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遠まわりする雛 遠まわりする雛
シノスケ/古典部シリーズ第四弾
相変わらず省エネ主義のホータローが、古典部の面々に振り回される話。しかし、面倒ごとに巻き込まれるのを良しとしないホータロー。たとえ巻き込まれても、やらなければならないことなら簡潔に、すばやく、問題を解決しようとする。前作までの古典部シリーズと比較するとホータローが謎を解くというよりも、彼自身の心情を中心に、事件の背景を推察するといった雰囲気が強い。特に基本的にホータローの一人称であり、彼自身が感じたことをそのまま吐露しているようにも思える。しかし、他人の感情はホータローの推察でしかなく、一見無気力とも取れる省エネ主義は、自身の感情をも疑わしく思わせる。そして、本作品は、省エネ主義を自称するホー…  全文読む 評価する

冥王星パーティ 冥王星パーティ
シノスケ/自分と他者の相互理解というファンタジー
『ラス・マンチャス通信』『忘れないと誓ったぼくがいた』では、過ぎ去ったことに対する諦めともとれるすがすがしさがあった。それは決して悔恨と苦渋ばかりの過去ではなく、諦めたことによる自らの肯定に他ならない。『冥王星パーティ』では、姿も中身も変わってしまった人物との意外な邂逅ではじまる。原則として過ぎ去ってしまった過去をやり直すことはできない。自らの感情はともかく、物理的には不可能である。好意を抱いていたにもかかわらず、ちょっとしたすれ違いから自分たちの距離を再確認することで、そのまま二人の軌道上は遥か遠くへと遠ざかってしまう。別段珍しいことではないし、そもそも人間関係において人と人との間には絶対的…  全文読む 評価する

ハローサマー,グッドバイ ハローサマー,グッドバイ
シノスケ/夏の終わり
少年は憂いていた。官僚階級にあり権力者でもある父親は傲慢、母親は良母であろうとしつつも対面ばかり気にしている。両親と自分との間には計り知れない溝があり、すれ違いばかり。そして、少年が海辺の町で出会い恋に落ちた相手は、良心のおめがねにかなうとも思えない宿屋兼酒場の一人娘だった。ふたたびその街を訪れることとなり、前回出会ったころの約束を胸に秘めていた少年は、家族との不仲を差し置いてもやはり喜ばずにはいられない。いっぽう、世間は戦争中。田舎町や少年の身の回りにそれらしい兆候は見当たらないのだが、海の向こうの国との戦争は確実に世間を蝕んでいた。わかるとすれば、普段の生活を配給品に頼るということ程度だ。…  全文読む 評価する

砂漠の惑星 砂漠の惑星
シノスケ/知の砂漠、思索の惑星
レムによる未知の知生体との接触を書いた3部作の最後の作品。執筆順序は『エデン』 、『ソラリス』そして本書となる。6年前に消息を絶ってしまったコンドル号捜索のため、無敵号が砂漠の惑星へと向かうところから始まる。序盤の惑星探査場面から、調査隊がが隊長の判断により慎重な行動をとるため、「未知の危険」への緊張感はいやでも高まるというもの。それでなくても『ソラリス』のあの圧倒的迫力を思い起こせば、こちらではいったいどんな存在をレムが考え出したのか。さて、いつまでも惑星の軌道上からの調査というわけにも行かず、現地調査となるわけだが、ロハンはじめとする調査隊の面々が見つけたのは奇怪な建造物のようなものと、真…  全文読む 評価する

ラギッド・ガール ラギッド・ガール
シノスケ/今年の傑作SF
前作『グラン・ヴァカンス』は、物語の一部に過ぎないがそれでも太陽が照らす白い砂浜には、美しく残酷な物語が否応なしに伝わってきた。本作では、AIたちの住む<数値海岸>と現実世界を二分するに至った大途絶そのものと、そこにいたるまでの現実の物語を痛々しくも丁寧に描写している。作中人物ではないが、世界とは当然残酷なものであると言い切った博士がいる。この世界では現実も、そして<数値海岸>もやはり残酷である。大途絶以降、<数値海岸>からは人間世界の様子はわからなかった。そして、本書では二つの異なる世界を結びつけ、さらには経緯を明らかにしているが、そこから掘り起こされるのは痛みだ。仮想空間の中に見出されたA…  全文読む 評価する

メルニボネの皇子 メルニボネの皇子
シノスケ/英雄に求められているものは
ヒーローや英雄と呼ばれる人々にも、当然ながらさまざまなかたちがある。十鬼島ゲンは自らの英雄性を否定することで銀河の人々を先導した。ベルガリオンは愛する妻のことを考え世界を救った。エルリックは次元を超越する魔剣ストームブリンガーと出会い、そして探求のために故郷メルニボネを旅立つ。それは自らの良心に基づく旅路だ。そして、先々で待ち受ける困難が彼の人間性を浮き彫りにしていく。 エルリックは苦悩し、自らの力に酔いしれもするし、義憤にかられ剣を取ることもある。そんなエルリックは、実は一般人と変わらない部分が多いようにも見えるのだが、それでも彼は奇形だ。それは彼が白子ということでもないし、半神に近いメルニ…  全文読む 評価する

アークエンジェル・プロトコル アークエンジェル・プロトコル
シノスケ/SFなのにアメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作
大戦後、メデューサ爆弾により荒廃したニューヨーク。ディードリ・マクマナスは警察を辞め、リンクからも切り離され、苦痛とともに日々をすごしていた。世間ではリンクに忽然と現れた天使の話題で騒然としているというのに! さて、警察を辞め、リンクとの接続を回復できる見込みのないディードリ。彼女の元にきた依頼人は、こともあろうか世界の人々の大半が信じるリンク天使を偽造だといい、さらには絶対不可能であろうリンクとの回復を報酬として提示してきた。荒廃した世界と、張り巡らされた電脳世界を舞台に女探偵が謎を追いかける……。 電脳、荒廃した世界、リンク等々、サイバーパンクの下地たっぷりに、ハードボイルドが語られる。語…  全文読む 評価する

天涯の砦 天涯の砦
シノスケ/宇宙空間、エアロックの向こうには何もない。
軌道複合体“望天”。地球と月をつなぐ宇宙ステーションで起こった壊滅的な事故は、月往還船“わかたけ”と欠けたピザのような残骸を宇宙へと放り出した。真空を漂流する物体は、かろうじて部分的な気密を保っていた。生き残った数人の生存者たちは空気ダクトを通じて連絡を取るが、刻一刻と迫るタイムリミット。望天に残された者たちの行く末やいかに。 言うまでもなく、人間が裸で宇宙に放り出されたら死ぬ。何秒か程度なら生きていられるかもしれないけれど、そのままなら間違いなくそれほどの時を置かずして死ぬことになるだろう。どんなに絶望的な状況でも、精一杯の努力を。前進を。それは原因不明の大震災が相手でも、戦争の負傷者に対す…  全文読む 評価する

マジック・キングダムで落ちぶれて マジック・キングダムで落ちぶれて
シノスケ/死ななくても生きなければならない現状には変わりないから、さて何をしようか。
未来の地球では既に不老不死の技術は現実のものになっていた。加えて死亡率はゼロ、出産率はゼロ以外という状況で、人間は狭苦しい環境に押し込められていた。ジュールズは既に1世紀以上の歳月を生きていた。今はフロリダのディズニーワールドでガールフレンドとともに働く身だ。それなりに幸福な人生の一部分を過ごしていたが、ホーンテッド・マンションのスタッフとして働くうち、ワールドの支配権を巡る思いもよらない事件に巻き込まれ……。 さて、不死になり文字通り死ぬまでの時間があり待っている状態では、それなりの手間隙をかければたいていのことはできるようになるし、何をしてもいつかは飽きがくるものだ。交響曲を書いても、宇宙…  全文読む 評価する

さよならを告げた夜 さよならを告げた夜
シノスケ/探偵のかたち
息子の死の真相を明らかにし、行方不明になった息子の嫁と孫娘を探してほしい。それは孤独な老人からの依頼だった。肝心の息子は自殺と発表されており私立探偵の出る幕などなかったはずだが、老人の依頼を元警官のリンカーン・ペリーは断りきれなかった。相棒のジョーとともに捜査を始めると、暖かい家庭の名残の影にちらつくのは怪しいロシア人。そしてFBIやクリーヴランドの大富豪たちの権力がちらつき始める。次第にペリーの周囲にも単なる失踪者探しだけではなく、不穏な空気が立ち込め始める……。 軽快なリンカーンとジョーのやり取りをアクセントに、物語はひたすらクールに進む。リンカーンの目を通してみる世界は、何の変哲もない現…  全文読む 評価する

ほとんど無害 ほとんど無害
シノスケ/近くて遠い宇宙の中の宇宙のほとんど無害な話
宇宙ヒッチハイクガイドも本作で最後。パニクるな!の名言とともにユーモアとジョークでできた宇宙をこれでもかと見せ付けてくれた。本作の主人公はやはり最後までアーサー・デント。4作目で最愛の女性と結ばれるものの、突拍子もない宇宙の気まぐれで再び放浪者となってしまったアーサーはある惑星でサンドイッチ職人としてそれなりに平和な生活を送っていた。突然現れたのはフォード・プリーフェクト……ではなく、トリリアン。突然現れた彼女はなんとアーサーの娘を連れていたのだ。そのころフォードは、銀河ヒッチハイク・ガイド社の異変に気がつき、秘密を探り出そうとするが……。 虚構で塗り固められたSFコメディの終焉は、なかなかシ…  全文読む 評価する

虐げられしテクラ 虐げられしテクラ
シノスケ/シリーズも第3巻。続きを出してほしーなー
暗殺者ヴラド・タルトシュのシリーズもこれで3作目。毎回命を狙われ、一度など殺されもしたヴラドだが今度狙われているのは自分ばかりか最愛の妻カウティだった。ドラゲイラ族の中でもっとも下層に位置するテクラ族。そのテクラと東方人が手を結んで、帝都に待遇改善の運動と民衆の啓蒙を行っていた。この地下組織に参加していたカウティだが、ある時参加者の一人が殺されると、運動は徐々に暴動へと変化していく……。東方人の末路など興味も無いヴラドだが、妻の身を案じる気持ちに嘘偽りは無い。必然的に殺人と運動の中心へと巻き込まれていく。 ハードボイルドなファンタジーから、シリーズを追うごとにだんだんとヴラドの人間性が明らかに…  全文読む 評価する

イリアム イリアム
シノスケ/シモンズ待望の新作。二部が今から待ち遠しい
『イーリアス』。イリアムの平原で、数多の英雄と神々がこぞって争うトロイア戦争を題材にした叙事詩である。ホッケンベリーはオリュンポス山のふもとに住まうギリシアの神々達の手により、はるかな未来に復活させられていた。神々の怒りに触れぬよう、戦々恐々としながら戦争の記録をとっていたホッケンベリーだが、あるとき、一人の女神から思っても見なかった使命を与えられることとなる。ホッケンベリーはわけもわからぬまま、歴史と神々に翻弄されるのだが……。 地球に住む人類は、仕事、学問、芸術等が全く存在せず、自動機械たち下僕に任せるばかり。ディーマンもそんな人類の一人で、毎日享楽にふけり怠惰な生活を送っていた。そんな…  全文読む 評価する

シンギュラリティ・スカイ シンギュラリティ・スカイ
シノスケ/金の卵を産むガチョウを飼っていると髪の毛が抜けるというSF
ロヒャルツ・ワールドに降り注いだ携帯電話。聞こえてくる不思議な声は「わたしたちを楽しませてくれますか?」。そのフェスティバルの一声で、シンギュラリティ以降19世紀の封建的な社会を営んでいたロヒャルツ・ワールドは瞬時にして崩壊した。物語と引き換えに何でも望むものを与えてくれるのだ。これを侵略行為とみなした新共和国皇帝は、相手の目的どころか情報もまったくわからぬまま艦隊を派遣する。一方、国連から因果律違反を見逃さないため派遣されたエージェント・レイチェルは、地球からやってきた技師を自称するマーティンと接触するが……。 因果チャンネルリンクの超光速通信やら航法やらを真面目にやってみたり、そのほかむや…  全文読む 評価する

勇猛なるジャレグ 勇猛なるジャレグ
シノスケ/冒険だけがファンタジーじゃない
ヴラド・タルトシュ。ドラゲイラたちの暮す帝都アドリランカで、裏の世界の一角を牛耳る東方人である。全身に武器を隠し、妖術と呪術に通じ、ジャレグという竜に似た小さな生物を使い魔にしている暗殺者として名を馳せていた。そんな彼の元、キナ臭い依頼を持ち込んできたのはドラゲイラ族ジャレグ家の有力者デーモン。評議会からその運用資金のほとんどを盗んで逃げたメラーという男を始末して欲しいという。破格の報酬に釣られ、危険と知りつつも依頼を受けるタルトシュだが、この殺しの裏には驚くべき事実が待ち受けていた。 異世界のファンタジーというと、大河的な冒険や血沸き肉踊る様な英雄譚、もしくは世界を巻き込む波乱万丈の物語だっ…  全文読む 評価する

ビヨンド ビヨンド
シノスケ/生きてるうちに火星にいけそうにないので、せめて火星の写真を眺めてみる
太陽系の写真集。太陽から水金地火木土天海まで。特に木星はイオやエウロパもしっかり掲載されている。 探査衛星によりその一端を垣間見ることが可能となった宇宙の神秘。もはや芸術などという言葉では生ぬるい。人間の手の届かない何かがそこにある。人間の目で直接見て撮ることの出来ないその写真は、宇宙ゆえに比べられる尺度も無くただあるものをそのまま写しただけだ。余分なスケールが無いからこそ、改めて人間が自らの大きさを感じることが出来るのではないだろうか。 いわく「僕らは、宇宙に存在することの意味を知る必要がある」 それでも、宇宙の中の人間として思考するのはまだまだ先の話。まずは地球から飛び出すための準備として…  全文読む 評価する

ウィンディ・ストリート ウィンディ・ストリート
シノスケ/探偵V・I、故郷に帰る
探偵V・Iは生まれついた時から探偵だったわけではない。その気質は父と母によって育まれたことに間違いはないが、その故郷はサウス・シカゴ。可能ならば二度と足を踏み入れたくはない故郷だったが、母校バーサ・パーマー高校の女子バスケットコーチ、マクファーレンからある依頼を受ける。恩師の頼みを断るわけにはいかず、しぶしぶながらも故郷に戻り、女子バスケットコーチの代理を務めることになる。相変わらずの貧窮さが伺えるサウスシカゴでは、女子生徒の大半が卒業までに妊娠や出産を経験し、男達は無責任さを発揮しながら薄給の仕事に就く。そして再び同じ境遇の子供を育てるという悪循環。自分の故郷ながら、全く眼も当てられない参上…  全文読む 評価する

ヨコハマ買い出し紀行 ヨコハマ買い出し紀行
シノスケ/12年の歳月がもたらしたものは
コミックスで読み続けている自分は、開始6ページ目で驚いた……。作品の持ち続ける雰囲気は変わらず、ただ内側の時間だけがぴゅっと過ぎてしまった感覚。カフェアルファのドアベルを鳴らして入ってきたマッキにまずびっくり。 この最終巻では、今までの遅かった時の歩みをあざ笑うかごとく、時間が進行する。とはいえ、具体的な時間は明示されない。何か変化があったかと問われればイエス。何が変わったかと聞かれると困る。アルファさんは果たして変わったか? 12年の間に彼女は変化したか? 過ぎ行く時の中で、台風にお店を半壊させられたり、カメラに愛情を示してみたりしたけれども、そういった周囲の環境からもたらされる変化以上に彼…  全文読む 評価する

ダイヤモンド・エイジ ダイヤモンド・エイジ
シノスケ/ナノテクがもたらしたものは。
本の形状をしたインタラクティブ・ソフト<プリマー>はこの世にただ一つのはずだったが、フィンクル=マグロウ卿の意図とは裏腹に技術者ハックワースが不正にコピーし流出してしまった。ハックワースが娘のために与えるはずだったそれは、貧民外で暮らす少女ネルの手に渡り、そこでプリマーと交流を深め、教育を受けたネルはついに家を飛び出すが、そのプリマーがふたたび世に出たことで様々な思惑が絡み合う。ネルと、知らず知らずのうちに彼女の母役となったミランダ、ハックワース、そしてドクターX……。ナノテクは世界の改変をもたらしたが、ナノテクの粋を極めたプリマーは果たしてどんな変化をもたらすのか。 3人の少女に、同じプリマ…  全文読む 評価する

ダイヤモンド・エイジ ダイヤモンド・エイジ
シノスケ/ダイヤを作るモノ、ダイヤに等しきモノ
ナノテクの発達は人類社会に変容をもたらした。国家という集合概念は崩れ去り、人種や宗教、おのおのの主義主張から分分派し細分化されていた。マフィアのピザ屋とタクシー+剣士という突拍子もない仮想世界を組み立てたのは『スノウ・クラッシュ』だったが、やはり国家ではない集合体が幅を利かせ、特にアメリカの扱いは相当ひどかった気がする。本作ではそもそも国というまとまりがなく、同じ都市部の中でも派ごとの明確な境界や、人々の扱いの違いが目立つ。 さて、物語はある部族の有力者フィンクル・マグロウ卿が最愛の孫娘のために、ナノテクの真髄からある書物の作成を依頼することから始まる。初頭読本(プリマー)と呼ばれることになる…  全文読む 評価する

北野勇作どうぶつ図鑑 北野勇作どうぶつ図鑑
シノスケ/かめさんよ
メインは小説ではなくて、付属の折り紙なんじゃないかと思いつつ、対象年齢12歳以上の本書はカメ天国とレプリカメとかめさんとカメたっぷりの短編集。そもそも『かめくん』の作者だし、よっぽどカメとザリガニが好きなんだろうか。かめの外から見た甲羅と、甲羅の中がなんとなく自分の外側と、内側みたいなんだけど、甲羅を装着してみると結局は中も外も自分では見えないというよくわからん事態に。自分のもののはずなのに、自分のものじゃないような、それもまた違うような。甲羅は眼に見えるだけましなのかも。  全文読む 評価する

夏期限定トロピカルパフェ事件 夏期限定トロピカルパフェ事件
シノスケ/夏のスイーツ、それは……
日々を平穏に過ごすため、小市民を目指す高校生、小鳩君と小山内さん。二人は学校では小市民の仮面をかぶり、またそのためにお互いを利用しても良いというなんとも奇妙な関係にあった。学校も平穏無事に夏休みに入り、さて小市民たる自分の夏休みのすごし方はいかに? と妄想する小鳩君であったが、彼の運命は<小山内スイーツセレクション・夏>に翻弄されることになる…… 小市民を目指す小鳩君と小山内さんだが、小市民を目指すということは、自分は小市民以上であるという自覚があるからこそである。小鳩君も小山内さんも自分の嗜好はともかくとして、その能力は互いも自分も認めるところ。さらに、ひっそりとした互恵関係が二人の間のお約…  全文読む 評価する

四畳半神話大系 四畳半神話大系
シノスケ/四畳半に秘められているものは
小説の中というのは大概が異世界なのだが、現実を書いているにもかかわらず、ここまで現実とはかけ離れた雰囲気となっている作品も珍しい。いや、その雰囲気こそがこの作品の核をなしているから素晴らしいというべきか。熱に浮かされたような狂気が蔓延しているわけでも、耽美さがあるわけでも、センチメンタルで郷愁を誘うわけでもない。むしろ、自分がこんな大学時代を送らなくて良かったという優越感を味わいつつ、その実こんな濃い学生時代を思い出にしたかったという僻みが混在したりという二律背反な状態に。 四畳半の中にある四つの神話。深く掘りすぎて黒いものがどろどろと溢れる人物造形、魂というほどのものはなく諦観の極地とも思え…  全文読む 評価する

流れ星が消えないうちに 流れ星が消えないうちに
シノスケ/流れる星のような
恋人との突然の別れから立ち直れず、玄関でしか眠れない奈緒子。夜眠るたびに思い出すのはかつての恋人加地君のことばかり。加地君がいなくなってから付き合っている巧君には悪いと思いつつ、彼よりも先に思い出す。川嶋巧は加地君の親友で、高校時代の文化祭の夜に流れ星がきっかけで親友になった。巧君は加地と奈緒子の恋を、まるで自分のことのように応援して、幸せを感じていた。二人ともういない一人、三人で手をつないで歩いていく道、流れ星のようにピュアな気持ちを綴った小説。 死者の思い出ほど強いものはない。なぜなら、もう死んでいるのだから真実を問おうにも、死ななかったらというifを考えても、それが現実になることはないか…  全文読む 評価する

猫泥棒と木曜日のキッチン 猫泥棒と木曜日のキッチン
シノスケ/猫とマルセイユ式ルーレットとキッチン
母親が家出した。高校2年生のみずきは5歳になる弟のコウちゃんと取り残されたが、母親がいなくても続く日常。木曜日には健一と一緒に食卓を囲み、家事を切り盛りし、猫の死体を庭に埋めて、それなりに幸せな生活を送っていた。母親がいなくても不便はないし、コウちゃんと健一君がいるからさびしくもない。少しいびつだとはわかっているけれど、こんな家族の形があってもいいと思うみずき。足の怪我が原因でサッカーをやめてしまった健一、お母さんがいなくなってからちょとだけ変なそぶりを見せるコウちゃん、猫と猫の死体。子供達の精一杯の物語。 本体ならば持っているはずの当たり前のものがなくなってしまったら、生きていくのはそれだけ…  全文読む 評価する

フィーヴァードリーム フィーヴァードリーム
シノスケ/川面に鳴り響くのは汽笛のみならず
自らの正体をマーシュに打ち明けたジョシュア・ヨーク。彼の一族は、生物の血で渇きを癒し、昼間には出歩けないという吸血鬼の一族だった。ヨークの目的は、一族を血の渇きから解放すること、人間との共存をはかること。フィーヴァードリーム号を作り上げたのは、ミシシッピ河流域に散らばる同胞を集めるためだ。マーシュの理解を得、ヨークの理想はうまくいくかと思いきや、彼の眼前に立ちはだかったのは同じく夜の一族の王たらんとするダモン・ジュリアン。人間を餌、家畜とみなす邪悪の化身がフィーヴァードリーム号に迫る…… 得体の知れない感覚、奇妙な友情が手に取れるほどはっきりと形を作る。ヨークの種族に無知でも、ヨークを信じたい…  全文読む 評価する

フィーヴァードリーム フィーヴァードリーム
シノスケ/血のごとく流れる河とともに
アブナー・マーシュ。赤ら顔に黒髭、ひしゃげた鼻に、あばただらけの顔。河一番の醜男とも評されるが有能な蒸気船の船長でもあった。事故でもち船のほとんどを失うまでは。落ちぶれていた彼に声をかけたのは、ジョシュア・ヨークと名乗る美貌の青年。資金の援助をするからある船を作り、船長となって欲しいという。その代わりヨークの奇行、夜にしか起きださない等々には一切触れないで欲しいと。マーシュは迷った末に契約を取り交わし、河で一番美しく、大きく、速い船、フィーヴァードリーム号を建造した。しかし、ヨークは何者だ? 青白い顔、細い腕、そのくせ目の置くに浮かんでいる正体不明の光……。二人には友情が芽生えるもののヨークの…  全文読む 評価する

タフの方舟 タフの方舟
シノスケ/自称環境エンジニア、ふたたび
猫を愛する宇宙商人タフ。かつての戦争時代の遺産である胚種船を駆り、環境エンジニアとして生計を立てていた。慢性的な人口問題を抱える惑星ス=ウスラムへの再訪、「我が名はモーセ」では宗教家と対立する。闘戯窖で魔獣を戦わせては家名を競い合う惑星では、様々な獣をクローン再生し……。あこぎかかどうかはともかく、タフの超然とした態度にはトリー・ミューんならずとも思わず腹を立ててしまいそうだが、慣れてしまえばどこか滑稽さを誘う言葉遣いとその姿。基本的にはエンターテイメントに終始しているので、そんなタフの態度も気にならず、次々と繰り出されていくタフの環境エンジニアとしての腕前こそが見せ場だろう。クローンの問題、…  全文読む 評価する

タフの方舟 タフの方舟
シノスケ/猫好きにもオススメ
愛猫とともに一人で宇宙船を駆る商人ハヴィランド・タフ。身長は2.5メートルを越え、体毛は一切なく、でっぷりと太った腹を支えるのは真っ白な手足。無表情から繰り出される慇懃無礼な態度は神経を逆なでしてやまない。傍目には全くの怪人物だが、筋は通すタフ。彼の強烈な個性に惹きつけられてしまった時点で作者にはしてやられたというもの。 遺伝子ネタ、ひたすら巨大な宇宙船、滅びた文明、異質な知性体等々……SFとして目新しい要素は見当たらない。クローニングや遺伝子操作による問題提起が積極的に行われているわけでもない。それでも巨漢の商人がどうやって問題を解決していくのか、先を読まずにはいられないのが不思議だ。帯の「…  全文読む 評価する

図書館戦争 図書館戦争
シノスケ/狙うは月9『図書館戦争』
怪獣小説を立て続けに執筆してきた有川浩の新作は、図書館モノ。いや、図書館モノなどというジャンルがあるかどうかは定かではないし、そもそも図書館モノなどというジャンルがあっても恐らくこの作品がそこに振り分けられるとちょっと途惑ってしまう。なぜかというと結局『図書館戦争』は自衛隊小説だからだ。昭和最終年度に制定されたメディア良化法。公序良俗を乱し、人権侵害を取り締まる——メディア良化法はその広範な解釈から、厳しい超法規的検閲を繰り返していた。そして、メディア良化法にに対抗するべく制定されたのが「図書館の自由法」である。この二つの法を持って、図書館とメディア良化法委員会は双方に死者を出すほどの武力衝突…  全文読む 評価する

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