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穴
久我忍/呆れるほど緻密な構成
  子供向けなのかな、と思って読むといい意味で裏切られる作品。 空から降ってきたスニーカーのせいで無実の罪を着せられた少年、スタンリーは、グリーン・レイク・キャンプという名の、少年強制施設へと入ることになる。 見渡す限りに続く焼けた大地。緑のないグリーン・レイクにて彼を待ち受けていたのは、毎日一つ──直径1.5メートル。深さ1.5メートルの穴を掘るという過酷な労働だった。 穴を掘るのは何のためか? それは人格形成と、根性を養うためであるらしい。にもかかわらず、『何か珍しいものや面白いものが出たら必ず報告するように』という言葉が、穴掘り作業が何かを見つけるための作業であることを示唆して…  全文読む 評価する

君のための物語 君のための物語
久我忍/出会いと喪失
  表紙買いした一冊ではあるけれど、いい買い物だったと思える本。文体も読みやすくさらりと読めるが内容は決して軽くはない。悲劇もあれば本文では語られない戦いの過去もある。それでも本作の読後感が温かく感じられるのは、「救い」があったからだろう。  主人公の「私」はある冬の日に、身投げしようとしているセリアという少女を助け、何故か結果的にレーイと名乗る不思議な青年に命を助けられることになる。 レーイは徹底的な秘密主義を貫いていた。だが新聞に掲載された美術的価値の高い手鏡と櫛を自分のものだと言い張る老婆や、歌姫パレオロッタとの係わりによって主人公はレーイが老いることなく、見かけよりもとても長…  全文読む 評価する

死神の精度 死神の精度
久我忍/ミュージックを愛す死神の物語
  伊坂幸太郎の作品はどれもとても好きなのだが、いつもいつもどのジャンルにカテゴリすべきか悩むものが多い。そして今回読んだ『死神の精度』もまたそんな印象だ。 短編という形で雑誌掲載された『死神の精度』『死神と藤田』『吹雪に死神』『恋愛で死神』『旅路を死神』『死神対老女』の六編を収録した一冊。短編それぞれも出来はいいが、やはり一気に全部を読んでこそ、だと改めて実感した。 主人公は『死神』である。とはいえその単語から連想されるファンタジックなイメージと主人公が重なることもないし、作品がファンタジーなのかといえば少し悩む。本作品に登場する死神は、『職業』といった意味合いの方が強いようにも思…  全文読む 評価する

太陽の塔 太陽の塔
久我忍/ひねくれものたちの青春小説
  太陽の塔を見たのはもう何年も前になる。 当時同じ仕事をしていた友人と、やはり仕事の関係で向かった大阪で、初めてあの独特のフォルムを見たとき、「かっこいー!」 と声を上げて駆け出した友人のことを思い出して、そしてこの本を読んでみようと思った。 主人公である「私」は交際していた当時から続けていた「水尾さん研究」を、彼女に袖にされてからも根気よく続け、その成果は14のレポート(原稿用紙に換算して240枚)を完成させるに至った。だがその後も彼の研究は続く。 ふられてから1年近く彼女をつけまわす姿は明らかにストーカーだが、主人公はそれを「水尾さん研究」のためであると言い訳をしつつ、けれど恐…  全文読む 評価する

幼年期の終わり 幼年期の終わり
久我忍/孤独だったのは人類なのか
  物語は、巨大な宇宙船が地球を訪れることに始まる。 地球人より遥かに高度な知能と文明、技術力を持った異星人たちはオーヴァーロードと呼ばれた。彼らは人々を、人類だけでは成し得ることが出来なかった戦争や貧困のない平和な時代へと導いていく。 SF小説というジャンルが苦手な私だったが、かつて何の気まぐれか、『旧版』を読んだことがあった。SFといえば宇宙船が登場し、異星人と戦って──という印象しかなかった私にとって、この本との出会いは衝撃だったことを記憶している。その作品が、光文社古典新訳文庫のラインナップに加わったとのことで早速『新訳版』を読んでみた。 内容は三章に分かれる。 第一章『地球…  全文読む 評価する

ゴーレムの檻 ゴーレムの檻
久我忍/閉ざされた牢獄と外界の華麗な反転
 『アリア系銀河鉄道』に続く宇佐見護博士のシリーズ。 博物学者である宇佐見博士は趣味であるお茶を楽しんでいる時、彼が生きる世界とは全く別の世界に意識のみ飛ばされてしまうことがある。 この本はそんな博士の五つの飛ばされ体験先での謎とその謎が解かれるまでを綴った一冊。 収録作品は『エッシャー世界』『シュレディンガーDOOR』『見えない人、宇佐見風』『ゴーレムの檻』『太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)』の五編。 表題作である『ゴーレムの檻』においては、1630年代のイギリスに飛ばされそこで名前も経歴も全てを消され、神に見捨てられた牢獄に囚われたままの『ゴーレム』と呼ばれる男の存在を知ることから始…  全文読む 評価する

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