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呪いの時代 呪いの時代
くにたち蟄居日記/森は樹海とも言うべき迷路ながらも
 福島原発、草食男子、秋葉原無差別殺人等、最近の日本の事例を著者なりの切り口で読み解く著作である。読んでいて、内田らしい快刀乱麻ぶりに感心した次第だ。 哲学、若しくは哲学者とはどうあるべきかということを考えさせるのが内田という方の持つ魔術である。 僕らが普段「哲学」と聞くと、まさに「象牙の塔の中での空中戦」であり、僕らの現実との接点は無いような印象を受けてきた。「哲学科」に進む学生とは一種の変人であり、哲学者とは一体何をしているのか分からない人であるということが一般的な理解である時代もあったと思うし、今でもそうかもしれない。 これは哲学若しくは哲学者側の問題でもあったし、あると僕は思う。哲学書…  全文読む 評価する

本へのとびら 本へのとびら
くにたち蟄居日記/火鉢の中の炭のように
 本作で紹介されたいくつかの岩波少年文庫は僕も昔に愛読した。本作を読んだことで子供時代の自分の読書経験を顧みるきっかけとなった。 僕も本書で紹介されている「やかまし村」「海底二万里」「ムギと王様」「ドリトル先生」等は それこそ繰り返し読んだものだ。その他岩波少年文庫以外も含めて、あの頃は良く児童文学を読んだ。僕にとっての児童文学の頂点は中学三年生に読んだ「指輪物語」だが、それらの読書体験が中年になった僕にとって依然として大きな財産になっていることを本日思い知らされた思いがした。 年を重ねるということは中々楽しい。現在の中年の僕は中学三年生の頃の僕には分からなかったことが分かるようになった。その…  全文読む 評価する

ひとりでは生きられないのも芸のうち ひとりでは生きられないのも芸のうち
くにたち蟄居日記/それは定点を失った人が抱く妄想に近いのかもしれない
 本書では「他者とは何なのか」をひたすら追求していると読んだ。 日本人は自己主張が弱いと一般的に言われてきた。学校でも「自分の意見を持ち、主張すること」を言われてきたし、会社においても同様である。 それは有る程度までは正しいと著者は思っているだろうし、著者自身も「自分の意見を持ち、主張」していることは著者の数多い著作を見ても分かることだ。 但し、そこに落とし穴もあるということが著者の指摘である。余りに自己の拘泥する余り、「他者」というものに対する認識が甘くなってきたという問題提起がある。 「認識が甘くなってきた」と僕は書いた。それはかつての日本ではどうやら他者というものに対して非常に厳密な認識…  全文読む 評価する

無常という力 無常という力
くにたち蟄居日記/遅かれ早かれ死から免れないという状況の中で、善く生きるということは何なのか
 数ある宗教の中で仏教は比較的穏やかな宗教だと一般的には思われるかもしれないが、本書を読む限り、仏教も大変厳しいものがあるということを再認識した。 本書で著者は以下のように言っている。因みに著者は福島から遠く離れた安全な場所で発言されているのではなく、正しくフクシマにてこれを言っている点は付け加えておく。 「しかし(放射能に)悩まずにいようではありませんか。自分が感知しえないもののためにうんざりするのは仕方ないが、わざわざ悩みを深める必要はない」(55頁) 「放射線量は低ければ低いほどいいという考え方があります。しかし、じつはそうではないかもしれない。」(60頁) 著者のこういう発言を科学的な…  全文読む 評価する

バパ・バリ三浦襄 バパ・バリ三浦襄
くにたち蟄居日記/「責任」という言葉は変質してはいないか
 インドネシア在住ということで本書を読む機会を得た。著者は教職にありながら、この労作を書き上げた。読後感は二点である。 一点目。本書を読みながら「責任」という言葉を何度も考えさせられた。 本書の主人公である三浦が自決した理由の一つとしては、インドネシア独立を説きながらもそれが果たせなくなった事にあると読んだ。自決することで自らの言葉に対する責任を取ったと僕は解した。 振り返って21世紀の現在、「責任」という言葉は変質してはいないか。「責任」とは「自ら取る」ものではなく、「他人に取らせる」ものになってはいないだろうか。  「自己責任」という言葉もここ十年よく聞くが、基本的には「他人に投げつける為…  全文読む 評価する

経済大国インドネシア 経済大国インドネシア
くにたち蟄居日記/多様性と寛容性に富んだインドネシアという国の在り方
 会社の先輩から借りて読んだ。冒頭から引き込まれてしまい、一気に読了した。本書は色々な読み方が出来る本である。また実に「新書らしい新書」とも言える。以下三点の読み方が出来る。 一点目。「アラブの春」が中東で勃発した現在に本書を読む価値は大きい。インドネシアはイスラム教国として世界最大である。従来、独裁者の元で開発が進められてきたという点ではインドネシアと中東諸国は似ている。しかるに、インドネシアの大きな違いは民主主義への転換において先行したという点にある。 現在中東では独裁者の退陣と、その後の混乱が見られている。その中で、インドネシアの成功事例は非常に彼らにとって参考になるはずだ。その意味では…  全文読む 評価する

ユダヤ人大富豪の教え ユダヤ人大富豪の教え
くにたち蟄居日記/実際にそんなことが可能なのかと疑問を持ちながら
 知人の紹介で読んだ。「お金」と「宗教」という二つの要素が混ざった本だと理解した。  僕が書店に行って感じることの一つとして、「お金」と「宗教」の本が多いという事がある。「お金」関係は説明の必要は無いと思う。どうやってお金持ちになるのかというテーマの元で書かれた本は山ほど積んである。  「宗教」に関しては、宗教そのものの本だけではない。もっと広い意味で「宗教」と呼んでも良い本は案外多いと思う。自己啓発やモチベーションといったジャンルの本も読んでみるとかなり宗教に近い本が多い。そもそも人間の心を扱う本は時として宗教がかると僕は思う。  本書はその二要素を巧みにミックスしている。大富豪という題名=…  全文読む 評価する

未来型サバイバル音楽論 未来型サバイバル音楽論
くにたち蟄居日記/いずれも過渡期的なものであることも免れない
 音楽には比較的疎いが大変勉強になった。感想は二点だ。  一点目。インターネットが、音楽業界を液状化してきていることが良く分かった。特に音楽業界のビジネスモデル、特にレコード会社が「権力」化していた状況が根底から崩れつつある点に興味を覚えた。  考えてみるとネットの影響で旧来のビジネスモデルが壊れたり、新しいビジネスモデルが出てきたという事態は音楽業界だけの話ではない。むしろ音楽業界もネット社会の変化の一例として本書で語られている程度なのかもしれない。本書の著者たちも、自身の仕事が音楽だけに限定されるとも思っていないだろう。  その意味では本書で紹介される事例はいずれも過渡期的なものであること…  全文読む 評価する

あやかし草子 あやかし草子
くにたち蟄居日記/波打ち際で足が波に洗われながら 水平線を見ている後ろ姿
妖怪譚を楽しく読んだ。 昔の人は妖怪を信じていたと思う。実際に妖怪が居たかどうかは大した問題ではない。妖怪を信じるという知性があったことが大事だ。 妖怪は非科学的であり存在しないと現代の僕らが単純に考えたら、昔の知性を見誤ることになる。昔の人にとっては妖怪の存在とは「科学」だったはずだ。妖怪の存在を設定することが物事の科学的説明になっていた時代があったということだ。例えば、日照りの際には竜という妖怪を設定し、それを祀ることで雨を祈願する。雨が降らなければ竜への祈願が足りないという科学的判断を行い、生贄を捧げる等の対応策が取られる。 若しくはある家の興隆が座敷わらしという妖怪の有無によって理解さ…  全文読む 評価する

丸山真男をどう読むか 丸山真男をどう読むか
くにたち蟄居日記/この「目線」の違いこそが、著者の丸山批判の主眼であると僕は理解した
 二回続けて読んだ。  著者は本書では丸山をかなり批判的に語っているが、そもそもの出発点では著者と丸山は共通する部分が多かったと僕は考える。両者ともに西欧近代思想に強く影響を受け、かつそれを肯定的に捉えるところでは一致していると読んだ。    但し、そこから先である。  長谷川という方は大学院を出た後、大学には残らず、学習塾を開いて生計を立てつつ、哲学の勉強を続けるという道を取った。学生運動等を経てきた結果、在野の哲学者という道を選ばれたのかもしれない。学習塾も単なる学習だけではなく、色々な催し物も行う等、非常にユニークなものであると聞く。  その経歴は、物理学者の山本義隆に重なるものがあるが…  全文読む 評価する

夜間飛行 夜間飛行
くにたち蟄居日記/現場の強さがあるとしたら、そこには「現場のリーダーシップ」が必ずあるはずである
 「夜間飛行」の新訳が出た。旧訳の本書が実に面白かったので、直ぐに購入した。旧訳は詩人の堀口大學であり、言葉は綺麗ながらも現在から見ると古い。新訳の方が今の僕らには読みやすいと思った。  本書を再読して、改めて、この作品の主人公リヴィエールの造形に感じ入った。僕も主人公と同じく中年であり、組織でいくばくかの部下を抱えて働いている。その立場に立って見ると、主人公の見せるリーダーシップの難しさということが分かる。  僕の仕事は、部下に死の危険を強いるようなものではない。一方、夜間飛行を強いる主人公の仕事は部下の命を危険にさらす厳しいものだ。その厳しさの中から、主人公の並はずれた自制心と、自他共に律…  全文読む 評価する

世界を知る力 世界を知る力
くにたち蟄居日記/政治家のせいだけにしていないだろうかといささか反省も強いられた
面白く読んだ。読後感は二点である。  一点目。著者の主張は「今回の災害を奇貨として、再度日本を考え直す良い機会とすべきである」という点に尽きると読んだ。災害には物事をリセットする面はあると思う。  勿論「だから災害が来てほしい」と言っているわけではない。リセットには非常なるコストが掛るし、大変な不幸を背負う人が膨大に産まれる。来ない方が良いに決まっている。但し、「来てしまった災害」をどう捉えるのかと考えた場合には、そう前向きに考えるしかない。そう考えた上で、どのような構想力を持って、リセット後の世界を考えていくのか。そこが今回の日本の試練であり、著者は本書で自身の考えを述べている。  振り返っ…  全文読む 評価する

福島原発の真実 福島原発の真実
くにたち蟄居日記/実は自分たちの間では「部分最適」だらけであることが本書から見えてくる
 本書を読みながら「国家の暴力」という言葉を常に思った。  国として電力安定供給という「全体最適」の為に、福島県の意見を「部分最適」と断定し、それを無視する形で原発が進められて来たことが本書を読んでいて良く理解出来た。  一般論として全体最適の為に部分を犠牲にするということは、あってはならない事だが現実としては有るとは思う。何かを選ぶ時は、それ以外を捨てることであることも多い。全ての人や物が幸せになるということは話としては美しいが、なかなか難しい。  但し、ここから先が問題だ。  「部分最適」を否定し、「全体最適」を錦の御旗としてきている国が、実は自分たちの間では「部分最適」だらけであることが…  全文読む 評価する

福島の原発事故をめぐって 福島の原発事故をめぐって
くにたち蟄居日記/本書を批判するに際して、目新しさが無い点を挙げても的外れである
 本書の副題は「いくつか学び考えたこと」となっている。これが本作の鍵だ。  本書で著者が展開する議論での素材や情報一つ一つには目新しいものは多分無いと僕は思っている。著者自身が「特別にユニークなことが書かれているわけではない」とあとがきで断言しているが、おそらくその通りであろう。著者が認める通り、著者は原子力の専門家でもないからである。従い、本書を批判するに際して、目新しさが無い点を挙げても的外れである。  但し目新しくない素材を集めた上で「学び考えたこと」の展開を通じて、本作は非常にコンパクトながらも、ピリリとした、山椒のような著作になっている。特に、人間が自然との対峙スタンスをどのように変…  全文読む 評価する

災害ユートピア 災害ユートピア
くにたち蟄居日記/災害を乗り越えることで 未来が拓けるか
 東日本大震災を念頭に置いて本書を読んだ。  今回の震災において、日本人の冷静な対応ぶりが世界で評判となった。しかし、本書を読む限り、震災時の市民の互助利他的な対応は日本の特許ではない。本書で展開される世界各国での同様の対応には人類が持つ「社会資本」というものが見える。新自由主義や経済合理性からでは理解できない人間の一つの強さがそこにある。「自分にとっての最適な経済活動」を本能的に取る動物が人間だという考え方から、今回の震災時の市民の対応は説明不能である。    一方、災害時のエリートが見せるパニックという視点は大いに勉強になった。  エリートから見ると、災害とは自分の既得権=権力が失われる重…  全文読む 評価する

理性の限界 理性の限界
くにたち蟄居日記/想定外と想定内
 震災を踏まえて本書を読んだ。  今回の震災で最も良く使われる言葉に「想定」がある。「想定外だった」という言い訳があり、「想定内であるべきだった」という反論だが、両者に共通している事は「想定」自体は基本的には可能であるという点だ。 「想定外」という意味は「ある一定の与件」の元での「想定」というものが有り、その与件を超えたから問題が起きたという事だ。従い与件自体が間違っていたからしょうがないというロジックになる。与件の不備に関しては国の基準の不備という流れになっていく。  一方「想定内であるべきだ」という論理は、その与件自体が本来想定可能でありながら、それを怠った為に災害が起こったというものだ。…  全文読む 評価する

西の魔女が死んだ 西の魔女が死んだ
くにたち蟄居日記/謎解きは なされないままに
 娘から借りて読んだ。  この短い話は色々な謎を残したまま終わってしまう。  ゲンジという人はどういう人なのか。  魔法とは何なのか。  そもそも魔女とは何なのか。  それらは意味ありげに物語を横切りながら、決してこれだという解き明かしを出してくれない。謎が謎として残るだけに余韻も深い。読む人に結論が委ねられている。読む人が一人一人自分なりの解き明かしをするしかない。逆に言うと読む人の数だけ答えがあるということなのだろう。  本作は非常に陳腐に言ってしまうと、ある少女が成長するに当たって経てきた「通過儀礼」の話だ。社会から一旦脱落した主人公が、不思議な空間と時間を経て、社会に戻って来る話だ。主…  全文読む 評価する

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか 最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
くにたち蟄居日記/僕らの生活は「マシン」に囲まれ、依存しきっているということ
 震災後に本書に言及される記事がいくつか有ったことで読んでみた。  一読した印象としては、フレーザーの「金枝編」に似ているということだ。次から次へと事故事例が出てくる様は圧巻だ。「金枝編」でフレーザーが世界の人類学的案件を紹介する様に重なった。  特に歴史が古い事例が出てきている。それは当時から事故調査とその記録がきちんと残してきているということを意味する。欧州と米国の事故に対する哲学が見える思いがする。飛行機のフライトレコーダー等にしても良く思いついたと思う。要は「事故は起こるものであり、起こった事故から何を学ぶか」ということだろう。日本で繰り返される「想定外」という言葉と比較することは極め…  全文読む 評価する

村上春樹雑文集 村上春樹雑文集
くにたち蟄居日記/他人と違う言葉で語れ
 本書で一番懐かしいのは「風の歌を聴け」で群像新人賞を取った際のスピーチである。なぜ懐かしいかというと In pocketという文庫本雑誌の村上龍との対談の中で紹介されていたからだ。もう20年ほど前の雑誌だったと思う。  このスピーチで、村上は「他人と違う何かを語りたければ、他人と違う言葉で語れ」というフィッツジェラルドの言葉を引用している。これが1979年の村上の29歳の言葉であることを考えると、非常に予言的であったことが、2011年の今に分かるというものだ。  村上は「言葉」で勝負してきた作家である。村上の語る言葉は「他人と違う言葉」であったことは確かだ。「文体で勝負する」という話は確か当…  全文読む 評価する

クリスマス・カロル クリスマス・カロル
くにたち蟄居日記/中年になって再読してようやくこの話が分かってきた
 風邪を引いて休んだ一日に読んだ。昔にも読んだ記憶があるが、不覚にも泣いてしまった。  シンプルな話だ。人間は御金だけでは生きていけないという筋である。そんな話しはいくらでもある。今さら読んで感動するまでもない。そう思いながらも、本書を読みだすと止まることが出来なかった。  子供の頃に読んだ本だ。子供用に書かれた本かもしれない。しかし、本当は、本書は子供には難しいのだと思う。  働く事の厳しさ。お金の重みという現実。親しい人を亡くした日の夜。子供を持ったことで分かる親心。  そういうものを実際に現実に経験した上で本書を読まない限り、本書はただのお伽話でしかない。また、中年になった今だからこそ、…  全文読む 評価する

はじめての宗教論 はじめての宗教論
くにたち蟄居日記/知的な体力を養成するということ
 「はじめての宗教論」という題名だが、宗教論関係を「はじめて」読む人にとっては、本書は難解である。僕自身もそんな一人であるので、正直どこまで理解出来たのかは我ながら覚束ない。  本書は煎じつめると、人間の自己絶対化の罠に気をつけようということなのだと思う。「自分とは何か」という極めて古典的なテーマを考えていく中で、キリスト教が変貌し、ナチスに辿り着いた歴史ということが粗筋だ。  今の僕らにとって、ナチスとは昔の歴史であり、かつ理解出来ない狂気であるかもしれない。但し、それは現在から過去を振り返ることが出来るという特権を使っているだけだ。それでは現在の中に「新しいナチス」がひっそりと出てきていな…  全文読む 評価する

吉野弘詩集 吉野弘詩集
くにたち蟄居日記/失ったものをふと思い出す時に何かが震えるということ
 手元にある吉野弘詩集を買ったのは、1982年である。もう30年も前だ。  好きな詩人を訊かれて、吉野弘ということは気恥かしい気がする。中原中也だとかランボーとか答える方が格好いいではないか。僕は萩原朔太郎と答えることにしているが、実際に、家でめそめそ本棚から取り出す回数は、この詩集が多い。我ながら、何故なのかが良く分からないのだが、それが現実だからしょうがない。  吉野の詩には「柔らかい日本語で語りかけてくる何か」がある。何か、自分が失くしてしまったもの残響がそこにあるような気がする。僕らは年齢を取るにつれて、色々なものを得てきたことは確かだが、同時に失ってきたものも多い。そんな、失ったもの…  全文読む 評価する

世界史の構造 世界史の構造
くにたち蟄居日記/著者の絶望に共感できるかどうかが本書を読む意義になる
 大著であり、読み終わるのに一カ月程度掛かった。  本書は4つの「交換様式」という新しい物差しで歴史と現代を測り直そうという試みであると読んだ。4つの内3つは既に実現したものだが、それを乗り越える4つ目の物差しを作り上げることが人類の新しい時代を作り上げるという主張だ。  何かを希望する事の基礎には必ず現実への絶望がある。著者も9.11以降からリーマンショックまでの7年間を基本的には「絶望」という切り口で総括したのだと僕は読んだ。ではその「絶望」から「希望」への脱出口はあるのか。著者は有ると信じている。そして、その脱出口を切り開く方法として、4つ目の物差し=新しい「交換様式」があるべきだと断定…  全文読む 評価する

胎児の世界 胎児の世界
くにたち蟄居日記/詩人の夢
 著者の本はこれで三冊目だ。感想は二点である。  一点目。人間が受精してから出産に至るまでの期間に「生物の進化の歴史」を辿って来ているという指摘には再度感銘を受けた。僕らの祖先が海の魚だったということだけではなく、受精から出産に至るまでの胎児の間に僕ら自身が魚である瞬間があったという話だ。つまり僕自身が生物の進化を自ら経験してきているということである。  確かにこれを書きながらお尻を触ってみても、そこには尾てい骨がある。尻尾が有った時代を自らの体に残しているわけだ。あと数万年したら、こんな骨も無くなっているのかもしれないが。  二点目。本書は科学や医学の本ではない。哲学の本とも読めるが、厳密な…  全文読む 評価する

街場のアメリカ論 街場のアメリカ論
くにたち蟄居日記/日本人が理解しているアメリカ像
 内田樹のアメリカ論である。本当に興味深く読め、途中ではたと膝を打つ場面も多かった。但し読後に一度冷静になる必要があると考えているところだ。  僕にとって一番不思議だったのは「はたと膝を打つ」自分自身である。なぜなら僕自身は殆どアメリカを知らないからだ。仕事でアメリカに行った回数を考えてみても大した数字は出てこない。アメリカ人の友人がいるかと考えても、知り合いレベルで数人だろう。アメリカの新聞を読んでいるわけでもない。アメリカの映画を観ることは好きだとしても年に数本程度だ。一言でいうと、「全くアメリカに関する知見がない」ということが僕自身の実態である。  そんな僕がなぜ本書を読んでいて「はたと…  全文読む 評価する

下流志向 下流志向
くにたち蟄居日記/設定された読者と 設定されていない読者
 数時間で楽しく読み切った。  この本を読むに際しては、自分の立ち位置を良く考えないと行けないと感じる。もっと言うと、著者が本書の読者として設定しているのは副題の「学ばない子どもたち 働かない若者たち」本人ではなく、彼らの親や上司であると僕は理解した。従い、本書の読者が、著者の設定した立場にいるか、いないかで本書の読み方も多分全く変わってくるはずだ。  僕自身は幸か不幸か著者の設定した読者の範疇にいると思う。中年を迎えて、子供の勉強が気になったり、会社においても部下のモチベーションを考えることが多くなっている。その立場から本書を読むと、誠に快刀乱麻であり非常に説得された。但し、「学ばない子ども…  全文読む 評価する

ロアルド・ダールコレクション ロアルド・ダールコレクション
くにたち蟄居日記/恐ろしい童話であること
娘達が「これは面白いから読んで」というので直ぐにその場で読んだ。  これは童話なのだろうが どう読んでもブラックな味わいに満ちている。初めのグランマの魔法の話は スティーブンキングの作品を思わせる怖さすら感じたし、その後の薬の効果の展開も どう読んでも恐ろしい。ましてや 結末は 児童に読ませる本として これで良いのかと思ってしまうくらいだ。  但し ここで再度考えなくてはならないのは 娘達が この話を面白がっている点にある。いや 面白いといえば 僕にしても面白いのだ。  大人になると モラルが崩れた話を楽しめるわけだが 実は子供たちも十分 そういう いわば「悪の童話」を楽しめるということなのだ…  全文読む 評価する

虫眼とアニ眼 虫眼とアニ眼
くにたち蟄居日記/物事を見続ける眼
この対談集は 一言で言うと 年をとっても子供のままのお二人の放談集のようなものかもしれない。  この放談の中で 二人が一番一致しているのは「人間は人間しか見ていない事が問題である」という点だ。  これに関しては 宮崎は 自身の山小屋での生活を上げ、養老は 虫取りから説明している。お互いに 別々の素材から 上記命題を汲み上げている点が興味深かった。  経済学にしても経営学にしても心理学にしても生物学にしても医学にしても芸術にしても かなりの人間の「学問」とは「人間とはどういう動物なのか」を解明しようとしている点にあると最近よく思う。そんな僕にして 「人間だけしかみていないから駄目なのだ」というお…  全文読む 評価する

日本の難点 日本の難点
くにたち蟄居日記/「社会」を強化していくということ
 読後感は三点である。  一点目。著者は「社会の強化」を主張していると読んだ。  「社会」という言葉は案外難しい。「社会人」であるとか「社会に出る」という言葉を使っているが、その「社会」とは「仕事」や「会社」を意味しているのだろうか?著者は「社会学者」であるが「社会学」が「仕事」や「会社」を研究するものではないだろう。では僕らにとって社会とは何なのかというと、中々答えられない。おそらく、その「答えられない」ことが、僕らが社会というものを見失っていることを意味しているような気がする。僕らが見失っている「社会」を発見し、それを強化しない限り、国家の暴力から人間を救えないということが、著者の主張だと…  全文読む 評価する

自然と生体に学ぶバイオミミクリー 自然と生体に学ぶバイオミミクリー
くにたち蟄居日記/素人にはちょっと難しいか?
 バイオミミクリーという言葉を知ったので 本書を読む機会を得た。  バイオミミクリーとは自然をモデルにして物事を考える学問だ。クモの糸やアワビの殻の強靭さ、光合成という発明で太陽光を貯蓄できるエネルギーにする植物、体調不調を特殊な植物を食べることで治すチンパンジー。本書で紹介された生き物たちは 人間の知恵を超えたものがある。それだけに そこから学ぼうというバイオミミクリーの話は実に面白い。  本書はエコロジーにおいている軸足が強い。この点が ちょっと本書を 一種のアジテーションにしてしまっているきらいがある。僕としては 素人として 本書で挙げられる事例が本当に面白かっただけに その点で 読んで…  全文読む 評価する

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