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娼婦論
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凛珠/事実誤認だらけの駄本
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本書を見ただけでも、『<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02197703&volno=0000" target="_blank">親日派のための弁明』なる本がトンデモ本であることは、懸命な読者には分かるだろう。著者にとって、この本を出版したのは誤りではないのかとまで思える内容だ。 まず、「完全な自由意志で職業意識の娼婦」と「セックス奴隷」(人身売買産娼婦等)、「生活苦の為のやむにやまれぬ娼婦」等を、まとめて(自由意志・職業意識の)「娼婦」としているのは事実誤認だ。 また、女性が男性よりも「身持ちが堅い」のは貞操観念のせいだと…
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江戸の恋
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凛珠/幻想と現実。
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本書を読むにあたっては、遊郭の娼婦は殆どが人身売買など貧困ゆえの産物で、強制売春をさせられていたのだという事実を踏まえるべし。娼婦の恋の駆け引きとは、客を逃して店の人間から折檻を受けたり、借金を返せず年季が伸びたりしないようにと取った命がけの行為。 こうした遊郭でも、当時の男は通うことに恥も罪の意識も無かった。現代でも買売春を「援助交際」「自由恋愛」などと言ったり、発展途上国に買春に行ったりする日本人男性がいるが、これも「伝統」なのであろうか。豊な国で平和ボケした自意識過剰な女性は本書を読んで妙に悦んでしまうことだろうが、所詮は幻想だ。 春画は交合図が多いから男性も裸体なのである。現代のグラ…
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松平容保の生涯
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凛珠/清冽の人、松平容保公。
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歴史は、時が経つことによって史実を覆い隠す人為的な霧が晴れ、真実が明らかになるということがあります。本書は、幕末の会津藩主で京都守護職に務めた松平容保公の生涯が描かれ、明治維新の実態が分かります。 幕末の会津藩といえば、戊辰戦争における白虎隊の悲劇が有名でしょうが、会津藩が何度も恭順の意を示したのにも関わらず、西軍(薩長連合軍)に私怨と野望で攻め込まれたのだということは、あまり知られていないでしょう。西軍が「官軍」の名のもとに、城下で何をしたか。その後の会津藩主従はどうなったのか……。表層だけを見て「明治維新」「文明開化」などと言っていた、かつての自分が恥ずかしくなります。言わば白虎隊の悲劇…
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晴れときどき猫背
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凛珠/砂糖菓子のような仔猫たち。
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実を言うと、私はまだ村山由佳さんの小説作品を読んだことが無い。本書は、村山さんご夫妻の田舎暮らしエッセイ『海風通信 カモガワ開拓日記』の続編に当たるが、その前作すらも読んでいない。 私が本書を購入した理由、それは表紙の猫のあまりの愛くるしさにある。新聞の新刊広告に本書が載せられており、表紙の猫の魅力に、猫マニアの私は打ちのめされてしまったのだ。そして何ら迷わずに書店にて購入、という次第である。 表紙だけでなく、本書には猫(時々、馬や兎も)たちのカラー写真が満載で、どの仔も可愛らしく面白く、口元が緩くなってしまう。甘い砂糖菓子を口に含んだようだ。こばん、真珠、かすみ、もみじ、麦、つらら…。名前…
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遊女・からゆき・慰安婦の系譜
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凛珠/今だからこそ。
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たった30〜40年前のことでも、伝える人がいなければ風化してしまう出来事があります。誰もが知っている常識でも、常識ということで誰も改めて語らなければ、忘れられてしまう歴史があります。 日本の歴史教科書は自虐的で暗部ばかりを書いている、という人がいます。確かにそうでしょう。しかし、それでは本書の内容は、果たして現代の日本人の一般的な認識でしょうか。 日本軍の慰安婦は決して朝鮮人女性だけではなく、日本人女性も大勢いたのです。中には「自由意志」の女性もいたでしょうが、悲惨な貧しさの為に、生きる為にそうした手段を取らざるを得なかった女性を誰に責めることが出来るでしょうか。買うものがいるから売るものが…
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吾輩は猫である
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凛珠/我輩は漱石である。
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『我輩は猫である』(以下、『猫』と略す)を読めば、作中人物の苦沙弥先生や独仙は、漱石自身がモデルになっているということにすぐに気が付くだろう。彼らは人間社会を風刺する知識人ではあるが、彼らもまた人間社会のしがらみの中で生きざるをえない者たちである。それを猫は風刺する。漱石は名も無い猫の目を通して、自分自身を含む人間たちを笑いものにしているのである。 だが、それでは猫は完璧な存在かというと、そんなことはない。猫は餅と格闘して「踊りを踊っている」と人間たちに笑われたりもする。猫もまた笑われる存在なのだ。そして猫もまた漱石なのである。 冒頭の「我輩は猫である」という一文で読者は否応無く猫と同レベルに…
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栄花物語
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凛珠/山本周五郎らしい作品。
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私は山本周五郎ファンを気取っているくせに、まだ『樅の木は残った』を読んでいない。だが、本書は悪徳政治家の代名詞のような田沼意次を先見の明のある政治家として評価している点が、いかにも山本周五郎らしいと思った。今でこそ田沼意次は評価されつつあるようだが、昔はもっと酷い扱いだったろう。私はあまり詳しくないが、悪と言われた反動で極端に善に片寄ってしまうのも危険だとは思う。また、哀しいが私は、歴史に名を残すほどの立場にいた人で、全面的に評価できる人間など皆無に近いと思っている。 山本周五郎は、例えば義賊とか英雄とか渡世人とかを美化して書いていない。終生「やくざ者はやくざ者、義賊などは存在しない」という…
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小説日本婦道記
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凛珠/解釈次第。
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私は、今まで読んだ殆どの山本作品を愛しているつもりだが、この作品だけは何とも言えない。正直、十二・三で初めてこの本を読んだ時、私はがっかりするとともに激しい不快感を抱いたものだった。 私は女というだけで大学へ行かせて貰えなかった母の不満(昭和40年代後半の話だ)を先天的に受け継いだのか、生まれたときからことさら男女差別には五月蝿い娘だった。間違っているとは思っていないし、今でもそうだが。そんな娘だったから、本書に書かれていることは不満の山だった。自己犠牲に生きる女性が礼讃(正当化)され、女性は夫に仕えて子を為すのが本分だとか、趣味に走るのは夫に不貞を働くことに等しいとか……。まだ話の中だけで…
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柳橋物語・むかしも今も
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凛珠/涙。
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山本周五郎は主人公を苛める作家だ。「柳橋物語」は、おせんが哀れで仕方が無かった。赤ん坊なんて棄ててしまえば良いのにと、じれったかった。しかし、まだ若い娘は男に告白をされただけでその男を好きなのだと錯覚してしまうことがある。山本周五郎はそうした女性の微妙な気持ちを知ることが出来、嫌な感じでなく書くことの出来る作家だ。私がこの作品を読んだのは感受性の旺盛な十二・三歳の頃だったので、読み終わった時に涙が止まらなかった。「むかしも今も」もまた泣いた。努力すればきっといつか成功するというのは奇麗事で、現実には幾ら努力しても報われぬことが多いだろう。その意味では山本周五郎の作品は美しいだけで現実性が希薄…
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赤ひげ診療譚
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凛珠/陰鬱な冬から光騒ぐ早春へ。
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己の知識に溺れ傲慢だった長崎帰りの保本登。彼は強制的に小石川養生所に務めることとなり、不満から養生所医師・赤ひげにことごとく反発する。だが、始めのうちは嫌悪の対象だった貧しいものの切実な叫び、哀しみの中に、次第に赤ひげの力によって真実を見出すようになってゆく。 説教臭い話とも言えよう。実際、山本周五郎は説教癖があって周りの人を辟易させたこともあるという。だが説教に感動することは人の自由であろう。 この作品では、岡場所の悲惨さが描かれている。作品が書かれた頃に売春防止法が制定されたことと無関係ではないだろう。貧しさゆえに、もしくは強制されて身売りする女性に何らの罪があろうか。赤ひげは悪徳女郎屋…
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おさん
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凛珠/不思議でもの哀しい作品。
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山本周五郎は、男無しではいられない心と身体を持った女性も書くが、嫌な感じは全くしない。『五弁の椿』のおしのの母でさえ、どこか憎めず哀れで、「穢れている」とか「ふしだら」だとかいう感じがしない。だからといって彼女たちが格好よいかのように書いているわけでもない。「おさん」のおさんは最後に殺されはするものの、男性本位の「穢れた女への処罰願望」は感じられない。それだけに哀しい。「その木戸を通って」も、とても印象的な話だった。不思議は突然に現れ、不思議なまま消えて、不思議そのものになってしまうのかもしれない。
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虚空遍歴
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凛珠/血みどろの苦悶。
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物語は冲也と、彼の音楽で何かが変わったという女、おけいの視点で進んでゆく。おけいは色事で包まれた半生を送ってきた女だが、冲也とその関係になることは無かった。二人は前世で一人の人間だったのだろうと確信する。兄妹のような関係だが、それは夫婦よりも強い関係ではないのか。実際、おけいは冲也の妻お京よりも、冲也に対して親身だった。だが、お京も悪い女ではない。冲也の姿はとにかく痛々しい。その痛々しさゆえに、冲也に奇妙に惹かれてしまうという感覚は、私という読者だけではあるまい。特に女性は。 多くの人々に愛され、その人の心にまで影響を与えるような優れた端唄を作りながらも、冲也はそれを否定した。だが、端唄が悪…
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虚空遍歴
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凛珠/痛々しいまでに。
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旗本の次男・中藤冲也は余技として端唄を作っていた。彼の作る端唄は独特の節回しで江戸だけでなく遠国でも持て囃されていた。しかし冲也は端唄ではなく本格的な浄瑠璃を作って人を感動させたいと思うようになり、端唄も身分も棄てて芸人となる。最初のうちこそ成功するがすぐに行き詰まり、次第に彼は妻も友も信じられぬ懐疑の中に閉じ込められてしまう──。 山本周五郎は、元々自己犠牲の物語を多く書く作家だが、それにしても中藤冲也の苦境は凄まじい。作者による苛めではないかとまで思え、読むのが苦しいほどだ。だが、そこには山本周五郎の深い信念がある。
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御宿かわせみ
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凛珠/かわせみとはやぶさ。
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平岩弓枝氏の代表作シリーズといえば、『御宿かわせみ』と『はやぶさ新八御用帳』であろう。だが、人気があるのは前者で、著者も前者により思い入れが強いことだろうと思う。でも私は、『御宿かわせみ』も勿論嫌いではないが、『はやぶさ新八御用帳』の方が好きなのだ。るいと東吾よりも、お鯉と新八派らしい。るいと東吾は甘々過ぎるのがどうも……。それでも、勿論良い出来である。江戸の風物の中に人々の喜びと哀しみが漂う。
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夜叉街道
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凛珠/これも柴田錬三郎。
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柴田錬三郎は眠狂四郎だけではない。そして本書は児童向け作品と思われる。宝探しもので、痛快で分かり易い勧善懲悪劇だ。柴錬だけあって大人でも読める。薄いし読み易いので、時代小説初心者にも良いかもしれない。
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投げ銛千吉廻船帖
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凛珠/隠し武器。
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千吉は元北前船の船頭だったが、弟や乗組員を海難事故で失って以来、深川の長屋でひっそりと暮らしていた。だが、再び雇われ船頭として海に出ることになり、同時に事件にも関わるようになるのだった──。 有名な時代小説ヒーローは、変わった武器や攻撃法を持っていたりする。必殺シリーズなどは、仕事人の個性的な武器も魅力であったろう。この物語の主人公・千吉は、長さ八寸幅一寸の銛に紐を付けて、投げて使う。海を感じる事件帳だ。
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ゆっくり雨太郎捕物控
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凛珠/ゆっくり、ゆっくり。
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思うに、ひょっとしたら平岩弓枝氏は、『御宿かわせみ』を書くに当たって、『ゆっくり雨太郎』の影響を受けたのではないだろうか?ということだ。週刊新潮に連載されていたのだが……。そう思ってしまうくらい、この作品の人物関係は『御宿かわせみ』を髣髴とさせるのだ。るりにるいと、ヒロインの名前も似ている。それはともかく、相変わらず面白い。
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ゆっくり雨太郎捕物控
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凛珠/「あめたろう」ではなく「うたろう」。
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主人公は身体が優れないのを理由に気侭に務めている町方同心・若月雨太郎。恋人は茶屋勤め上がりのるりだ。多岐川恭らしく色と欲の絡んだ事件が多いが、雨太郎とるりの仲は嫌な感じがせず、微笑ましい。他にも岡っ引やその下っ引、その婚約者などの登場人部が沢山。雨太郎とるりが魅力的なだけに、もっと二人の設定を明かして欲しかったと思う。各話は20ページ足らずだが、どれも面白い。
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黄金を抱いて翔べ
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凛珠/黄金を抱いて……。
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硬質の設定と綿密な描写、その中の六人の男。私は「男らしい」小説が良くて「女らしい」小説が劣っていると言う気はさらさらないが、男とか女とか関係無しに、ベタベタしてミーハーな小説よりも、作りがしっかりして甘ったるくない小説の方が好きだ(因みに男権主義的な小説は嫌いである)。 高村薫氏の作品は所謂「男らしい」作風だろうが、男だろうと女だろうと、そのしっかりした作りが作品をレベルの高いものにしている。よく読むと男性同士の関係などに女性向けっぽい要素もある。 正直、この手の話はあまり読まないのだが、著者の他の作品も読んでみようという気にはさせてくれた。
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用心棒
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凛珠/どろどろ泥助。
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この話の主人公はろくでもない男である。浪人者だが簀巻きにされて川に放り込まれ、助けられたがその名前は「泥助」。助けられた縁で用心棒稼業に就くが、剣の腕はからっきしどころか酒と女に目が無くだらしないことこの上ない。だが読み進めてゆくうちに彼の正体が見えてくる。出て来る人物は本当の悪党ばかりな多岐川恭ワールド。解説は珍しく(?)南原幹雄氏である。
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闇十手
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凛珠/お江戸捕物絵図1。
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『お江戸捕物絵図』を改題(ノン・ポシェットには改題が多いような気が……)。表向きは別の稼業をしている人々が事件に遭遇し、その時になって十手をかざして謎解きに取り組む。多岐川恭らしくそれなりに色と欲(あまり品が良くない)なので、苦手な人もいるかもしれない。
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夜叉神堂の男
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凛珠/悲惨・酷薄ホラー時代小説。
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杉本苑子氏というと健全な歴史小説家というイメージがあったのだが、それは妄想であった。本書には恐ろしい人間たちの愛憎、色情、欲望が描かれている。救いが無い。重苦しい。全く人間は恐ろしい生き物だ……。今はどうということは無いが、初めて読んだ時は夜だった上に中学生で、まだ感受性が豊かだったので、かなりへこんだ;
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パラサイト・イヴ
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凛珠/サスペンス・バイオホラー。
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私は理系は全く駄目なので、化学の使い方がどうとか偉そうなことは言えない。だが、サスペンスのように先が気になり、一気に読ませる作品だった。小説として成功しているということだろう。 小説以外に何か強みを持っていると、それを題材に小説を書けるから得だ。理系が全く駄目な人間には、理系人間に羨望を抱いてしまう。
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ジーキル博士とハイド氏
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凛珠/二重人格。
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ジーキル博士とハイド氏 。紳士と凶暴な男が、実は同一人物であった。多重人格は通常、本来の人格が眠っている間に別の人格が現れるので、本来の人格は他の人格が何をしているのか分からないのだという。だが、ジーキル博士はハイド氏に変身しても、ハイド氏が行った悪行を覚えている。ハイド氏にならぬよう苦悩するジーキル博士……。 小説は進化するものである。名作でも時が経てば稚拙となってしまい、いささか期待はずれな思いをすることはあるだろう。しかし、この作品が書かれた意義は大きい。
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影帳
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凛珠/推理捕物帳。
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相模屋の店先で雪駄が一足盗まれた。犯人は捕まったが、雪駄一足で面倒を起こすのも煩わしかろうと、相模屋出入りの岡っ引・半次は、犯人を捕まえた上野山下の助五郎にことを穏便に処理するよう頼み込む。だが何故か上手くいかない。雪駄の盗みという小さな事件の背後には、大きな謎が広がっていたのだった……。 岡っ引・半次を主人公にした捕物帳。続編『揚げ羽の蝶』も文庫化されている。綿密な時代考証を施した歴史小説も書かれる著者だが、本書は難しくない市生捕物帳。軽くも無く、ささいなことが末広がりになってゆく、長編小説らしい面白さがある作品だ。
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御家人斬九郎
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凛珠/「陽」のニヒリスト。
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眠狂四郎が「陰」のニヒリストなら、斬九郎は「陽」のニヒリストである。女性と酒に溺れ、金の為に殺しを引き受ける。適度に醒めて軽薄な感じだ。TV版ほど善人ではないし、蔦吉も十五六でありながら遊ぶだけ。というか、蔦吉の登場シーンは濡れ場のみだ。私は原作から入ったし、こういう男本意には慣れているからどうということは無いが、TV版が好きな方(それも時代小説に慣れていない)は残念に思うかもしれない。作品としては楽しめるのだが。
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眠狂四郎孤剣五十三次
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凛珠/殺法旅。
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水野越前守忠邦の側用人・武部仙十郎の密命により、眠狂四郎は東海道を西へ向かう。徳川幕府打倒を謀る、薩摩を始めとした西国十三藩の謀議を探る為だ。街道をゆく狂四郎に、五十三次の名物は刺客と化した。 珍しく連作の形をとっていない長編。上下巻に分かれてもいない。狂四郎を慕う娘も酷い扱い(汗)である。
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眠狂四郎殺法帖
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凛珠/円月乱舞。
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銭屋五兵衛の野望を阻止する為に、狂四郎は北陸路に現れた。彼の入国を阻もうと、次々と加賀藩士が襲い掛かる。また、上杉・武田・源氏・平家の五派の忍法の技比べが行われる。能登沖に沈められた佐渡船の砂金を手にするのは誰か。そしてまた散華が……。 相変わらず狂四郎は女性に対して残忍な処置をするが、解説の尾崎秀樹氏が言うように、彼の場合はサディズムに興じているわけではなく、ただ虚無である。その残忍さも、シリーズが進むに連れて薄まっていく。
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眠狂四郎殺法帖
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凛珠/巨悪と傀儡。
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佐渡の金銀山における不正を探る為、西の丸老中・水野越前守が送り込んだ隠密が次々と姿を消した。眠狂四郎は真相究明を依頼され、騒動に関わることとなる。彼に対峙するのは、本丸老中・水野出羽守、百万石を誇る加賀藩、豪商・銭屋五兵衛の三組織。彼らは己の欲望を満たす為、時の将軍・徳川家斉を操り人形にしようという陰謀を巡らしていた……。 欲望と愛憎が賭ける伝奇小説。どんでん返しは健在で、個々の話は短めで読み易く、個々の話を楽しんだ上で全体の長編も楽しめるという、相変わらずの構成だ。
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眠狂四郎独歩行
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凛珠/再びの散華。
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物語は「無頼控」と同じパターンで進んでゆく。虚無の狂四郎を、刺客が、女が襲う。かつて狂四郎を愛し、哀しく死んでいった美保代に瓜二つの娘、ちさ。彼女もまた狂四郎を慕うが、騒動に巻き込まれ、醜悪な風魔三郎太にさらわれて意識朦朧のままに襲われる。ヒロインが襲われてしまうという展開は、当時として珍しかったのではないか。狂四郎もまた、ちさに心を開き始めるが……。 凄艶と剣戟の中に、伝奇小説としては珍しく寂寥が漂う。
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