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絶望の国の幸福な若者たち 絶望の国の幸福な若者たち
kc1027/注釈のような日常の深み
巷に溢れるこの国に関する統計資料を適当に3つや5つ選んだら、将来に希望があんまりない国だとするのは簡単で、そんな国に住む「若者」たちは不幸なはずであると、物の分かってそうな「大人」は解釈する。でも、20代くらいの世代は、かつてないほどに「幸福」を感じ、今のここに「満足」している。著者は本書で、若者に関する論考の歴史を探りつつ、若者そのものを定義付けすることを周到に避ける。「若者」という言葉は、大雑把に若年層の価値観を総括してしまいがちだが、ナントカ系がたくさん溢れている2010年代の日本では、若者という括りで代表される塊などもはや存在しない。適当にバラバラでそれなりに孤独だけど小さく繋がっては…  全文読む 評価する

山縣有朋の挫折 山縣有朋の挫折
kc1027/ダークナイトを継ぐものは?
援助が期待出来ないときは自力で踏ん張るしかない。自治という理想は統治の手段というよりも統治する側に全体を見渡す余裕がないときに求められ、だから明治維新直後や関東大震災の後や大戦後すぐの時期には、自治が広く求められた。そして現在もしかり。中央が地方を手厚く慮るなどということは到底期待出来ず、自治は最早必然となる。その今に繋がる近代の自治の源流にいたのは、かの山縣有朋卿。本書は山縣有朋が目指した自治の理想と挫折に迫る。山縣有朋にまつわるイメージはとにかくダークで、昭和陸軍の祖となったことで日本近代史上最大の悪人のように扱われることも多々ある。権謀術数に長けた陰湿な権力者として山縣像を決定づけた『坂…  全文読む 評価する

文明の生態史観 文明の生態史観
kc1027/健康な歴史観
進化というコンセプトはなんでもかんでも最終的には同じところに辿り着くというモデルを作りがちであるが、世界はそれほど一様ではない。一様になりそうに見えて本当に一様になってしまうことなどない。動植物の世界で系統を探る試みとして発展した生態学を、人間に当てはめてみたらどうなるのか、それが梅棹氏の大仕事の出発点で、動物化するポストモダン社会において文明の生態史観は益々輝きを増してきた。北半球の世界を大陸周縁で先進国化した第一地域と、いまだ近代化されない大陸中央部の第二地域に分けて、それぞれの文明の系譜を地域の気候的地理的制約に則して読み解く理論が最初に発表されたのは1957年。日本文明が極東の第一世界…  全文読む 評価する

社会インフラ次なる転換 社会インフラ次なる転換
kc1027/近代の超克としての減築
インフラは文明の下部構造であって、あまり見えない。でも政治も経済も文化も下部構造の上に成り立っていて、その下部構造は土地と人に沿っている。人口減少時代に突入したこの国では、高度成長を支えた電気、ガス、上下水道などの設備が今後は過剰なものとなり、なおかつ老朽化が進む。長い時間をかけて創り上げてきたものを創り替えるには、大概創ったとき以上に、時間もお金も手間暇もかかる。さあどうしよう、ということで本書だ。これからの社会インフラに必要となるのは、設備を減少Compactにしていくことと、ニーズの変化に合わせて転換Convertしていくことと、管理の担い手の減少に対応して横断管理Cross overし…  全文読む 評価する

エネルギー進化論 エネルギー進化論
kc1027/ベンチャーのエナジーはマネーを越えるか?
東日本大震災によって可視化されたわたしたちの社会のエネルギー構造。電力幕藩体制のもとで生み出された原発推進の流れが行き詰まった今、惰性の効かない選択が求められている。本書はこれからのエネルギー体制を考える上でのキーマンと称される飯田氏の最新著書。地域独占のエネルギー体制を変えるには、膨大なエネルギーがいる。原子力を放棄して石油依存を下げつつ、天然ガスをこれまで以上に有効活用して、その上で自然エネルギーを普及させて、無理のない節電をする。この大枠のシナリオの実現には、新しいエネルギーの推進が急務で、それはガチガチに硬直化した電力行政の間隙を縫うように、小回りの効く地域が小さな成功事例を積み上げて…  全文読む 評価する

中国化する日本 中国化する日本
kc1027/千年の愉楽の果てに。
源平合戦は、反中国勢力と親中国勢力の争いであった、という解釈にまず打たれた。本書で言うところの「中国化」とは中国に支配されてしまうという意味ではなくて、歴史の流れとして(必然的に)中国社会のようになっていく、という意味だ。専制君主が統治しているけれど、経済は市場に任せる中国社会の原型が生まれたのは約1000年前の宋の時代。地縁・血縁だけに頼らない社会を、やがて訪れる世界の普通として、本書は描く。中国化する、ということは、そうではなかった日本があるわけだが、そこで提示されるのは「再江戸時代化」というもの。イネによってイエを持ち、ムラで暮らす社会が日本人は大好き。明治維新によってちょっと世界に開か…  全文読む 評価する

一般意志2.0 一般意志2.0
kc1027/勢いで近代をアップデート。
わたしはこの時代に本書の初版を読むことが出来て嬉しかった。たぶん世界中のどこよりも近代化を求めて止まなかったこの国から、近代のその先のしなややかな未来のビジョンが生まれたからだ。そのビジョンとは、人間と動物の、意識と無意識の、生物と無生物の、その間からこぼれ落ちそうなモノとしての集合知=一般意志に沿って、ゆるやかに統治される未来の姿。本書の描く未来。それは、WEB上に記録されるわたしたちの行動のデータベースから立ち上がってくる集合知を、現在の政治の外部にあるモノとして、すでに現れた前提として扱い、それに沿うように社会が水道局のように運営されていく未来だ。WEBは無意識を可視化してしまうツールで…  全文読む 評価する

資本主義と自由 資本主義と自由
kc1027/自由の果ての自由と愛
アメリカという国は、愛と自由が決闘をしている国である。政府は市場にどこまで関与すべきか。政府の機能はどこまで中央が担うべきか。この永遠の課題に自由な立場から決定的なクサビを打ち込んだ本書は、60年の時を超えて、いまわたしたちの国の現実を左右する書物になってきた。本書第2章「自由社会における政府の役割」、この短めな章に書き込まれた提言の数々が、アメリカの自由の追求の理想として、この60年で徐々に世界に浸透してきている。TPPというアメリカン資本主義を軸とする枠組みがこれからの東アジア太平洋のフレームになるとしたら、そのなかで生きる個人は、政府に何でも期待しない方がよい。わたしたちは自分の居場所を…  全文読む 評価する

イノベーションとは何か イノベーションとは何か
kc1027/これからの居場所を探す旅
電子マネーのスイカが昨日で10周年を迎えた。本書にはイノベーションが失敗しないための条件としてこんなことが書かれている。「『電子マネー』という漠然とした名前で呼ばれているうちは成功せず、スイカのような特定の用途に最適化して利便性が明確になったときに成功するのだ」特定の用途への最適化と利便性の明確化。イノベーションを語るときに欠かせないこの要素は、個人の生活の感覚に深く根ざしていて、だからイノベーションは社会的に最適化されていない個人の思い込みから生まれてくる。経済成長にはイノベーションが最も重要だ、という経済学的分析は多いものの、ではイノベーションとは何なのかを扱った分析は少ないらしい。本書の…  全文読む 評価する

体制維新−大阪都 体制維新−大阪都
kc1027/日本先物予測選挙
課題先進国内の課題先進地域、大阪。最も不幸な都道府県に選ばれてしまった大阪は、失われ続ける日本の象徴のような地域で、1970年の万博以降、衰退の一途を辿っている。そんな大阪の諸悪の根源は、明治以来の旧体制を残したままの、大阪市と大阪府の二重行政にあると、橋本氏は熱く語る。統治の仕方を巡る大阪都構想の概要が本書の論点。大阪の問題は分かりづらい。880万人の大阪府の中の大阪市の人口は260万人。この中途半端な規模のレイヤーの違いが、府立と私立の二重の大学や図書館や病院を生み、無駄な税金、行政コストを浪費し続け、結果住民が求める行政サービスを提供出来ない真の原因であると橋本氏は繰り返し説く。明治維新…  全文読む 評価する

国民ID制度が日本を救う 国民ID制度が日本を救う
kc1027/リトル・ピープルのサバイバルナンバー
会社に生きるわたしは社員番号で管理されていて、市場に生きるわたしは無数のIDとパスワードで管理されている。それなりの不便さはありつつも、会社や市場に管理されているというよりも、その記号で持ってその社会にエントリーしている感覚。国家に生きるわたしは、年金番号やら保険証やら免許証やらで管理されているのかと思いきや、死んでもよくわからないくらいに実は宙ぶらりんだ。本書は議論されて久しい国民ID制度の現在を知る書。TPPにしろIFRSにしろ、全面的賛成や反対は何につけてもあんまり好ましくないと、小市民な自分は思ってしまうが、ことこの国民IDに関しては、本当にさっさとやった方がいいと、本書を読んであらた…  全文読む 評価する

リトル・ピープルの時代 リトル・ピープルの時代
kc1027/仮面ライダーの告白
世界の終わりは来ない。デカい一発が来ても世界は終わらない。原発が爆発しても、カダフィが倒れても、世界はある。でも、いまこの世界に根付いている実感はさほどない。大きな物語を消失した世界が、もう一度大きな物語を取り戻すための試みを、著者は村上春樹の『1Q84』から説き起こす。ありえたはずの過去を巡るリトル・ピープルたちの世界の手触りは曖昧で不可解。善悪入り乱れ、清濁相交わる世界の様相は、やがて新世紀の日本に象徴的に現れる。仮面ライダーというヒーローの姿の変容を通じて。ビッグ・ブラザーとはウルトラマンであり、リトル・ピープルとは仮面ライダーである。それが本書の主張だ。超越的存在として宇宙から飛来する…  全文読む 評価する

民法改正 民法改正
kc1027/市民を書き換え、書き加え、折り込む。
TPPの議論が反対論の盛り上がりと共に活発化し、導入が自明と思われたIFRSは先送りが噂される昨今、グローバリズムそのものに対する警戒感があらためて浮き彫りになってきているが、制度への参加や導入論をどうこうしているうちに、法の下の人間を形作ったギリシャが先にどうにかなってしまいそうで、きっとその影響は遠からず我々にも及ぶ。そんな中、わたしの周りを取り巻く法律、我知らず我の思考の枠組みの形成要因のひとつとなっている民法が、100年ぶりに大改正の準備が進んでいるらしい。100年前の明治維新後の日本は、世界の先進国である欧米の仕組みを我が物にしようと急速に法整備を進めた。契約の概念そのものを独仏中心…  全文読む 評価する

ミカドの肖像 ミカドの肖像
kc1027/ロールモデルジャパン
村上春樹氏が『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を書いていた1984年頃、猪瀬直樹氏は『ミカドの肖像』を書いていたらしい。明治維新から110年とちょっとで明治生まれはほぼ息絶え、終戦から40年くらい経って戦中世代が引退した三島のいない日本は、薄っぺらな経済大国に成り果てようとしていて、その先端で猪瀬氏は、薄っぺらな日本の象徴の天皇を、右から左から後ろから前から照射し、近代日本のナマな姿をバブルの中に浮き上がらせようとしていた。文庫にして800ページを超えるこの大著は、近代天皇制という白鯨を追い求めるエイハブのようで、追い求めたいものを追い求めて止まない人間の業がページごとに浮かび上が…  全文読む 評価する

日本の大転換 日本の大転換
kc1027/しなやかな性転換
原子力発電所とはいかなる思想の下に生まれたものなのか?一神教の国々で芽吹き、ソ連のニンゲンによってで初めて実用化されたゲンパツは、自然を制御してこの星の「小さな太陽」となるはずであったが、どうやらチェルノブイリからフクシマを経て、その役割のピークを終えようとしている。それはゲンパツを生んだ思想がこの星の実態に合わず、資本主義とか共産主義とか、政府の大小とか、そういう既存の知の枠組みが機能しなくなってきている示唆だ。地球科学と生態学と経済学と産業工学と社会学と哲学をひとつに結合するような新たな知の形態が生まれない限り、わたしたちが今直面している問題に正しい見通しを与えることなど出来そうにない、と…  全文読む 評価する

池田学画集 池田学画集
kc1027/もはやルネサンスは凝視の強度に委ねられた。
見る、という行為はあまりにも日常的であるがためにそのスキルを問われることはあまりない。でも普段わたしたちは本当に世界を視ているのだろうか?池田学画集のあまりに細密で厳密な表現のもとになっているのは、画家の日常の視線の記憶とそこから紡ぎ出される視野の広がりであり、ビジョンの蓄積。見るという半ば受動的な行為を主体的な見通しに変換するのは、見るという行為の密度であり、強度であって、そこにこそ、今を生きる画家の本質が現れる。この画集に描かれた細密画は、近代を越えたこの国の幻視で、巨大な仏陀も海底で再生する戦艦も暗闇に浮かぶ現代の方舟も、すでに始まった未来を図らずも描き切ってしまっている。繰り返される波…  全文読む 評価する

世界で一番美しい人体図鑑 世界で一番美しい人体図鑑
kc1027/自然エネルギーとしての人体
わたしたちは自分を知らない。人体の約70%が水で、約100兆個の細胞から出来上がっているわたしは、そんなことまったく知らずにノウノウと生きているが、こうしている瞬間にも約5000万個の細胞が死滅し、新しい細胞へと入れ替わっている。わたしはいつも死にながら産まれている。とはいえこの図鑑は人体に関する数的知識を学ぶものではなくて、タイトルにもある通り「世界一美しい」人体をただただ眺めるためにある。世界一美しいのが自分でなくても、人体は大概、美しすぎる。人体を支える骨と筋肉、一瞬も動くことを止めない循環器系と神経系と内分泌系とリンパ系。このシステムの完成度の高さを我ながらどう捉えたらいいのか。そのシ…  全文読む 評価する

コミュニティデザイン コミュニティデザイン
kc1027/デザイナー時代
政府と市場がそれぞれ成功したり失敗したりする世の中で、ここ20年ぐらいのプロセスを俯瞰するように偉そうに眺めてみると、何かにひとつの価値観に頼りきって生きていくのは到底無理だし、でもどこか借り物のアイデアで現状をいきなり打破するのも無理っぽいことがわかってきて、現状を踏まえながら泥臭くやっていく方向しかないとしたら、その泥臭さは、それぞれの地域に根ざしたコミュニティのなかにあるのだと思う。人がそれぞれの人生を生きていくのは、誰もがひとつやふたつ所属するコミュニティという場所の中であって、そこでの問題は、人と人がどうつながっていくかの問題がほとんどであったりする。地域の活性化というと、箱物行政や…  全文読む 評価する

ローマ人の物語 ローマ人の物語
kc1027/すべての道はローマ人に通ず
『ローマ人の物語』には庶民はあんまり出てこない。国家の存亡において庶民の動向が関係ないはずはないのだが、それよりも何よりも特に帝国となって以降のローマの存亡は皇帝が担っていたので、その庶民軽視とも言うべき記述も多少はうなずけるのである。そんな中で10巻目に現れた本書において、『ローマ人の物語』は本当に『ローマ人たち』の物語へと昇華したように思えるのだ。ローマ建国からカエサルによる共和制から帝政への以降を経て、五賢帝時代までの歴史記述が指導者たちの攻防であったとするならば、インフラ構築に丸一冊分捧げられ、歴史書において異色の存在となった本書が提示するのは、普通のローマ人たちの仕事ぶりだ。取り上げ…  全文読む 評価する

枯木灘 枯木灘
kc1027/血を越える仕事
主人公・秋幸は日に照らされて働くのが好きだ。自分が土となり草となり風となるような瞬間が何より好きだ。人は誰しも、血を見ればキリがない。血の関係に惑わされない人間などいないはずで、血の誇りと血の穢れは裏腹で、そんな人間たちにとって、土や草や風と一体になれるような瞬間こそ、血が地に成り代わるような瞬間こそ、何にも得がたい。咲き誇る夏芙蓉のむせ返るような匂いが、種の繋がりを生む交配という事件の引き金であるように、今目の前にある労働にひたすら打ち込む秋幸の肉体から立ち上る汗は、やがて起こる荒ぶる事件の前触れのように、物語の通奏低音として全編に染み込んでいる。土方仕事を愛する秋幸の血は、土地の成り上がり…  全文読む 評価する

あなたにもわかる相対性理論 あなたにもわかる相対性理論
kc1027/天才と勇気は比例する。
米『TIME』誌によって20世紀を代表する人物に選ばれたアインシュタイン。その代表的理論である相対性理論を、アインシュタインを生涯のヒーローと仰ぐ茂木先生が解説した書。アインシュタインは、ニュートン力学が世の常識としてまだ絶対的な権威を持っていた20世紀初頭に、その絶対的なるものを疑い、宇宙の真理を知りたいという純粋というか一途な思いをE=mc2という極めてシンプルな一行に結実させた。正直、『あなたにもわかる』という題名に納得するほど自分が相対性理論を理解できたがどうかわからないのだが、エネルギーはまったく次元が異なっていそうな質量と光の二乗に等価である、ということを突き止めた、そのとてつもな…  全文読む 評価する

ほんとうの復興 ほんとうの復興
kc1027/どう創り、どう使い、どう制御するか。
人間が生きていくということは、どういう営みであるのか。日々の生活も、経済成長も、これからの未来も、エネルギーをどう創り出し、どう使って、コントロールしていくかが最重要課題であることが、東日本大震災を機に露わになったわけだが、より根源的な問いは、わたしたちにとって必要なエネルギーとはどんなものなのか、であって、復興後の姿もその地点に立つ事によって見えてくる。「目の前にある現実は問題ではなくて、答えである」と、養老先生は本書で語っている。自然にあるものは、太陽と土と水の中で、自らの生存に必要な要素を日々取り込むために、「最適化」をしている。適者生存の答えは、目の前に生えている木々の姿そのもので、都…  全文読む 評価する

1Q84 1Q84
kc1027/声を読む
良質な文学は読む前と読んだ後で読者の現実世界を変えてしまう。文学が現実世界の現実の人間に仕掛けるささやかな革命。長い長い物語は、その長さの中で滋味が出てきて、じわじわと現実を変える。長い長い時間の果てに、時間を越えて書かれたことが歴史となって、その静かな熱で持って、遠い場所の誰かを動かす。BOOK1とBOOK2から1年を経て世に出たBOOK3は、1,000ページ以上の導入部の先の、ある普遍的な物語。この世界がどんな世界であっても、人生において、自分にとって大事なものを追い求め、守ることには価値がある。そんなストレートな言葉を現代において語るには、世界さえも再設定して、長い導入部の果てに、語る必…  全文読む 評価する

ハーモニー ハーモニー
kc1027/わたしの終わり
体調が悪いと世界まで悪く感じる。世界を良くしたいなら、正義ではなくて体調について考えるのが先で、考えるよりも先に体調が悪化する前兆を事前に捉えて悪くならないようにすれば、わたしの世界はそんなに悪くならない。夭折の天才SF作家、伊藤計劃が絶筆で描いた世界は、医療によって病気が取り除かれたユートピア。健康が蔓延し、身体反応が外注されてデザインされた生命に苦痛はない。生命がコード化され、優しさがシステム化されて、誰もが誰をも思いやる世界とは、本当に「優しい」のか?この強烈な問いかけに、わたしの意識はただ揺さぶられるばかり。人類の獣性が暴発し、虐殺に虐殺が繰り返された「大災禍」を経て、人類は優しさを極…  全文読む 評価する

池澤夏樹の世界文学リミックス 池澤夏樹の世界文学リミックス
kc1027/わからない。でも嬉しい。
わたしは自分が生きるこの世界をもっと知りたいと思う。それは理屈ではなくて自らの身体のどこかから生まれ来る欲望みたいなものだ。頭で考えるまでもなく、わたしは世界を勝手に知りたい。ではどうやって世界とか地球とか宇宙を知るのか。ハッブル宇宙望遠鏡に携わる人みたいに愚直に宇宙の果てまでも追い求めるのも、それはそれで人生をかけるに値するとは思う。でもそれと同じ位、この星になぜか生まれてしまった人間という動物が、きっとやむにやまれず紡ぎ上げてしまった物語に追従することも、この世界を知る有効な術であると思う。世界文学をリミックスする。しかも独りで。そういう試みがこの星でどれだけ試みられているのか知らないが、…  全文読む 評価する

神曲 神曲
kc1027/地獄の棲家は我にあり
神曲、地獄篇。政変によって都を追われ、流浪の身となったダンテは、その生きる力の矛先を文学に傾けた。その高圧電流のような幻視力は、700年の時を越えて現代に生きる我々を魅了、いや感電させ続ける。とりわけ、この地獄篇は。人が抱く思いは、これほどまでに深く、濃く、黒くて重層的な世界を現出させ得る。人が人の世にあって地獄を描くのは、人の心の中にこそ地獄があるからで、そこに現れる描写の緻密さ細密さは、人の心に降り積もる悪なるものの存在がそれだけ強烈で、粘着質であるがゆえ。そんな地獄を、人々は洋の東西を超え、宗教宗派を超えて読み継いできた。イスラムにとっては悪魔の書であるにもかかわらず、それでも読み継がれ…  全文読む 評価する

地下鉄は誰のものか 地下鉄は誰のものか
kc1027/大人の事情を乗り越えろ!
東京メトロと都営地下鉄の一元化を目指す猪瀬氏の闘争の書。石原知事の再選が確定し、震災によって日常感が終焉した現在の日本・東京にとっての、克服すべき大きな課題である地下鉄の現在。都営大江戸線の開通と東京メトロ副都心線の開通によって東京の地下鉄の開発は終わった。人口減少時代に向かう大都市にとって、顧客である住民の利便性を阻害する要因は、都市間同士の国際的競争の妨げとなり、後世にいらぬ負担を残すこととなる。すでにして優良企業で財務体質も従業員の平均給与も高い東京メトロには、不動産開発を優先して来るべき社会に向けたバリアフリー対応が不十分な面があるとして、猪瀬氏は憤る。世界の大都市で、地下鉄の経営が一…  全文読む 評価する

自治 自治
kc1027/自治は本能にあり
「人間には自治の本能がある。」本書に収められた後藤新平の『自治生活の新精神』の最初の一文だ。自己の生命を守ろうとする全ての生物には、共通する生存本能とも言うべきものから発する「自治意識」があると、伯は考えた。自身のキャリアを医師から出発し、生物学的原理から個を育み、地域を組織し、国家に奉仕することを主張した著書『国家衛生原理』の発表によって世に出た伯にとって、自治とは生活の根本であり、活力の源泉であった。自己を治めずして、人の役に立つことは有り得ない。伯の残した言葉、「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするように、そして報いを求めぬよう」という自治三訣は百年の時を越えて震災後の現代のわたした…  全文読む 評価する

二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか? 二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?
kc1027/生きることを見定める
現実を直視するのは、簡単ではない。ましてやその現実を自分のものと受け止めていち早く前へ進みだすことは、誰にでも出来るものでもない。目を覆いたくなるような現実を前にして、途方に暮れる時間も必要かもしれない。震災から10日間経過した今、わたしたちが直視すべき現実とはなにか。本書の主人公・二宮金次郎は、本を読みながら薪を背負う銅像で広く知られるが、勉学の傍らその薪を換金商品として少ない元手をつくり、更にそれを低利で融資することで身を立てた。単に商売をしてものを売りまくっただけでなく、得た収入を広く世間で活かす方法を深彫りして考え、複利の効果を最大限利用した。生活できる限度を見定めて、融資する民に返済…  全文読む 評価する

九夏前夜 九夏前夜
kc1027/さまよい、ちまよい、みちにまよい。
むしろ書評などできぬ。その美しき装丁に見蕩れ、見蕩れるままに読み読み進め、読み続けて読み継ぐまでだ。わたしはこの書物に我が人生の幾時間かを溶かし込みたいと思った。「過去と未来を塞ぎとめて、少しのあいだ花の純白とその奥の赤に見蕩れた。つまらない、つまらないことなのだ、こうして花に見蕩れるなどといったことすら、われわれには出来なくなっている。何という時代なのだろう、花のことを話題にすることも、ほとんど犯罪にひとしいとは。花がこれほど多くの詩句をふくみ包んで居るからといって。」  全文読む 評価する

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