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刻まれない明日 刻まれない明日
KOMSA/あなたはあなたの道を歩んでいく
いつか忘れなくてはいけない、大切な人。三崎亜記の「刻まれない明日」は、序章から始まる7つの短編で構成される物語だ。3095人の人間が、忽然と消え去った場所。「テロとも、自然災害とも、人為的な事故とも」いわれてはいるが、その謎は10年たった今でも解明されていない。「事件」が起こった場所は、真相解明も進まぬうちに再開発が決定したが、開発が途中で止まってしまったため、便宜的に「開発保留地区」と呼ばれている。「事件」が起こった街に、1人の女性が訪れる。その女性、沙弓は、ただ1人の「消え残り」だった。「失われた町」の続編である。沙弓を介して、緩やかにつながっている物語は、どれもが静かに哀しく、けれど優し…  全文読む 評価する

魔物 魔物
KOMSA/人は誰もが“魔物”である
消えた聖人画=イコンが地獄への扉だった。大沢在昌の「魔物」(上・下)は、絶望と憎しみに彩られたサスペンス・ノワールだ。北海道の麻薬取締官・大塚に、ロシアと地元やくざとの麻薬取引の情報が入る。ブツは押収したものの、麻薬の運び屋であるロシア人を取り逃がしてしまう。ロシア人は、銃撃による重傷を負いながらも、警官数名を素手で殺害し、町へ消えてしまった。あり得ない現実に、新種の薬物を摂取している可能性が考えられたが、犯人は逃走する際に一枚の絵を大事に抱えていたという。大塚は心の奥底に澱んでいた、過去の傷と向き合いながら行方を追う。向かった先は東京、憎しみ渦巻く魔物の理想郷だ。大沢在昌が描くのは、恐怖の裏…  全文読む 評価する

暗く聖なる夜 暗く聖なる夜
KOMSA/“LOST LIGHT”が照らすもの
男は女を想い一人で戦う決心をした。青い空が見える白い空も見える明るく、清らかな昼暗く、聖なる夜そしてわたしは、ひとりでこう思うのだなんと素晴らしい世界だろう、とマイクル・コナリーの新作“LOST LIGHT”は、文中にも引用されたルイ・アームストロングの名曲にちなみ、「暗く聖なる夜」という邦題が冠されている。当代最高のハード・ボイルドと言われている、ハリー・ボッシュ・シリーズ。この作品は「シティ・オブ・ボーンズ」に次ぐ作品である。ハリウッド署の刑事を退職し私立探偵の免許をとったボッシュ。彼にはどうしても心残りな未解決事件があった。ある若い女性の殺人と、その捜査中目の前で映画ロケ現場から奪われた…  全文読む 評価する

パーマネント野ばら パーマネント野ばら
KOMSA/女はオンナである
どんな恋でも、ないよりましや――。西原理恵子の「パーマネント野ばら」は、男にも人生にも負けず、たくましく生きる女たちの物語だ。娘を連れて、故郷の小さな村に出戻ったなおこ。その母が営む村唯一の美容院「パーマネント野ばら」は、女の懺悔室。そこでは女たちが、恋にまつわる小さな嘘を日々告白している。「女ってどうにかなるみたい」――いつも男に泣かされ裏切られ、それでも恋をやめない女たち。七転八倒する大人の恋心を描くのは西原理恵子の真骨頂だ。小さな嘘にしかしがみつけない女たちの性は、切なく、その気持ちを笑いで封印する。野ばらが咲く花園は、女のこころの奥底にあるのである。  全文読む 評価する

ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判 ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判
KOMSA/復活を待つ
ツッコミ満載の豪華プレゼントを堪能せよ。町山智浩&柳下毅一郎の「FBBの映画欠席裁判 3」は、タブー知らずの毒舌映画漫才コンビである、ファビラス・バーカー・ボーイズ(FBB)が贈る映画時評の第3弾だ。扱き下ろされた映画は数知れず、切った貼ったは当たり前、しかし特殊編集者と特殊翻訳家には映画への愛があるのだ。使い古されたオチにガッカリの「ヴィレッジ」、「アレキサンダー」のキング・オブ・ザ・ワールドの正体はマザコン。「ホテル・ルワンダ」の主演がウェズリー・スナイプスだったら、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で人殺しより怖いのは年増のコスプレ。世紀末を過ぎて映画はこれからどこへいくのか。映画漫才コ…  全文読む 評価する

ミッドナイトイーグル ミッドナイトイーグル
KOMSA/物足りない
吸い込まれそうな闇が続いている。その中をさらに黒い点が横切るのを見た。翼を広げ、暗い空を滑空していく。鷲だ。ミッドナイトイーグル。高嶋哲夫の「ミッドナイトイーグル」は、冬の北アルプスを舞台にしたポリティカル・サスペンスだ。さしずめ雪山版の「亡国のイージス」である。米空軍のステルス爆撃機が北アルプスに墜落する。報道カメラマン西崎勇次もその渦中にいた。かたや週刊誌記者の松永慶子は、横田基地に侵入・逃走した北朝鮮の工作員に接触する。吹雪の北アルプスと東京。二つの場所で、男と女は絆を取り戻せるのか。山岳小説として物足りなく、謀略サスペンスとすると意外やあっさりしている。高嶋哲夫はかつて原子力の研究者で…  全文読む 評価する

ドラママチ ドラママチ
KOMSA/これはあなたの物語
恋する女はいつも夢見る。角田光代の「ドラママチ」は、いつも何かを「待つ」女たちの心の情景を描いた短篇集だ。男に愛される女と愛されない女の違いはなんだろう。恋愛、妊娠、プロポーズ、女達はいつも何かを待っている。中央線沿線の「マチ」を舞台に綴られる、ちいさな変化を待つヒロイン達のドラマは切ない。今は通過点なのだと、自分に言い聞かせて日々を送り、ゴールはそんなところにはないと更に言い聞かせる。角田光代の描く日常は、リアルであり、そのドラマは隣で繰り広げられていてもおかしくない。陰毛に白髪を見つけて、さっさと離婚する友人。子どもを作ることは、不要な別れをひとつ作り出すように思うこと。それは明日の自分の…  全文読む 評価する

走ることについて語るときに僕の語ること 走ることについて語るときに僕の語ること
KOMSA/村上春樹、走る
少なくとも最後まで歩かなかった。村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」は、作家自身がはじめて自分自身について綴ったエッセイだ。1982年秋、村上春樹は専業作家としての生活を開始した。そして彼は心を決めて路上を走り始める。フル・マラソンや、100キロ・マラソンやトライアスロン・レース。25年にわたって世界各地で彼は路上の息吹と自分をシンクロさせる。旅行バッグの中にはいつもランニング・シューズがあったのだ。走ることは彼自身の生き方をどのように変え、彼の書く小説をどのように変えてきたのだろう。この作品はごく個人的な小説を書くランナーの覚え書きだ。だが、日々路上に流された汗は、天分とは何…  全文読む 評価する

終決者たち 終決者たち
KOMSA/ボッシュ イズ バック!
われわれは9回裏、試合の勝負がかかっているときに投入されるクローザー=終決者だ。失敗すれば試合は終わりだ。マイクル・コナリーの「終決者たち」は、ハリー・ボッシュを主人公にした待望のシリーズ第11作だ。私立探偵ボッシュは3年振りにバッヂを取り戻す。復帰後はじめての事件は、17年前の女子高生殺人事件だ。現場に落ちていた拳銃から DNAが抽出され、ある人物の関与が判明する。ボッシュは当時の捜査を逐一さかのぼる。被害者の発見場所、自宅、両親、母校、当時の捜査担当刑事など、関係者を訪問し、見落としがないかを相棒ライダーと検証してゆく。ロス市警「コールド・ケース班」に復職したボッシュの未解決事件を追う執念…  全文読む 評価する

シネマ・ハント シネマ・ハント
KOMSA/ほんとうに面白い映画とは
ハリウッドがつまらなくなった、101の理由とは何か。柳下毅一郎の「シネマ・ハント」は、『エスクァイア日本版』に最長連載を誇る、映画批評を単行本化したものである。10年以上にわたる連載の中で、批評は映画界の定点観測となる。そして、映画監督の盛衰もさることながら、映画の作り方がどう変わってきたかの記録でもある。コンピュータ・グラフィックスがいかにアメリカ映画を浸食したか、9.11テロがニューヨークの映画人の想像にどこまで影響を与えたか。巻末に掲載されている筆者と樋口泰人の対談は興味深い。サム・ライミは個人的妄失を超大作に落とし込み、スピルバーグはCG時代のスペクタクルをいちばん考えている。柳下毅一…  全文読む 評価する

村上ソングズ 村上ソングズ
KOMSA/至極の音楽が聞こえてくる
それは神さましか知らない。村上春樹+和田誠の「村上ソングズ」は、ジャズ、スタンダード、ロックの名曲から、村上春樹が選んだ至極の作品にまつわるエッセイだ。ポピュラーなあの曲、知る人ぞ知るこんな曲。村上春樹の厖大なレコード・コレクションは有名だ。歌詞を村上自らが訳して紹介し、和田誠の楽しいイラストが花を添える。この二人の共作には既にジャズの名曲を紹介した、「ポートレイト・イン・ジャズ」がある。こちらも名盤の中からこれぞという曲を選んだ作品だ。ひとりぼっちで、自分らしく生きていくのは生半可なことじゃない。手っ取り早く一人前になれたりはしない。小さな積み重ねがすべてなんだ。修行に耐えて一歩一歩前に進ん…  全文読む 評価する

火を喰う者たち 火を喰う者たち
KOMSA/少年は、祈り、そして闘っていた。
これは奇跡の物語だ。ドラマツルギーが奇跡を描いているわけではない。21世紀に語られるべき反戦の物語が書かれたことが奇跡なのだ。核の時代の現代人が抱える不安感は、ティム・オブライエンの「ニュークリア・エイジ」を彷彿とさせるし、悲しき大道芸人マクナルティーの造形はフェリーニの「道」を想起もさせる。この物語には超自然的なものや、不思議なものはいっさい出てこない。徹底してリアリズム風に書かれたかの印象を受ける。しかしデイヴィッド・アーモンドは、無辜なる愚か者であるマクナルティーが、奇跡を体現するに相応しい舞台を周到に用意する。キューバ危機をほんとうに恐怖したのは政治家や知識人ではない。テレビやラジオか…  全文読む 評価する

Twelve Y.O. Twelve Y.O.
KOMSA/次世代への責務とは?
「亡国のイージス」の前段とも言うべき、壮大なポリティカル・フィクションである。この作品で福井晴俊が描いたのは、大国のエゴと、それに付き合い全ての結論を先送りにした亡国・日本の責任の取り方だ。アメリカ国防総省を手玉にとるテロリスト「12(トゥエルブ)」の名はマッカーサーが「日本は12歳の子どもだ」と評した事に由来する。日本は戦後復興期からその成長を止めた。アメリカ庇護を得て(アメリカはそう考えているのか?)自分で答えを導けない政治家と国民に対し、「12」は私怨を契機として戦いを挑んでいく。「12」を逆さにすると「21」。未だに戦争を続けようとしている我々の生きている世紀だ。生きること、そしてその…  全文読む 評価する

USAカニバケツ USAカニバケツ
KOMSA/バケツから見上げるアメリカ
「底抜け合衆国」で、トホホなアメリカを暴いた町山智浩の新しいアメリカ風俗論である。ここでの町山の視点はアメリカ一市民の目線でいることに自覚的だ。「カニバケツ」とは、カニを沢山バケツに入れておくと、外に逃げようとするカニを他のカニが引きずりおろす為、カニが外に逃げ出さないという事象を指す。かつての「アメリカン・ドリーム」はもはや幻想でしかなく、貧富の差が広がり続けるアメリカを町山は冷徹に見据えている。アメリカは徹底的に勝ち負けにこだわる。だが人生の上での勝利をつかみ取るという行為がアメリカ市民はもう絵空事でしかない事に気づいているのだ。これからアメリカはどこに向かうのか。町山の重ねられたコラムに…  全文読む 評価する

Monster Monster
KOMSA/もうひとりのアトムの物語
連載当時から「傑作」との呼び声が高かったこの作品を18巻の最終巻までようやく読了した。浦沢直樹のストーリーテラーぶりが発揮されている秀作だと思う。主人公の名は天馬。これは「鉄腕アトム」に出てくる天馬博士からの引用だろう。アトムの一挿話を壮大な物語に再構築する試みの「PLUTO」を連載中とするならば浦沢の手塚治虫への傾倒も納得がいく。しかし、主人公・天馬は名を借りたばかりではない事に気付く。「鉄腕アトム」の天馬博士は最愛の息子トビオを亡くしたことで、地球上でいちばん優秀なロボット=アトムを誕生させる。天馬博士にとってそれは神の領域に近づく行為だったのだ。「MONSTER」の天馬(脳外科医であるか…  全文読む 評価する

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