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革命待望! 革命待望!
後藤和智/私は革命を待望しない
 アナーキズム(無政府主義)がブームだという(平成21年6月11日付朝日新聞)。その一連の流れの上に本書も位置づけられている、というのだが…。 本書は、閉塞感に満ちているとされる現代に対して、1968年に起こった「革命」がどのような意味を持つのか、ということを考察した本である「らしい」(少なくともまえがきの文言を信頼する限りにおいては)。私が「らしい」と表現したのは、本書はその試みに全く成功しておらず、むしろ自分を「下層」に起きたがる「中流」の若年層に対して「お前らが下層であるはずはないだろう」と「説教」しているだけの本としか言いようがないからだ。 そもそもなぜ本書の論者たちは「革命」という概…  全文読む 評価する

戦前の少年犯罪 戦前の少年犯罪
後藤和智/「戦前は」キレやすい少年の時代、と言えますか?
  戦前から現代まで種々の少年犯罪の記録を集成したサイト「少年犯罪データベース」の管理人がこのたび『戦前の少年犯罪』というタイトルで、その名の通り戦前の少年犯罪について解説した本を出した。 本書は実に、いろいろな意味で衝撃的だ。例えば戦前においては、小学生がナイフで人を刺したり、少年による幼女レイプも多く起こっており、体罰を起こす教師に対して児童や親は警察や訴訟を利用して徹底的に反抗し、さらには旧制高校生は連夜の如くストームと称して暴虐の限りを尽くす。さらに本書の著者は、この程度の事実を調べていないで、戦前についてさも理想的な教育(学校、家庭問わず)が為されていたと無根拠に断定する「…  全文読む 評価する

自殺するなら、引きこもれ 自殺するなら、引きこもれ
後藤和智/正統にして異端の教育社会学入門
  教育学の専門家ではなく、単なるマニアでしかない私がこういうことを言うのもなんだが、本書はかなり優れた教育社会学の入門書だ。少なくとも著者名だけ見れば、いかにもオタク系統、あるいは「萌え」系統の本と思う方もいるかもしれないが、本書は、片足を教育学の専門知に(とはいえ、この著者たちも教育学の専門家ではないが)、もう片方を著者らの不登校及び「ひきこもり」体験に据えて、かなり骨太の教育論を語っている。 本書で語られるのは、近代的な「学校」システムの終焉と、そのシステムから逸脱したものに対して溢れんばかりの非難を浴びせかける我が国の「世間」への挑戦である。まず、多くの人が誤解していることだ…  全文読む 評価する

メディア・バイアス メディア・バイアス
後藤和智/「危険・不安」より「安心・希望」を
  今はもう打ち切られた「発掘!あるある大辞典」であるが、その番組における捏造を糾弾する一方で、他方では「ゲームが子供の脳を壊し、少年犯罪を急増させている!」だの「伝統食が軽視されたせいで子供の学力が崩壊した!」などという俗論を述べている番組があったら、どうするか。少なくとも私は、そんな番組など金輪際信用しない。もとより後者のみでも信用する気は失せるのだが、それに前者が加わったら、余計に信頼感を放棄してしまうだろう。 怪しげな健康情報による被害を最も多く受けるのは、何よりその情報を信じた視聴者や読者であるのは間違いないだろう。多くの人たちは、自らの健康や、子供の教育に対する不安を常に…  全文読む 評価する

臨床心理学における科学と疑似科学 臨床心理学における科学と疑似科学
後藤和智/精神医学が医学であるために
  大部である。然るに、本書は、心理学を生業としている大学の教員や院生、さらに言えば心理学が関わってくるであろう、社会学、経済学、医学などを学んでいるものにとっても、必読としか言いようがない。 本書は、怪しい「精神分析」がはびこる世の中に、科学の視点から検証していこうとする意欲作である。本書はあくまでも米国において出版されたものである。例えば、怪しい自助セラピーを煽るマスコミや、これまた怪しげな種々の民間療法などが、米国においてはびこっており、それらに対するある種の疑念が、編者らをして本書の執筆に向かわせたのだろう。然るに、我が国においても、おおよそ米国と同様の状況を見ることができる…  全文読む 評価する

モノ・サピエンス モノ・サピエンス
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.8 ~現実に立脚しない衒学趣味はもううんざり~
本書によれば、1980年代の「ポストモダン」以降、消費社会化が進行して、人間の生命や根源的な価値まで商品化され、流通される存在でしかなくなった。そして今や人間の「使い捨て」の時代であり、フリーターや、いわゆる「援助交際」はその典型例である。また、そのような行動を平然とやる若年層(例えば女子高生)は、上の世代から見れば不道徳かもしれないが、彼らの行動は「超消費社会」においては紛れもなく正しい行動なんだってさ。 ふーん…。で、それで、という感想しか持ち得ないな。だって、本書で提示されている、「ポストモダン」社会=「超消費社会」における新しい「現実」を示すような事実(臓器移植、代理母、「援助交際」、…  全文読む 評価する

平成男子図鑑 平成男子図鑑
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.7 ~なるほど、これは確かに「平成男子」図鑑だ~
はっきり言おう。本書は、「平成男子」なる1種類の男子しか示されていない。 え、何でそうなるの?と驚かれる方もいるかもしれない。しかし、あたしにしてみれば、これこそが本書の本質なんだ。 なるほど、確かに本書にはたくさんの「男子」が提示されているね。目次だけ見ても、「リスペクト男子」「オカン男子」「草食男子」「ツンデレ男子」(おいおい…)などなど、瞠目しちゃいそうだ。 あたしが先ほどのように判断した理由は、以下の二点。第一に、各種「男子」の「生態」(笑)についての描写。曰く、それぞれの「男子」には共通点があり、それは上の世代ほどにこだわらない、ということや、コミュニケーションに淡白であることなど。…  全文読む 評価する

神は妄想である 神は妄想である
後藤和智/宗教なんてなくても、人は生きていける
本書は怒りの書である。というよりも、著者は明らかに激怒している。神の名の下に、人間の尊厳を踏みにじり、科学を侮辱する、宗教という巨大なモンスターに。 なるほど、我々は確かに――我が国においてはそれほど身近であるわけではないが――宗教なるものの悪徳を目の当たりにしている。宗教をめぐって人が殺され、あるいは幼い子供たちが偏狭な思想を植え付けられ、貧困が拡大し、疑似科学がまかり通る。特に著者の住んでいる米国においては、教育の分野においてすら、進化論を教えることは道徳を崩壊させる、と大きな声で主張されているのだ(そういえば一昨年の今頃、同様の主張が我が国でも見られましたね(産経新聞))。 著者は科学者…  全文読む 評価する

セラピー文化の社会学 セラピー文化の社会学
後藤和智/心理学的言説の闇からネオリベを撃つ
巷に出回っている「批評」系の本(特に新書)では、自分が見聞きした「衝撃的な」情報(特に青少年問題がらみ)や、あるいは自分の教えている学生や院生、ないし一部のアニメや漫画、インターネットの書き込みに過剰に反応して、「これがネオリベラリズムに毒された日本の新しい現実なのだ!」とわめき立てている光景がよく見られる。しかし、この類の言説は総じて、多くの論理的な飛躍や、あるいは基本的な事柄についての無知をはらんでいる。さらに言うと、一見ネオリベを批判しているつもりでも、ネオリベの歴史的、ないし地理的な条件には見向きもせず、主として若年世代に対する敵愾心をあおり立てるような言説に終始しているのが現状だ。 …  全文読む 評価する

ルポ正社員になりたい ルポ正社員になりたい
後藤和智/この著者抜きにして若年雇用問題を語るなかれ!
《むしろある程度生産性の高い人は、例えば今まで8時間かかっていたものを4時間で作り上げてしまえば、あとの4時間は自分の別なことに使えるわけですよね。ある部分フレキシブルに、個人に自主性を持たせた働き方へのシフトが必要です》《この仕事でいいものを作りたい、そして、お客様に満足してもらいたい、自分でお客様から評価を得たいと思う人というのは、どんどん仕事をするわけですよ》(奥谷禮子の発言。風間直樹『雇用融解』東洋経済新報社、pp.222,223、2007年5月) このような財界の人間観を金科玉条とし、ここ10年の間に、労働市場、特に若年労働市場や末端の起業において、様々な雇用破壊が行なわれてきた。平…  全文読む 評価する

いじめの構造 いじめの構造
後藤和智/「本気の大人」になりたくない人のための「いじめ学」入門
あの日の喧噪を、我々はもう忘れつつある。「あの日」とは、平成18年10月頃、とある学校で「いじめ」を原因に自殺した人が出た、ということが報道されてから、多くの番組で「いじめ自殺」が採り上げられ、特番もたくさん組まれ、またかの悪名高き教育再生会議が、これまたお粗末な「緊急提言」を出して、多くの専門家、準専門家の失笑を買った(ちなみにこの「提言」は、本書でも嘲笑されている)。「いじめから子供を救おう!」と叫んだり、あるいは「現代のいじめはこんなにも酷くなった」と嘆いてみせたりする「本気の大人」たちの姿を、新聞、テレビ、雑誌などで見ない日はなかったほどだ。 それから数ヶ月経過した現在、もはや「いじめ…  全文読む 評価する

これが憲法だ! これが憲法だ!
後藤和智/これが護憲だ!
 いやあ、朝日新書の編集部も粋なことをやってくれるもんだ。『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)や、『憲法とは何か』(岩波新書)などで、通俗的な護憲論たる9条フェティシズム的(本書では「憲法典フェティシズム」と表現されているが)護憲論ではない、論理的、戦略的な視点から現憲法の意義を問い直してきた注目の憲法学者・長谷部恭男氏に、こちらもリベラル陣営における気鋭の政治学者・杉田敦氏をぶつけてくるとは!これがおもしろくないはずがないじゃないか!そして本当に興味深い本に仕上がっている。 本書の構成を大雑把に述べるとすれば、これまで長谷部氏が述べてきた憲法論に対して、杉田氏が通俗的な左派言説への対応も…  全文読む 評価する

新書365冊 新書365冊
後藤和智/新書を媒体とした時評集、しかし索引が使いづらい
 保守派で知られる「諸君!」(文藝春秋)の連載を集めたものが、朝日新聞社から新書として発行される、ということだけでも(ある意味)興味深いのだが、本書のベースとなった連載(「今月の新書完全読破」)は、最新号が並ぶたびに楽しみにしていた(ただし立ち読み。特集がおもしろかった月は買ったけど)。それが平成18年3月号で終了した。おそらく別の雑誌(「論座」朝日新聞社)で行なっている週刊誌時評との調整が難しくなったからだと思われるが(片や一月に出た新書を全部読み、片や主要な週刊誌を全部読む。さすがの著者でも、これはやりづらかっただろう)、このような形で世に出るとは思わなかった。 本書は、前出の「完全読破」…  全文読む 評価する

治安はほんとうに悪化しているのか 治安はほんとうに悪化しているのか
後藤和智/真の意味での警世の書
 世に「警世の書」を謳う書物は多々あれど、その多くが自分の思いこみや若年層に対する愚痴を天下国家と結びつけたような本ばかりである。そのような状況下において、真に警世の書と言える書物がここにある。著者は元東京都職員、それも平成15年から17年にかけて、前田雅英や竹花豊の下で東京都の治安対策に、しかも知事本局治安対策担当部長として深く関わった。その著者が、本のタイトルにもあるとおり「治安は本当に悪化しているのか」ということを、自分が都職員として行なってきたことに対する反省と懺悔として書いている。 治安が悪化している、と多くの人が言う。そしてそこで必ず語られるのが、少年と外国人による犯罪の「急増」で…  全文読む 評価する

性と暴力のアメリカ 性と暴力のアメリカ
後藤和智/戦争国家の背中は暴力を語る
 「親父の背中」とか「男は背中で語るものだ」という表現があるけれども、その表現に倣うとすれば、アメリカの背中はまさしく「権力」と「暴力」を語っている。暴力論や権力論に関しては、理論面から考察した様々な名著があるけれども、アメリカという国の成り立ちを描きつつ権力と暴力の深層まで語った本書は、まさに権力や「愛国心」を語る上で欠かせない本に仕上がっていると言えるだろう。 私としては、本書の第2章「「暴力の特異国」への道」は、騙されたと思って読んで欲しいと思っている。私の読んだ限りでは、この部分こそが本書の根幹であり、そして米国の根幹でもある。 米国にとっては、その独立を決めた独立戦争自体が、常備軍で…  全文読む 評価する

他人を許せないサル 他人を許せないサル
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.6〜もう疑似科学ですらなくなったのだなあ〜
 実を言うとあたしは、本書を読んで、この著者の言っていることを疑似科学と呼ぶことをやめようと思った。だって本書の内容って、前著にあたる『考えないヒト』(中公新書)の使い回しばかりであるだけでなく、同書を引いて、「自体はさらに深刻化している」とか言っている箇所まであるんだから。確かに事態は深刻だな、ただし著者が。 前著の使い回しが認められる部分を簡単に説明しておく。例えば、45ページの「右脳人間」「左脳人間」。これに関しては、脳の右と左がそれぞれ別の役割を負っている、ということに対して有意な批判が出ているけれども(例えば、ロルフ・デーゲン『フロイト先生のウソ』文春文庫)、これは明らかに使い回しで…  全文読む 評価する

愛国の作法 愛国の作法
後藤和智/逃避行
 明らかに、香山リカの『ぷちナショナリズム症候群』で若年層の「右傾化」について知った気になり、三浦展の『下流社会』で格差社会について知った気になっている似非左翼の「癒し」路線を狙った人選・タイトル・内容・出版社(笑)に辟易とさせられる。ハンナ・アレントやマックス・ヴェーバーなど、近現代思想における暴力論にしても、あるいは我が国の論壇における「愛国」という言葉の取り扱いにしても、荒削りすぎて、最近権力論や暴力論を多く読んでいる私にとってはほとんど知的刺激のないものだった。清水幾太郎とか丸山真男とか司馬遼太郎を持ってくるのもいいけれども、どうせなら三島由紀夫くらい持ってこいよ、鈴木邦男氏(『愛国者…  全文読む 評価する

検証・若者の変貌 検証・若者の変貌
後藤和智/「若者論の失われた10年」を超えろ!
 若い世代を口悪く罵った本——『ゲーム脳の恐怖』『ケータイを持ったサル』『下流社会』など——が定期的に出版されては、瞬く間にベストセラーとなり、若い世代の「病理」を「証明」するための資料としてさまざまなところで引き合いに出されるようになる、という状況を見るにつけ、若者論の研究家としての私はつくづく嫌気がさしてくる。そもそもこのような本を書く人たち、あるいは嬉々として読む人たちは、若い世代の「実像」や「現実」を見ようとはしていないのではないか。むしろ、マスコミで喧伝される「今時の若者」的な「記号」をバッシングし、それによって自分は「あいつら」より劣っていないんだ、と安心感を得たいのではないか、と…  全文読む 評価する

器用に生きられない人たち 器用に生きられない人たち
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.5〜症候群、症候群、症候群、症候群…〜
 本書を読んで痛感したんだが、本書で展開されているような論理が蔓延している現代の我が国って、はっきり言って「心の健康」ファシズム社会、とでもいうべき社会なんじゃないかと思う。皇學館大学の森真一助教授は、名著『自己コントロールの檻』(講談社選書メチエ)で、心理学的言説がはびこる社会の暗部を描き出したけれども、その本で発せられたメッセージがいかに徒労に終わっているか、ということは、本書のような実に下らない本が何の臆面もなく刊行されちまうことが如実に表してるんじゃないの? あたしはネット上で若者論を研究しているということで、真っ先に関心が向かったのは第2章「若者たちのシンドローム」なんだが、いやあ笑…  全文読む 評価する

自己コントロールの檻 自己コントロールの檻
後藤和智/心理学主義という妖怪が徘徊している
 カール・マルクスは、著書『共産党宣言』の中で、「ヨーロッパを資本主義という妖怪が徘徊している」といった趣旨のことを書いていた。このマルクスの発言に倣うのであれば、現代では、心理学主義という妖怪が徘徊している、と言えるかもしれない。 本書は、我が国における心理学主義の広がりを社会学の視点から批判的に考察した本である。最近の我が国において、心理学主義的な言説がはびこり、よく見られる人間関係論や少年犯罪に関する「解説」はもちろん、学生の就職活動、子育て、教育、自己啓発に至るまで、心理学の「知見」が「引用」され、心理学的知識を身につけることによって自らを律することが求められるようになっており、また世…  全文読む 評価する

復興計画 復興計画
後藤和智/現代の美観と先人の苦悩
 私は仙台に住んでいるが、仙台を代表するストリートである定禅寺通は、仙台が「杜の都」であることを象徴するたたずまいを見せている。この通りは、戦後の復興計画の下でできた場所であり、終戦直後の通りの写真と現在の通りを見比べてみると、その変容の度合いのすごさに驚かされる。また、東北の三大祭りにも数えられる仙台七夕も、現在の形で行われるようになったのは終戦直後の昭和天皇陛下の行幸に合わせて伝統の仙台七夕を現在のような形で復興させたのが始まりである。 仙台に限らず、近代における我が国の多くの都市は、自然災害や戦災のたびに復旧ではなく復興を繰り返し、現在の如き街並を造り出してきた。本書はそのような復興の中…  全文読む 評価する

いじめの社会理論 いじめの社会理論
後藤和智/安易な共同体主義からの訣別
 所謂「いじめ」が一つの教育問題としてカウントされるようになって久しい。実を言うと私も「いじめ」の体験者であるのだが(いじめられるほうとして)、その当時は私がいくら嫌だといっても、それは単なる「遊び」だとか言った「いいわけ」で何事もなかったかのごとく処理されていた。今思えば、私は当時「いじめてもいい対象」として扱われていたのだろう。 本書は保守派も進歩派も見落としている「いじめ」論の欠落を埋める、社会学の立場からの論考である。従来の「いじめ」論は、保守派が青少年における規範意識の後退と捉えるのだが、進歩派もまた「あなたと私がつながっている」という実感、端的に言えば「絆」をベースにした安易な共同…  全文読む 評価する

萌え萌えジャパン 萌え萌えジャパン
後藤和智/世界に想像する余地を
 平成17年9月13日、私は所謂「メイド喫茶」の先駆的存在である「メイリッシュ」という店に寄った。メイド喫茶の中ではどのようなシチュエーションが展開されるか、ということはあらかた想像していたのだが、いざ実際に店に入っていて、店員(メイド)に「お帰りなさいませ、御主人様」といわれたときにはさすがに戸惑ってしまった。私は少々気恥ずかしかったので、早めに昼食を済ませて退出したのだが、中にはメイドと楽しく会話をしている人もいた。 メイド喫茶とは、食事のみならず、メイド(=店員)と「御主人様」(=客)という想像上の関係性を楽しむ場所でもあるのだが、昨今よく聞かれる「萌え」というものは想像上の存在や関係性…  全文読む 評価する

希望のニート 希望のニート
後藤和智/「希望」としての若年無業者問題
 玄田有史氏や小杉礼子氏が、英国における若年層雇用問題の言葉として「ニート」(=Not in Education、 Employment or Training)という言葉を紹介したところ、すぐさまこの言葉が現代の若年層の堕落を象徴する言葉の仲間入りをしてしまい、若年犯罪でも「ニートの犯罪」という「フィギュア萌え族」並みの杜撰なプロファイリングが横行するようになってしまった。これはもちろん玄田氏や小杉氏の責任ではないけれども、我が国の青少年問題言説は、それらの問題をおしなべて彼らの「心」の問題として処理し、彼らを反面教師とした施策や言説ばかりが横行するばかりになる、という傾向には、いい加減歯止…  全文読む 評価する

子どもが減って何が悪いか! 子どもが減って何が悪いか!
後藤和智/少子化を「イデオロギー」にするな
 松谷明彦『「人口減少経済」の新しい公式』(日本経済新聞社)を書評したときにも書いたが、少子化を巡る言説の周辺には俗流若者論がはびこる。ただ、俗流若者論でなくても、根拠不明瞭な、あるいは「子供」や「家族」を過度にイデオロギー化した「理論」もまたはびこっている。 本書の前半において俎上に上げられている、「少子化を防ぐためには女性の社会進出を進めることが必要だ」というのは、その典型であろう。我が国においては、若い女性が子供を「産みたがらない」のは、「産みたくても産めない」という経済状況(たとえば育児における経済的リスクが大きすぎること)があり、それを改善しなければならない、というのである。この「理…  全文読む 評価する

誤読日記 誤読日記
後藤和智/皮肉に満ちた「書評欄の裏番組」
 本書の元になっている連載「斎藤美奈子ほんのご挨拶」が、朝日新聞社の週刊誌「AERA」から消えたとき、私は「AERA」から毒が一つ消えた、と思った。今は齋藤孝氏が「サイトー変換」という書評コラムを書いているけれども、斎藤美奈子氏ほどの輝きが感じられないのはなぜだろう。もちろん、齋藤孝氏のコラムにも、斎藤美奈子氏のものとはまた違った魅力があるのだけれども、何か足りないような気がしてならない。 そんな不全感を抱えたまま、私は「ほんのご挨拶」、さらにその連載が始まる前に「週刊朝日」で連載されていた「誤読日記」をまとめた本書を読んだ。まず本書の内容に関して述べると、本書はその時々のベストセラーを観測し…  全文読む 評価する

『噂の眞相』25年戦記 『噂の眞相』25年戦記
後藤和智/雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ
 読者諸賢もご存知の通り、この著者が編集長を務めた反権力スキャンダリズム雑誌「噂の眞相」は、平成16年3月に発行された4月号をもって休刊した。私は、この雑誌の休刊後に起こった事象、例えば「週刊文春」出版差し止め事件や、イラク人質事件、衆議院議員選挙などを考えていると、「噂の眞相」ならどう報じただろうか、と思うことがたまにある。 「噂の眞相」はいかにして反権力雑誌として功を遂げたか。本書は編集長自身によるその総括である。「噂の眞相」は、著者が創刊当初から関わっていた雑誌「マスコミ評論」における編集部分裂の後、昭和53年に創刊された。著者によると、創刊には3000万円の資本金を集めなければならなか…  全文読む 評価する

考えないヒト 考えないヒト
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.4〜これは科学に対する侮辱である〜
 本書は、昨年12月から今年1月にかけて行なわれた、この著者・正高信男による「NHK人間講座」のテキスト『人間性の進化史』をほとんどそのまま書籍化したものである。 はっきりいって、突っ込みどころが満載なんだよ、これ。『人間性の進化史』を既読の人には本書の突っ込みどころが全てテキストの突っ込みどころと重なるんだけれども、まだ読んでいない人のためにいっておくと、例えば第2章「キレる」で採り上げられている「ギャル文字」。あたしはこの文字が血反吐が出るほど嫌いなんだけれども、それにしても正高の「ギャル文字」に対する評価はひどすぎはしないか?何せ、自分が理解できないことをそのまま《どう考えてももはや言語…  全文読む 評価する

壊れる日本人 壊れる日本人
後藤和智/俗流若者論スタディーズVol.3〜壊れているのは一体誰だ?〜
しかし、ここまで露骨な俗流若者論が、まさか高名なノンフィクション作家・柳田邦男氏の手によって成ってしまうとは、まったく夢想すらしてなかったよ。しかし、完成してしまったんだからしょうがないよね。 何が問題かというとね、全編、現代の若年層に対する罵詈雑言で溢れかえってるんだよね。特に問題の多い点を2つ挙げるとすると、まず7〜22ページの「見えざる手が人間を壊す時代」。しかし、あたしにとってすれば、この章のタイトルをそのまま「見えざる手が柳田邦男を壊す時代」と読み替えてもいいくらいだ。何って、例えば8ページにおいて、明らかに特殊な状況にある幼稚園の送り迎えについて、柳田氏は《子育てに関して、何か凄い…  全文読む 評価する

ヒトを呼ぶ市民の祭運営術 ヒトを呼ぶ市民の祭運営術
後藤和智/真価が問われるのはこれから
「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」(以下「JSF」)をご存知だろうか。JSFは、毎年9月の第2土曜日・日曜日に、仙台を中心に全国からさまざまなジャンルの音楽家たちが集まり、仙台市街地のいたるところで演奏が行なわれるという、もしかしたら世界一の規模を持つのではないか、と思えるほどの音楽会である。平成16年の時点で第14回を迎えた、歴史の浅いフェスティバルであるのだが、このフェスティバルの開催期間中は定禅寺通に交通規制が敷かれるようになるなど、その重要度はきわめて高い。 このフェスティバルを運営するのは、自治体(仙台市や宮城県)ではなく市民による運営団体である、といったら読者諸賢はどう思われ…  全文読む 評価する

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