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失われた地平線
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yukkiebeer/世界大戦に疲弊した人々に理想郷への憧憬の念があったとしても不思議はない
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イギリス人領事コンウェイを含む4人を乗せた飛行機は操縦士による予期せぬ乗っ取りに遭い、山岳地帯へと不時着する。たどり着いた土地は桃源郷シャングリ・ラ。不老不死の世界に穏やかに暮らす人々との交流でコンウェイはこの地にとどまることを夢見始めるのだが…。 1930年代に書かれたジェイムズ・ヒルトンのユートピア小説の新訳が出たと聞き、手にしました。翻訳を手掛けたのはジェイムズ・P. ホーガンのSF小説『星を継ぐもの』(創元SF文庫)の瞠目すべき訳を生みだした、あの池央耿氏。今回のこの『失われた地平線』でも、峻厳な山脈の奥に忽然と現れた理想郷を見事な日本語を駆使して描出してみせていて、なんともほれぼれ…
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終わり続ける世界のなかで
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yukkiebeer/登場人物たちと共に成長する読書にはならなかった。
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1969年生まれの伊吹は親友の瑞恵とともに、1999年に人類は滅亡するというノストラダムスの予言を固く信じる少女。その彼女の2000年までの人生の軌跡をたどる小説。 私も伊吹、そして作者の粕谷知世(かすやちせ)と同じく1960年代の生まれです。まさにこの小説に登場する若者たちと同じように、幼い時期にノストラダムスを信じた、全共闘世代のひとつ下の世代に属しています。 私たちの世代とは、先輩たちの情熱を吸い上げ、そして彼らの多くに狂気を注入していったマルキシズムとは大きく距離をとり、その代替物としてオウムというカルトに走ってしまった多くの同輩を持つ1960年代世代です。 自分の世代の歴史をなぞり…
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放送が作ったアメリカ
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yukkiebeer/表題が予想させる内容ではなく、詳細なアメリカ放送事業史といった一冊
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著者はNHKで長年ドキュメンタリー制作に携わってきた人物。アメリカでの勤務経験もあり、この本はアメリカの放送の歴史と現状、課題をかなり詳細に綴った一冊です。 特に近年アメリカの放送事情を見る上で時代を画した出来事は1996年の電気通信法の制定だとか。この法律で通信と放送の垣根が取り払われ、ケーブルなどの放送会社が通信事業に参入し、逆に通信や電話会社が放送に参入します。この波が日本にも押し寄せたというわけです。 ただしひとつ思ったのは、表題は『放送が作ったアメリカ』とはなっていますが、全体的にはあくまで『アメリカの放送事業史』という業界の歴史を綴った書という印象が強く残ります。もしも放送がなけ…
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レーガン
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yukkiebeer/私が青春を過ごした80年代を振り返る上で欠かせないアメリカの偶像
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著者いわく、1911年生まれのレーガン大統領の生誕100年の年に出版した日本初の評伝です。 著者は同志社大学法学部教授。1964年生まれということですから大学生の頃に海の向こうではロナルド・レーガンが政権トップの座にいたことになります。実は私自身も同じく大学生の多感な時期に強烈な個性のアメリカ大統領と緊密な同盟関係を常に強調する日本の宰相との間柄が連日のように報道されていたことを今もよく憶えていて、レーガンという大統領は非常に印象深い人物なのです。 そんな世代的共感を覚えつつページを繰りました。 中公新書としては300ページ強の厚めの書です。 1980年の大統領就任後のことは私自身上述の経緯…
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遺体
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yukkiebeer/活字メディアであるからこその震災報道
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3・11東日本大震災によって岩手県釜石市も甚大な被害を受けます。しかし他の被災地と異なり釜石市は、海沿いの地域が壊滅状態であったにもかかわらず、内陸部は津波の直接的被害を受けず、市としての機能が残ったという点に特徴があります。 そのため、多くの釜石市民が顔見知りの人々の遺体を発見・収容し、身元確認をし、そして弔うという特異な使命を帯びることになりました。他県からの応援によって同じ作業を行った地域では見られない、同郷者が同郷者の死を極限状態で見つめ続ける日々。これはそのおよそ3週間のルポルタージュです。 著者は自らレンタカーを駆って釜石に入り、膨大な数の人々に取材をおこない、そしてそれぞれの市…
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文化と外交
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yukkiebeer/相手国民の心と精神をつかむ。それが平和と秩序を世界にもたらすことを思う書。
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著者は慶応義塾大学でアメリカ研究と文化政策を専門とする教授。『アメリカン・デモクラシーの逆説 (岩波新書)』などの著作があります。 これはアメリカに限らず、日本も含めた様々な国のパブリック・ディプロマシーの過去、現在、そして未来について記した一冊です。 パブリック・ディプロマシーとは、「政府や議員が国家を代表して相手国のカウンターパートと行う伝統的外交とは異なり、政府が相手国の国民に対して行うこと」を最大の特徴とした外交活動を指します。 古くはローマ帝国にもその例を見ることができます。ローマは征服した異民族を要職に登用し、彼らが信仰する宗教を容認し、固有の言語の使用を許可するなど、寛容と同化…
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チェット、大丈夫か?
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yukkiebeer/チェットの愛くるしさは相変わらずではあるものの、ミステリーとしての質には疑問符
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私立探偵バーニーの今回の仕事は、アデリーナ・ボルゲーゼという伯爵夫人の愛犬でドッグショーのチャンピオン犬プリンセスのボディ・ガードだ。しかし雇われて早々、バーニーの相棒である「ぼく」ことチェットの失態が原因で解雇されてしまう。 その直後にボルゲーゼ夫人とプリンセスを何者かが誘拐。果たして犯人は誰なのか…。 『ぼくの名はチェット』の続編で、名犬チェットと探偵バーニーのコンビが活躍するミステリー第2弾です。 実に健気で義侠心あふれる魅力的なワンコ、チェットの活躍ぶりが愛くるしい一編といえるでしょう。 チェットは人語を中途半端にしか解さないため、また英語のイディオムが苦手なため、人間同士の会話を思…
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島国チャイニーズ
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yukkiebeer/「無知にもとづく恐怖」には、「事実にもとづく知」で対抗するしかない。(285頁)
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著者は1997年に『コリアン世界の旅』を物したノンフィクション・ライター。あの書が出てから既に14年が経過していますが、その興味深い内容に随分多くを学んだ記憶が今もあります。 その著者が今回取り組んだのは中国系の人々です。 劇団四季の舞台に立つ俳優陣には実に多くの中国出身者が多いことから説き起こし、著者が取り上げるのは、日本で大学教授にまで上り詰めた中国人、芥川作家となった楊逸、農村にやってきた中国人妻たち、中華系学校の児童たち、池袋チャイナタウンの人々など多岐に渡ります。 彼らの姿のどれもが私にとっては、なんとなく耳にしていたものの、しかとは実状を知らずにきたもの、もしくはおおざっぱな、…
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KY式英語
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yukkiebeer/学校では教えてくれない現代アメリカを彩る言葉たち
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著者はアメリカ留学後、西武ライオンズの通訳や代々木ゼミナールの講師を務めた人物。 タイトルには「KY式」とありますが、空気を読みながら話す英語について書かれた解説書、では決してありません。 OMG、SOL、FYFなど、最近のアメリカの若い人たちが携帯メールなどで好んで使う記号的な英語表現を中心に集めた一冊です。 あらためて本書の説明にしたがって上記3つの表現を分析すると次のようになります。 OMG =Oh! My God! SOL =Shit Out of Luck(ついてねぇな~) FYF =Fifty Yard Fake-out (遠くから見ると美人) 50の声が聞こえて来たような私…
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ステキなアメリカ白人という奇妙な生き物
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yukkiebeer/個性的であらんと努めるアメリカ白人の姿を他人事だと突き放して見ることができるか?
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日本語のタイトルはなにやら仰々しいのですが、英語原題はいたってシンプル。『Stuff White People Like』、つまり『白人が好きなもの』。 まさに白人が好むあれやこれやを87項目とりあげて、かなり辛辣で独特のユーモアあふれる文章で解説するという作りの本です。 ここでいう「白人」とは、高収入・高学歴で民主党支持派、どちらかというと都会に暮らし(たいと考え)ていて、キリスト教徒ではあってもアジア文化などの外国文化に理解と敬意を示し、しかもそんな自分をクールだと強く意識する層です。共和党支持/保守的キリスト教徒/ブルーワーカーでホワイトトラッシュな白人とは距離を置きたいと考える人た…
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tvドラマdeアメリカ・ウォッチング!
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yukkiebeer/続編は出ないのでしょうか。
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2003年10月刊なので、すでに8年ほど経過しています。取り上げられている13のテレビドラマも当時は日本でも話題になっていたとはいえ、既に古くなったと言わざるをえません。 それでも、そんなテレビドラマからいくつかポイントとなる英語セリフを拾い出してアメリカらしい言い回しを解説してみせるのは、長年アメリカに暮らす著者ならではといえます。 I am falling for this girl.この子にひかれている。(『ファミリー・タイズ』から) How long was I out? どれくらい寝ていた?(『ER緊急救命室』から) I am psyched. 興奮しているよ。(『ビバリーヒルズ高…
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印刷職人は、なぜ訴えられたのか
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yukkiebeer/アメリカ独立戦争の半世紀前に起こった言論の自由をめぐる熱い法廷闘争を描く
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1730年代のニューヨーク。植民地アメリカに宗主国イギリスから総督ウィリアム・コスビーが着任してくる。コスビーは植民地の住民に対して不当な要求を繰り返したため、最高裁長官ルイス・モリスらがジャーナル紙を創刊してコスビー批判を続けた。コスビーは彼らの口を封じるために、ジャーナル紙の印刷職人だったジョン・ピーター・ゼンガーを逮捕して起訴する。報道・言論の自由を巡る裁判の幕が切って落とされた…。 1730年代といえば日本は暴れん坊将軍・吉宗のころ。 その時代に地球の反対側では、植民地が宗主国からのお代官様に対してジャーナリズムで抵抗し、さらには司法の場で堂々と言論の自由を主張して抗弁していたとは、…
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アメリカ人弁護士が見た裁判員制度
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yukkiebeer/陪審員制度と比較することで見えてくる裁判員制度の姿
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先日読んだ『手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書) 』に大変感銘を受け、同じ著者のこの本を手にした次第です。 表題が『アメリカ人弁護士が見た裁判員制度』ですので日本の裁判員制度について論じた本では確かにあるのですが、著者のアメリカ人弁護士としての視点を日本人読者に理解させるために、アメリカの司法制度、特に陪審員制度についてかなりの紙幅を割いています。私自身はその陪審員制度に関する記述のほうをむしろ興味深く読みました。 アメリカの陪審員制度をさらにイギリスでの由来にまでさかのぼって解説していますが、そもそもは横暴な王権を補佐する存在だった陪審員たちが、17世紀に起こった「ブッシェ…
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アメリカ選択肢なき選択
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yukkiebeer/押し寄せる引用データを前に息が続かなかった
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著者はみずほ総合研究所ニューヨーク事務所長とのこと。 長年のアメリカ在住生活の中で感じた、アメリカ人が選択する/できることにいかに重きを置きながら、最近の閉塞的状況を打開する道を模索しているかについて記した書です。 本書の特徴は、膨大な統計データを紹介している点です。 といっても著者が所属している研究所がはじき出したデータではなく、アメリカの大手世論調査機関であるピューリサーチセンターや報道機関、アメリカの行政機関などが出した数字です。 それを一切の図表なく、文章の中に織り込んで読者に提示しているのです。例えばこんな具合です。 「『ニューヨーク・タイムズ』紙のキャサリン・ランペルによれば、所…
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手ごわい頭脳
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yukkiebeer/アメリカ人が書いた、かの国の弁護士の思考法を分かりやすく解説してくれる書
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著者はアメリカで弁護士として米国大手事務所に勤務した経験もある米国人。現在は同志社大学法科大学院の教授です。 副題にあるように、アメリカの弁護士がどういう思考法で司法の世界を生きているのかについて分かりやすく書いた本です。 私自身はアメリカに住んでいるわけではありませんが、この本に興味を持って手にしたのはひとえにハリウッド映画や海外ドラマの法廷ものをより楽しむためです。『LAW & ORDER』『私はラブリーガル』『ダメージ』『グッド・ワイフ』『ザ・プラクティス』『女性検察官アナベス・チェイス』などなど、法廷ドラマは頭脳戦ともいえる駆け引きにワクワクさせられるのですが、ともすると肝…
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日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術
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yukkiebeer/今後自分の英語をどうブラッシュアップすべきかが見出せた気がする
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著者は言語学博士。「現在エール大学ビジネススクール・コミュニケーションディレクターとして、ビジネスコミュニケーション、比較言語学などの教鞭をとるほか、フォーチュン500社、研究機関、国際機関のクライアントに英語コミュニケーションを指導している。」(見返しにある著者紹介文から引用) 「エール大学厳選30講」という表題は何やらいかめしい印象を与えるので、少々居住まいを正して頁を繰り始めたのですが、「です/ます」調で書かれた大変平易な訳文にも助けられ、有意義な情報を楽しく短時間で身につけられたと実感できました。 この本がまず言わんとするところをざっくりまとめると、概して言葉少なく以心伝心的コミュニ…
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ビブリア古書堂の事件手帖
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yukkiebeer/今後も必ず手にしていくと強く決意させられた傑作短編連作集
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『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)』の続編にあたる短編連作集です。正編の最後にビブリア古書堂を去ったはずの俺(五浦大輔)ですが、就職に失敗して再び古書堂へと舞い戻ってきたのです。 店主の篠川栞子さんと共に古書をめぐる4つの謎を追いながら、その果てに大輔は人間の浅はかさや優しさを目の当たりにしていきます。 登場する古書はすべて実在のものばかり。そしてそれぞれに小説よりも奇なる摩訶不思議な物語が備わっているのです。 特に第一話には驚かされます。アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』にそんなことがあったとは全く不勉強で知りませんでした。キューブリ…
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いま、知らないと絶対損する年金50問50答
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yukkiebeer/年金制度議論の向こうに、日本のデフレ経済脱却の重要性が垣間見える
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2009年の衆議院総選挙の前に民主党が、すべての国民が同じ制度の年金に加入する「一元化」を主張していたのを覚えています。私はその主張に強い疑問を感じた末に投票に行きましたが、選挙結果が民主党の圧勝に終わったことに呆然としたものです。これほど多くの日本国民が民主党の主張する年金制度の一元化を求めているとは…。 本書には民主党の主張する年金の抜本改革がいかに成立しがたいものであるのかを含め、今知っておくべき年金制度の現在と未来について大変平易な文章で書かれていて、上述の経験をもつ私の意に大いに添うものでした。 年金はこのままでは破綻するという言説がいかに幻想に満ちたものであるのかについて著者は、…
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まさかジープで来るとは
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yukkiebeer/自由にならない人生の様を 自由な韻律で愛おしく詠む二人
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お笑いコンビ「ピース」のひとり、又吉直樹の著書がちょっと話題になっているというわずかな情報を耳にして、どんなものかと手にしてみたところ、せきしろという文筆家との共著だということ、そして彼らふたりの手になる標語のような短い文言が延々と連なっているということの、全く予想していなかった構成ぶりに少々面食らいました。 しかしやがて見えてきたのは、標語のような言葉が実は自由律の俳句だということ。 自由律俳句といえば種田山頭火と尾崎放哉です。 「分け入つても分け入つても青い山」の種田山頭火。 「いれものがない両手でうける」、「咳をしても一人」の尾崎放哉。 五七五という決まりに縛られないのびのびとした自在…
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イスラム飲酒紀行
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yukkiebeer/面白おかしい著者の筆致の裏側に、人間に対する人一倍深い愛情が見える
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世界の辺境地を訪れては奇妙キテレツな出会いを繰り返してきた作家・高野秀行の最新紀行文。とはいえ、私にとっては『ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)』以来の高野本です。 イスラム教=飲酒厳禁とされる中で、著者は様々なイスラム教圏を訪ねては酒を探して奔走します。依存症一歩手前のような著者は「私は酒飲みである。休肝日はまだない。」という軽妙な書き出しで、読者を独特の高野ワールドへといざなってくれるのです。 そしてどんなイスラム教圏にも必ずといってよいほどアルコールは何らかの形で存在し、そしてムスリムの人々もそれを時に密かに、時におおっぴらに、楽しむ姿が浮かび上がって来ます。 私自身のイスラム教国体験か…
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不死細胞ヒーラ
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yukkiebeer/著者の真摯な取材姿勢に好感がもてる、大変読みやすい医学ノンフィクション
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1951年に黒人女性ヘンリエッタ・ラックスから切り取られたガン細胞は大変特異なもので、切除後も容易に増殖できる細胞であった。ヒーラ細胞と名づけられたそれは世界中に売買され、ポリオワクチンや遺伝子マップの作成、放射能の影響の調査など様々な医学的分野の進歩に貢献してきた。そして製薬会社などに莫大な利益をもたらしたのだ。 過去半世紀以上に渡って人類の健康に寄与してきたヒーラ細胞の由来を取材していくうちに著者は、ヘンリエッタの遺族が細胞の生み出してきた経済的恩恵をまったく享受することなく、またヘンリエッタの死後にその細胞がそうした利用をされてきた事実を全く知らなかったことを知る…。 この本が描くのは…
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困ってるひと
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yukkiebeer/日本の医療の陥穽を思い、とてもやるせなくなる
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大学院でミャンマー難民について研究していた著者はある日突然、38度台の熱が下がらず、布団から出ることもままならない症状に見舞われます。多くの病院をまわってようやくついた病名が「筋膜炎脂肪織炎症候群」。治療法が見つからない難病です。 これは難病になった著者が味わうことになる、日本の医療の現場や制度の陥穽を、独特のユーモアで綴った涙ぐましいエッセイです。 病名もはっきりしない中で、血液検査やMRI、内視鏡や骨髄穿刺など、肉体的にも精神的にも負担の大きな検査を日々繰り返す様が綴られます。私自身も数年前に原因がはっきりしない病に苦しみ、果てしない検査の連続に気持ちが日に日に萎えていく思いをしたことが…
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ジェノサイド
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yukkiebeer/590頁の骨太なエンターテインメントSFアドベンチャー
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創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人のもとへ急死したばかりの父親から一通の電子メールが送られてくる。その内容に導かれて訪れた古色蒼然としたアパートには、秘密の実験室が設けられていた。 一方、傭兵のジョナサン・イエーガーは、難病に苦しむ息子の治療費を稼ぐため、アフリカ奥地で地元民の大虐殺計画の任務に就く。そして彼はある村で、人類がいまだかつて目にしたことのない存在と対面することになる。 日本、アフリカ、アメリカと3つの地域をまたにかけた壮大なSFアドベンチャー小説です。人類を新たなフェーズへと引き上げる可能性をもった存在との邂逅をめぐり、人智を大きく超えた物語が怒涛の展開を見せます。ハリウッド…
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全身翻訳家
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yukkiebeer/言葉と日々格闘する翻訳家のエッセイにはハズレがない
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英米文学の翻訳家として四半世紀活躍してきた著者のエッセイ集。『やみくも―翻訳家、穴に落ちる 』として単行本出版されたものを土台に、加筆・修正・増補した一冊です。 「翻訳家のエッセイには間違いはない」というのが私の経験知ですが、この本もそれを裏切らないものでした。 ともすれば流れ行くだけの時間の狭間に独特の視点で何かを見いだし、それを味わい深く、練達の文章で綴って見せる手腕。 日々、常人の想像が及ばぬほどの密度で言葉と格闘し、また翻訳を通して原書の物語を奥の奥まで味わいつくしている人であるからこその文章が、250ページ強込められた書です。 話題は多岐にわたります。 翻訳家になったばかりのころの…
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不可能
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yukkiebeer/三島由紀夫である必要は特段なさそうな…
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主人公・平岡は故あって獄中で30年近くを過ごした後に出所した。金にあかせて地階にバーをしつらえ、ジョージ・シーガルのような彫像をいくつも作らせて配置している。 やがて改悛老人クラブ<ROMS>なるものの会員となるのだが、そこで出会った老人たちはひとくせもふたくせもある人物ばかり。彼らとの交流は現実と幻の境界線を少しずつ曖昧なものとしていく…。 三島由紀夫が市ヶ谷で自決せず、今日まで生きながらえたならば、という設定のもとに八つの短編で描く連作集です。 三島由紀夫らしさがあるのは、咽喉(のど)もとの傷跡、印税を元としたかなり潤沢な資金、そしてときどき垣間見せる文学的素養くらいでしょうか。設定の不…
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事の次第
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yukkiebeer/この世界の境界線を越えないと、終わりなき日常にピリオドを打てないのか
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7つの連作短編が織りなす、複数の男女の静かに歪んだ日常の物語。 1997年に『バニシングポイント』の表題で単行本化されたものを、初出時のタイトルに戻して再刊行されたとの由。 文章の技巧派である佐藤正午の筆が紡ぎだす世界にとにかくどっぷり浸りたくて手にしました。ですから連作短編であることも知らず、それぞれの作品の間のつながりも見えぬまま頁を繰ったのです。 主人公たちは互いに見ず知らずの仲で登場し、そのまま深く切り結ぶこともないまま物語の中を歩んでいきます。彼らは時たま思わぬ接点を得るのですが、それは「袖触れ合う」程度の淡い関係です。 今年2011年に出版された佐藤正午の新作小説『ダンスホール …
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恋愛美術館
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yukkiebeer/著者の文章の美しさ、見通す目の確かさに、魅了された
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『絶頂美術館』で西洋美術が描いたヌードの史的変遷を平易に語ってみせた著者が、今度は芸術家が体験した恋愛の数々がそれぞれの作品にどのような影を落としているかを綴った一冊です。 おそらく本書が描く芸術家の恋—と呼ぶには少々生々しく、性愛と呼ぶ方がよりふさわしいもの—は、美術史に詳しい読者なら既知の情報かもしれません。 モディリアーニが若くして病死した直後に窓から身を投げて後追いした身重の妻ジャンヌ。 年齢差の離れた師ロダンとの恋愛の果てに精神の均衡を失ってしまったカミーユ。 次々と愛人を作り、その愛人同士の取っ組み合いの喧嘩を喜々として眺めていたピカソ。 そのどれもが大変に知られた史実です。 し…
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刑務所図書館の人びと
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yukkiebeer/ユダヤ人の著者が、刑務所図書館司書としての日々の中に自らを見つめる書
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ボストンにある刑務所の図書室司書の職に就いた著者が、受刑者や同僚刑務官たちとの交流の日々で感じたことを綴った手記です。 私たち市井の人々からは少々縁遠い受刑者たち日々は大抵 心すさんだ生活を送っているものです。しかし彼らの行動は時に人間臭いもので、それが特別な興趣を添えます。 受刑者たちは図書館の蔵書の頁の間に手紙をこっそり忍ばせて互いに<思い>のやり取りを行っています。≪カイト(凧)≫と隠語で呼ばれるその手紙に綴られた文章は、受刑者たちのやる瀬ない思いを浮かび上がらせます。 女性受刑者ジェシカの姿はなんとも切ないものです。産んで間もなく手放した息子が同じ刑務所で刑に服していることを知り、彼…
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フォントのふしぎ
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yukkiebeer/ドイツのフォント製作・販売会社ライノタイプ社のデザイナーが描く、興味深いフォントの世界。
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副題には「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」とありますが、その点に触れているのは全体の4分の1程度。フォント・デザインにまつわるあれやこれやから、ヨーロッパの手書き文字の特徴に至るまで話題は多岐に渡ります。 「形が目立つってことは字の形に邪魔な要素があるってこと」と著者が記す通り、人はそもそもフォントに注視して文章を読むことはありません。本書によって、目の前にありながら意識せずにいたものに気づかされると、どこか得した気分を味わえるのです。 ルイ・ヴィトンのロゴのフォント=Futuraが古代ローマの建造物に刻まれた書体を基にしていて、だからこそ「王道感」を与える効果を持つこと。 重厚感…
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ニッポンの書評
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yukkiebeer/アマチュア書評がアマチュアにすぎないことは、私たちアマチュアも織り込み済みでは?
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ブックレビュアー、ライターの豊崎“社長”由美が自らの書評観や書評技術などについて綴った一冊です。 私は、CSチャンネルのAXNミステリーで放送している番組『AXNミステリー BOOK倶楽部』で著者が見せる毒舌司会ぶりが好きで毎月欠かさず見ているファンの一人です。本書も楽しく読みました。 書評と批評の違いはどこにあるか。 ミステリー小説ではない書評にネタばらしはどこまで許されるか。 トヨザキ流書評の書き方、などなどいちいち頷きながら読みました。 巻末にメディア史が専門の大澤聡なる人物と著者との対談が掲載されていますが、雑誌バブル期に書評という業が増えたという指摘なども興味深く感じたところです。…
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