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楢山節考 楢山節考
るる/
「白鳥の死」には、疑いを持たないのなら、信仰なんて本能と同じだろう、という意味の文章がある。「楢山節考」で、からすに食われるというのを読んで、仏教的な鳥葬を思い浮かべるのは簡単なことだ。でもそこで思想を語らずに、社会の法則を即物的に描くだけで、異様な迫力が生まれる。死を恐れる本能や、救済を求める信仰を超えたもの、あるいはそれ以前のものが描かれています。  全文読む 評価する

戒厳令の夜 戒厳令の夜
るる/五木小説
 インテリ国際謀略合戦。そんな印象です。政治さえも趣味・おしゃれの手段にしてしまう。日本人が主人公だとこうなってしまうのか、それとも五木さんがそうしたタイプの冒険小説を目指したのか。とにかくよくあるサスペンスでもなく、海外冒険小説とも違う、五木政治小説とも言うべきものになっています。  全文読む 評価する

火宅の人 火宅の人
るる/モデル小説なんてことばじゃ表せない
こりゃ面白い。無頼派の書いた私小説。非日常を描いた私小説。すなわちそれ小説。  全文読む 評価する

オリエント急行の殺人 オリエント急行の殺人
るる/けっこうクリスティらしい
 クリスティの代表作のひとつ。雪に閉ざされた列車の中で起こる殺人事件、という設定は、『スタイルズの怪事件』以来の、登場人物の限定されたお屋敷もののヴァリエーションです。言ってみればクリスティの得意分野というわけです。誰からも嫌われていた人間が殺された、というのもいかにもクリスティらしい。そういう人間はうわさ話の宝庫です。一見外部から遮断された雪の密室状態の事件のようにも思えますが、実はポワロお得意の「人間の心理」を探偵するのにもってこいの事件といえます。  全文読む 評価する

深夜特急 深夜特急
るる/
 シルクロード。もちろん国の名前ではありません。これまではどちらかといえば、到着した国や土地の魅力が大きかった『深夜特急』シリーズですが、本書では「旅の魅力」がストレートに前面に出ていたように思います。もちろん通過するのが旅ではなく、滞在するのも旅、どちらも旅にほかなりません。それでもやはり、「移動する旅」の魅力というのは捨てがたいものがあります。  全文読む 評価する

倒錯の死角 倒錯の死角
るる/倒錯之弐
 倒錯シリーズと銘打たれているのだから、倒錯した人たちが出てきても当然、予測できてもいいはずなのに、まんまとだまされてしまいます。覗きに憑かれた男、露出狂の女、不倫相手、通り魔、アル中のコソ泥、一癖もふた癖もある登場人物ばかりが、各々の思惑を越えて動き回ります。女の意図は何なのか。コソ泥の見たものは。通り魔の正体は。それらすべてが、きれいに反転するというよりは、いびつに歪むラストに衝撃を受けます。  全文読む 評価する

ガラス張りの誘拐 ガラス張りの誘拐
るる/一生
 歌野晶午さんは、よく島田奇想ミステリ直系の作家と言われるけれど、本書などまさにその呼び名にふさわしい作品だと思います。ひとつの挿話自体をまるまる全体の伏線にしてしまう手際は本家をしのぐ出来で、並ぶ者がありません。 なぜ事件は起ったのか。一章にわたる事件には、一章にわたる理由があるのです。人の一生に関わる事件には、別の一生に関わる理由があると言ってもいいでしょう。「第二の事件」、「第三の事件」、「第一の事件」ひとつの事件でもあるそれぞれの事件は、やはりひとつひとつの事件でもあるのです。  全文読む 評価する

館という名の楽園で 館という名の楽園で
るる/新「新「新「新「新本格」」」」
 ミステリサークルのOBがミステリゲームに集う、という、学生が多く登場したかつての新本格の後日談みたいな話、というだけでもファンには嬉しい。しかもこれはゲームだ、と作中で言っているというのはつまり、これはメタだよ、と言っているのと同じわけで、ますます新本格のその後、という印象が強まります。ゲームの主催者がなにしろミステリ好きなのだから、ミステリ好きにはたまらない道具が勢揃いの大盤振る舞いでもあったりします。奇妙な館、人間消失、鎧武者、執事、などなど。 歌野晶午さんは、「裏本格」なんてことをご自分では仰ってたりもしましたが、まぎれもなく(新)本格のトップをゆくひとりです。そんな彼が、自らの経歴自…  全文読む 評価する

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
るる/存在と世界
 自分の右手で自分の右手をつかむことはできません。自分の目で直接自分の顔を見ることもできません。自分の内の世界で自分を捜し続けるのは、所詮不可能なことなのです。他者のいない世界で、自分の存在というものをどうやって意識すればいいのか。そもそもそれを存在と呼べるのだろうか? 「居心地のいい」村上春樹もいいですが、こうした重い話もかなりいいです。  全文読む 評価する

探偵の秋あるいは猥の悲劇 探偵の秋あるいは猥の悲劇
るる/ピカ一の底意地の悪さ
 巡業芝居の俳優という、シェイクスピア俳優も真っ青の、『Yの悲劇』本歌取り。著者の作品はよく「田園ミステリ」と評されていたので、牧歌的な話なのかと思っていました。しかし前記のような設定や、『猥の悲劇』というタイトルには、牧歌的どころかかなりひねくれたユーモアを感じます。徹底的に茶化しきっているのにギャグではなく悲劇にしてしまうところなど、一筋縄ではいかない作品でした。  全文読む 評価する

黄落 黄落
るる/後進の覚悟
 この物語は読まれる前からハンディを背負っています。いうまでもなくこのテーマには有吉佐和子さんの<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=00221300&volno=0000" target="_blank">『恍惚の人』という偉大な先例があるからです。だから単なる焼き直しではなく、いかに現代的意義を持っているかが問われることになります。 それは著者も覚悟していたのでしょう、本書はみごとに現代小説として作り上げられています。正直に言ってしまうと、小説としてはあちらの方が上です。とても面白かった。けれど著者は、面白さより、普遍より、現…  全文読む 評価する

津軽 津軽
るる/幾多の顔
 「暴露しちゃった」と、おちゃめな文章を書く太宰。お酒を求めてハメをはずす太宰。鯛の尾頭にこだわる太宰。「もやは、風景ではなかった。風景というものは、永い年月、いろんな人から眺められ形容され、人間の表情が発見せられるもの」だと書く太宰。 どの顔も太宰であり、またどれにも魅力がある。人の一面だけしか見られないことほど寂しいことはない。太宰は本書で、決して寂しくなどない魅力的な形式を発見したのだ。  全文読む 評価する

贋作館事件 贋作館事件
るる/名探偵と贋作
 パスティーシュ・パロディを書くには、原作者の文体、トリックのパターン、プロットの組み立て方、などなど、原著についてすべてを知らなくてはなりません。そのうえで、真似たり、あるいは風刺したりするわけです。だけど完璧などあり得ません。だからふつうは、この作品は文体は似ていたけどトリックがあのシリーズっぽくないなあ、とか、感じてしまったりするわけです。 では贋作とは何なのか。ミステリの隆盛には、シャーロック・ホームズに代表される名探偵というキャラクターの魅力が大きい。つまりミステリにおける贋作とは、作家が原著を真似るのではなく、違う役者が名探偵の役を演じることにほかならないのではないでしょうか。オリ…  全文読む 評価する

人形はなぜ殺される 人形はなぜ殺される
るる/堂々宣言
 タイトルからして堂々とホワイダニットを宣言しているところに、並々ならぬ自信がうかがえます。殺人が起こることは当たり前の推理小説で、人形が殺されるということはどうしてこんなにも気味が悪いのでしょう。雰囲気作りと「なぜ」が一つとなった謎は、すべてのトリックが明らかにされる鍵でもあります。著者の自信も納得の名作です。  全文読む 評価する

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す
るる/オタク
 昔はこういう人が作家になった。今ではオタクだ。傲慢、劣等感、俗人への嫌悪、昔のことをいつまでもウジウジと。逆に言えばこれが小説家になる条件ともいえる。誰にだって目を背けたい部分がある。それに目を向けて、それを文章につづるとき、小説ができると言うことか。  全文読む 評価する

鉄腕アトム 鉄腕アトム
るる/おとぎのアトム
 低学年向けに描かれた『アトム』を集めたものですが、低学年向けだから物足りない、ということはありません。ただし、雑誌読み切り連載のため、一話一話が極端に短い点が物足りないといえるでしょうか。しかしスピリットは紛れもなく一連のアトムシリーズと同じものです。  全文読む 評価する

クオーレ クオーレ
るる/エンリーコって誰
 主人公の少年エンリーコが、やたらと透明な存在なので、作中人物たちの説教話が、直接読者の胸に響く仕掛けとなっている。それを良しとするかどうかは人によって異なるだろう。私自身はどちらかというと、「母を訪ねて三千里」に代表されるような額縁の小説だけを楽しんだ。  全文読む 評価する

深夜の散歩 深夜の散歩
るる/雨降りだから散歩に行こう
 福永武彦・丸谷才一・中村真一郎の三人が、自分の好きなミステリについて語った評論集。何より紹介してある本が面白そうだ。無類の本読みたちが選りすぐった海外ミステリの中には、今となってはもう手に入らない作品もある。ところが、ボルヘスが書いた架空の本の書評のように、たとえ現在手に入らない幻の本でも、評論自体が紹介作品の魅力を伝えてあまりある。フランス文学の影響を受けた中村らの文体は、小説に限らず評論でも息の長い独特の文章なので、たとえごく普通のことを書いていても、どこか幻想的なのだ。 アームストロング、ガープ、チャンドラー、カミュ、ブロック……彼らとともに、深夜の散歩に出かけてみることをおすすめしま…  全文読む 評価する

ご冗談でしょう、ファインマンさん ご冗談でしょう、ファインマンさん
るる/笑いから涙まで
 下巻では、ファインマンさんは日本にやってきます。日本が舞台なだけあって、馴染みが深く楽しめました。ファインマンさんの目から日本を見ることで、とても新鮮な感覚を受けました。 膨大な知識、飽くことのない好奇心は相変わらずです。そして、掉尾を飾るのは、卒業生に贈ることば。偽ることなく生きてきた人の、偽りのないことばがそこにあります。  全文読む 評価する

フラニーとゾーイー フラニーとゾーイー
るる/シーモアとバディ
 神とは生き方である。神とは言葉である。神とは概念である。神とは愛情である。神とは家族である。少なくとも、「そう思う」ことで生きてゆく。だからやはり、これは「フラニー」と「ゾーイー」それぞれの生き方の物語なのだ。  全文読む 評価する

細工は流々 細工は流々
るる/まさに細工
 『猿来たりなば』のような大傑作と比べると、たしかにミステリとしての驚きはやや尻すぼみになっているかもしれない。でもその分トビーとジョージの魅力が前面に押し出されていて、いっそう楽しく読むことができる。ユーモアと相まって、小技の積み重ねによるミステリとして、かなり面白い作品に仕上がっています。  全文読む 評価する

悪童日記 悪童日記
るる/恐ろしい日記
 悪童=恐るべき子供たち、といったイメージとはちょっと違う作品だった。むしろ、日記のはずなのにほとんど感情の入らない、客観描写に近い文章の方に恐ろしさを感じた。それが、操られている双子——大きな意志の力、といったものを感じさせたから。それが作品全体に不気味な影を落としています。  全文読む 評価する

日本探偵小説全集 日本探偵小説全集
るる/芸術論
 推理小説芸術論を唱え、精神医学の専門家でもある——代表作である「網膜脈視症」や「就眠儀式」は、そんな事実から受けるイメージ通りの佳品でした。 ところが「睡り人形」は少し違う。この作品では、乱歩的な素材を精神医学的アプローチで解明しているのだが、どうもミスマッチだ。文学的なテーマ・文章ともしっくりこない。むしろ、猟奇——医学といった、海野十三のとんでも系の作品に近い印象を受ける。これはこれで好きなのだが、木々高太郎という作家のイメージが崩れたのは間違いない。近寄りがたさから一転、親しみが湧いてくる。 やはり実際に作品に触れてみなければわからないことはたくさんあるので、これからもこうした過去の作…  全文読む 評価する

ハリウッド・サーティフィケイト ハリウッド・サーティフィケイト
るる/何度だって騙されます
 今までにも何度も、島田さんの文章のパワーや、力わざのトリックに圧倒されてきました。今回も見事に力の波に酔いました。本書では、御手洗シリーズではセミレギュラーといっていいレオナが主人公です。当然レオナが犯人でないことくらいわかっているのですが、読んでいる最中はどきどきし通しでした。だってレオナが犯人としか思えないように書かれてるんだもの。『暗闇坂の人喰いの樹』の血の呪縛が効いてます。しかもレオナならいつかは何かやらかしてしまいそうですから。『アトポス』を読んだ時もそうでした。島田さんが島田さんである限り、何度でもわくわくさせてもらえそうです。  全文読む 評価する

ある詩人の死 ある詩人の死
るる/噛めば噛むほど
 人情話といおうか。謎解きでもなければ、エキセントリックな名探偵でもハードボイルドな名探偵の魅力でもない。読後感によって読ませるという一見矛盾した感覚が一番近いだろうか。地味ながらも丁寧な文章の先に、すこし抑えた味わいが待っている。  全文読む 評価する

マンガ日本の古典 マンガ日本の古典
るる/俗すぎるほどに俗
 『今昔』世俗説話の中でも、特に人間の欲望が剥き出しの作品が多く収録されています。あまりにも俗っぽいのでびっくりするくらいです。原典の何編もの作品群の中から、エッセンスを抜き出す選択眼に敬服しました「鼻」「藪の中」のようなメジャー作品を始め、死神、産女といった、おなじみの水木漫画の妖怪も登場して読みやすい。『今昔』の俗な部分を知りたいのならぜひご一読を。  全文読む 評価する

幻想文学 幻想文学
るる/くだんとは?
 こうして見ると、牛というのもずいぶんホラーな生き物のようだ。件、ミノタウロス、牛頭、牛仏、牛魔王…。 なかでも本書の主役は「件」。マイナー、ということは、資料が少なく、その分想像を掻き立てられる存在ということだ。「件」というヴィジュアル(「名前」ではなく「絵」なのだ)と、予言をするということしかわからない。だからこそ、「くだん」と「件」の違いも生まれるし、紹介・掲載されている「件」の作品だけでも様々にある。岩井志麻子<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01704496&volno=0000" target="_blank">「…  全文読む 評価する

QEDベイカー街の問題 QEDベイカー街の問題
るる/好奇心と研究心
 なぜ『QED』シリーズが好きなのか? という問いの答が、とにかく古典が好きだったから、だということに気づかされました。前二作と比べて、すこしも水準は下がってはいません。古典と同じくらいに、ホームズ物語だって大好きです。なのに、なぜかすっきりしません。なぜだろうか? 前二作は、古典の謎と現在の殺人事件が全くちぐはぐでした。本書では、シャーロキアンの集まりで起こる殺人事件ということもあって、ホームズの謎と殺人事件の謎は程よく絡み合っています。どうやらそれがいけないらしい。ホームズ物語と現実の殺人事件がクロスするとき、ホームズという孤高の存在が、我々と同じ生々しい存在に変化する。そういうことだと思…  全文読む 評価する

吉里吉里人 吉里吉里人
るる/冗談でしょ
 冗談みたいなことが、実際に通用してしまうのが政治ってものなのだろうか。せめて冗談だけは冗談で終わってほしい。日本批判であり且つ日本人のパロディなんだけれど、冗談の通じないのが日本人という気もする。 「日本」から独立した、「吉里吉里」という名の「日本」の話。そういう意味では、二重人格とかドッペルゲンガーとか、そういう話だ。長島茂雄対長島茂雄、フグ対フグ、柔ちゃん対柔ちゃん、なんでもいいけど、そういうことを大まじめにやっちゃうおかしさがある。  全文読む 評価する

京極夏彦が選ぶ!水木しげる未収録短編集 京極夏彦が選ぶ!水木しげる未収録短編集
るる/やっぱり怪奇
 水木しげるというと、妖怪漫画、というイメージがある。あるいはちょっと皮肉で軽めの哲学っぽい漫画とか。 本書では、恐怖漫画家水木しげるを再発見できる。「亡者の笛」は、水木しげるにしては話の骨格がしっかりしている。恣意的な怖さではない。『雨月物語』とウェルズ「卵型の水晶球」の漫画化もある。日本が誇る怪奇小説の古典『雨月物語』が怖いのは当然としても、ウェルズのSF小説も水木しげるの手にかかると怪奇ものになってしまう。 編者の京極さんにしてみれば、怪奇もの以外にも名作はたくさんあるぞ、という目論見なのだろうが、やはり怪奇ものに深く感銘を受けた。京極夏彦のルーツを探るという点を抜きにして、純粋に作品だ…  全文読む 評価する

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