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小松左京セレクション 小松左京セレクション
銀の皿/「まえがき」だけや「あとがき」だけもある、一味違ったセレクション。作品を読む一冊というよりは作者の世界への誘い水。
前略、「小松左京セレクション」編者 東浩紀様; 「小松左京セレクション 1 日本」を読みました。小松左京さんは作品数も膨大、長編の名作も多い。選集も既に多く、2011年に亡くなられて追悼集も出たりしましたが、本書のまとめ方は一味違ってなかなかよかったです。 学生時代から好きでよく読み、小松さんの知識の広さ、深さに小説以上の内容を感じてきました。その小松左京さんの戦後日本観、歴史観、SF観を浮き上がらせる文章をまとめるという編集。目次を見てもまえがきだけ(「日本アパッチ族」)、あとがきだけ(「日本タイムトラベル」)、エピローグの一部(「果てしなき流れの果てに」)というのもあって、「代表作を読める…  全文読む 評価する

脳の風景 脳の風景
銀の皿/脳には美しい形、良くできた形があるものですね。
 前略、著者藤田一郎様; 「脳の風景」(筑摩選書)を、楽しく、また興味深く読ませていただきました。様々な脳の研究のお話は、巻頭の写真を見るだけでも美しさを楽しめます。でも、それぞれにまつわるお話を読んで意味がわかってくると、玄妙さにおもわずため息もでるほどでした。 最初の章「脳に石畳」の、マウスの大脳表面に染め出される図柄の話では、読み出していきなり学校で習った「ペンフィールドのホムンクルス」を思い出しました。大脳の表面を染色するとマウスの形を思わせる像が浮かび、その位置が実際の体の感覚の部位と対応している(体部位再現)。2章で言及されていましたが、ペンフィールドは生きた人間の脳を局部電気刺激…  全文読む 評価する

見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ 見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ
銀の皿/生きものたちの多彩な工夫に感心するが、扱い方はちょっと偏っている。
 カナダのラジオ、CBCの「最新科学情報を紹介する」番組をまとめたもの。1975年から生きものたちの生態を紹介し続けているとういう長寿番組だそうで、著者はこの番組の元プロデューサである。 生きもののなかには人間からすればびっくりするような行動や生態をもつものがたくさんあることは事実である。それを知ることは楽しくもあり、命を理解することにもつながる。本書(およびもとになった番組)もそういう捉え方ができる。しかしタイトルなどで使われている言葉、表現をみるとちょっと異議を唱えたくなる。 例えば「ドーピングする渡り鳥」。たしかに渡りをするための能力を強化するため、ある食物を多量に食べる渡り鳥がいるのだ…  全文読む 評価する

おうちの科学 おうちの科学
銀の皿/気軽に読める、科学をちょこっと身近に引き寄せる本。
 「サツマイモはチンだと甘くない」とか「IH調理器の不思議とは」など、家庭での身近な現象に簡単な科学の説明を見開きでしてくれる小冊子。新聞の日曜日生活面に連載されたコラムを再編集したもので、説明はやさしくてわかりやすい。著者はテレビ番組などでも身近な科学の話をしているらしいので、こういう説明は慣れていらっしゃるのでしょう。 最初の話に「料理は実験」という著者の自論がでています。これに「そうそう」と同感する方にはそれほど新しい話はないかもしれません。でも、「理科嫌い」と内心思っているような方には、科学をちょこっと身近に引き寄せる本となるのではないでしょうか。 まえがきでも、著者自身「驚かれるぐら…  全文読む 評価する

ミネラルの働きと人間の健康 ミネラルの働きと人間の健康
銀の皿/健康のための食材そのものの健康。
 著者の講演を聞いたことがある。なかなか分かりやすく、興味をひきつける術をご存知の講演であった。そのとき、関係する話題として出てきた亜鉛とじょく創(床ずれ)の話に興味をひかれ、本書を読んだ次第である。第1章 お米や野菜のミネラルが骨をつくり、認知症を防ぐ第2章 日本人はマグネシウム不足第3章 「元気で長生き」するために!第4章 人間の宿命 糖尿病この目次だけみると、なんだかよくやっていそうな健康番組に近い感じがする。少し前、実験結果を「やらせ」で紹介した問題などが記憶にあると、内容に「まゆつば」したくなるかもしれない。 著者の視点は少し異なる。著者の専門は植物生理学。土壌肥料など、植物栄養(人…  全文読む 評価する

ちくま哲学の森 ちくま哲学の森
銀の皿/テーマごとの編集では、思いがけない作品に出会うこともある。
 書店の店頭で本書を見つけ、懐かしかった。本書が「ちくま哲学の森」シリーズの単行本で出たのは1989年。そのころ「ああ、こんな人がこんな作品を(も)書いている」と読んだことを思い出す。 こういった、テーマごとに編集された本を読むのは、書店の店頭を眺めたり日替わりの書評を読むのと少し似ている。自分がいつも目を向けていないところにある本との出会いへの期待があるのである。 本シリーズは哲学者の著作だけではなく、テーマに沿った文学作品も含んでいる。編者の好みによるであろう偏りも感じないではないが、それぞれのテーマでそれなりに良い作品が見つかる。この「いのちの書」には、冒頭の金子光晴「おばあちゃん」やオ…  全文読む 評価する

隠れた脳 隠れた脳
銀の皿/「あたりまえ」は便利だけれど「あたりまえ」は完全ではない。
 人間は無意識に処理をして行動していることがなんと多いことか。単純な行動だけではなく、一見理性的に判断しているだろうと思うようなことにも無意識が大きく影響している。そのことを具体例で示していくのが本書である。無意識の脳の活動について、なかなかいろいろと考えさせてくれる。 「犯人を正確に覚えた」と思っていても間違った例。災害時、多数の人の流れに乗ってしまって間違った例。理性的にはおこさないはずのことが起こる現象の背景には、脳が無意識で処理をしてしまう機能が関係している。この無意識の脳の機能に著者がつけたのが「隠れた脳」である。 「隠れた脳」の判定ルールは、本能的なものもあれば習得したものもある。…  全文読む 評価する

クマのプーさん クマのプーさん
銀の皿/でだしの、プーさんの登場がとても印象的でした。
 この表紙の絵そのまま、のプーさんの登場です。登場の場面からお話の世界にすっと入り込んでしまいますね。 お父さんが息子にお話をする、そのお話の主人公がプーさんだったんですね。男の子もプーさんも実在のモデルがあったことをはじめて知りました。あとがきにはそのプーさんの写真まで載っています。「クマのプーさん」、ウィニー・ザ・プーという名前の由来についても、著者のまえがきで教えてもらいました。 「プーさんとはちみつ」やイーヨーの尻尾が取れるお話も入っています。なんだかディズニーのイメージが強くなってしまったプーさんですが、原作の「お話がたり」の雰囲気、ことば遊びの面白さはとても素敵。言葉を少し自分で操…  全文読む 評価する

梁塵秘抄 梁塵秘抄
銀の皿/いい意味での」換骨奪胎。おおいなる「遊び」。カヴァー?
 ここまでしてしまったら「訳文」なのだろうか。 「梁塵秘抄」といえば、後白河法王が退位後に当時流行した歌謡や歌舞「今様」をまとめたといわれるものである。日本の中世の風俗を知る上での貴重な資料、と習ったように覚えている。 「遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん・・」。流行歌であるから、その時代でしか通じない言葉が使ってあったり、その時代でしか通じないお約束事の言い回しで聞く人がニヤリとすることもあっただろう。そういう部分は時代背景の予備知識なしにいきなり読んでもわからない。昔の流行歌を、予備知識がなくても楽しめるようにできるか。著者の試みはそんなところだったのかもしれない。 「古典新…  全文読む 評価する

犬たちの南極 犬たちの南極
銀の皿/第一次南極越冬隊員の、犬への愛情溢れる記録。南極の情景描写も卓抜。
 『-「タロ」と「ジロ」が生きていた。』という「はしがき」の文章で始まり、続く第一章は犬を置いて基地を飛び立つ場面。「タロとジロと、その仲間たちの霊にささぐ」との献辞がつけられている。 第一次南極越冬隊の話は最近のTVドラマでも犬の演技などがなかなか良くて面白かったのだが、面白ければ面白いほど「事実とはだいぶ違うだろうな」と思ってしまう性格のためか、ついこういった「実録」を読んでしまう。 著者は第一次南極越冬隊で犬ぞりを担当していた人物。日記風の、なかなか好感のもてる文章である。タイトルどおり、話の中心は犬たち。一頭一頭の性格やそりの扱いなどが詳しく、深い愛情に溢れている。それだけでなく、初め…  全文読む 評価する

南極越冬記 南極越冬記
銀の皿/大きな仕事をした人の密度が高い言葉。グループを束ねる人の言葉としても秀逸。
 第一次南極越冬隊の隊長が、越冬開始からを綴った個人的要素の強い記録。実際は(少なくとも隊長にとっては)こんな風だったのか、ということとともに、隊長西堀栄三郎の人間像が良く出ている好著である。越冬中のメモのような日記から起こして再構成したというが、淡々と、淡々と語られる記録は隊長という立場からみた「あの越冬」がよく伝わってくるものになっている。 隊員が飽きもせず興じる麻雀に加わることもなく一人自室で仕事を友とし、隊長としての目配りを続ける著者。越冬隊員を決めるときの話は組織運営の話としても興味深かった。個性の強い隊員たちをまとめる中で「わたしはまちがっていたのか」と自省し、突き詰めて考えている…  全文読む 評価する

物理学と神 物理学と神
銀の皿/神がサイコロを振ろうと、静観するだけであろうと。
 「想定外」の自然現象や科学技術の上に立つ危うさを感じた2011年。それは誰もが神をもう一度意識した年でもあったのではないだろうか。地球が太陽の周りを回っていることを否定する人はもういないかもしれないが、神は何かをしている、と考えたくなる人は少なくないだろう。科学の発展に伴い、神の姿はどのように変わってきたのか。年のはじめに科学と神を考えてみるのもよいと思う。 本書は宇宙や物質の本質を扱う物理学の変遷から「物理学者が神の名を使ってなにを表現しようとしてきたか。(あとがきより)」を考えていく。 物質論、宇宙理論は難しそうだが、著者流の説明はいつもながらわかりやすい。そしてその中に挟まれる著者の言…  全文読む 評価する

創造的進化 創造的進化
銀の皿/自然科学系の私でも面白かった哲学書。「現代科学が置き去りにした考え」に気づかされる所も多い。
 本職の研究者が一生を賭けて論ずる哲学書の評を門外漢が書くのはおこがましいのであるが、本書は畑違いの者にも結構面白く読めたので、紹介したい。 19世紀科学の台頭に向き合ったベルクソンの、三大主著といわれる『時間と自由』『物質と記憶』『創造的進化』。三作目にあたる本書には、胚発生のオーガナイザーやド・フリースの遺伝学まで出てきて、あの時代の科学をとても深く勉強していたのだろうということがよく分かる。文章も思ったよりも読みやすく、時には美しい。美しすぎる名句も多いので、読めた気になって早とちりしそうなところもあるのでそこは要注意である。 哲学者がここまで最先端の科学を把握して論ずることができたのも…  全文読む 評価する

脱皮コレクション 脱皮コレクション
銀の皿/正直ちょっと「マニアック」かもしれない。でも人間とはちがう彼らの生の一面はそれなりに美しい。
 どこかの都会のような夜景をバックに浮かび上がる脱皮したてのセミ。表紙の写真がまず惹きつけます。現物を見たことのある人はきっと記憶している姿のセミ。うるさくないている時、命が尽きて足元で転がっている時とは全く違う、柔らかで頼りない羽、有り得ないようなその青緑色。 でも都会でも抜け殻は見つかるし、セミの脱皮は知っている人もまだ多いでしょう。では、クモは?ヘビは?カエルは?カニは?・・・ダンゴムシは脱皮するの? 脱皮するとは習ったけれど、抜け殻は見たことはあるけれど。本書は、そんな「聞いたことあるけれど見たことない」脱皮姿の写真集です。 すごいのは、ほとんどの脱皮が連続写真に収められていること。チ…  全文読む 評価する

音楽の感動を科学する 音楽の感動を科学する
銀の皿/ストレスとホルモン、音楽の関係。
 正直、タイトルまでにはまだ遠い、と感じる内容である。著者もよく分かっているが、「心」すら科学的にはっきりと説明ができている訳でははないのである。本書はこの大きな課題に向かっての、著者の研究の歩みの経過報告というところ。著者の研究に即した副題を考えるとしたら、「ストレスと音楽、ホルモンの関係」だろうか。 「なぜ音楽で感動するのか」は本書を読んでもわからない。おそらく「感動とはなにか」すら科学的な言葉での説明はまだできていないのだから、しかたのないことなのだろう。とりあえずまずはストレスとの関係から著者はとりかかった、と理解した。 ストレスを感じたときに分泌されるホルモン、特にテストステロンにつ…  全文読む 評価する

苔とあるく 苔とあるく
銀の皿/写真も沢山はいった、コケ好き古本屋さんの書いた楽しい苔観察入門。でも海外郵便はちょっと・・・。
 花の少ない季節にもコケは身近に見られる植物。これ一冊読んだら、ちょっとコケでも見てみようかな、とそそられる。そんな本です。 まずはコケの楽しさを「1 探索、2 観察、3 研究・・」と幾つかに分けて紹介しています。「探索」では身近な塀や溝にもコケがこんなに生えていること、「研究」は植物としてのコケの基礎知識。可愛いイラストと豊富な写真での楽しい説明です。 「4 採集、5 整理」は自分で観察したり収集したりしたい人への技術入門篇。これだけあれば始められる採集の道具、そしてエチケットも載っています。小さなものが相手なので、はまれば欲しくなる実体顕微鏡も紹介してあったのは嬉しい。 「6 啓蒙、7 実…  全文読む 評価する

たのしい川べ たのしい川べ
銀の皿/荒唐無稽なお話としみじみとした情感。子供向けの顔をして、実は奥が深い。
 春のはじまり、地上に飛び出してきたモグラはネズミと出会い、川遊びに誘われます。春の川の情景に彩られた出だしは、わくわくする気分でモグラと一緒に新しい世界に連れて行ってくれるものでした。 ネズミ、モグラ、アナグマ、ヒキガエル。それぞれの性格がとても上手くかき分けられていて、繰り広げられる冒険譚(この字がなぜか似合います)だけでも楽しく読めます。でも、読みどころは他にも沢山。 まず、春の川、冬の朝、夜の森・・と、いきいきと愛情あふれる自然描写のすばらしさ。著者は登場する動物とともに、この自然を描きたかったのでしょう。イギリスの子どもたちにとっては「見た事はなくても懐かしい」、そんな風景なのかもし…  全文読む 評価する

日本帰化植物写真図鑑 日本帰化植物写真図鑑
銀の皿/見渡せば「オランダ」や「アメリカ」や「ブラジル」や・・・。
 ススキの穂がそよぐ、タンポポが咲いている。外出をすると、道端の雑草にも季節を感じることがあります。「雑草という草はありません、それぞれに名前があるのです。」とは昭和天皇の言葉ですが、どんな名前なのか、と知りたくなって調べてみると・・。普通の野草図鑑などを見ても「ちょっと違う」ものが結構あるのです。 そこで本書の登場。ああこれこれ、と見つかることの多いこと、多いこと。分かりやすい全体像の写真と特徴、原産地や日本で採取された時期など、一種だいたい一ページで紹介されています。似ている日本種の写真や比較も載っているのも親切。 江戸時代とかもっと昔に「来日」した「こんなものまで」と驚くような馴染み深い…  全文読む 評価する

ちょっと知りたい雑草学 ちょっと知りたい雑草学
銀の皿/雑草を知ることは生きものを知る第一歩。
 数ヶ月ほど前に近所の古いお店が取り壊され、そこが更地のままになっています。通りすがりに見ているのですが、二週間もすると土がむき出しだった地面に何かの芽が伸びだしたのが遠めにもわかるようになり、今ではもうイヌタデが桃色の花をつけ、イヌホオズキが繁り、エノコログサがそよぐほどになりました。植物の生命力を目の当たりにしている気がします。 本書はそんな「雑草」の全体像を分かりやすくまとめています。 「第1章 雑草のくらし」、「第2章 雑草から学ぶ自然のしくみ」、「第3章 雑草をコントロールする」、「終章 座談・雑草との共存を目指して」。 「雑草」の「雑」の古い字体には「多様」という意味があることや、…  全文読む 評価する

ネギをうえた人 ネギをうえた人
銀の皿/ウサギに騙されるトラ、お礼にコイが案内する竜宮。
 夢や、笑いや、空想や、そしてちょっぴり教訓。どこの国にも、どの民族にもそれぞれ伝わってきた話があるでしょう。現在、韓国からは歌やドラマが日本に沢山入ってきています。手近な外国旅行を楽しむ人も多い国。そこに住む子どもたちはどんなお話を聞いて育つのでしょうか。お隣の国の民話をまとめて読める一冊です。 どことなく日本に近い味もあるお話も、羽衣伝説のように世界中にも共通するようなお話もあります。儒教の国といわれるだけあって、親孝行の話も多い。 助けられたお礼に竜宮へと案内してくれるのがコイだったり、「かちかち山」に似ているけれどウサギが騙すのはトラだったり。「あ、にてる、あ、ちがう」と、比べてみる楽…  全文読む 評価する

第九軍団のワシ 第九軍団のワシ
銀の皿/「歴史小説の傑作」by宮崎駿。有名人の評を借りてすみません、でも同感です。
 ローマ人がイギリスにいた時代、ローマン・ブリテン。消えてしまった軍団の謎を追い、ローマ帝国の象徴であるワシの像を奪い返す旅は、歴史物語であり青年の成長を描いた物語でもあります。イギリスの子どもたちにはよく知られた、テレビ映画化もされている作品だそうです。私にとっては、「イギリスはローマ帝国だったことがあったんだ」と世界史を復習する一冊でもありました。 ローマ軍の装備や規律、土着のブリテン人たちの風俗や習慣は細部まできっちりと、文字だけで想像が映像になるほどに書き込まれています。そして闘技場での奴隷戦士との出会い、ブリテン人の少女の凛とした登場。ワシを奪い返す旅での追跡シーンなど、心に強く残る…  全文読む 評価する

プルーストとイカ プルーストとイカ
銀の皿/読んでいるとき、脳全部がダイナミックに活動している。
 奇妙な題名は人をひきつけると同時に躊躇もさせるようだ。この本は出版当初から気になってはいたのだが、内容に想像がつかず、手を出さずにいた。 「ヒトは人のはじまり」 で言及されていて、かなり脳の事がしっかり書かれた本であるようなので手に取った次第である。 「読む」という行為による脳の変化の、多方面からの考察。たしかにイカが泳ぐときと同様に、読むときにも神経が重要な役割を果たしている。「読む」行為がどれほど人間の活動の域を広げたのか、読むことだけで(肉体的な運動はほとんどないのに)どれだけ脳の中で変化が起こっているのか。読むほどにそのすごさを実感させられた。 まずは読者の関心を引く巧妙な導入の方法…  全文読む 評価する

本へのとびら 本へのとびら
銀の皿/かつて少年文庫を読んだ人たちへ、 本への想いに通じる素敵な扉の贈りもの。
  「前のほう半分ぐらいのページが黄ばんでる」。手にとってまず気づくのはこれでしょう。本棚で長く光に晒され、外側から黄ばんできたページ。そんなつくりに、なんだか懐かしさが呼び起こされます。このページ表現だけで、本の思い出への扉が充分開かれているのを感じます。 この部分、本書の第一部は表紙の写真と短い文での50冊の少年文庫紹介です。挿絵が紹介されているものもあります。「この本は食い尽くされてしまったのです。」というどきりとする文章があったり(「ホビットの冒険」)、「最後の方はわからなくてもどかしかった」という本があったり(「ぼくらはわんぱく5人組」)、ツイッターのように短い文ですが、これだけでも…  全文読む 評価する

宇宙の誕生 宇宙の誕生
銀の皿/宇宙の誕生を探る実験は安全か? 争いに巻き込まれたジョージとアニーと一緒に知る最新の宇宙像。
 「宇宙の中で、ブタにとっていちばんいい場所はどこ?」 「宇宙の誕生」なのになぜか一行目はブタから始まるのです。世界的物理学者スティーヴン・ホーキング博士が娘さんと書いた子供向けファンタジー「ホーキング博士のスペース・アドベンチャー」シリーズもとうとう完結篇。前2作『宇宙への秘密の鍵』『宇宙に秘められた謎』はジョージとアニーの二人を中心に宇宙のわくわくする話が満載でしたが、今度はどこに行っちゃうのでしょうか。 今回、ジョージとアニーは宇宙の創生を解き明かすための最新の研究に関わる大きな陰謀に巻き込まれます。ブタからの始まりにちょっと戸惑いながらも、いいテンポでお話に引っ張られ、いつしか彼らと一…  全文読む 評価する

ヒトは人のはじまり ヒトは人のはじまり
銀の皿/言葉について、ヒトという生きものについて、障がいについて。やさしくじっくり考えさせてくれる。
 「人間も動物の一種だ」という考え方は、もう随分広まってきたと思います(希望的観測かもしれませんが)。著者は本書で、霊長類学者という立場から「ヒト」であり「人」である生きものを考察します。ご自身も脳梗塞の後遺症や言葉の軽い障害をもつということもあるからでしょう、特に「障がい」についてや言葉についての考えが多く書かれています。 生物の多様性から人間の多様性に著者は考えを伸ばします。人種の差、能力の差、性格の差・・・。障がいも多様性の一つとしてとらえてみます。「障がいを進化史からとらえ直す」。これは霊長類学者ならではの目の付け所かもしれません。発達障がいとされているものも、現代の「普通」に適応しな…  全文読む 評価する

面白南極料理人 面白南極料理人
銀の皿/限られた環境での調理の工夫の面白さ。比較的最近の南極観測隊の事情がわかる。
 「南極探検」のテレビドラマが始まったらしい(番組の前宣伝が最近は激しいので、見ようとしなくても知ってしまうのである)。そういえば数年前に南極の映画があり(覚えておられますか?)、その本を読んだ記憶があったので探し出してみた。 1996年からの第38次観測隊に参加した著者の話は、出版当時も面白いと評判だった。この38次南極越冬隊の生活と、1953年に出発した第一次の観測隊の状況はどのぐらい違うのだろうか。半世紀の間の技術の進歩や生活の変化を比較してドラマもみて見たら面白いかもしれない。著者は38次の前に30次にも参加している。この最初の時の話を描いたのが「面白南極料理人名人誕生」。著者自身の経…  全文読む 評価する

幻想の未来 幻想の未来
銀の皿/文明が崩壊し、変貌していく地球。地上最後の生命体の言葉が胸を打つ。
 著者自体はそれほど好きでもないのだが、なぜか強く記憶に刻まれてしまっている、そんな作品がある。これもその一つ。最初に購入した一冊を紛失し(おそらく引越しのときだろう、整理したのかもしれない)読み返したくて「二度買い」した。初版が昭和46年。そのころ買った文庫本はもっと派手なカバーだった記憶だが、手元にある第44版は黒一色。こちらも味のあるカバーである。 表題作のほかにも短編が幾つか収録されているが、表題作がとにかく印象に残る。核汚染で文明が崩壊し、変貌していく地球の未来を描いた作品である。 ヒトも変異をくり返す。これでもか、と変わっていく姿の描写もすごいが、「思念が残る」という発想も加わって…  全文読む 評価する

ヒドラ ヒドラ
銀の皿/興味深い特徴が多くある生きもの、ヒドラ。「それは君 大変おもしろい 君ひとつ やってみたまへ」。
 大きさも1ミリから1.5メートルまで幅広く、クラゲのように泳ぐかと思えばイソギンチャクのように固着する。すりつぶしたって再生してくる・・・。ヒドラは語源どおりに怪物のように不思議な生きものである。 不思議な美しさのある綺麗な写真での紹介、生活環のユニークさや再生の仕方など、その巧妙な仕組みの研究も分かりやすく説明されている。 どんな動物か?の分類や形態の説明である1,2章がちょっと面白くなくなるのは仕方がないことかもしれない。著者が始めて美しい姿に感動した3章の出だしあたりから、面白くなってくるかと期待させられる。 細胞一個一個が透けて見えるような体なので、切断すると細胞が移動をはじめ、再生…  全文読む 評価する

わかりやすい園芸作物の栄養診断の手引き わかりやすい園芸作物の栄養診断の手引き
銀の皿/症例写真は豊富だが、体系的な「理由」の説明は少ない。
 機会があって著者の講演も含む講習会を聞いた。時間の都合で割愛される部分があったり飽きさせないように挿入される話があったりするためか、講演はしばしば不消化になる。興味深い話も多かったので、入門書として推薦されていた本書を購入した。 植物を育てるための栄養についての入門書ということである。150ページ余りある本書の半分以上は、窒素やリン酸などの各植物栄養素ごとの欠乏、過剰の症状と診断である。全頁良質の紙で、植物の色も良く表現されている。 例数も写真も豊富なので良くわかりそうなのだが、読み終わるとなんだかゴチャゴチャと頭の中で整理しきれない感じが残る。多分、症例の説明の間に経験談が飛び込んでいたり…  全文読む 評価する

日本絵画のあそび 日本絵画のあそび
銀の皿/日本美術を楽しく紹介。伝統的な「遊び心」が見えてきます。
 書評フェアでは、丁度西洋絵画の見方の本を『中野京子と「名画」を読む』で紹介しています。そこで日本の美術の楽しい見方を書いた本書をご紹介。これも、博物館に足を運ぶ時、きっと参考になりますよ。 美術館に勤務していた著者が『眼の極楽』と題して連載していた文章が中心とのこと。日本画の楽しみ方解説としてなかなか楽しめます。古い絵画の「かたち」の示す面白さをテーマに分けて説明していくのですが、ポイントも分かりやすく、説明されている絵画の視覚的な楽しさが伝わってきます。なにより著者自身が楽しんでいることがよく伝わってくる文章が心地よいです。 取り上げた「かたちの面白さ」は「誇張と即興」「虚実のはざま」「対…  全文読む 評価する

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