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重力ピエロ 重力ピエロ
オレンジマリー/家族というもの。
妙なタイトルの本だな、と思ったのが始めでした。伊坂さんの著書は大抵、中身は然ることながらタイトルやカバーまでもが魅力的。期待に胸を膨らませて、冒頭から面食らってしまった。『春が二階から落ちてきた』ストーリーの土台となる設定は暗いし、正常な人間ならば憤りを感じるような背景も見え隠れしているというのに流れが至って軽快。ネガティブ要因を発することもなく、淡々と物語りは展開されていく。美青年の『春』は変わった性格をしている。実際にこういう人が友人にいたら、飽きないはずである。発想が突拍子も無いし、発想するだけでなく、それを実行に移してしまう。物事の枠組みというものをハナから無視するような言動が大胆で面…  全文読む 評価する

あんじゅう あんじゅう
オレンジマリー/温かみのある装丁と、神話的なストーリー。
青を基調とした装丁が素晴らしいと、まず第一に思った。『おそろし』の装丁は、彼岸花の影というか…本当に縁起が悪そうな感じでしたが、今回は全然違った趣向なのかと思わせる。その表紙に、襖からこちらを覗く謎の影?物体?がありますが、その正体はきちんと本書の中で明かされます。第二に、挿絵が可愛らしく、すごく良かった。おちかの表情や顔つき、言葉では表現し辛い『くろちゃん』の様子や、色んな登場人物の容姿などの特徴もきちんと追うことができた。総じて、読み易く、挿絵のおかげでイメージも掴み易く、情景を思い描きながら読破できた。印象的だったのは『逃げ水』。人間の都合で振り回される、一人の神様の話。なんだか切ない気…  全文読む 評価する

悪人 悪人
オレンジマリー/本当の『悪人』は誰か。
映画化もしたし、話題にもなった書籍。友人に勧められて借りた本でした。吉田修一さんは、個人的にはあまり馴染みのない作家さんなので、どんな文体で、どんな世界に読者を引き込んでいくのだろうと、楽しみに読み始めました。スルスルと読み進められることが、第一の利点。読書慣れしていない読者でも、どんどん入り込めると思う。鍵となる人物、要となる人物は序盤から登場するし、非常に読み易い印象を受けました。登場人物の細かい描写や特徴、性格なども浮き彫りになっているのできちんと頭の中に入っていく。読み進めていくと、一体誰が本当の『悪人』が誰なのか、分からなくなってくる。どの登場人物も実在しそうな感じなので、小説の中、…  全文読む 評価する

利休にたずねよ 利休にたずねよ
オレンジマリー/茶の道に点在する美の数々。
知人に、もの凄く面白いと勧められて借りた一冊です。私よりも数倍は読書している兄も結構前に読了しているので、興味はずっとあった本だったのは確かです。そして、寂しげに花をつけた一輪がカバーにあるのがまたしんみりとした心境に誘ってくれます。でも、馴染みが無い花、何のお花なんだろう…と思っていたら終盤で理解できました。しかも本書は直木賞受賞作。期待は大きく膨らんでいきました。始まりは、千利休が切腹するその日。あれ、いきなりそこから始まるなんて、一体…?と疑問を抱きながら活字を追っていった。恥ずかしながら、千利休についての知識は茶人であったことくらいで、いつの時代の人か、どういった人物だったのかという事…  全文読む 評価する

おそろし おそろし
オレンジマリー/人の想いのおそろしさ。
旅籠のお嬢さんであるおちかは暗くて辛い拭いたくても拭えない過去があり、江戸にある親戚のお店に預けられることになった。カバーのちょっとホラーチックに描かれた彼岸花にはどんな意味が潜んでいるんだろうと思いながらページを捲っていきました。『おそろし』というタイトルから、恐ろしいストーリーなんだろう、でもあの宮部みゆきさんだから恐ろしいだけに終わるはずは無いという確固たる信頼がありました。そしてその期待は、決して裏切られない。ふとしたきっかけで、おちかは変わり百物語の聞き手となる。彼岸花の意味は、思っていたよりも結構深い。人殺しが共通しているように思えますが、その手口が残忍で非道、読書中に何度か眉間に…  全文読む 評価する

五郎治殿御始末 五郎治殿御始末
オレンジマリー/日本が大きく変化した時代の狭間で生きた武士たち。
久しぶりの浅田次郎さんの作品、早速目頭が熱くなった。浅田次郎さんのユーモアと深い知識、表現力に感服です。長い徳川の歴史に終止符が打たれ、お上が変わった時代。明治初期は特にありとあらゆる意味で日本国家が大きく「変わった」。お金の単位が円になり、時間が刻から時間、分、秒と細かく分けられ、髷を落として西洋の衣に身を包み、それまで当然のように行われてきた仇討ちが禁じられ、更には身分、家屋敷、お禄が剥奪され、暦が太陰暦から太陽暦にガラリと変えられた。祖母は明治後期生まれだからか、幼い頃の記憶では新しい布団をおろすのに「大安」の日を選んでいたし、時折和服を着付けていた。カレンダーを覗き込んでは「旧正月」や…  全文読む 評価する

天狗風 天狗風
オレンジマリー/女の心の暗い部分。
お初捕物控シリーズの2冊目。通町の岡っ引き、六蔵の妹であるお初には霊感がある。お奉行の命によって、不可解な事件を探ることになった。神隠しにあったという娘の真相に迫る。良縁に恵まれ、文句なしの玉の輿にのる予定でいた下駄屋の娘が忽然と、父親の目の前で姿を消したことに始まる。とある同心は、父親が実の娘を手にかけたと疑いをかけ、神隠しにあったという話を全く信じようとしない。解決を急ぐあまり、力ずくで白状させるというやり方を押し通している同心もいるという噂を耳にし、お初の心は曇る。冤罪というのは、今も昔も存在しているものなのだと思うと哀しくもなり、悔しくもあります。人を裁けるのが人しかいない限り、なんら…  全文読む 評価する

SOSの猿 SOSの猿
オレンジマリー/何のSOS? 何の猿?
まずこの装丁。面白くて凄く好きです。無重力で猫や少年が浮いている感覚。眺めているだけで、なんだか心が躍るようでした。今のところハズレがない伊坂さんの作品、期待は膨らみに膨らんで張り切ってページを捲っていった。語り手がコロコロ代わるストーリーは追うのに苦労したりするので苦手意識がある。けれど、伊坂さんの作品はいくつか、語り手が代わるものがあるのにスラスラ読み進められるのは一つの利点だと思う。なぜだろう、と自分なりに分析してみたら、答えは簡単でした。語り手が、その章の頭に明記されているから混乱せずに読めるという事。このちょっとした工夫が、著者は工夫とは思っていないかもしれないけれど、私のような単純…  全文読む 評価する

かまいたち かまいたち
オレンジマリー/江戸の人々の暮らしを乱す事件。
短中篇4つから成る一冊。最初の2篇は、もう過去に読んでいた宮部さんの時代小説に比べると勢いに欠いているなぁ、面白みがいま一つ足りないなぁと思ってあとがきを読むと、初期の作品であったと書かれていた。そこで得心がいったと同時に、驚きもあった。プロの作家さんとして駆け出した頃に、すでにこんなふうに書けたのかと思うと、やっぱり宮部さんは凄いと思った。江戸の町を騒がせる辻斬り『かまいたち』。首の皮一枚繋がるくらいに人の首を切るという残忍な手口。その犯人の顔を見てしまったと思った一介の町娘が、その正体を突き止めようと動き出す。霊験お初物語のお初を思い起こすような勇気や負けん気が微笑ましい。そして、その事件…  全文読む 評価する

モダンタイムス モダンタイムス
オレンジマリー/溢れんばかりの情報と実生活。
まず『魔王』の続編と言われているけれども、『魔王』の登場人物のその後というわけではない。背景にちらつく程度で、本書は本書で十分1冊として成り立っていると思う。最初はなかなか読み進められなかった。情報に溢れた536ページだし、何より、拷問とかそういった物騒なストーリーは苦手です。恐ろしい妻を持った一介のプログラマーが検索することから巨大な何かと対峙しなくてはならなくなる。何度と無く問われること。「勇気はあるのか?」伊坂さんの得意とするところでしょうか。意味深な言葉が何度か繰り返し登場するので、リズムが良くなる。そして、最初は何でもなさそうな出来事が、実は…と後になって真相が明かされる。読者は何度…  全文読む 評価する

魔王 魔王
オレンジマリー/腹話術。
 タイトルからもっと禍々しい話かと思いきや、ユーモア溢れた伊坂幸太郎さんのリズムは確かにあって安心しました。幕開けから選挙の話だし、もっと政治的思想が錯綜する話なのかと思ったけれど…そこがポイントなのではない気がします。 主人公の安藤兄は、いつしか自分が思ったことを狙い定めた第三者が口に出す能力に気付く。それを腹話術と名づけ、ストーリーは展開されていく。政治的な小説は得意ではないので戸惑いつつも読み進めると、そこまで政治とは直截的な繋がりは無く、もっと違ったところに視点を向けてみようと思った。 『ゴールデンスランバー』を髣髴とさせる国のリーダー的存在、首相は本書にも登場する。若手で期待され、断…  全文読む 評価する

切羽へ 切羽へ
オレンジマリー/島の暮らし。
 第139回直木賞受賞作。これまで読んだ、直木賞受賞作は興味深く、面白かったので本書を友人が貸してくれると言って差し出してきた時にはすごく嬉しく、またわくわくしました。一体、どんなストーリーなのだろう、初めて触れる作家さんだな、といった感じに心が弾んでいました。 まず始めに、島の雰囲気、暮らし、景色、方言、郷土料理などが細かく表現されていて驚きました。特殊な魚の呼び名、料理名には当然馴染みも無く、読んでいるうちになんとなく南国の、九州辺りの島ではないかなと思ったりもして。従兄弟が話す方言に似通うところもあったからかもしれない。 本書の帯に書かれていた文章には、切羽の意味がこめられていました。『…  全文読む 評価する

予知夢 予知夢
オレンジマリー/ガリレオの謎解き。
 物理学者の湯川学が、一見オカルト的要素の濃い事件を科学的に検証し、解決していく過程が面白い。先を読ませない流れも、さすがは東野圭吾さんといったところでしょうか。 湯川学のイメージが、映画の『容疑者Xの献身』を観て以来、どうしても福山さんに重なってしまう。湯川のちょっと変わった性格も変わらず見事に描かれているし、時折登場する物理的論理もなるほど、と頷ける。綱引きの、どちらが優勢かという実験は印象が強かった。腰を落として引く方が力が入る、と私も小学生の頃習った記憶があるからだと思う。こってりとした物理の世界だと、私もお手上げになっていまうんだけれどそういった身近な例を取り上げて簡潔に説明してもら…  全文読む 評価する

愛逢い月 愛逢い月
オレンジマリー/狂気と恋。
 初めての篠田節子さんの書籍です。まず、ジャンルを問われた時には答えに窮すると思った。恋愛とも言えそうで、それだけに収まらないような感覚。ホラーとも違うんだけど、グロテスクな表現も含んでいるし、恐怖心だって芽生える一冊。 狂気、という言葉が浮かんで離れない。今住んでいるニューヨークも登場するので、ありありと想像して読めた一編もあった。死を間近に控えた、非常に前向きな妻を前に限界を感じた元編集者、妄想の世界での情事、危険を犯してダイビングに励み、家庭、妻を蔑ろにしてきた夫が事故に遭い、一室に閉じ込めてかいがいしく世話をする女。そのどれもに狂気という言葉が合うように思えて仕方が無い。 今まで読んだ…  全文読む 評価する

夢をかなえる幸せの収納力 夢をかなえる幸せの収納力
オレンジマリー/収納とは?
 実用書を手に取ること自体、あんまりないので新鮮な心持で本書を開きました。収納が下手な私なので、何か学べることがあればと思って。読み始めて、筆者のユニークさも感じ取れるので退屈しない一冊で良かったと、ひとまず胸を撫で下ろした。だって、実用書と言えば退屈だという、ある意味ステレオタイプを拭えないでいるのも事実だから。 部屋が片付かない理由、原因、片付ける時に陥りやすいミスなどが細かく記されていて分かり易い。けれど、書かれていることは案外当たり前の事のようにも思える。でも、言われないと自覚出来ないといった印象。なるほどねぇ、言われてみればそうだという連続。状況、部屋別にざっと分けて対処法も書かれて…  全文読む 評価する

ホリー・ガーデン ホリー・ガーデン
オレンジマリー/一見微妙な友情なんだけど…。
 久しぶりの江國香織さんの書籍でした。独特な雰囲気を持つストーリーが多いのが特徴かと思う。本書もまた、フェミニンなイメージを彷彿とさせるところがあるし、のんびりとした、しっとりとした感覚が終始消えません。 果歩と静枝、全く違ったタイプの二人は親友同士。だけど、ところどころ「親友なんだよね?」と問いたくなるようなシーンも交えつつ、確固たる友情が浮き彫りにされている。痛いところをお互いに突き合い、それでも続く友情。思えば、私も自分の親友と一度だけ、過去に衝突したことがあったなと考えつつ読み進めていきました。 果歩が引きずって、捉われ続けている過去の恋愛。それがどういったものなのかという具体的な話は…  全文読む 評価する

地下街の雨 地下街の雨
オレンジマリー/不思議な気分になる短編集。
 読み易い短編集で、ほとんど移動時間中に読了した一冊。一編一編、最初に抱くイメージが尽く覆される流れと展開、大いに楽しめました。 最初の『地下街の雨』は、女性の執念というか…ねっとりした部分が顔を出して若干嫌悪感を抱いたんだけれども、そんな裏話があったとは…と最後には驚く。読み手として、終始ハラハラするし、先が気になるのでハイテンポで読み進められます。登場人物の個性や描写が巧妙で、流れを掴み易いのも利点の一つだと言える。 『ムクロバラ』は少し混乱しました。幻覚なのか、真実なのか。刑事の知人とか親戚が居ないので、実際に色んな話を聞く機会はない。だから、刑事ものの小説やストーリーを読む時は想像の上…  全文読む 評価する

坂の途中 坂の途中
オレンジマリー/勝利とかれんの進む道。
 一人暮らしさえすればかれんといつでも二人の時間が持てると思っていた勝利。心理描写が相変わらず繊細で具体的なので、実際に自分もそういう気持ちを味わっているような感覚になるのが村山さんらしい。どんなふうに緊張しているのか、どんなふうに衝撃を受けたのか、どんなふうに焦ったのか。そして、どんなふうにかれんのことを大切に思っているのか。 “失恋”は痛くて仕方がなくても乗り越えなければならないこと。後々、あれは良いスパイスだったと思えるような未来に立てるように前向きにならなくちゃいけない。だけど、星野りつ子は体調を崩し、拒食症気味になり、倒れ…。本人は、前向きにならなくちゃいけないのを知っているようだけ…  全文読む 評価する

ブルースカイ ブルースカイ
オレンジマリー/斬新な感じ。
 桜庭一樹さんの書籍はこれが二つ目。前に読んだ書籍は、興味がない世界が中心だったし、舞台も設定も自分好みではなかったけれども最終的には読み応えがあったなという感じだった。今回はどんな流れなのだろうと読み始めてすぐ、中世ドイツの魔女狩りの話か、と思ってわくわくした。特別、魔女狩り関係の話が好きなわけでもないけれど、ストーリーの展開がページを捲る指を駆り立てる。むしろ、このマリーと言う少女を主人公にして一作書いてほしいくらいだ。 魔女狩りが始まってしまったときの焦燥感や絶望感、マリーの身に降り掛かる出来事に息を呑む。そこで救世主のように登場した少女が日本人の高校生で、一体どんなジャンルに属する小説…  全文読む 評価する

美しき凶器 美しき凶器
オレンジマリー/灯台下暗し。
 知人から「東野さんらしくない一冊だけど、面白いよ」と言われて借りた書籍。読み始めて間もなく、なんだか妙な感覚になった。幕開けが、意味ありげなグループの強盗場面。そして、やっぱり意味ありげな人物の殺害。しかもそのグループの面々には、表沙汰にされたくない何かがあるような雰囲気も漂っている。彼らがかつて大活躍した有名スポーツ選手であることから、何を隠そうとしているのかはすぐにピンときてしまった。東野さんの作品は、先が読めなかったりそのトリックの凄さに目を丸くすることが多々あるので、終始気が抜けない作品なんだけれども本書はわりと気ままに読み進められた。なるほど、確かにそういった面では東野さんらしくな…  全文読む 評価する

源氏物語 源氏物語
オレンジマリー/平安時代に誕生した不朽の名作。
 古典の授業では、何度か現代語訳に苦労した古い古い長編小説、源氏物語。学生だった私が光源氏に抱いたイメージは、女性好き。平安時代では当たり前だったのか、帝や貴族が幾人もの妻を抱える世。瀬戸内寂聴さんの手によって、不朽の名作として長年伝えられてきた長編が現代語訳されたものなので是非読んでみたいと思って手に取った一冊です。 光源氏の誕生から描かれている。授業では、どの章をやったのかは全く覚えていないけれど、光源氏がなんとも美しい容姿を持って生まれた事を思い出した。そうだ、美男子なんだ、とページを捲る手は早まった。けれど、物語の中に数々登場する短歌だったり、絶対敬語であったり読みにくさも感じられる。…  全文読む 評価する

遠い背中 遠い背中
オレンジマリー/別々の暮らし。
 このシリーズの5冊目を読んだのは、何年前だっただろうか。物語の流れは薄々しか覚えていなかったけれど、あらすじを読んだら大体思い出したのであっさりと読み進めることができた。ロンドン赴任を終えて帰国してくるかれんと丈の両親と、それをきっかけに独り暮らしを視野に入れるショーリ。一般的には普通のカップルの暮らし、つまりは別々の家に住み、生活するという形になろうとしているかれんとショーリのその先が気になる。 言ってしまえばかなり晩生なかれんと、そのペースを乱すことなく待ち続けているショーリ。そんな二人の純粋さが伝わってくるシーンも多々あり、また恋愛の醍醐味というものも感じられる。5歳の年の差なんて、個…  全文読む 評価する

輪違屋糸里 輪違屋糸里
オレンジマリー/京の女性の芯の強さ。
 まず第一に、芹沢鴨の暗殺の成り行きが事細かに記されていて、終始ハラハラしっぱなしだった。時折語り手が代わって違った視点から物語が展開していくのが斬新だと思う。特に、沖田総司の視点から描かれたクライマックス。浅学な私でも、腕が立ったと言われるその沖田総司が若くして労咳でこの世を去ったことは知っていたので、その病が己を蝕む辛さや悲愴が伝わってきた。本当に、その場に居合わせたような緊迫感があり、固唾を呑む。 読み終えて少し、視界が滲みました。なぜかというと、京の島原の芸妓である糸里と吉栄の心が染み入るから。凶事の片棒を担がされながら、土方の目論見をしっかりと見抜いていた糸里。策士である土方と真っ向…  全文読む 評価する

輪違屋糸里 輪違屋糸里
オレンジマリー/京の島原の妓。
 日本史に疎い私が、日本の歴史に興味を持ち始めたのはここ数年のことです。長い海外暮らしの中で、海外から見た日本を感じ、それを通して日本の良さや歴史の尊さを切実に思い、少しずつでも学んでいこうと思って手に取った一冊。高校二年の頃から世界史を専攻していたので、基本的な日本史しか学がない私ですが、本書は充分楽しめます。昔、少年漫画を通じて多少の幕末を知っていたので助かりました。 京の島原にある輪違屋にいる糸里が物語の要になっているものと思って読み始めたら、そうでもないので少し戸惑った。新撰組がどういうふうにして出来上がったのか、とか浅学な私でも知っている名前の組長たちの言動、歴史の流れが中心になって…  全文読む 評価する

容疑者Xの献身 容疑者Xの献身
オレンジマリー/天才数学者の無償の愛と天才物理学者の友情。
 本書を手にする前に、面白そうだと思って映画を先に観ていたので天才数学者の石神のイメージは、どうしても堤真一さんでした。驚いた事に、本書に登場する石神のイメージが、堤真一さんの迫真の演技と見事に一致する。通常、書籍が映画化するとやはり書籍の方が面白いというのがパターンですが、映画も書籍と同等に面白いので凄いと思う。もちろん、役者さんの演技によるところが大きいけれど、ここまで書籍に沿って造り上げられた映画というのも珍しいのではないでしょうか。 さすがは直木賞受賞作と言ったところで、トリックは最後の最後まで分かりませんでした。なぜいつまでも警察は花岡靖子に疑いを持ちつつ、一向に犯行へと繋がらないの…  全文読む 評価する

ゴールデンスランバー ゴールデンスランバー
オレンジマリー/精巧を極めた一冊、手に汗握る展開。
 物語の始めは事件の流れがその報道を目にした視聴者からの視点で進行していく。黒幕はきっと、こういう人だという可能性が全て挙げられて、否定されていくので犯人像が全く見えない状態で、視点は犯人とされた青柳雅春へと移行していく。一体何が起こったのかという一部始終が、物語のほとんどを占めている。 まず、読み進めているときに先が気になって気になって仕方が無い、という心境は久しかった。どきどきハラハラ、手に汗握る展開が連続していたからだ。一般市民で、ルックスが良かった青柳雅春はアイドルを偶然助けたことで有名になり、それが転じて首相殺しの真犯人とされて報道される。逃走劇の数日間が、異様に長く感じる。濡れ衣を…  全文読む 評価する

鉄道員 鉄道員
オレンジマリー/しみじみと湧き上がる感動と救い。
 初めての浅田次郎さんの書籍です。兄からも、他の読書家さんからも本書は凄く良いと勧められて読んでみました。もちろん、浅田次郎さんの名前は以前から存じ上げていたけれど、昔は時代小説にも興味がなく、古い文体も馴染めずにいたのでなんとなく手に取らずにきました。鉄道員は映画化したことは覚えています。渋いイメージで、ぽっぽや、という響きも面白かった。雪が降りしきる土地での鉄道員のお話だというおおまかな流れしか知らずに読み始めたので、すぐに心打たれるものがありました。 本書を貸してくれた方が、電車で移動中に読まない方が良い、泣くからと言われていたにも関わらず、電車の中で読みました。確かに、目頭が熱くなるも…  全文読む 評価する

初ものがたり 初ものがたり
オレンジマリー/江戸の町人の暮らしと旬の香り。
 こういうお話、大好きです。お武家さんのような、格式高い人が中心に描かれると読み進めていても遠い存在のような気がして、なかなか物語に入り込めないんだけれど…中心には、裕福ではない町人がいるので旬の鰹を買うのもなかなか大変だという暮らしぶりは、身近に感じる。現代に暮らす私達には、冷蔵庫もあるしスーパーマーケットでは旬の食材が安く売られているので買うのが大変、というのは松茸や元々高値の魚介類くらいではないだろうか。けれど、江戸に暮らす町人は、商いをしつつも日々を行き抜くのがやっとで(大きなお店を覗いて)そういう暮らしぶりには共感できることも多く、面白い。 本書の中で、季節は巡る。その描写も細かく、…  全文読む 評価する

西の魔女が死んだ 西の魔女が死んだ
オレンジマリー/かけがえの無い時間。
 学校生活に滅入ってしまいそうな女の子と、英国出身の祖母のお話。読んでいるうちに、心がほのぼのしてくる。思春期の子供達向けではあるかもしれないけれど、大人になってから読んでもそれはそれで違った視点から読めるのではないだろうか。おばあちゃんの言葉が身に染みるし、生活スタイルも現代の都会を生きる私から見たら微笑ましい。 外国の血が入っているということで、クラスメイトに溶け込んでいけないという子は日本には大勢いるのではないだろうか。昔ほどではないにしろ、保守的な日本の文化はやはり、難しいのではと思う。ヨーロッパや、他の国々では幼い頃から外国語が身近にあるために、マルチリンガリズムになるケースが多い。…  全文読む 評価する

終末のフール 終末のフール
オレンジマリー/日々の営み。
 小惑星が地球に衝突して、滅亡するという宣告を受けてから5年後の設定で物語りは展開されている。人々は慌てふためくのに疲れ、それも無意味なことだと気付き、小康状態にある。やり場の無い怒りや恐怖心を、他者にしかぶつけることができずに暴漢と化したり、無闇に人を殺したり。本書を読み進めて行くうちに、それは起こりうることかもしれないな、と思ったりした。 本書はいくつかの短編から成っているけれど、どこかしら繋がるものもあって構成が面白いと思った。そして、各ストーリーのタイトルが韻を踏んでいるのもユーモアではないか。身内を亡くし、残された時間をいかに過ごすか考える者、あと数年で地球は終わってしまうと言うのに…  全文読む 評価する

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