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ガールミーツボーイ ガールミーツボーイ
花の舟/遠い日の恋の匂いがする
 タイトルが示すように、恋の物語。短篇の「ボーイミーツガール」も収められています。 しかしながら「ガールミーツボーイ」は、苦い大人の現実が描かれています。 勤め始めて間もなしに、もの凄い勢いで恋をして、妊娠して、あっという間に結婚した“私”は今、息子・太朗(小1)と二人暮らし。夫・田口は3年前に失踪したまま、行方知れず。 そんな私の、暮らし、太朗への思い、田口への気持ちが綴られていきます。私と太朗の会話、毎週末にするお楽しみ、女友達との気の置けない食事とお喋り……。それらが、私の納得ずくの暮らしだというふうに、受け取って読んでいたら、ある時点から思わぬ方向へ、急展開しだします。 人生の頁を、む…  全文読む 評価する

パンダのポンポン パンダのポンポン
花の舟/おいしいお話
 野中柊さんの初めての童話ということで、楽しみにしていました。  とっても可愛いお話。 三つの話の中では、第三話の「紅白ふわふわケーキ」がいちばん好きです。 街一番の人気レストランのコック、パンダのポンポンが、いい味だしてます。お友達の猫のチビコちゃんとの掛け合いも、間のいいもので、二人のキャラクターの釣り合いもいいです。 三話とも、子供達が好きそうな食べ物が話の中心で、おいしそうで楽しい内容。 はらはらドキドキする場面もあるし、子供の好きなお誕生日のパーティーの話もあるし。  私が気に入ったのは、ポンポンとチビコの「よお。シスター」「よお。ブラザー」なんて、すかした挨拶なんかするところ。この…  全文読む 評価する

雨にもまけず粗茶一服 雨にもまけず粗茶一服
花の舟/“はんなり”“ほっこり”、いえいえ、お茶も京都も、その裏に本当の魅力があるのです。
 友衛遊馬(あすま)、18歳の成長物語。 青年の成長物語といえばお決まりの如く、主人公が情けないキャラクターに設定されていることが多いですね。でも私は、うだうだぐだぐだの時間を経て自分のすべきことや、アイデンティティーのかけらを見出して、前向きに歩いて行こうとするスタイルで終わることの多い成長物語が、結構好きです。 さて、この遊馬、<坂東巴流>という弱小武家茶道の家元の跡継ぎ。今は大学浪人中。次第に、跡継ぎという現実から逃れたいと願うようになります。 京都には<宗家巴流>の茶家があり、遊馬にとっては鬼門にあたる所。しかし、遊馬は、その京都に見事に絡めとられてしまうのです。 ここらあたり、松村さ…  全文読む 評価する

草の輝き 草の輝き
花の舟/柊子……草や木の命をみるような物語
 以前、佐伯一麦氏の『鉄塔家族』を読んだ時、斎木と菜穂に引き継がれた一連の物語を、ここらでもう、安泰で幸せに暮らす二人として書いてほしいと願いました。 今回の『草の輝き』は、二人の物語ではないのですが、これまで「染織家の妻」として描かれてきた人物が“竹丘柊子”と名を変えて、その若き日々を綴った作品です。 会社勤めを辞めて、草木染の道に進む柊子の、そのいきさつや、師匠に付いて草木染のあれこれを、失敗を繰り返しながら会得していくようすは、佐伯氏がどの作品にも織り込んできたことと重なってはいるのですが、主人公としての「妻」の過去を慈しむように、丁寧に描いたという点で、今度ばかりはゆったりとした気持ち…  全文読む 評価する

空はきんいろ 空はきんいろ
花の舟/きんいろの光のなか、2人の思いは……。
 おや?と目を疑うほどに、キッパリとした印象の表紙イラスト。 これまでの大島さんの児童向けの本とは異なるタッチの、細川貂々さんによる画です。キリッとした眉もりりしいアリサとニシダ君が描かれていて、今までの大島さんの児童向けの3冊とは、きっと違う、という所感を持ちました。 ゴジョウガワラアリサとニシダ君、小学生2人の、似たもの同士、変わり者同士のほぼ1年が描かれてゆく物語。これまでの3冊とも、子供の夏休みの出来事がテーマでしたので、今度は1年分だ、と得した気分。 アリサは“ゴジョウガワラ”という名字が好きじゃない。やめてと言っても、ニシダ君はそう呼び続けます。仲が悪いかというとそうではなく、つか…  全文読む 評価する

自転車少年記 自転車少年記
花の舟/駆け抜けたのは、今日へ続く道
 実に25年という歳月を1冊の本に閉じ込めた長大な物語です。 4歳から29歳までの、昇平と草太の歩みを自転車を軸に、描いています。  ちょっと、時間があれば本の表紙を見てみて下さい。表の二人の少年が、昇平と草太で、裏表紙の背を向けた少年が、二人に中学時代から関わることとなった伸男であろうと思われます。この3人のトライアングルが、絶妙な関係で描かれています。 自転車に乗れるようになった4歳から始まるこの物語は、風を切るスピード感や流れゆく景色、汗、登り坂下り坂……、実際のそれらもふんだんに描かれていますし、何より、少年が大人になっていくさまが、自転車で走ることに重ね合わされていて、爽やかな作品に…  全文読む 評価する

夜のピクニック 夜のピクニック
花の舟/貴子・起こり得た奇蹟。
 ともすれば吹き上がってきそうになる想いを、抑え抑えしながら読了しました。 甲田貴子と西脇融を中心に描かれた青春群像に、自分のその時代とは何の接点もないはずなのに、どうしようもなく重なってしまう友人たちの顔、顔、顔。 夜を徹して80キロをただただ歩く、北高の「歩行祭」で、貴子の胸に秘めた一つの賭けが、どう展開するのかもさることながら、恩田さんが鮮やかに描き分ける、高校3年生たちのどの人物にも、自分の過去の友達が重なってきて胸に迫るものがありすぎました。 必死で歩く彼らが、苦痛を紛らわせるために話すおもしろいこと、楽しいこと、恋の打ち明け話、将来のこと。 気の合う大事な友人としてお互いに選び合っ…  全文読む 評価する

車掌さんの恋 車掌さんの恋
花の舟/線路は続く……。人生を乗せて走る電車。
 淡いピンクの表紙が、はんなりと優しい装丁。5篇からなる短編集です。 どこかとぼけたような印象のタイトルが示すように、電車にまつわる話が、それぞれ趣を違えながらいい味わいを出しています。主人公たちは、各編で異なっていて、同じ時、同じ車両内の人々について描いたのではないのですが、全体を通してみると、まるで同車両に乗り合わせたかのように、各主人公の想いや日常のひとこま、人生模様がうまく収まっていると感じられます。 表題作の「車掌さんの恋」は、忘れがたい過去の恋人への想いと毎日の生真面目な勤務の様子が綴られていくなかに、突如出現するイレギュラーな小事件が、小気味いいアクセントになっています。前方確認…  全文読む 評価する

香港の甘い豆腐 香港の甘い豆腐
花の舟/香港の喧噪に背中を押されるように……。彩美・17歳の夏。
 今年は、大島真寿美さんの本が4冊も刊行され、どれもとても満足のいくもので、読者としては嬉しい年でした。『香港の甘い豆腐』を読みながら、これ読んじゃったらしばらくは大島さんに会えないなあと惜しいような気持ちでした。 そして、驚いたのは、『ちなつのハワイ』『かなしみの場所』が、大島さんの本領発揮ともいうべき、水彩画タッチの大島ワールドであったのに対して、この『香港の甘い豆腐』と『空はきんいろ フレンズ』は、これまでとは異なる力強い作品であったということです。おこがましい言い方ですが、ああ、上手になったなあ!気持ちよく筆が伸びているなあ!と、本当に嬉しく思いました。 物語の主人公は、彩美、17歳。…  全文読む 評価する

えりなの青い空 えりなの青い空
花の舟/空をひとり占めする方法
 読んでいる間中、「え〜り〜ちゃん」って、私も子供にかえって、呼びかけたくてしかたありませんでした。そんなかわいい、小学5年生・双川えりなの物語です。 ほんわかした作品ですが、今の子供達に起こりうる問題もさりげなく挟みこまれていて、はっとさせられます。 えりなの、ゆっくりが好きというところ、いいなあ……と思い、それをちゃんと言う子供であるのがまた、いいなあと感じました。えりなは、ただ空を眺めるのではなくて、古新聞を学校に持って行って、お昼休みに中庭で寝っ転がって空を見るのです。 ああ、こういうふうにすれば、空をひとり占めできるんだ!と嬉しくなりました。 空と向き合って、自分だけの空を感じて、と…  全文読む 評価する

川の名前 川の名前
花の舟/少年たちのペンギン・サマー
 夏休み。少年達。自由研究。川端氏の作品は初めてなのですが、少年達の登場する物語がとりわけ好きな私は、迷うことなく話に引き込まれていきました。この物語は、ノスタルジックな翳りがなく、本当にいま時の子供達のアイテム満載で、そういう意味でもおもしろかったです。携帯電話、私も大好きな海賊団が活躍するアニメ、アレだとわかるRPGのゲーム、メール等々、旬の小道具が上手に配されていて、そんないま時の少年達が、一夏を費やすことになった、川にまつわる考察と冒険と、友情の物語。 脩、ゴム丸、河童の3人を中心に、手嶋が加わり、その他のクラスメートとのいざこざや、連帯が、小気味よいテンポで、描かれていきます。 そし…  全文読む 評価する

Q&A Q&A
花の舟/物言わぬは腹ふくるる業
 なんと変わった形式の小説。聞き手と話し手が代わっても、ナンバーもなければ、小見出しもなく、切り替わっていきます。 都内郊外の大型商業施設で起きた大きな死傷事故の聞き取り調査のもようが、延々と語られていきます。同じ日同じ時刻にMという店に居合わせた人々の、記憶を頼りに、事故の原因を特定しようとする…と、始めは理解して読んでいたのですが、途中から、そして読了してみて、これは事故の謎解きではなく、大事故に遭遇した人々の心的世界、それも、負の世界を暴くかのような小説だと思うようになりました。 聞かれたことに答えるだけでいいのに、登場する人物は時間がたてばたっただけ、心に降り積もるものが多くなり、言わ…  全文読む 評価する

センセイの鞄 センセイの鞄
花の舟/ツキコさんとセンセイ
 久しぶりに、ゆったりとした幸せな「恋」の話を読んだという満足感が得られる本でした。最近は激しく恋い慕うもの、恋愛を通して女が自立していくもの、夫婦でダブル不倫しているものなどの恋愛小説を読み続けて、ちょっと疲れていましたから、ずごく新鮮に感じました。 ツキコさんとセンセイの、これは恋愛小説というより、“恋物語”と呼びたいと思いました。なぜ、この本が出た時に手にとらなかったかと、少し後悔しました。 ツキコさんとセンセイは、淡々と酒を呑み、おいしいさかなを食べ、静かに話し……端からみればそれは立派なデートのようなのだけど、本人たちはそう意識しないで会っている、そんな二人の行間から切なさや愛しさや…  全文読む 評価する

神も仏もありませぬ 神も仏もありませぬ
花の舟/佐野洋子さん、大好き
 ああ、おもしろかった!!というのが、まず来ます。歯切れよく、テンポよくこの世の理不尽さ、人間の不可思議さをぶった切る語り口に引き込まれて一息に読みました。 豪快・痛快・爽快、あるいは鮮烈・強烈・清冽とでも言ったらいいでしょうか。ストレートにこちらの胸に響いて、気持ちのいい風を送り込んでくれるような本です。 知り合いの農家のアライさんの言葉に「真実」を感じとり、素直に尊敬の念を抱く佐野さん。厳しい自然の姿に、感動を覚える佐野さん。老いた母との関わりにおいても、寿命が尽きそうな猫を世話している時も、佐野さんの“考える目”はどこまでも透徹していて、そこに人が生きる意味や真実、命あるものへの敬虔な態…  全文読む 評価する

かなしみの場所 かなしみの場所
花の舟/「三日月の舟」に乗って。
 『チョコリエッタ』『水の繭』で出逢って以来、大島真寿美さんの、静かにたゆたうような感受性に惹かれています。心が何処か遠いところへ向かう時、その漂い始める心の作用を、実にうまく表現する人だと思います。 『かなしみの場所』は、大島さんがこれまで書いてきた世界のひとつの到達点となる作品のように思えます。言葉に例えにくい“気配”あるいは“心地”とでもいうものが、実に丁寧に描きこまれていて、こちらの心に響くのでした。 物語は終始静かで、主人公の果那の生活を写し取りながらも、果那の記憶の隅に置かれたまま、ほんのりと色を差したようなある出来事を浮かび上がらせていくのです。 静かな物語ですが、果那には、離婚…  全文読む 評価する

ボーイズ・ビー ボーイズ・ビー
花の舟/栄造と隼人、70歳と12歳の友情物語
 頑固一徹の靴職人・園田栄造と、母を亡くしたばかりで、父の多忙さを思うゆえ、必死で弟・直也の世話をする、川畑隼人(小6)の心が結びついていくようすが、爽やかな読後感を誘う物語です。語り口、テーマの採り方共に、前作の『死日記』からは驚くほどの変貌です。 栄造は口の悪い、頑固じじい。隼人のことはガキ、犬猿の仲の掃除のおばさんのことはババアと呼ぶ。赤いアルファロメオを転がし、ファッションだって、めちゃくちゃいかしたスタイルでキメています。 たまたま、弟の直也の絵画教室が、栄造のアトリエがあるビルと同じだったことから、出会い、二人はゆるゆると近付きあって、お互いに必要な人になっていきます。 あの日、あ…  全文読む 評価する

なぎさの媚薬 なぎさの媚薬
花の舟/夢で逢えたら……
現代版、大人の男性向け、エロティックなお伽噺 といった作品です。もともと掲載されていた週刊誌の性格を考えますと、連載もので読者を引きつけていくには、これくらいのエロティックな描写は必然であったかと思いますし、あるいは、『愛妻日記』を物してから、重松氏のなかで、もっと違う形で官能的な小説を書いてみたいという気持ちが動いたのかとも思いますし、あるいはまた、単に編集者からの依頼でもって書いたのか……と、いろいろ想像してしまいました。 ただ、うちでは子供たちが(大きいのも小さいのもいるのですが)必ず私の読む本をチェックし、その作家で、自分たちが読める本はないのか?と尋ねます。重松氏には『きよしこ』など…  全文読む 評価する

だりや荘 だりや荘
花の舟/沈黙のなかに蠢く心理劇。
だりや荘という信州らしき土地のペンションが舞台になって、美しい姉妹、椿と杏を取りまく恋愛模様が、静かに心理劇のように展開していきます。 物語の始まり近くから、杏が、姉と夫・迅人の関係を見抜いていることが読み手に向けて明かされるのに、物語は静かに進んでいきます。こういう不倫の恋愛にありがちな、憎しみや嫉妬の感情がほとんど書き込まれないのが特徴的で、それゆえにいっそう、読み手は引きこまれてしまいます。僅かに、悔恨の情が滲みでるくらいのもので、それも相手に向けて告白するのではない、独白なので、表面上は、登場人物たちの感情のやりとりはありません。 美人の姉妹、姉と関係する杏の夫・迅人、途中からだりや荘…  全文読む 評価する

ジャムの空壜 ジャムの空壜
花の舟/苦悩・現実・日常
本のオビにある作者自身の言葉によると、この『ジャムの空壜』も前作同様、佐川氏自身の体験を基に書かれたものということです。 「男」と「妻」という呼称で、一組の夫婦が不妊症であることがわかり、治療に取り組む日々を、几帳面にどの出来事も取りこぼすことなく…といった感じで描いた作品です。ルポルタージュやドキュメンタリーの手法でなく、小説という形で著し、非常にリアルでありながら、露悪的ではないところが好ましく思えました。 実際、読んでいますと、感情をできるだけむき出しにせず淡々と書かれてはいても、丁寧に綴られているだけに、「男」と「妻」の抑えた苦しみや、時として沈みがちな気持ちがかえってこちらの胸に響い…  全文読む 評価する

生活の設計 生活の設計
花の舟/生活と仕事の関係……日常の視点から。
 『生活の設計』という、いかにも生真面目なタイトルに奇しくも表されているように、佐川氏のひととなりが、おそらく反映されているであろう作品です。佐川作品は初めて読みました。まとめて3冊読んだので、順次レビューを書きたいと思います。 今時、珍しく「労働」というテーマを掲げてはいますが、内容は作者自身を投影させたであろう“わたし”の生活と、仕事である屠畜場でのあれこれ、なぜ屠畜場で働くのか?といったことを、丁寧に綴った作品です。几帳面すぎるくらい、粘り気のある文体で、描写は細かく、佐川氏の言わんとすることに引き込まれてしまいます。 “わたし”が屠畜場で働くことにしたのは、なぜだろう?というところから…  全文読む 評価する

タトゥーママ タトゥーママ
花の舟/「それでも大好きだよ、マリゴールド」という、ドルの声が聞こえるようです。
 マリゴールド、スター、ドル(ドルフィン)の3人家族の絆を描いた物語。 悲惨にも卑屈にも描こうと思えば、いくらでもそう描ける要素が溢れかえっているのに、この明るさと強さと、清らかさは何なのでしょう。作者ジャクリーン・ウィルソンの、人間への信頼が揺るぎないものであるからこそ、描き得た物語だと思われます。 10歳のドルが語り手となって、風変わりなママ、自分より先に大人びていく姉・スターとの齟齬、貧しく切羽詰まっているはずなのに、どこかあっけらかんとした暮らしの様子などが、ユーモアを交えながら描かれていきます。 ドルとスター(13歳)は異父姉妹。タイトルからわかるように、ママのマリゴールドは全身タト…  全文読む 評価する

ふにゅう ふにゅう
花の舟/子育ては、泣き笑い。そうやって、子供に、“親”にしてもらいました。
本のオビには「頑張るパパの“超現実”を描いたユーモア溢れる小説集」とありますが、なかなかどうして、それだけじゃあない。結構シビアな現実も盛りこまれていて、ウッと胸に響くところが、たくさんありました。 5篇からなる短編集です。父親と子供(赤ちゃんから幼児くらいまでの年齢の)という視点からいろんなものが見えてきます。特に、共働きの会社員夫婦にのしかかってくるであろう、難問がリアルでした。 ☆おっぱいのある、ないがこんなに悩みの種になるパパ、最高だけどちょっと不気味。体を壊しちゃいけませんね。 ☆立ち会い出産の是非。いいところもあるし、女の方も絶対イヤだという人、結構いますよ。 ☆夫と妻の間に子供が…  全文読む 評価する

語り女たち 語り女たち
花の舟/語られる世界に遊ぶ至福
 新しい本が出れば必ず読む、大好きな作家たちがいます。北村薫さんはその中でも、いつも次が待たれる作家です。 『語り女たち』を手にし、読む時まで絶対開かずにいたのですが、さて読もうとして、緑の活字を目にした途端、次の朝 、家族が皆出掛けるまで待つべきだと判断しました。それほど、一人でゆったりと、大事に読みたいと思わせる本でした。そして読了した今、それは全く間違っていませんでした。いろいろな意味で贅沢な本でした。 満足と言って言い足りないくらい、心満たされて、酔わされたような心地。読み終わりたくなくて、一言一言、大事に活字を追いました。ゆったりと心ゆくまで、読書というものの醍醐味を、こんなに味わわ…  全文読む 評価する

マイマイ新子 マイマイ新子
花の舟/新子のアンテナは、なんでも感じてしまう。
“マイマイ”って、あれのこと?と思って手にしました。私の故郷でもこう言っていたので、違和感がないのですが、マイマイとはつむじのこと。どんなマイマイかというと、アンテナのような…とだけいっておきましょう。 昭和30年、9歳の新子の目を通して見た世界が語られていきます。美しい麦畑の風景、戦争の影をひきずった大人、こっそり見た映画、学校の先生、年中行事等々が、みずみずしい感性と言葉で描かれています。 昭和30年代の空気を吸って大きくなった私には、記憶の片鱗が重なるところも多く、面白く読みました。例えば、“水玉子”。こんな言い方さえ、今はもう通用しないのではないかと思いつつ、懐かしさでいっぱいになりま…  全文読む 評価する

おばあちゃんはハーレーにのって おばあちゃんはハーレーにのって
花の舟/プタとキャットの会話が素敵です。ユーモアのなかに、真実があって何度も頷いてしまいました。
 パワーに溢れ、知的で行動的、煙草をふかし、メットに皮ジャン、ハーレーで飛ばす、おばあちゃん・プタに魅了されました。一緒に暮らす孫娘キャットが、思うこと考えることが、12歳らしい言葉で綴られています。 子供の心の襞が非常に丁寧に描かれた物語です。キャットと親友のロージー、ロージーの兄・トムとの友情も、この年代の子供たち独特の、正義感、連帯感が真っ直ぐにこちらの胸に飛び込んできて、気持ちがいい。 キャットが抱える問題は2つ。学校での、ウィリーの意地悪と、離れて暮らす、双方とも役者をしている両親との同居問題。 普通のおばあさんらしくないプタの外見のことで、ウィリーにひどいことを言われたりいじめられ…  全文読む 評価する

僕の双子の妹たち 僕の双子の妹たち
花の舟/家族であること、夫婦であること、生きること。
家族愛、兄妹愛に満ちた物語。しかし、深い喪失感が静かに流れる物語でもありました。両親を突然の自動車事故で亡くした“僕と双子の妹たち”が抱え持つ悲しみが、日々を過ごすなかに溶けだして、さざ波が立つように、こちらの胸に押しよせてきます。 もうすぐ26歳の僕、20歳の実のりと穂のか。親を亡くすということが、こんなに大きな子供たちであっても、生活の心棒を失い、寄る辺ない気持ちにさせるものであることを思い知らされた気がします。父母の生きていた日々が自らの生きた日々にすっぽりと重なり得る、ある意味では幸福な子供たち。また、ある意味ではいわゆる普通の家族にもたらされた、思いもよらない出来事。 喪失感を充分に…  全文読む 評価する

鉄塔家族 鉄塔家族
花の舟/斎木と奈穂……過去も今も享受する心
『マイシーズンズ』、『無事の日』から3年。主人公たちの名は、異なっているものの、佐伯一麦氏の書き続けている世界が再び、そして、これまでとは少し違って、仄明るく暖かな空気を纏って繰り広げられている作品です。というのも、佐伯氏が、これまでの作品で書き続けてきた、小説家の男と草木染めをする染織家の妻の物語は、それぞれの作品で名前を違えているものの、再婚、前妻との間のいざこざ、喘息をはじめとする病の病歴、染色の勉強をするためにノルウェーで過ごした妻との日々のこと、等々の 二人の歴史が、そのまま引き継がれて『鉄塔家族』にも描かれているのです。                 この作品では、“斎木”と“奈…  全文読む 評価する

ルビーの谷 ルビーの谷
花の舟/愛されてこそ、愛することができるようになっていく子供たち。
 美しいタイトルと装丁に惹かれて、読みました。カバーのイラストは、はまのゆかさん。中にも、何葉かの挿絵があって、いい味を添えています。こういうYAものを読む時、中の挿絵も、私の楽しみのひとつです。 フロリダ(女)とダラス(男)などという、あまり有り難くない名前をつけられた双子の、ひと夏の心の成長、変化を丁寧に綴った物語です。孤児院で育ち、何度里子に出されても、二人は大人たちの小狡さと拮抗するように、それをかわす術を覚えて孤児院に戻されてしまい、手に負えない問題児としてもてあまし者扱いです。 孤児院の経営者夫妻は、大人の悪いところばかりを集めたような人たち。小心もので、見栄っ張りで、威張り屋で……  全文読む 評価する

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