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街の灯 街の灯
よし/持っているものと、持っていないもの。上流階級から見た帝都、東京。ある意味、現代への警鐘ともとれる深い余韻の残る作品。
ベッキーさんシリーズ3部作の第1作。 舞台は昭和初期の東京。主人公の英子は、財閥の社長の令嬢。通っている学校は、代々武士の家や貴族など、当時の上流階級のお嬢さんが通っている。英子のお抱え運転手としてやってきたのがベッキーさん。そして2人で謎を解くことに。 この作品の面白さは、北村作品ではすでにおなじみ。様々な本ですね。ベッキーさんの名前の由来にもなっている『虚栄の市』なんて、読みたくなりますね。巻末にはちゃんと参考文献もあるし、これまた本好きには楽しいですね。 ベッキーさんは父の「知っている人の娘さん」というだけで、その素顔は謎を秘めています。運転の腕だけではなく、武術も射撃もすごい。ボディガ…  全文読む 評価する

三たびの海峡 三たびの海峡
よし/生者が死者の遺志に思いを馳せている限り、歴史は歪まない。
河時根は第2次大戦中、朝鮮から強制連行され、九州の炭鉱に送られ、過酷な労働を強いられます。それは、想像に絶する非人間的なものだった。暴力と辱めを受けながら、食料もまともに与えられず、賃金もピンはねされる。そして、逃げれば監視の目とすさまじい暴力。働けば炭鉱事故の恐怖。こんな状態で彼らは、祖国に帰ることだけを希望として働いています。連行された者は、改善を求めて、ストライキを決行します。そこで主人公が唄う、ただひとつの歌が‥。ここで泣いてしまうんです。次から次に苦難が襲います。しかし、これは事実、日本が行ってきたことなんです。いや、もっとひどいことをしてきたのだと思います。だから、この事実を決して…  全文読む 評価する

借金取りの王子 借金取りの王子
よし/リストラ請負人、村上真介ふたたび。主人公はあなたやわたしかもしれない。
リストラ請負人、村上真介シリーズの二作目です。前作「君たちに明日はない」では、主人公の村上真介のキャラが立ってましたけど、今回はやや抑えた感じかなー。決して、爽快な話ばかりではありませんが、余韻が残る作品になっています。面白かったが、素直に笑えないよなー。ここに出てくる人たちは、会社勤めのサラリーマンばかり。そう、私と同じ境遇ではないか!一つ間違えば(間違わなくても)、明日にもリストラの身。そんなわが身を感じつつ、読み終えました。例えば「二億円の女」を見よ。デパートの外商営業部で働く営業目標、二億円の女性。仕事も順調なのだが、リストラ応じようとする。果たして、なぜ?答えは「数字に追われるのが嫌…  全文読む 評価する

檸檬のころ 檸檬のころ
よし/何気ない高校生活に当たる、一条のスポットライト
決してスポットの当たることのない、地方の女子高校の生活。普通の生活の中に宿る、高校生の悩みや不安を切り取る連作短編集。痛すぎて涙が出るんじゃなくて、なぜか胸がチクチク痛むという感じ。どの作品も、とってもいいですねー。といいつつ、最後の話「雪の降る町、春に散る花」は泣きました。東京の大学に入学も決まり、付き合っていた彼と離れ離れになることの主人公の辛さ。そして、別れの時を切なき描きます。自分も田舎を離れ、一人暮らしを始めたときの不安と寂しさがオーバーラップしてくるんですね。大切な人と離れ離れになる、寂しさが切々と伝わってきます。唯一、この作品の中で系統が違っていたのが「金子商店の夏」。司法試験に…  全文読む 評価する

その名にちなんで その名にちなんで
よし/名前はIDだけど、決してそれだけではない。数奇な名前を持つ男と家族の物語。
紛れもない傑作だとわたしは思います。冒頭から、ただならぬ気配。父アショケは、22歳のとき、祖父を訪ねて列車に乗る。その列車が、大脱線事故に遭い、アショケも巻き込まれてしまう。この時、手に持っていた1冊の本が、アショケを救うことになる。この本こそ、ロシアの作家ゴーゴリの「外套」。物語全体がこの冒頭の父親の事故が影響しているので、敢えてネタバレして書いてしまいます。やがて、結婚しアメリカに渡り、子どもをが生まれます。名付け親になってもらおうと、依頼していた祖母からの便りが、なぜか届かない。父はゴーゴリという名を、この子どもにつけることにする。そこから、息子ゴーゴリの人生が語られていきます。しかし、…  全文読む 評価する

静かにしなさい、でないと 静かにしなさい、でないと
よし/イタすぎて、笑えない。とってもコンプレックスで、ただならない小説
何とも言えない作品集ですね。テーマは「身の丈」。イタい話だけに素直に笑えないんですね。つまり、これ、精神的、肉体的、経済的にもコンプレックスをもっている人たちのお話だからです。例えば「内海さんの体験」。同じ会社の女性たちを、B(ブス)、D(デブ)と区分けして見ている。じぶんはF(フツー)と見られたいと思っているんですね。W(腋しゅう症)というコンプレックスを抱えつつ、ある日同級生と出会う。結構、デートにこぎつけるのだが、最後に出した決断が悲しい。他にも、カード破産をした夫婦が、自分たちの生活なりにロハス気分を味わおうとするが、ラストの何と皮肉なこと…「素晴らしいわたしたち」。ダニと鼠のいる部屋…  全文読む 評価する

信長の棺 信長の棺
よし/歴史ミステリーも面白いと思わせる1冊。歴史は権力者によって書きかえられるのだ。
信長の遺骸はどこに?謎の女、多志と出会い。導かれるように丹波へ足を踏み入れる牛一。謎が解明され、すべてが一つに収束されていきます。全ての謎が、太田牛一の足を使った調査により解かれていきます。信長の遺骸についても、本当ではないかと思える気がするから、不思議。これはこれしかないだろうと思うんですね。なぜ、本能寺ににあれだけ少ない人数しかいなかったのかというところも、ちゃんと推理されていますね。織田家の家系も絡めているところが、この作者の独自性かな。多志と出会い、丹波を訪ね、真相が分かるくだりから、また一気読みでした。秀吉の陰謀説は言われていますので、その辺も読みどころかもしれませんね。一番の驚きは…  全文読む 評価する

信長の棺 信長の棺
よし/奇跡とは必ず裏があるもの。歴史とは強者の作り話に過ぎない。
あの小泉純一郎元首相が在任中に感銘を受けた本として、一躍有名になった作品です。なんと内容は歴史小説と思いきや、歴史ミステリーでした。本能寺に倒れる直前、後に「信長公記」を記した家臣太田牛一に、信長は5つの木箱を託す。本能寺の変で信長の遺骸はどうなったのか。秀吉はなぜ苦戦していた中国から帰ることができたのかなど、謎を追う太田牛一を描く。何と謎のてんこ盛りすぎるのではと、感じてしまいますね。上巻は牛一が信長の家臣となって、託された箱、本能寺の変から秀吉の醍醐の大花見会に招待されるまでを描いています。信長の伝記を作るという使命により、各地を調査に回るという探偵役なんですね。作者自身が探偵となっている…  全文読む 評価する

聖域 聖域
よし/予想外の骨太小説。男は再び山を目指す。
予想外でした。ここまで読ませるなんて。ミステリーとしても、結構面白いと思います。主人公の草庭は大学時代の友人、安西と両神山に一緒に登ることになります。そこで、恋人絵里子が遭難した、塩尻岳に登ることを知らされます。十日後、安西も遭難。こんな、難度の低い山で、マッキンリーをも極めた男が死ぬはずがない。草庭は、絵里子と安西が遭難した塩尻岳を、目指します。捨てても捨て切れない山への思い。草庭は、大学時代に、後輩を事故で死なせてしまったという経験から、山を捨ててしまう。パッとしない会社で周りからなぜか疎まれトラブル続き。同じ職場に働く、江藤をひょんなことから殴ってしまいます。それが、山への思いを再び燃焼…  全文読む 評価する

主題歌 主題歌
よし/この歌がここで歌われたことは消えてしまわない
何てことはない、日常の女の子の会話が実に上手い。だからこそ、今この一瞬が実にいきいきと輝いて、愛しい。この一瞬、時間を大切にしなくてはと思えてくる作品です。ここに登場する女の子は、全員一生懸命、生きているんです。友人の結婚式で聞いた歌の場面では、「この歌がここで歌われたことは消えてしまわない」と、主人公実加は感動します。どんな有名な歌より、創作されても気持ちがこもった歌に勝るものはない。歌だけではなく、誰にもあった、何でもない、あの時、あの季節、あの一瞬が何と輝いていたことか。日常を切り取る手腕は並大抵ではないですね。そして、大阪弁が実にいきいきさを強調しています。実加が好きな、松坂慶子の「愛…  全文読む 評価する

火車 火車
よし/ミステリーの金字塔。オールタイムの大傑作。
傑作というか、現代ミステリーの金字塔と言っても過言ではないでしょう。今回、再読してみましたが、とても16年前の作品とは思えないほど、ミステリーの仕上がり、経済、社会小説の融合。そして、人間ドラマの完璧さ。どれをとっても凄い。とりわけ、犯人に迫る迫力は筆舌に尽くしがたいものです。そして、何より犯人の正体が分からない怖さ。やっぱりどれをとっても完璧な作品です。遠い親戚から失踪した女性の捜索を頼まれる、休職中の刑事。捜査が進めば進むほど、とんでもない事件の匂いに巻き込まれる。そして、カード社会の被害者と現代社会における弱者に対する冷酷な仕打ち。被害者と加害者の境目などどこにもなく、被害者も加害者も自…  全文読む 評価する

図書館の神様 図書館の神様
よし/本読みの気持ちをくすぐる、究極の癒し本。
清は高校の時、バレーボールに情熱を捧げていたが、仲間が自殺してしまう。自分のせいではないとわかっていながら、それから投げやりに。なんとなく高校の講師になり、今は不倫中。興味がないのに文芸部顧問。部員はなんと一人だけ。そんな一年を弟の拓実も挟みながら淡々と描いていく。 真面目な清の性格に前半はつらかった。部の仲間が自殺して、それから全て投げやりになって。この気持ちが痛いんです。ずっと、これを引きずって、地元にもいられなくて逃げて、温かさが欲しくて不倫して。そんな時、文芸部の顧問になって、垣内君と出会って、何かが変わり始めるんです。お互い運動が好きなのに本を読んでいる。これもまたいい。 最後の発表…  全文読む 評価する

逃亡くそたわけ 逃亡くそたわけ
よし/亜麻布二十エレは上衣一着に値する。おかしな二人の九州縦断癒しの旅。
「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」この幻聴が聞こえてくると、おかしくなる。プリズン(病院)を脱出。入院ン仲間のなごやんと逃亡を謀る。何もないふたりが行き着いたところとは… 病院から逃亡を図り、逃げるというロードノべルです。 この作品の博多弁が軽快で楽しくなる。 行く先々でのふたりの行動が愉快で、笑ってしまいます。特に阿蘇山は最高です。 しかし、肝心の二人なぜ病んでいったのか。なぜ不可思議な幻聴に悩まされるのかが、不明なままで終わるので、消化不良ぎみ。 不満はあるが、作品自体は面白い。 余談ですが、わたし「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」って何か知ってました。 聞いたことがあるなーと考えてい…  全文読む 評価する

誘拐ラプソディー 誘拐ラプソディー
よし/人生はオーケセラセラでいきましょ。抱腹絶倒の快作。
いやー、楽しかった。絶妙の主人公と子どもの会話。久しぶりにケラケラ笑った快作でした。 賭け事が好きで、サラ金に借金をし、挙句にお世話になっている親方を殴って飛び出た伊達秀吉。自殺を試みるものの、その勇気もない。車に無断で入り込み眠っている少年篠宮伝助を見て誘拐を思いつく。  実はこの少年の父親は「ボーなんとか」という会社のオーナーである。実はその筋のオーナー(組長)なのです。総力を挙げ、追う組長以下、その筋の人たち。そして、香港マフィア。それに警察。三つ巴の戦いはまさにラプソディ。 この作品はなんといっても、主人公が誘拐する伝助。まさに子どもの中の子ども。 「ふぁ~」「コケコッコー」「トレント…  全文読む 評価する

だいこん だいこん
よし/一家を背負う、つばきちゃんは、えらい!苦難から立ち上がる姿が感動を呼ぶ。
浅草の一膳飯屋「だいこん」を15歳で興したつばき。そのひらめきは幼い頃からの経験によるものだった。飯を炊くことが誰よりも上手かったつばき。そのつばきが「だいこん」を切り盛りする中から生まれる、アイデア。決して苦難にひるむことなく、立ち向かってゆく。 つばきは幼い頃から、父の姿を見て育ち、父を教訓として一人で「だいこん」を立ち上げます。 人を見る目やものの考え方は、父に教わりながら。 次々といろんな困難がつばきにふりかかります。そうした時につばきのアイデアが窮地を救います。こうした困難に遭遇したときの対処の仕方を教わったような気がします。 つばきのように強くありたいなー。 前半はつばきの幼い頃の…  全文読む 評価する

アヒルと鴨のコインロッカー アヒルと鴨のコインロッカー
よし/善意とは?悪意とは?伊坂幸太郎の最高傑作。
この作品は全てが明らかになる過程が実に秀逸で、早く先を読み進めたいような、しかし怖いような。そこまで読ませる作品はめったにないと思えた作品です。大学に入学したばかりの椎名の下に、隣人の河崎から持ちかけられた「一緒に本屋を襲わないか」という持ちかけに、椎名は不信感を持ちながら同意してしまう。これが現代。そして2年前の頻発するペット虐待事件。琴美はその犯人と遭遇することに。椎名と琴美の視点から語られる物語は、驚愕と感動のラストへ収斂してゆく。久しぶりにドキドキして読んだのでした。特に過去のパートはちょっとつらい。現代のパートから結末がわかってからは特に。登場人物は個性的で実にいい。ブータン人のドル…  全文読む 評価する

わくらば日記 わくらば日記
よし/姉さまのあの力は人を救いもしましたが…。昭和30年代を背景にした切ない短編集。
舞台は昭和30年代。過去を見ることができる少女鈴音とその妹、和歌子が事件に関わることによって知る真実と哀しみの5編。上手い作家さんです。この作品も、昭和30年代を背景に東京の千住を舞台に暮らす姉妹が関わる事件。鈴音という過去を見ることができるという超能力をもつ少女が解決していく物語。しかし、決して解決がいいことではなく、知らなくていいことまで知ってしまう悲しみ。それがやはり切ない。わたしが好きなのは「夏空への梯子」と「流星のまたたき」昭和30年代の世相と時代背景が痛切に伝わってくる。それはわたし達が決して忘れてはいけないこと。戦争の傷も深く残っていたんですね。「流星のまたたき」には涙なくして読…  全文読む 評価する

その日のまえに その日のまえに
よし/永遠なんてどこにもない。死を題材に生を問う。落涙必至の傑作
何気ない日常から、ある日突然、愛する人を失う人たちはどうするか。誰でも訪れる死、その日をあなたはどう迎えますか?こんなに泣いた本はいつ以来だろう。しかも号泣でした。とめどなく流れる涙。それでも読み続けなければいけない。それは重松作品を読む義務というものだろう。とっておきのラストがあるわけでもない。しかし、読んだ後、生きることや人生ってこういうものなんだなーと考えてしまうのが重松作品であると思います。この作品も例外ではない。誰もが避けて通りたい「死」をテーマに暗く、重く、辛い作品ばかりです。ここに収められた作品は、どの主人公たちも死を受け止めていくんですよね。自分がその日を迎えるまでどう過ごして…  全文読む 評価する

県庁の星 県庁の星
よし/公務員がスーパーに派遣。何とも皮肉なストーリーだが、現実はそう甘くない
県庁職員の野村聡は、1年間の民間企業への研修を命じられる。派遣先は先行き不安なスーパー。パートながら、スーパーを牛耳っている二宮泰子に触発されて、徐々に野村もスーパー自体も変わっていく。 ストーリー自体は悪くないです。第2部からはスピード感も増し、どうしようもないスーパーが徐々に変わって行くところあたりから、引き込まれてしまいます。だがしかし、第1部からの展開に少々無理があるのでは?第1部では県庁のキャリアから、スーパーに研修に来た野村の県庁で仕事を通して身に着いたものが皮肉たっぷりに書かれています。それはそれで可笑しいのですが、ちょっと違うぞ…てな感じに思ってしまいました。今、そんなに公務員…  全文読む 評価する

チルドレン チルドレン
よし/破天荒だけどまっすぐな男、陣内。またどこかで会いたい
「俺たちは奇跡を起こすんだ」家庭裁判所の陣内、同僚の武藤、友人の鴨居、そこで出会った盲目の青年永瀬。永瀬の側にいる盲導犬と優子。そして家裁で担当をする少年達。陣内をめぐる5つの物語。 この作品の感想は伊坂さんらしい作品だなーということ。とってもほんわかして、優しい気持ちになれる作品集です。殺人事件がおきるわけではなく、日常的、非日常的あわせた陣内を巡るエピソードが書かれています。陣内を取り巻く友人から見た陣内という男の話といった方がいいかもしれません。陣内のキャラクターを浮かび上がらせています。この男、とっても破天荒だけども憎めない。人の迷惑は顧みない、唯我独尊的性格に周りは迷惑している。で…  全文読む 評価する

ハルカ・エイティ ハルカ・エイティ
よし/健気に、前向きに生きる女性の一代記
暗雲漂う、戦前、出征間近い男、大介とハルカは結婚した。暗い時代を義父母に助けられ、健気に生きるハルカ。その時々の世相を背景に、戦前・戦中・戦後を持ち前の明るさで、前向きに生きた一人の女性の半生を独特の筆致で描く。 戦前から戦争に至り、戦争が終わる絶妙の筆致を見てください。「世界にたった一つしかない命も、一幕のコントのようにぽんとオワリになるもの…聖戦だと集団催眠にかかることがまたすべての戦争という状態である」言い得て妙、まさに戦争の本質を表しているではありませんか。夫の大介は女性に非常にだらしなく、次から次に関係を持ってしまします。そんな大介をハルカは見放さず、「大介さんはこんな人で1番はわ…  全文読む 評価する

椿山課長の七日間 椿山課長の七日間
よし/これぞ、一級のエンターティメント
予期せぬ突然の死に見舞われた椿山課長。あの世で彼は「邪淫の罪」に問われている。その嫌疑を晴らすため、美女の肉体を借りて4日間の現世行きを許される。全うなヤクザの親分、現世に未練を残す男の子も絡み、彼は現世で過去を調べることに。 久しぶりに、本当に偶然、手に取ったこの作品。これが大当たりでした。もっとも浅田次郎さんは泣かせの名手。一筋縄ではいかない作家さんだとは思ってましたが、見事にはまってしまいました。泣かせる歴史小説「蒼穹の昴」、数珠の短編集「鉄道員」、そして現代を舞台にしたこの作品でもやっぱり泣きました。浅田さん上手すぎです。設定が実に可笑しい。人は死んで七日間は魂はとどまっていると聞き…  全文読む 評価する

優しい音楽 優しい音楽
よし/それぞれの家族のかたち。瀬尾さんって、温かい!
亡き兄の面影を恋人と重ねる「優しい音楽」、不倫の相手の子どもを預かることとなった「タイムラグ」、公園で拾ってきたのは佐々木さんだった「がらくた効果」の3編を収録。人との出会いや関わりから生まれる、ハートウオーミングな作品集。わたしが好きなのは「タイムラグ」。不倫相手の子ども佐菜ちゃんを預かることとなった深雪。佐菜ちゃんと深雪の1日だけの交流が、温かく描かれています。この「タイムラグ」では、佐菜ちゃんとの出会いで恋人平太の家族が次第に見えてくるんです。奥さんのこと、決して望まれた結婚ではなかったこと。平太の家族のことなど知りたくもないことなのに、向き合わざるを得なくなるんです。一体、瀬尾さんが描…  全文読む 評価する

悪党たちは千里を走る 悪党たちは千里を走る
よし/偽装誘拐を企むおかしな4人組。その結末は。
カード詐欺や絵画、はたまた宝物詐欺など、せこい詐欺しかできない高杉と園部。同業の詐欺で知り合った菜摘子。一発でかい犯罪をと誘拐を思い立ったが、あろうことか、誘拐したい家の子どもと仲良しに。4人で偽装誘拐を企むが思いもよらない展開に。 展開自体は奇想天外で実に楽しめました。わたしは最後まで騙されました。しかし、最後にドンデン返しを予想していただけにそれはすかされました。この巧を含む4人組も実におかしい。自分の正体を表さない、高杉と菜摘子、園部はいいボケだし、巧も大人顔負けの存分な活躍。この4人が実に生き生きとして、読ませます。身代金の取引は、現代ならではの「こういうこともできるのか」とこれは感心…  全文読む 評価する

凍
よし/想像を絶する過酷な自然、標高7000mからの生還
ギャチュンカン北壁、それは世界的なクライマー山野井泰史、妙子夫妻にとって、一つの通過点にすぎなかった。登るべくして登る山だった。たった二人だけの登頂に雪崩が襲う。不測の事態に二人はどうやって生還したのか。壮絶に過酷な山から生還する夫婦を描く、ノンフィクション。 凄い作品でした。これがノンフィクションだけに、余計にその描写、特に山で雪崩にあう場面から緊張感が押し寄せてきます。た。雪崩に遭い、滑落。二人を支えていたロープ(?)に宙吊りになったときに妙子が迷いなく行った決断。度重なる雪崩に、10cmの棚にまたはブランコ状態の中、ビバークせざる終えない状況に陥った二人。決してあきらめることなく、生き…  全文読む 評価する

震度0 震度0
よし/賛否両論あるのでしょうが、ミステリーとして読めば面白いのでは
阪神大震災が起こった朝、700km離れたN県警では不破警務課長が昨晩から戻っていないという激震が走る。それぞれの思惑と不破警務課長の過去が絡み合い、さらに妻達の情報戦。それぞれの諜報戦が行われる中、真相が徐々に明らかになってゆく。 はっきり言って、ベストではないです。「クライマーズ・ハイ」のような感動作でもなく、「動機」「陰の季節」のような余韻もありません。しかし、このミステリーとしての仕上がりをわたしは評価します。阪神大震災という未曾有の大惨事を尻目に、一人の人物の失踪がN県警にもたらす動揺。キャリアやノンキャリアという争いと次期人事も絡みます。さらに過去の内部の不祥事も明らかになっていきま…  全文読む 評価する

ララピポ ララピポ
よし/報われず、悲惨になっていく、救いようのない話の中に人間の本質がある
フリーライター、キャバクラのスカウト、AV女優、カラオケボックスの店員、官能小説家、テープリライター。彼や彼女の生きがいとは?どうしようもない人たちのどうしようもない生活の行き着く先は? 奥田英朗の作品は本当に毒があると思います。この作品もアンダーグラウンドな人たちが一生懸命生きているのですが、報われず、ますます悲惨になっていく。救いようのない話なんです。奥田英朗はそんな世界を書きたかったんでしょうね。しかし、この作品、読後感もあまりよくなくて、満足ではないんですが、それを納得させる作者の力量に感心しました。これが奥田英朗なんですよね。直木賞を受賞した後、こんな作品を書く奥田さんはわたしは好き…  全文読む 評価する

水曜の朝、午前三時 水曜の朝、午前三時
よし/大切なものは、失って分かる
45歳の若さでガンに冒され、余命いくばくも無いと悟った女性翻訳家直美は、娘のために四巻のテープを残す。そこに語られるのは1970年の大阪万博での身を焦がすような恋と無残な結末、許されぬ過去。切なさとやりきれない過去の思いを45年という生涯を閉じるとき、告白することになる。 この作品の欠点というか気になったところから。文体は美しいのですが、テープに収めている内容を告白する形にしたため、少々粗さも目立ちます。(…でしたから突然…だに変わる)娘婿がテープを興すことになるのだが、娘婿の設定は不要のような気もします。結末がいまいちはっきりしない。気持ちが宙ぶらりんの状態にさせられます。などなど、欠点もあ…  全文読む 評価する

今ここにいるぼくらは 今ここにいるぼくらは
よし/よし
博士(ひろし)という小学生を主人公に7つの短編で構成されている。あるときは同級生のサンペイ君と釣りをする。また妹と山でオニババに出会い。宇宙人やUFOを探しに行く。そんな子どものころが懐かしく、ほろ苦くもある短編集。 実にいい作品集です。妙に懐かしく子どものころの気持ちって、きっとこうだったんだろうなあと思える作品です。印象的なのは「オオカミ山、死を食べる虫をみる」妹と山に虫取りに行く。そこで出会うオニババ。そして思いもかけない別れ。衝撃的で子どもにとっては、きっと忘れられない出来事で。かといって、大人になったら避けては通れない、いつかは経験することを幼い兄妹は見てしまう。「ムルチと、川を遡る…  全文読む 評価する

ホームタウン ホームタウン
よし/家族は、できあがるものではなく、つくっていくもの
柾人は幼い頃の両親の死がトラウマとなって生きている。たった一人の妹、木実が失踪した。そして木実の婚約者も行方不明に。デパートの「特別室」に勤務する柾人が二人の行方を調査する中から、浮かび上がる事実とは…。この作品は快作といっていいでしょう。作品自体はこじんまりとまとまって、読み終わった後も結構、爽快感がもてます。悲惨な殺人で家族を失った兄と妹が時間がたった今、新しい家族と共に暮らしているというところが本作品の大きなツボ。その家族も血が繋がったものではなく、特殊な仕事の中から追い込んでしまった家族と同居しているのです。祖父と高校生の女の子という家族。そして妹も婚約者という新しい家族をもって、これ…  全文読む 評価する

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