|
川のうた
|
|
うっちー/時と空間を超えて流れる、静かで深い川の風景。
|
表現手段としての絵本は、多彩な可能性を持っている。この「川のうた」は、ラングストンの詩に画家のルイスが、絵をつけて、絵本にしたものである。「わたしは、たくさんの川を知っている。 世界のなりたちとおなじくらい古く、人間の体をながれる血より古い川を。 それで、わたしのたましいも、川のようにふかくなったのだ。」 このように始まる詩を、ラングストンは、18歳のときに書いたのだという。アメリカの黒人の苦難の歴史を思うとき、この詩の意味するところと、彼らの誇りが伝わる。 アメリカの黒人が、もとは、アフリカの大地に住み、川の水のめぐみを受けて生き、暮らし、歴史を刻んできたこと。そして、今、アメリカの川の水…
|
|
|
地球をほる
|
|
うっちー/読み終わった時には、本が180度回転! しかけの面白さが物語の楽しさを倍増させる。
|
家の庭先をどんどん掘っていけば、地球の裏側に突き抜けられるかも、なんて子どもの頃は思ったりした。 で、もう少し大きくなると、地球の真ん中にはマグマがあって、掘り進むことはできないのだ、と学習してしまう。 じゃ、マグマにあたらないように、真っ直ぐではなくて、斜めに掘り進もう!と掘り進んでいっちゃうお話がこの絵本だ。日本から角度を計算して、アメリカまで。友人とそして英語の話せる姉と3人で掘り進む。もちろん、両親も賛成。上から食料を送ったりしてくれる。…と、妙に細部はリアルで、説得力ありそうな設定なので、よけいにとぼけた雰囲気があり、それがおかしい。 何より、絵本としてのしかけが見事。始めは、縦書…
|
|
|
わたしが明日殺されたら
|
|
うっちー/クーフィの勇気と使命感に感服。強烈な、心揺さぶられる半生記。
|
次期大統領とも目されるフォージア・クーフィは、1975年生まれ。2005年、アフガニスタン下院議員に当選。下院副議長に就任した初めての女性である。 アフガニスタンでは、40年続いた王政の後、クーデター、ソ連の侵攻、内戦、タリバン支配といった厳しい情勢が続いた。その内乱の間に、アフガニスタンの本来の人口の三分の一が失われたという。 この本は、まさにその激動の時代に生きたクーフィの半生記である。自分の家族のこと、国の政治の乱れとともにどんな苦難があったのか、自分が何を思い、どう行動したのかが、きわめて率直に語られる。自らの失敗や弱点も。 彼女の胆力、勇気、使命感は、どこから来るのか。混沌たる社会…
|
|
|
セキタン!
|
|
うっちー/まっすぐに、思いっきり生きる姿に、勇気付けられる。
|
相撲人気が低迷している。残念でならない。でも、相撲はおもしろい! それを内側から体験できるのがこの物語。 主人公の大関治は、進路に悩む中学3年生。15才の誕生日に近所の中華料理屋で、ナゾの兄ちゃんに「力士になったら」と勧められる。この「ナゾ兄」が、力士がいかに魅力的かを懇々と説くので、相撲を知らない人にもそのシステムがよくわかる。 あこがれの女の子三夏の存在や競馬の騎手をめざすという同級生絵島の影響もあり、力士になることにした治は、銀部屋に入門することに。 もちろん、けいこは厳しい。“かわいがり”といって、しごきのようなこともある。八百長の誘いもある。でも、治は、真っ直ぐに突き進む。悩むけれ…
|
|
|
サウスポー
|
|
うっちー/ジャネット、お見事!粋でユーモラスな、小さな恋のおはなし。
|
なんともキュート。あちこちでニヤリとしてしまう実に微笑ましい物語。 リチャードとジャネットは、仲良しのふたり。けれど、リチャードがキャプテンを務める野球チームに「女は入れない」と、ジャネットを拒否したことで、二人の仲はこじれる。腹を立てたジャネットは、手紙をだす。もう友だちじゃない!と。 ジャネットから、リチャードへ。リチャードからジャネットへ。ふたりの手紙のやりとりが続く。売り言葉に買い言葉。意地の張り合い。お互い絶対に引かないつもりが、リチャードのチームのメンバーのケガで形勢が微妙に変化し…。 ノートの切れ端に書かれていたり、紙ヒコーキにして渡されたりする実写の手紙と表情豊かな絵が、二人…
|
|
|
8月6日のこと
|
|
うっちー/静かな祈り
|
8月6日といえば、もちろん、ヒロシマへの原爆投下の日のことである。表紙の空は、青く美しく、ページを開いても、また、美しく穏やかな瀬戸内の海と空。そして、作者のおかあさんのおにいさん~つまり、おじさんのことが語られる。 おかあさんが16歳のとき、おにいさんは兵隊として、広島にいた。そのおにいさんに差し入れに行くおかあさん。そして、あの日がやってくる…。 8月6日のいつもどおりにおだやかな海。そして、落とされた瞬間の「ピカ」は真っ白な海で、次にやってきた「ドン」は真っ黒な背景と白い原爆雲で表わされる。次には、赤茶色の背景にばたばたと倒れる黒い人型。さらに赤黒い背景に黒い小さな人影が。ここまで淡々…
|
|
|
若冲のまいごの象
|
|
うっちー/若冲の描いた「象鯨図屏風」のミステリー
|
私が若冲の絵に出会ったのは、2009年にMIHO MUSEUMで開かれた展覧会「若冲ワンダーランド」で、である。おもしろかった! その中でも特に印象に残ったのが「象鯨図屏風」。鯨と象の描かれた屏風絵なのだが、緻密でありながら悠々として、写実でありながら現実とは異なる、なんとも不思議な心魅かれる生きものの姿がそこにあった。 この屏風絵にまつわる話もまた不思議で、そのときに公開されていた一対は、前年の2008年に見つかったもので、もう一対は80年以上前から行方がわからないのだそうだ。 そのことを題名にしているこの本は、江戸時代に京都で生まれた伊藤若冲の生涯を、名画とともに紹介している。錦小路にあ…
|
|
|
おうさまジャックとドラゴン
|
|
うっちー/子どもの遊びの楽しさがいっぱい!
|
王さま、将軍、王子に、お城とドラゴン! たのしい道具立てはそろった。 見開きの画面いっぱいに、意気揚々と行進する3人。おうさまジャック、しょうぐんザック、チュッパおうじだ。お城づくりの場面は、つくる経過の楽しさを盛り込みながら、モノトーンでいくつもの小さいコマで表わしている。さぁ、お城ができあがり、いよいよドラゴンやかいじゅうとの戦いだ!この場面は、もちろん、見開きいっぱいの大迫力。3人それぞれの動きがなんともかわいい。 が、きょじんがやってきて、一人、またひとりと連れ去られる。たったひとり残ったおうさまジャックは、急に不安になってきて…。 子どもたちの冒険ごっこの“なりきり”の喜び、高揚感…
|
|
|
くまのオットーとえほんのおうち
|
|
うっちー/オットーがかわいい!すみずみまで楽しいイラスト。
|
表紙には、本の上に座っているクマ。裏表紙には、かばんをかけたくまが、飛び出して行っている絵。淡い色合いと、柔らかな雰囲気の、このかわいいくまのオットーが主人公。 表紙で分かるとおり、本より小さいサイズのくまなのだ。それもそのはず。オットーは、えほんの中に住むくまなのだ。しかも、誰も見ていないときには、絵本から出て行って、家の中を探検したり、本を読んだり、なんとも積極的! ところがあるとき、家の者がひっこしして、オットーは(というか、絵本は)置き去りにされてしまう。そこで嘆いてなんていないのが、オットーのいいところ。住みやすいところをさがしに飛び出していくのだ。 ここ数年、国民読書年の影響か…
|
|
|
わたし、まだねむたくないの!
|
|
うっちー/眠りにつく前の至福の時間!
|
本当は眠いのに、「ねむたくない!」と言う子どもの気持ち。わかるわかる! 子どもの頃、眠るのがもったいなくて、こう思ったことは、みんなあるはず。 そして、それといっしょに思い出すのは、あの眠りに着く前のひとときの幸せ感。一日遊んで、身体はクタクタ。でも、その、ちょっとぼうっとした中で、まだやりたいことが…。もっと起きていたいと、現実と想像のあわいの中を漂う幸せな気持ちときたら…! 主人公の女の子は、想像の中で、海賊になったり、怪獣になったり、騎士になったり、バレリーナになったり。画面には、「あぁ、これって、もしかして、あの場面?!」と思えるおはなしの名シーンが出てきて楽しませてくれる。つまり…
|
|
|
もっとくらべる図鑑
|
|
うっちー/くらべることの楽しさを満喫させてくれる。
|
「くらべる」と一口に言っても、何をどう比べるのか、それをどう見せるのかで、まったく違ったものになる。でも、この小学館のシリーズは、そこがうまい!見せ方に工夫があり、ビジュアル的に優れているのだ。 たとえば、「大きさ」を比べるのでも、「空からくらべてみよう!」とあり、まずは、東京ドームを中心にさまざまなものを配し、そこには、地球上で最大の動物シロナガスクジラも並べられている。 そして、ページをめくるごとに、どんどん空の高みから眺めて、小惑星イトカワ(こんなに小さいなんて!)や、バチカン市国、富士山の火口、さらには、地球上にある水の量(!)などの、大きさをさまざまにくらべて見せるのだ。視点でい…
|
|
|
ダレ・ダレ・ダレダ
|
|
うっちー/おしゃれで粋!美しくておもしろい。
|
夜の闇に、月の光でほのかに浮かび上がるシルエット。あれは、いったいダレ?! 青と黒が基調のモダンで美しいイラスト。ユーモラスな文章。とてもおしゃれで粋な絵本だ。2002年の「オレ・ダレ」の続編ともいえるものだが、今回の方が、工夫が凝らされ、絵も文もさらに芸術的に進化した。これを読むと、ふたりの才能がわかる。う~ん、まいりました。 たとえば、ぎゅうぎゅうとかたまって寝ているセイウチのイラストには、こんな文が添えられている。(造形的にもいいけど、寝姿がキュート!)「うみの なかなら いいけれど、りくに あがると うごけない。 だから、ねるしか ないのです。みんな ぎゅうぎゅう おしあって、 おも…
|
|
|
世界で一番美しい元素図鑑
|
|
うっちー/美しくておもしろい! 読めば自分のものにしたくなる図鑑。
|
本当に美しい!ひとつの元素に見開き1ページ。左には、純元素の大きな写真、右には、その化合物や応用製品の写真がある。「元素」に対してぼんやりとしかイメージしていなかったので、元素がこんな風に目に見える形で掲載されるなんて、とても新鮮で驚いた。「炭素」のページには、純元素として、ダイヤモンドの大きな写真。そうか、ダイヤモンドって、炭素なんだ。しかも、「燃やすと二酸化炭素になる」とある。なるほど。 見るだけでも楽しいのだけれど、実は、この本の真価は、文章にもある。その説明文のおもしろいこと! たとえば、キュリー夫人が発見した「ポロニウム」は、猛毒なのだとか。そのポロニウムが、2006年ロンドンで、…
|
|
|
ピーティ
|
|
うっちー/ピーティの心と生き方が胸をうつ。この温かさ、すがすがしさ。読んでよかった!
|
読み終えたとき、人が生きていくということに感謝せずにはいられなかった。生きていく価値と言うものは、簡単に目に見えるものではなく、どんな人生もかけがえがないということ。そして、人は一人では生きていけない、誰かとつながることで生きていけるということも、あらためて心に突きつけられる。 この物語の主人公は、ピーティ。1922年に生まれたピーティは、脳性まひのため、体はねじれ、動かせず、強い知的障害もあるとされた。そのため、生まれたモンタナ州ボーズマンから、親からも離され、ウォームスプリングズ精神病患者収容施設に送られる。ピーティはその病棟の中で子ども時代を過ごす事になる。 正常な精神と知能があるのに…
|
|
|
エイモスさんがかぜをひくと
|
|
うっちー/相手の求めているものを深く感じる、この静かな優しさと温かさ!
|
エイモスさんと、どうぶつたちの、静かで温かな、思いやりに満ちたやりとりがいい! 心が優しさで満たされて、なんともいえない心地よさが残る。 エイモスさん(ちょっと、おじいさん)は、動物園に勤めている。仕事は忙しいものの、合間をぬって、動物たちの相手をしてやっている。ぞうとは、チェスを、カメとはかけっこ。そして、ペンギン、サイ、ミミズク、それぞれにあわせて、そっと寄り添う。あいての弱いところを感じて、支えてやる。 そんなエイモスさんが、かぜをひいて、動物園をお休みする。やってこないエイモスさんを心配して、どうぶつたちは…。 弱いものどうし、苦手なことがあるものどうしだから、わかりあえることがある…
|
|
|
ながいながいよる
|
|
うっちー/深みのある青が印象的な、美しい絵本。
|
太陽の光のささない、雪にうもれた「ながいながいよる」。森のどうぶつたちは、われこそが太陽をひきずりだしてやるとほえたてる。カラスが、ヘラジカが、キツネが。それぞれの自慢の、りっぱな翼やくちばしや、足、角、鼻、牙で、それができると信じて。 けれど、風は、こたえる。「あなたじゃない」。そして、小鳥に言うのだ。「あなたにしかできない」と。小鳥は、驚きつつも、いちばんとくいな歌をうたう。そして…。 両開きの美しい画面に見入ってしまう。夜の森の深い青。雪の白さと月の輝き。動物たちの気高さ。そして、太陽が射しはじめるときのほのかなオレンジ色の光。こんな魅力的な深い色を持つ絵が、たった3色の絵の具だけで描…
|
|
|
墓場の少年
|
|
うっちー/不気味な舞台設定、魅力的なキャラクター、謎めいたストーリー、そして愛と勇気とユーモアと温かさがある。文句なし!
|
少年の名前は、ノーボディ・オーエンズ。「誰でもない」男の子。 物語の始まりはとても凄惨だ。殺人者「ジャック」がナイフを持って、ある一家のもとを訪れる。そして、父親、母親、姉は、皆殺される。ただひとり、よちよち歩きの赤ん坊だけが助かった。好奇心から、ベッドを抜け出し、家を出て、真夜中の墓場に迷い込み、助かったのだ。 赤ん坊をも殺そうと追いすがってきた殺人者から、赤ん坊を救ったのは、墓場に住む幽霊たち。ここで、「ノーボディ・オーエンズ」と名づけられた赤ん坊は、墓場で幽霊たちに育てられることになる。 親代わりになる愛情豊かな幽霊たち、謎めいた後見人サイラス、友だちになる近所に住むスカーレット。 凄…
|
|
|
カラス笛を吹いた日
|
|
うっちー/父と娘がお互いの気持ちを思いやる。情感豊かで美しい。
|
長い間戦争に行っていて、やっと帰ってきた父さん。いなかった時間を、お互いの知らなかった時間が埋まるように、父と娘はわかりあおうと、手さぐりで、そして思いやりあいながら共に過ごす。その時間の美しさが、心を打つ。父と娘の幸せな幸せなひととき。あまりに美しいので、ちょっとせつない気持ちになる。 「わたし」は、父さんが買ってくれたお気に入りのシャツを着て、車で出かける。父さんが食堂で注文してくれたわたしの大好きなチェリーパイ。しかも二つ! わたしと父さんは狩りに来たのだ。畑を荒らすカラスを狩りに。銃を持った父さんの横を離れないように歩く。そして、わたしは父さんに教わってカラス笛を吹く。本物のカラスと…
|
|
|
消防車とハイパーレスキュー
|
|
うっちー/作者の取材する楽しさがそのまま伝わってくるから、おもしろい!
|
「みんなの町を火事からまもるのは、消防署の人たちですが、大きな災害では、救助専門の部隊が活躍します。きょうは、そのひとつ、東京消防庁のハイパーレスキューをたずね、消防車や仕事のひみつを調べます。」 そうかぁ、大きな災害に取り組むから、特殊な車両や機材を持っているんだ。ワクワク。 いや、おもしろい! 乗り物絵本かと思えば、とんでもない!「ルポ」というだけあって、周辺機器、道具、働く人の様子、その仕事内容などを徹底的に解剖している。子どもも読めるが、むしろ大人が読んで楽しい。 作者が、好奇心満々に取材したのがありありとして、その興味関心のおもむくまま、東京消防庁の訓練施設にも行くし、日本機械工業…
|
|
|
図書館ラクダがやってくる
|
|
うっちー/図書館って、ありがたい!
|
ラクダ、トラック、手押し車、船、自転車、ロバ、ゾウ…。これは、何か? 世界中で、子どもたちに本を届けるために使う「乗り物」である。小さな島や砂漠、大草原、町のせまい裏通り、ジャングルの奥地など、子どものいるところに、それぞれの地方にあった方法で、送り届けているのだ。 たとえば、ケニアの遊牧民のところへは、砂漠の砂の為に、四輪駆動の自動車でも通行できないので、ラクダで輸送する。本を読むことに飢えている子どもたちのために! 表紙は、モンゴルの子どもたちだが、ここにも、馬車とラクダで本が届けられている。子どもたちの本に集中している顔、本を見ながらの楽しそうな笑顔が、印象的だ。 世界中どこでも、本を…
|
|
|
かのこちゃんとマドレーヌ夫人
|
|
うっちー/かのこちゃんの世界とマドレーヌ夫人の世界、それぞれの日常性とファンタジーが、うまくかみあって心地いい。
|
マドレーヌ夫人は、アカトラの猫である。雷が鳴る豪雨の日に、かのこちゃんちの飼い犬・玄三郎の犬小屋に突然入ってきて、それ以来、2匹はいっしょに住んでいる。犬と猫なのに、なぜか言葉が通じるのだ。 小学1年生のかのこちゃんは、天真爛漫。かつ「知恵が啓かれて」から、好奇心いっぱいで、健全そのもの。かのこちゃんは、同じクラスの女の子すずちゃんと「刎頚の友」になるのだが、その過程がおもしろい。 かのこちゃんが、すずちゃんの何に惚れたのか、行き違いがあり、なかなか仲良くなれなかったふたりが、一気に近づいたきっかけなど、とても愉快。しかも、このふたり、なかなかの知恵者なので、考えること、やることが粋で楽しい…
|
|
|
まるまるまるのほん
|
|
うっちー/へぇ~。楽しい驚き!
|
なるほど、こんな表現方法もあったのだ! 絵本に出てくるのは「まる」。そして、「おす」「こする」「クリックする」なんていうことばがあるので、おやおや、と思いながら、一応、その「まる」を、言われるままに、おしたり、こすったり。そして、ページをめくると、まるが増えたり、色が変わったりする。 もちろん、そのように描いているのだから当然だけど、人の想像力は、すごい! 「まる」が、気持ちの中では、生き生きと動き出しているのだ。「まる」たちを一列に並ばせたり、右や左に寄せたり、ふきとばしたり、大きくしたり。読んでいる者が絵本と一体になって遊べるしかけになっている。 電子書籍への皮肉ともとれるし、紙でだって…
|
|
|
ほしをめざして
|
|
うっちー/この絵本には、大人が立ち止まって考える、という効用がありそう。
|
作者のピーター・レイノルズは、はじめに「読者のみなさんへ」として、こう書いている。「わたしが好きなのは、心をゆさぶってくれる本、笑いや涙をさそい、深く考えさせ、行動を起こさせるような本です」と。確かに、彼の作品は、読後、立ち止まって考えさせられるものが多い。この絵本もまた、寓意に満ちている。 かわいい赤ちゃんが、木の下で微笑んでいる絵から、物語は始まる。絵の右には、「そよかぜの なかで めを さまし、たびが はじまる。」とある。そう、この子の人生の「たび」がはじまったのだ。 ハイハイから、やがて立ち上がり、歩き出す。はじめは、ただ無邪気に楽しく。やがて、ものごとに疑問を持つようになると、一匹…
|
|
|
小さいおうち
|
|
うっちー/淡々と始まり、最終章で大きな広がりとみごとな収束を見せてくれる。
|
戦前の、東京郊外で暮らしていた一家の生活が、その家の女中から見ての手記という形で語られる。 秀逸なのは、その形式。年老いたタキが、自分が若く、女中をしていたときのことを思い出して書きだすという形をとっているのだ。書いているのは、現在で、タキの甥の息子が時々現れては盗み読みしているようで、それも意識におきながら、タキは、書き綴っているのだ。 これが大きな伏線となっている。それが活きて来るのが「最終章」。それまで、平井家のこと~とりわけ、時子夫人と恭一ぼっちゃんのこと、タキの女中としての自負、当時の東京の様子などが、実に淡々と語られてきたのに、実は、その下に、とても大きなうねりが、起きていたのだ…
|
|
|
変な給食
|
|
うっちー/給食って…。変な取り合わせと、コメントに思わず笑ってしまう。
|
笑える。ジョークかと思えるほど、ひどい取り合わせ。メニューから忠実に再現しているということで、一品一品は、実際よりおいしそうに作っているだけに、メニュー構成の悪さが際立つ。「食育」の名が泣く。子どもたちが、こういう取り合わせをおかしいと思わなくなったら、だれが責任をとるのだろう。 食は文化だ。ちなみに、『韓国の子どもたち』(学研)という本に、韓国の小学校給食の1週間の献立が載っている。たとえば、月曜日(アワご飯、めんたいのからいスープ、魚のフライ、干しカワハギのいため物、キムチ)、火曜日(キビご飯、おでん汁、牛肉のしょうゆ煮、ゴマの葉のつけ物、キムチ)など。主食は、健康的な穀物入りご飯で、主…
|
|
|
なるほど忍者大図鑑
|
|
うっちー/なんだか役立ちそうな知恵や技が多くて、楽しめる。
|
忍者という素材そのものが、子どもにとってはワクワクするものだ。忍者の武器や道具や、超人的な技がおもしろいから。でも、この本では、知っていると使えそうな、なんだか得をしそうな「忍者の生活の知恵」とも言える工夫が、興味深くて楽しい。 たとえば、変装の例では、「ふくみわたでぽっちゃり」「どろをぬるだけで印象が変わる」など、やってみたくなるし(でしょ?)、地図を作るときには、「歩幅で距離を測る」「豆で数を数える~最初に袋に豆を100入れておき、建物を数えながら食べていき、残りの数で建物の数がわかる」なんていうのも、何かのときに役立ちそう。尾行術だって、「二人で尾行」「視線をそらせる」のがポイントで、…
|
|
|
ミリーのすてきなぼうし
|
|
うっちー/想像することの楽しさ。その楽しさが生む幸せ。
|
子どもの想像する楽しさにあふれている絵本。表紙には、楽しげに歩く女の子。その子の頭の上には、大きくて、ファンタジックなぼうしが。この表紙が、おはなしをすべて表わしています。 ミリーは、ぼうしやさんのウインドーに飾ってあったぼうしを気に入り、お店に入るのですが、お金が無い。そこで、店長さんにからっぽのサイフを見せ、それで買えるぼうしをお願いします。 考えていた店長さんが「あっ、あります!」とうやうやしくもってきたのは、大きさも形も色も自由自在の(見えない)ぼうし。「おきゃくさまのそうぞうしだいで どんな ぼうしにもなる、すばらしい ぼうしです!」…そう! この店長さん、実に粋でしょ? お金のな…
|
|
|
七つめの絵の具
|
|
うっちー/作品に向き合う姿勢、絵に込める深く激しい思い。いせひでこは、こう描いたんだ!
|
いせひでこの絵からは、静けさ、落ち着き、透明感を感じていたのだが、このエッセイを読むと、画家いせひでことは、激しく熱い人なのだと見方が変わった。そう思い、彼女の絵本『ルリユールおじさん』『あの路』『にいさん』『大きな木のような人』~どれも、大好きな絵本だ~などを読み返すと、なるほど、その激しさがあるから、その熱さを込めているから、静かでありながら、奥深く、力強さがあるのだと思い至った。 仕事に真摯に向かい合った老ルリユールの手、ゴッホを深い愛情で見守ったテオの姿、犬を抱く孤独な少年の瞳、思慮深い老学者の立ち姿。そこに込められているのは、まちがいなく、ゆるぎない強さでもあるのだ。 「えんぴつを…
|
|
|
ダッシュ!
|
|
うっちー/疲れた心にも効く、直球勝負の青春もの。楽しめます!
|
高校1年生で、陸上部のイノケンには、あこがれの先輩がいた。「ねーさん」こと、菅野桃子先輩である。美人でスタイル抜群、天才アスリートで成績もトップクラス、しかもサバサバした気持ちのいい性格。文句なしのいい女なのである。 「ねーさん」にあこがれるのは、お人よしのイノケン、デブでオタクのメタボン、イケメンのリョーイチ、魚屋の息子わび助の仲良し4人。ところが、この「ねーさん」が、重い足の病気にかかってしまうという、とんでもない事態に!4人は、献身的にねーさんを支える。そして、「ねーさん」が、「手術前に会えるなら顔が見たい」と言った元カレを探すことに。が、この元カレ、どこにいるのやら皆目みつからず…。…
|
|
|
でも、わたし生きていくわ
|
|
うっちー/悲しみとまどう子どもたちが、成長し、希望を持てるために。
|
とつぜん両親が亡くなって、3人きょうだいは、はなれて親戚のところにあずけられることになった。7才のネリーは、ジーンおばさんのところに。妹のアンナは、ナンシーおばさん、弟はおじいちゃんの家に。でも、3人は、土曜日はいっしょにすごす。それに、「べつべつでも、毎日こころでは会うことにしている」。 しっかりとあたたかい大人たち。子どもの心を考えて、パパやママのことを話してくれたり、みんなで見守ってくれている。子どもたちは、優しさに支えられる。 だから、ネリーは思う。「悲しみは消えないけれど、いま、わたしは、しあわせ。」 さびしさや悲しさをいやすのは、どういうことなのか、子どもがつらいとき、大人はどう…
|
|