耳元に、風を感じた。山間を渡る冷たい風。踵の下数百メートルを吹き抜ける、空恐ろしい風。主人公佐和俊幸は日曜登山家である。学生時代に見初めた同い年の英雄的登山家小田切敬介と偶然同じ会社に勤めていることを知り、強引に近づく。山で亡くなった敬愛する叔父の面影を追う小田切ははじめ佐和を冷たくあしらうが、やがて……というお話。ふたりの山男の近づき方、微妙な距離感がいい。ザイルパートナーとなってからの信頼関係、恋愛感情に発展するほどのめり込んでからの葛藤など、日本の名山の繊細な描写とともに丁寧に書き込まれた文章にも好感が持てる。ボーイズラブであるし、最後にはお定まりの展開も用意されているので、万人向けでは…
|