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ロードムービー
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空蝉/まだ歩いていける、たとえ道が崩れても。
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子供は大人の思っているほど子供ではない。そんな言葉は今やありふれているし、もちろんそれは一理ある。いや、大いにあることだと思う。ただ子供を一人の人間として扱うべきだとか、人権・人格の尊重だとか、そういう見方を「してあげられる理解のある大人」とやらがやたら増えていく中で、当の子供はそれについていっているだろうか?と読了後にしみじみ感じてしまった。子供はいつだって背伸びをしたがる。大人の期待に応え、周りに褒められることに必死になる、自分の弱みを見せずに窮屈そうに平気を装う子供たち・・・彼らは本当に大人が思うほど「子供ではない」のだろうか。きっと彼らは大人が思うほど子供ではないけれど、自分で思うほど…
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Piece
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空蝉/知りたいという人間の欲求は他人との壁をも崩す。
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前作「砂時計」で大ヒットを飛ばし私を始め多くの女性ファンを号泣のうちに惹き付けた著者、芦原妃名子の現行作。といってもすでに7巻まででているのだから読むのはおろか今更書評もないだろうと思われそうだ・・・しかしあれだけの感動と涙を余儀なくした作品「砂時計」のあとにどれだけの物が書けるのか。しかも今度はミステリチックだという。前ほどの感動は望めない。いや逆に前以上に重い作品だったらしんどくて読むのに心が痛すぎる…そう思ってついつい遠巻きにしてきたのだ。が、とうとう手を出してしまった。そしてまんまとのめり込んでしまった。今回の主人公は大学生、水帆(19)。友人とも家族とも他人と一線を引き、距離を置いた…
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「上から目線」の構造
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空蝉/この一年を始めるにあたり「頑張りたまえ」は上から目線か?
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名著『菊と刀』以来、日本人の文化は恥の文化であると自他ともに称されてきたが、最近は恥を忘れた日本人、日本人らしさの崩壊、などの声が高い。同時によく耳にするのが草食男子、父親(世代)の権威の失墜、コミュニケーション不足、そしてゆとり教育世代の若者は・・・という苦笑いではすまない葛藤を抱えた中年の苦悩である。一昔前は影で年長者(上司)の愚痴を言ってた若者(新入社員)が、今や堂々と「そうやって上から目線で物をいうの、やめてくれませんか?」と言い返し、自分は悪くないと本気で思い込んでいる。いわれた上司は事実「上」であるにもかかわらず自分が間違っていたのではと引け目を感じ、それ以上何も言えなくなってしま…
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最初の哲学者
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空蝉/一年の〆。真実と事実をもう一度見つめ直す一つの機会に。
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古代ギリシアには数多くの悲劇と哀れなヒーロー、はかないヒロインが登場し、読むもの観るものを楽しませてくれる。復習、運命、犠牲、失恋、裏切り、転落・・・どれもこれも起承転結のはっきりした物語であり、一人称の「微妙な」心が吐露されることが無い分、非常に簡潔で分かりやすい印象を受ける。それはこれらの物語が伝説、神話、昔話といった「伝聞」であり、歴史の父ヘロドトスにより抽出され書き留められた、昔の物語=歴史の断片 であるからにほかならない。ではもしこのギリシア神話が一人称で、タイムリーな口調に描かれたらどう感じるのだろう?受け身的に悲劇を受容するヒロインたちが、実は黒幕その人だったら?儚くも愛らしい蝶…
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鬼灯の冷徹
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空蝉/ひさびさの大ヒット&マイブーム!年内に出会えてよかった(笑)
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半年に一度の「地獄の釜開き」まであと1ヶ月ちょい。( 1月16日と7月16日は地獄の釜の蓋が開いて閻魔大王様も鬼たちもお休みになるという)閻魔大王第一補佐官の鬼灯(ほおずき)もやっと骨休みが出来るんだね~とおもわずにんまりしてしまう・・・そのくらい地獄は年がら年中大忙しで、出来ない上司(閻魔大王)をもつ出来る部下(鬼灯)はあっちにこっちに引っ張りだこ。苦労が絶えない彼の日常をコミカルに、ブラックユーモアたっぷりに描いた作品がモーニング(この場合morningじゃなくてmourning=喪服(笑))掲載の「鬼の冷徹」だ。そう、これは現世でいうサラリーマン&会社の苦労をそのまま地獄という大きな組織…
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ダブル・ファンタジー
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空蝉/男と女と彼と私と、何をどう感じるかは一人一人のファンタジー
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最初から最後まで性描写が割と多くあくまで現実の、現代小説だったのでずっと表題の「ファンタジー」、つまりファンタジー=幻想という言葉に違和感があったが、終盤になってようやく分かった。主人公ナツの言う通り、同じ時と場を過ごし互いに心も体も究極的に求め合ったとしても、男と女は、いや、あらゆる人と人とは相手に違う幻想を抱いているのだということだ。恋愛はファンタジー(幻想)。相手に「こうしてほしいああしてほしい」という願望を抱き、「こう思われたいこうありたい」という自分の理想を描き、同じように感じていると信じこんでいる愛おしくも愚かしい時間。二人で描いているはずのファンタジーに実は一人で溺れていることに…
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雪が降る
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空蝉/今のおれが家に帰るには、その方法以外ない。それしかない。 この言葉だけでもう何もいらない。
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若いなりに悩みながらも自分のことで手一杯、好き勝手生きて来た青春の10代。社会や世界というシステムに組み込まれながら世間体に折り合いを付けるすべを身につけた20代。そして私は今、30代。年輩方からはまだまだ若造と言われそうだが、それでもそれなりに人生とか自分の現実的な立場や将来を考えるようになった。そしてこの作品を読み、人生は諦めと後悔の積み重ねなんじゃないか、などと思い始めている。大人になり社会にでて生きていくということ、それは多少なりとも自分を殺し集団に埋もれ、社会に服従することを意味する。それは人間的、人道的にはにマイナスとされる面ではあるけれど、人は弱い生き物だからそんな緩く優しく濁っ…
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ビブリア古書堂の事件手帖
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空蝉/メガネッ娘&古書マニア&ミステリの殿堂!?
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小説でいえば大崎梢『配達あかずきん』と漫画でいえば芳崎せいむ『金魚屋古書店』、更にいえばことに男性読者を喜ばせるであろう薄幸の美少女、しかも眼鏡ッ子がヒロインというありそうでおそらく存在し得ない良いとこ取りの設定である。とはいえ主人公はあくまでも就活中の大学卒青年、五浦君。幼い頃に本をこよなく愛した祖母の本を勝手に触れた際、手酷くしかられたことがトラウマとなり本を読みたくても読むことの出来ない体質である五浦だったが、その祖母の遺品である夏目漱石全集を鎌倉の片隅にある「ビブリア古書堂」に査定依頼したことから入院中の店主・栞子との交流が始まる。彼女は酷い人見知りで接客も話すこともままならないが本の…
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神話の力
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空蝉/社会という神話。もう一度見つめ直すべき神話。
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本書をギリシアやローマ神話、日本の神話の解説&紹介本と思って手にした方はまるきりお門違いの本に出会ってしまった残念さよりも遥かにおおきい感動と発見と体験をするに違いない。神話の持つ力、というより神話が存在し続ける意味を私たちの多くは知らない。いったい世の中にどれだけ今の自分に満足している人間がいるだろう?己に与えられたフィールドを出来る限り隅々まで駆け巡り、意思の赴くままに走り続ける。そんな素晴らしい人生をいきている人間がどれほどいることだろう??仕事に恋愛。結婚にご近所付き合い。あらゆることに制約と遠慮と我慢を重ね、当たり障りの無い範疇で消化不良の日々をおくっている殆ど多くの現代人に向けて、…
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きみのカケラ 9 完結記念イラスト集付
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空蝉/誰にも望まれない王女と少年の希望の物語
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世紀末を舞台にした物語は多いが、その殆どは「明るい未来」ではない。人間による環境破壊や愚かな戦争(主に核の使用)による人類の壊滅的惨状が描かれた世界がほとんどで、地上で生きることが出来なくなった人間が地下や残された僻地で細々と争いながら暮らしている、というものがおきまりだ。本作もその一つ。科学的文明が過去の遺物となり太陽が伝説と化した雪に埋もれた国。「外の世界」から壁に分断され光の無い極寒の地で、国民は夢も希望も未来も期待せず貧しい暮らしをし、戦族は反乱を起こし、政族は王族から権力を奪い…乱世となった国。その国の王女で笑うことが出来ない欠けた存在「ヒトガタ」、イコロが本書のヒロインである。彼女…
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水底フェスタ
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空蝉/これは著者の方向転換か?新境地か?はたまた?
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ネットでも書評でも言われている通り、辻村作品らしくない…もしくはこれを新境地とも言うのだろうか。とにかく今までの、ラストに「救い」のある物語とは違ったテイストである。田舎育ちにありがちな「こんな処に染まりたくない」という反発。都会からやってきた「よそ者」への憧れと劣等感。同年代への冷めた目と、女性への性的興味と恋愛。つまりは自分は違うのだという優越感と選民意識が溜まり溜まっている最後のスパンが、きっと青春期であったり思春期であったりするのだろう。それを一度過ぎてしまえばどっちつかずであった彼(女)らは外に出るなりうちに留まるなりして自分の生きる道をひたすら歩いていくことになる。そうして「大人た…
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僕の背中と、あなたの吐息と
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空蝉/あなたの吐息と、私の居場所と。
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沢木まひろという作家の作品には、いつも「家族」が大きな影を落としている。いや土台を築いているというべきかもしれない。家族、それは家庭でも実家でもなく、帰る場所であり自分の場所。「行ってきます」と言い、「お帰りなさい」と返され、自分が何者であるかと確立させてくれる場所。私に名前をくれる場所である。あくまで私の印象だが、男性の多くは生まれ育った家族からの自立と新しい自分の世界の構築に一線をおく。逆に女性はいつまでも自分の家族を土台に守り続ける節がある。例えば父親は「男」の基準や象徴になり、母親は永遠に共感を求めてしまう唯一無二の存在であるように。(もちろん全部が全部そうとはいわない)そう考えると沢…
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ジョーカー・ゲーム
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空蝉/何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。
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話題になっていただけのことはある、否、それ以上の面白いさに驚いている。スパイもの、戦争当時のものなんて男や歴史物が好きがたのしめるだけのものだと思っていたが読まずにいた自分が口惜しいほど 面白いのだ。そしてあっという間に読了してしまった。あらすじはいってしまえば簡単なもの。自身「魔王」と呼ばれる超人的な逸話を持つスパイであった結城中佐が、陸軍内に諜報員(すなわちスパイ)養成学校を設立した。戦時中の日本にあって、現人神として神格化された天皇とその流れを組む形で徹底された軍隊組織の信条を恐れもせず完全否定。世の中から、陸海軍から、過去から、出自氏名から、あらゆる「常識」から完全に隔離された校舎には…
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竜が最後に帰る場所
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空蝉/物語ごとに積み重ねられていく異世界の刷り込み。
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ファンタジーや異世界ものの作品は数多いが、描かれたその世界がリアルに「私のこの世界」にあると無意識のうちに思わせてしまう、その中に読者がどっぷりはまってしまうほどの作品は、少ない。ヒーローが活躍する素敵な世界、魔法の飛び交う魅力的な世界、未来に叶うかもしれないSF、昔々のお伽噺にロマン溢れる伝説、神話etc… そうした物語は憧れや畏怖の目、願望の対象になり多くの読者に夢や希望を与えるのだろうけれど、私はは「ありえない世界」「体験出来ない話」だからこそ、安心してドキドキワクワクしている。では、あり得るかもしれない異世界が舞台だったらどうだろう?もしかしたら自分の身に降り掛かるかもしれない物語が描…
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失われた町
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空蝉/待つということ。 それは消極的でもなく受け身でもなく、誰よりも強くその場に立ち見守り続ける強い意志。
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「町」とは何だろうか?前作「となり町戦争」では隣り合う町同士が、ある日突然「戦争」をはじめ、ただ静かに不気味に戦争が続いていくという不思議な物語だったが、町そのものの存在はあまり描かれていなかった。それに比べて今回の町はまるで意識を持った大きな生命体のように、意図的に人間をとらえ、自身(町)の消滅に町民たちを巻き込み、外部からの侵入を拒む恐ろしい存在である。いや、そうした「消滅した町」へと静かに、徐々に、人々の無意識のうちに移行していくと言った方が良いだろう。「消滅」という名の通り、その時その町にいた人々は消え去り、街全体が廃墟と化し、そこに踏み入る物は「汚染」されて身体的精神的に様々なダメー…
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マイ・ブルー・ヘブン
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空蝉/東京バンドワゴン。なんて優しくノスタルジックで心和む響き
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東京バンドワゴン。なんて優しくノスタルジックで心和む響きなんだろう。少々訳ありで実は裏の大物とも業界にも顔の効くオオモノ主人が構えた古本屋「東京バンドワゴン」。ここで起こる珍騒動や怪事件、人情あり笑いあり涙ありの4世代同居!ホームドラマが読者を喜怒哀楽させた本編が終わってしばらく立つ。こうして番外編というかたちで彼らの若き日に再会出来たこと、そして本編では語られなかった堀田家の秘密が明かされいっそう魅力的になったのは本当に喜ばしい。ただ今回はちょっと趣が違う。なにせいつもは優しく丁寧に空からツッコミをいれてくれる語り手、曾祖母サチさんの若き日、彼女が堀田家の一員になるいきさつが今回のおはなしな…
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ミミズクと夜の王
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空蝉/愛の意味も涙の意味も知らずに使っている人間が多すぎる世の中だからこそ
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思いが溢れて溢れてどうしようもないときが在る。嬉しい時、悲しい時、幸せな時、苦しい時、切なさ、喜び、喜怒哀楽・・・。数えきれないくらい様々な感情が私たち人の中にはごちゃごちゃに混在していて、その思いがあふれた時、笑ったり涙したりするのだろう。でも。そんな心を無くしてしまった…心を知らない、涙の意味も笑うことも知らない者がいるとしたら、それはどんなに哀しいことだろうか?いや、それが哀しいことだとも、己の寂しさをも知らずに独りで生きる彼らと、己がどれほど哀しい存在であったかを知り、思い知らされた上で生きていくのと、どちらが幸せなのだろう?その答えがここにはっきりと、いっそこそばゆいくらいに堂々と描…
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夏の葬列
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空蝉/背筋が凍るほどの恐怖に因果応報を知る
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忘れられない一冊というものがあるように、人生においても忘れられない人、忘れられない思い出、忘れられない「罪」というものがある。あなたにとっての忘れられない時は?と聞かれて、一昔前、ましてや夏のこの時期に問われれば大半の人が戦争と答えたのではないだろうか。「戦争を知らないこともたち」がほぼ大半となった現在では、半年前の関東東北や阪神淡路大震災がそれにあたるよう移行しているのかもしれない。生き死にを左右する異常な世界の非常時に、人は基本的には本能的に己の命を守ることを第一優先にするだろう。肉親や愛する人でもない限り、目の前の他人よりも自分の命、共に助かるかもしれない可能性よりも自分ひとり確実に生き…
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東京奇譚集
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空蝉/ロマンチスト村上氏の願うこと
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今をときめく村上春樹の作品について語るとき、「これぞ」とか「さすが」とか「村上流」などの形容詞を頭に付ける人が多いけれど、悲しいかな割と最近の、2、3作品しか読んだことのない私にはそれが出来ない。しかしながら彼の作品の多くが、ほんの少しのファンタジー(不思議)と それに反して現実に根を下ろした冷静な視点、そしてなにより人と人との関係性、かかわり合いがドラマチックに描かれているのが分かる。きっと著者村上氏は人間を信じていて、人間が好きで、諦めきれない。と同時に文章の力も同じように信じていて、好きで、小説家としても文章そのもの、ペンの力というものを諦めない、ロマンチストでもあるはずだ。本作は5作の…
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世界史をつくった海賊
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空蝉/今日なをも続く海賊事件。歴史は繰り返す、しかし進化している。
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歴史のターニングポイントには必ず中心となる人物が存在し、勝てば官軍。「勝利側」であった彼らは後世に結果として誉れ高い名を残すものだが、現在の日本でエンターテイメントを賑わしているヒーローは誰か?映画館では興行成績ダントツ1位に「パイレーツオブカビリアン」が登場している。著者が本文でもその人気を語っている以上、本書執筆中から出版後までその人気が続いていることが伺われよう。ハリウッドに興味が無い人でも国民的?大人気漫画「ONE PIECE」は誰もが知っているだろう。海賊=大冒険=宝探=下層出の主人公たちが一躍成長し成功する物語。そんな夢物語的イメージが西洋の海賊には付されており、日本の山賊や倭冦の…
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ドストエフスキイと日本文化
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空蝉/大学時代の恩師に再度、ドストエフスキーをこう
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偶然では有るが、先日観たドラマ「おみやさん」の中に「罪と罰」が重要な意味を持って登場した。横暴な経営者であった資産家佐久間が刺殺され、彼の虚偽の善人面に救われ信じきって世話をし続けてきた家政婦は真実を知り同情と憐れみ、憎しみを抱く。余命少ない彼のため娘を語って出した励ましの手紙が彼を改心させ、過去の「罪」を清算しようとしたがために「罰」…殺害されたというのが事件に隠された真相である。(なお、ドラマの中では佐久間が「罪と罰」を愛読しており、家政婦に(この本は殺人犯が)人間性を取り戻すまでの物語である、と説明している)やや前置きが長くなったが、つまりこのように現代のドラマにすら罪と罰は時に小道具と…
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お楽しみはこれからだ!
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空蝉/本格ミステリーとはかくありたい
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前作、『アルレッキーノの棺』ですっかり魅了されてしまった私。本来BL作家として評価すべきであろう真瀬氏だが、私にとって彼女の作品はいつも「本格推理小説」なるものの基本というか、源流というか・・・そういう雰囲気を存分に味あわせてくれる、貴重な作品なのである。時代もの、金持ち、大物、刑事、イイ男、頭の冴える一般市民の主人公・・・自殺とも取れる謎の死と入り組んだ人間関係、隠蔽された過去・・・こうしてみると、いわゆるB級ミステリーとなんらパーツが変わらないような気もするが、どうしてどうして、崇高なる本格小説、といいたくなるくらいほんとうに、真面目に面白いのだ。前作中の登場人物(12人の道化)もチラっと…
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アルレッキーノの柩
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空蝉/えのさんバリの探偵が後半から登場!なのにこの存在感!(笑)
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時代は19世紀、ロンドン。主人(鷲見新平)の留守を預かる藤十郎は金欠で無宿に。ひょんなことから「12人の道化クラブ」の12人目にされ、探偵まがいの仕事を引き受ける羽目に。解決すべき怪事件には魔女、道化、奇妙な風習、迷信、伝説、殺人・・・様々なモノが絡まっていた。犯人は?魔女は?狙いは何か?道化クラブに第2第3の殺人が起こり、魔の手は忍び寄る。 とまあ、こんな感じで。本筋は現在の主人公と道化クラブのやり取り、事件、展開、解決・・・という、言ってみれば探偵モノミステリーだ。だが、キーになってくる、ところどころに現れる少女が読者の目を引きつけ、謎をより情緒的に、美しく、切ない物語へと転換してくれる…
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本日は大安なり
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空蝉/結婚式も吉日も、全ては私自身の手のなかに
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辻村氏の作品の多くはいつも私を苦しめ、焦らせ、最後に救ってくれる。隠していた心の奥底や人知れずあたためていた思いを、登場人物でもってさらけ出してしまうからだ。ただ、今回の作品は平行するいくつもの結婚式とカップルをテーマにしたもの、つまり群像劇だからだろうか。そうした重さは感じられないがその分すっきりとさくさくと楽しめた。今回の主人公たちは2~30代の結婚式を目前に控えた男女、そして挙式当日を絵が来た物語。これは本当に偶然なのだけれど、本書を読んだとき、私も結婚式を直前に控えていた。いつものように感情移入せず、小説という形で割り切って面白く読めたのは、結婚式という「ハレの日」で、しかも描かれる3…
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放課後はミステリーとともに
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空蝉/世間が絶賛する小説?まだまだ狭くて広い評価基準
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電車の吊り革、雑誌の読者評、「TVで紹介」「各誌絶賛」などという世間の言葉に惑わされて東川氏の作品に興味を惹かれたのがことの始まり。そしてどうせなら最新刊を読もう、と思って手に取ったのが本誌である。世界中ブーム(「世界の中心で愛をさけぶ」ブーム)の時も思ったことなのだが、世間一般の、文学に対する評価基準はまだまだ低いと痛感した。もちろんこれだけ「絶賛」されている作品なのだ。万人受けする、軽い読み物で、短時間で面白くその場を気楽に楽しめるという意味ではエンタメ作品として優秀なのだろう。というのも内容が、本当に善くも悪くも軽いのだ。主人公はそしてエアコンのような名前を持ち自らを「ぼく」と呼ぶ、少々…
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小説を書く猫
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空蝉/猫のように気ままに生きる作家を案じつつ
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最近、お気に入りの小説家のエッセイ集を読む機会が多い。小説家のタイプには大きく分けて二通りあるとエッセイを読んでいると思う。一つ目のタイプは読者のために書いているタイプ。読者にこう思われたい、こう感じてほしいという願望のもと作り出すものだ。(K.I.氏の先日出されたエッセイはまさにこんな感じである)もう一つのタイプは作家自身を登場人物に反映させて思いを昇華させるタイプ。いわゆる私小説的なタイプで、実は今回私が読んだ中山可穂『小説を書く猫』はまさにそれを地で這うような作家である。中山氏は自身がレズビアンであるということを公言しているが、それがどれほどの血肉を裂くほど狂おしい痛みと喜びとを伴うもの…
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銀の兜の夜
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空蝉/誰でも一度は陶酔する「自分が何か特別な存在である」ということに、いつ打ち勝つのか?
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己の中のもうひとつの自分との葛藤。そういってしまえばそれまでかもしれない。一応ミステリー仕立てになってはいるが、これを読んでいて真犯人が主人公のほかにいるとか、トッペルゲンガーの仕業だとか、河童がやったのだとか考える読者はまずいないだろう。野暮である。主人公は山奥鄙びた田舎にうもれながら、常に「自由」を求めてやまない少年だ。ある日海から引き上げた「銀の兜」。その日を境に、父が死に、母が死に、住職が死に、「私」は自分の分身と河童とを見るようになる。怪奇とも幻想ともいえるストーリーであるが、彼を取り巻く存在すなわち野心にみちた兄、抵抗を不可能とする権力の権現である米軍基地、見捨てられたようにただ存…
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お台場アイランドベイビー
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空蝉/まだまだ書き足りていない。でも面白い。
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幸いなことに生まれてこのかた、一度も大きい災害被害というものに遭遇したことがなかった私にとって、火災や倒壊、浸水が次々と起こる中、交通手段も食料も情報すらも確保出来ない「無法地帯」を少なからず経験したことになる。平穏無事で物余りの消費社会に慣れきった戦後生まれの日本人は、どれほど他国の荒廃や廃墟、崩壊という状況を情報では知り得ても、実際にその当事者にならない限りその恐怖も実情も知ることは出来ない。「国」の崩壊は法も規制も国家そのものも失ってしまう。国家が失われるということは、国籍もアイデンティティも、自分が何者かも失うということだ。本書は現在抱える経済&政治的諸問題の脆弱さが露見し完全に廃墟と…
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伏
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空蝉/読み物として楽しむもよし、桜庭氏の異色作として読むもよし。
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八犬伝といえば名前を知らない人は少ないだろう。幾度都無くマンガに小説にパロディーにとリメイクされているので様々なイメージがもたれているかもしれないが、今回の「八犬伝」ほど真作をかけ離れた作品もまた、無いのではなかろうか。オリジナル八犬伝では、互いの存在すら知らずバラバラだった8人の剣士(犬士)が不思議な縁を経て終結し、国を揺るがす妖怪の陰謀を打ち破る勧善懲悪のヒーローものである。そもそも彼らは伏という姫が敵将の首を取って来た犬=八房に(!)褒美として差し出され、まあ、簡単に言えばその犬と姫との間に出来た子供のようなものである。犬士たちは儒教の徳を示す1文字が刻まれた玉を各々持って産まれ、牡丹の…
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ぼくが愛したゴウスト
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空蝉/書棚の一番いい場所に、思い出とともに置きたい一冊
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実はこれ、伊坂幸太郎があちこちでやたら薦めてるものだから読んでみるか、と読み始めた作品である。伊坂氏は本書の解説をしていて、「不思議で、素晴らしい終わり方だなと僕は感じた。~そして、書棚の一番いい場所に置きたいなと思った。~この本を読む人の中に、同じような気分になる人がいるかどうかは分からない。ただきっといるはずだ、いてくれればいいな、と思う。」と書いている。そして私は見事にその「同じような気分になる人」になってしまった。主人公の翔太はいわゆる草食系で臆病な、しかし自分の幼稚さと非力さを自覚している平凡な11歳の少年である。翔太は電車の人身事故に巻き込まれて以来、イオウのような臭いと不自然な笑…
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