・フェスティバルの黄色い巨大なポスターを狭いアパートの部屋の壁に貼って、いつもそれを眺めていたそうです。毎日眺めていたマキさんの絵が今では彼の日常に浸みこんでしまっているような気がするなんて、なんとも村上春樹さんらしい。講談社文庫のオリジナルカバー版『羊をめぐる冒険』の…
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ねじまき鳥クロニクル
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サムシングブルー/村上春樹の長編小説はひたひたと走るランナーのよう
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K・Iさんの『ねじまき鳥クロニクル』第1部から第3部までの書評を読みました。特に第3部の書評のなかの「『1Q84』に出てくる「牛河」が出てくるのも興味深い。牛河は、『1Q84』での牛河よりももっと牛河的だ、という気がした。とくに、そのねばっこい饒舌さは一読の価値あり、だろう。」箇所を読み、さっそく読んでみることにしました。村上春樹の長編小説はひたひたと走るランナーのようです。ランナーは強靭な肉体を持ち、最強のメンタルで、フルマラソンのイメージトレーニングを完成させている。次第にランナーの息遣いや心臓の鼓動が私の脳細胞に侵出してきます。ページを捲る手は汗をかき、紙がしっとり濡れてくる。親指の形に…
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石垣りん
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サムシングブルー/つよい「ひとりの」やさしさ
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永遠の詩05は『石垣りん』です。年譜を見ると、どの写真も彼女は笑っている。石垣りんは大正9年東京・赤坂に生まれました。4歳の時母を亡くし、高等小学校卒業後、14歳で銀行の事務見習いとして働き始め、家族6人の働き手となって定年まで勤めあげた彼女の詩は、優しさと切なさと健気さがほとばしっている人生の詩です。第一詩集「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」 (32歳) それはながい間/私たち女のまえに/いつも置かれてあったもの、(表題詩)初期の代表作です。「私は日本の女性たちの愛情と智慧と哀しみとが、炎のように燃えているのを感じた」と、鑑賞解説のなかで伊藤信吉さんは記しています。また作品集にある『屋根…
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茨木のり子
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サムシングブルー/詩は、生きる。
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本書は「戦後を代表する女性詩人にして、エッセイスト、童話作家でもあった。」と、茨木のり子さんを紹介しています。詩人・高橋順子さんが茨木のり子の作品を選・鑑賞解説しています。本書の最後にある年譜が大変充実しています。茨木のりこさんは大正15年に生まれ、平成18年79歳で亡くなりました。彼女は恵まれた環境の中で育ち、豊かに志を高くもって生きてきた様子が窺われました。二年前に友人から詩集『倚りかからず』をいただきました。それまで茨木のり子さんの詩集を知らなかった私は、志の高い詩を読み、彼女のファンになりました。 「倚りかかるとすれば/それは/椅子の背もたれだけ」『倚りかからず』は彼女が73歳のときの…
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金子みすゞ
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サムシングブルー/きょうの私に さよならしましょ。
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『永遠の詩』シリーズ全8冊の最初は金子みすずさんです。表紙には『さよなら』の一節が書かれていました。 きょうの私に さよならしましょ。本書は、金子みすずさんの童謡詩を甦らせた矢崎節夫さんが選・鑑賞解説をしています。『さよなら』の解説に、 「目で活字を追うのだけでは、この作品は見えてこない。声を出して読むと、見事に絵になって見える。」と、ありました。声を出して読んでみました。すると、大切な人の思いを素直に受け入れられなかったことを思い出しました。そして金子みすずさんの代表作『私と小鳥と鈴と』の一節「みんなちがって、みんないい。」をも、思い出しました。大切にしたいのに、相手を受け入られない。そん…
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きみ去りしのち
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サムシングブルー/突然、愛する人を喪った友にかける言葉が見つかりました。
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「あんまり幸せにならなかった人生でも、意味はあるよね、どんなに短くても、どんなに後悔ばかりでも・・・生きてきた意味や、生きてる意味は、あるよね」(196頁)主人公・セキネは眠りに落ちるまでさんざん時間がかかり、うとうとしただけで午前4時半に額にじっとりと寝汗をかいて目を覚ましてしまう。それは寒い朝、満一歳になったばかりの息子・由紀也が鼓動を止めてしまった時刻でした。彼は「なぜ、あの夜」と妻・洋子は「もしも、あの夜」と二人は自分自身に問い続けてきました。彼は由紀也が亡くなってから十年前に別れた妻・美恵子を思い出し、離婚しなかったら由紀也は生まれてこなかったし、あんな死なせ方をしないですんだのに…
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生きる勇気、死ぬ元気
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サムシングブルー/五木寛之さんは語る。あらゆる問いの答えはひとつではない、いろいろあっていいのだ、と。
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本書は、先頃、ネット書籍を公開した五木寛之さんと、ホリスティック医学の確立を目指されている帯津良一さんとの対談本です。『生きる勇気、死ぬ元気』とは、なんとポジティブな題名なのでしょう。先日、五木寛之さんの出版本のトークショーとサイン会に行って、彼の静かな頬笑みと静かな語り口に、すっかり魅せれてしまいました。彼の文章は、私の心を平穏にします。対談の終わりに帯津良一さんが「虚空という、もうひとつの生命」と、題してあとがきを書いていますが、たいへん文章力のある方でした。Q1からQ36のなかからユニークなフレーズを紹介します。Q1 死ぬ覚悟は必要かQ5 「死にごろ」を知るにはQ14 「達者でポッ…
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