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四十八人目の忠臣 四十八人目の忠臣
星落秋風五丈原/もうひとつの忠義
 赤穂浪士の忠臣蔵と新撰組は、日本人に人気があり、何度も映画やTVドラマ、小説で取り上げられていることからも、世代や時代を超越した普遍的な素材と言える。忠臣蔵に関しては、多くの作品が討ち入りそのものを到達点として完結しており、読者は、長い間の宿願がやっと果たされた喜びに共感する。ところが、本当の歴史は討ち入りの後も続いている。いや、むしろ、その後の方が難しい。討ち入りを決めた人々は、吉良上野介を討ちいれば後は美しく散るだけだが、やっている事は計画殺人であり、ある意味テロである。そんな行為を行った人々の縁者は、そしてそもそもの浅野家はどうなったのか。本作は、今まで美談の陰になって焦点を当てられる…  全文読む 評価する

ペテルブルクの薔薇 ペテルブルクの薔薇
星落秋風五丈原/エカチェリーナ二世の姑にしてエルミタージュ美術館の基礎を作った女帝の生涯
 著者のロマノフ女帝史三部作の掉尾を飾るのは、ピョートル大帝の娘にして最後のロシア人女帝エリザヴェータ ・ペトローヴナ(在位1741-61)の生涯を描いた本書である。アンリ・トロワイヤの『女帝エカテリーナ』では甥ピョートル三世(在位1761-62)の嫁である、後のエカテリーナ二世と不仲で、彼女をいじめ抜いた悪役として登場するが、本編では主役なので彼女の側に立った書き方になっている。 ロシアの新興貴族に絶大な人気を誇っていたピョートル大帝の次女であるエリザヴェータは、正式な結婚前の娘(庶出)という出自が響いてフランス王家から縁談を断られてしまうが、時の権力者ドルゴル―コワ家の嫡子イワンや、甥であ…  全文読む 評価する

ロマノフの徒花 ロマノフの徒花
星落秋風五丈原/もう一人のエカチェリーナが辿った運命は~
 ロシアの女性名でエカチェリーナといえば、すぐ名の挙がる有名人が二人いる。ひとりは、ピョートル大帝の后でロシアで最初の女帝となったエカチェリーナ一世(在位1725-57)。もうひとりは、嫁いできた非ロシア人の身ながら広大なロシア帝国を治めたエカチェリーナニ世(在位1762-96)。しかし、もうひとり、エカチェリーナという名を持ち、もう少しで皇后となり、チャンスさえあれば女帝になれたかもしれない女性がいた。その女性こそ、エカチェリーナ・ドルゴル―コワ。ロシア第6代皇帝ピョートルニ世の婚約者であり、本書の表紙絵の女性である。 さきほど、「チャンスさえあれば女帝になれたかもしれない」と書いたが、この…  全文読む 評価する

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
星落秋風五丈原/砂糖菓子の弾丸で戦ったかつての子供たちへ そして今も戦い続けている子供たちへ
 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない。ふっと聞いて、ああ、そうだよね。砂糖菓子だもんね、と思う。じゃあ、いったいなんで、そんな役にも立たない砂糖菓子で弾丸を撃とうとするのだろう?そして、誰に向かって撃ってるのだろう? タイトルで読者の心にいくつかのひっかかりを残した本書は、冒頭で更なる衝撃を届けてくれる。海野藻屑という何とも奇妙な名前の少女がバラバラ死体で発見されたニュースが伝えられるのだ。そこから物語は過去に遡り、藻屑が発見者である山田なぎさと出逢ってから物言わぬ死体となるまでが、時系列に沿って描かれる。 少女が死ぬまでの経緯なんて見ていたくないし、知りたくもない。ぷいと横を向いてしまいたくなった…  全文読む 評価する

荒野 荒野
星落秋風五丈原/少年は荒野をめざす 荒野がめざすものは?
 先に読んだ『少女七竈と七人の可愛そうな大人』のヒロインの名前も相当変わっていましたが、本作のヒロイン、荒野もその名前のインパクトでは負けていません。本作は、娘に荒野なんて名前をつけた作家の父親と「ばあや」と呼ぶには若い女性との共同生活をしていた12歳から16歳に起きた出来事を、荒野の視点から描いたビルドゥングスロマンです。 『少女七竈…』にあったような「この二人の男女の関係は一体どうなっているのだろう?」というミステリー的要素はありません。強いてミステリーに似た部分を探すとするならば、荒野が年齢を重ねるにつれて大人の世界に近づくと共に、「ああ、実はあの人はこんな事を考えていたのか」「この行動…  全文読む 評価する

少女七竈と七人の可愛そうな大人 少女七竈と七人の可愛そうな大人
星落秋風五丈原/しょっちゅう旅をしながら心残りを故郷に残す母 鉄道模型で遊びながら外へ出ていかざるを得ない娘
「辻斬りをするように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。そして五月雨に打たれるように濡れそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。 (P4) 」 辻斬り、とはこれはまた意外な比喩だ。普通女性が描くセックスといえば、男性に抱かれて暖かく優しい気持ちになるもので、“辻斬り”という言葉が持つイメージとは程遠い。しかし、この言葉をつぶやいた女性・優奈は、まさに辻斬りのように、七人の男達と関係を持つ。そしてあげくに妊娠して子供を産むと、語り手たる位置をあっさり美しく生まれた娘に譲り渡して自分は旅に出てしまう。「いったいどんな家庭に生まれ、何をしている女性なのか?」といぶかりそうだが、優奈は母…  全文読む 評価する

誰かが足りない 誰かが足りない
星落秋風五丈原/今年 多くのものを失ったひとに捧ぐ
 誰かが足りない、というタイトルは、一見寂しげだ。それなのに、表紙はとても明るい。一方からさす陽に照らされた一つのテーブルと椅子、準備されたナプキン。これから、このレストランにお客さんがやってくる、その直前を撮影したかのようだ。 本作は短いエピローグとプロローグに挟まれた六章から成り、それぞれの章タイトルは「予約1」「予約2」…のようになっている。エピローグとプロローグの語り手は同じだが、正体は明かされぬまま、各章に移る。章毎の語り手は全て異なっているが、共通しているのは、彼等が全て10月31日に「ハライ」というレストランに予約を入れるということだけだ。さて、「誰かが足りない」とレストランの予…  全文読む 評価する

真田三代 真田三代
星落秋風五丈原/親を超える息子たち
 ある程度成長すると、息子は父親を批判的に眺める。そして考える。「俺は親父のような生き方はしない」と。そして不思議なことに、彼等もまた息子をもったときに、そうと知らず息子から同じような感想を抱かれているのだ。当然と言えば当然だ。息子は父親がどんな苦労をして現在(いま)を築いたかを知らないし、気付いた時には身の周りにあった豊かさを得るために、父親が何をしてきたかを推し量るなど及びもつかない。 真田三代の男たち―幸隆・昌幸・幸村―を描いた本書にも、現代に通じる親子の認識の違いが描かれる。武田信玄が攻めても落ちなかった砥石城を、奇策を用いて落とした真田幸隆は、武田譜代衆に気を使いながら、やっとのこと…  全文読む 評価する

おまえさん おまえさん
星落秋風五丈原/ないがしろにしていい人などいない
 最初は、なかなか消えない身元不明の死体の跡だった。丁寧に弔ったのに、清めの塩もまいたのに、なかなか死体の跡が消えない。まるで何かを訴えたいかのように。そんな風に、ぼんくら同心・井筒平四郎の前に、事件は現れた。 死体は元ザク、現在で言うところの調剤師だ。続いて生薬屋の瓶屋の主人、新兵衛が殺されるにあたり、平四郎と若手の同心・間島信之輔が事件の捜査にあたる。彼等は行動部隊、年若くして頭脳明晰の平四郎の甥っ子、弓之助とおでこが主に頭脳部門を受け持つ。今回は、平四郎より更に上の世代として、信之輔の大叔父・源右衛門が加わり、異なる世代の考え方、感じ方が描かれることによって、作品に重厚感が加わった。男性…  全文読む 評価する

ランウェイ ランウェイ
星落秋風五丈原/夢を売る小説
 雑誌MAQUIAで連載された小説を、著者が大幅に改稿して単行本化した作品です。主人公・真昼は恋人に捨てられて結婚退職の当てがはずれ、有名ファッションブランドのバイヤーに転職し、頑張っている20代の女性。意地悪な上司もいますが、逆に彼女を引き立ててくれる女性や魅力的な男性も登場するので、そこそこの起伏が取れたバランスの良い筋運びとなっています。そんな彼女がセレクトショップのバイヤーになり、やがては自分のファッションブランドのプロデューサーとして成長してゆくサクセスストーリーです。 ウェブ上では、彼女のサクセスぶりに感動する声と、ピンチに陥る度にあまりにも都合よく、次から次へと救世主が現れる展開…  全文読む 評価する

偽りの来歴 偽りの来歴
星落秋風五丈原/ニ十世紀最大の絵画詐欺事件は こうして起こった
「昨日、この絵は何百万ギルダーもの価値を持っていた。美術の専門家や愛好家たちが世界中からやってきて、これを見るために金を払おうとしていたのだ。だが今日、これは何の価値もない。たとえ無料であっても、人々はこれを見るために道一本渡ることだってしないだろう。だが、絵自体は何も変わっていない。とすると、何が変わったのだろうか?(p262)」これは、フェルメールの贋作を描いた罪で服役することになったファン・メ―レーヘンの言葉である。 今、まさに芸術の秋。多くの人が美術館に足を運ぶだろう。しかし、私達が絵を観賞している時、本当に絵そのものを見ていると言えるだろうか?ともすると、この絵がどんな評価をされてき…  全文読む 評価する

ニキの屈辱 ニキの屈辱
星落秋風五丈原/恋のおわりと始まりを みずみずしく切りとった作品
恋はいつか終わる、成就しても、しなくても。成就しなかった時は、その時に終わりがすぐわかる。でも、成就した場合は、そうではない。終わったことを知るのは、自分にもう恋する気持ちがなくなってしまったことに気づいた時だ。本作で描かれる恋にも、やはり同じように“終わり”がある。「屈辱」などといささかキツイ言葉があてられた本編の主人公は、女性新進写真家ニキと、そのアルバイトとして働く若者加賀美だ。「『春琴抄』を意識した」という著者の言葉通り、年齢は加賀美の方が一つ上にも関わらず、仕事上はニキが支持する立場であるため、彼女は彼をぞんざいに扱い、傍目から見ればキツイ台詞も吐く。だが、「現代版『春琴抄』を狙った…  全文読む 評価する

双頭の鷲 双頭の鷲
星落秋風五丈原/『ふたりのガスコン』と並ぶマイベスト
 現在『小説フランス革命』で革命期に活躍した人々の群像劇を著している佐藤氏が、初めて“フランス”を取り上げた作品。「賢王」と賞賛されるシャルル五世と、「軍神」と崇められるベルトラン大元帥を中心にした、こちらも群像劇だ。しかし、最近作に比べると個々の人物描写が厚めである。 さて、ものものしく「賢王」やら「軍神」やらとまつりあげた両者だが、登場画面からカッコ良かったわけではない。そもそも、フランスという国自体、負け続けだ。そして、イギリスの黒太子エドワードに押されっぱなしのフランス王族の人達は「負けてしまいましたな。」と他人顔で、これでは一生懸命闘っている兵士達が気の毒だ。そんなフランスの劣勢を跳…  全文読む 評価する

水底フェスタ 水底フェスタ
星落秋風五丈原/水底の澱みを見てしまった少年
 村長の息子として、また優秀な高校生として過ごしてきた広海は、当たり前の日常をうっとうしく思いながらも、そこから抜け出したいという強烈な意思は持たないでいた。織場由貴美という、村出身の芸能人に会う、その日までは。冒頭で広海が由貴美を見かけたムツシロロックフェスティバルでは、彼女は「びっくりするほどヘンな顔だ(p8)」などと特に美人という描き方をされていない。ところが、二度目を見かけた時には「織場由貴美は美しかった。この世のものとは思えないほど、現実感がなかった(p52)」と、全く逆の描写がなされている。ああ、この子は彼女に惹かれたんだな、と一発でわかる。そして彼女に惹かれたことが、広海の変わり…  全文読む 評価する

贋作と共に去りぬ 贋作と共に去りぬ
星落秋風五丈原/幻の名画を巡るミステリー
 世界的贋作師を祖父に持つアニーは、ティーンの頃に彼に仕込まれたおかげで絵画の真贋に詳しくなるが、一方でそうとは知らず贋作作りに手を染めてしまう。権威ある美術館に就職するも過去が邪魔をして、今では疑似大理石や壁面処理を専門とするフォーフィニッシャーという職業に就いている。とはいえこれも、本物“らしく”見せることが目的であり、贋作とどこか似通っている。そんな彼女が、元彼から古巣の美術品に納入されたカラヴァッジョの真贋を鑑定依頼され、贋作だと判定したことから、殺人事件及び贋作捜索に否応もなく関わってゆくことになる。 アニ―は探偵もののヒロインにふさわしく、好奇心と行動力は十分すぎるほど持っている。…  全文読む 評価する

フイヤン派の野望 フイヤン派の野望
星落秋風五丈原/革命当時のフランスよ お前は何といまの日本に似ていることか
 第三巻『聖者の戦い』にも書いたが、現在の日本と本書に書かれている革命直後のフランスはよく似ている。現状打破という目的で一丸となったフランス国民だったが、議員達はいざ革命が成功してしまうと、次に何をするか、国をどうするかということでもめた揚句、同じ党派であっても分裂して新しいグループを作ってしまう。 そもそものきっかけは、前巻『王の逃亡』で描かれたヴァレンヌ事件を右派、ラファイエット、三頭派が「王の誘拐」と虚偽の発表を行ったことだ。これにジャコバンクラブのロベスピエールら左派が猛反発。ルイ16世の廃位のため署名嘆願をやろうと意見がまとまる。ところがこの極めて平和的な署名請願運動は、国民衛兵隊が…  全文読む 評価する

感謝だ、ジーヴス 感謝だ、ジーヴス
星落秋風五丈原/ジ―ヴスシリーズも残すところあと一作 お気楽貴族としっかり執事コンビは今日もゆく
 二○○五年に ウッドハウス・コレクション第一弾『比類なきジーヴス』が刊行されて今年で七年。シリーズも本篇の十三作目まで無事世に送り出し、次作は『ジーヴスとねこさらい』だそうだ(猫さらいってなに?)。本作の直前に読んだ『お呼びだ、ジーヴス 』では、ジ―ヴスはバ―ティと離れて別の主人に仕えていたが、いささかジ―ヴスがしゃべり過だった。里帰り(?)した今回は、寡黙だからこそピリリとした一言がインパクトを持つ本来の彼の良さが十分出ていた。やはりしゃべりはバ―ティに任せておいた方が無難であろう。 さて、今回は、そんなバ―ティよりも人前で喋らなければならない相手ー下院議員の選挙に出馬する彼の友人ジンジャ…  全文読む 評価する

星を帯びし者 星を帯びし者
星落秋風五丈原/額に三つの星を持つ 運命のヒーロー モルガンの貴種流離譚
 一九七九年に山岸涼子さんの挿絵で刊行された、マキリップのファンタジー三部作第一弾が復刊された。最近マキリップ本が相次いで刊行されており、ファンタジーの金字塔と評された前作を読まず、最近マキリップを初めて知ったという読者層への更なるアピールを目指したものか。 幽霊との謎かけ試合に勝って、大国アンで王冠を手に入れたヘドの領主モルゴンは、王女と結婚すべくアンにむけて再び船出するや、船は難破し海に投げ出される。声が出なくなった彼を救ったのは王国の後継者でありながら、兄と気まずいアストリンだった。執拗にモルゴンを狙う勢力とその目的は? 三部作の第一弾のため、物語の歩みは遅い。 ヒーローたるモルゴン自体…  全文読む 評価する

越前宰相秀康 越前宰相秀康
星落秋風五丈原/疎まれていたのではなく 恐れられていた 徳川家康の息子
 山田風太郎には、“彼”を主人公に据えた『摸牌試合』『羅妖の秀康』という作品がある。梅毒にやられて鼻がもげてしまったという酷い御面相で、若死にしており、信長の命で殺された信康に次ぐ二男であるにも拘らず、家康に病的なまでに嫌悪されている。ここまで書くと、何とも哀れな、そして滑稽な男である。しかし、本当にそうだったのだろうか?女性作家から見た彼は、豪放磊落な面が強調され、見違えるように魅力的なキャラクターになっていた。そこには、彼の母親・お万の方の描かれ方も影響している。築山殿のお付きでありながら、家康の手がついたため、嫉妬の的となった彼女は家康から離れて家臣・本多家に庇護され出産した。これが通説…  全文読む 評価する

ヴァレンタインズ ヴァレンタインズ
星落秋風五丈原/あたたかく つめたく きびしく やさしい それら全てが愛である
 【新しい世界の文学シリーズ】として白水社から刊行されている《エクス・リブリス》シリーズの第14回配本作。今回は、ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントの初代社長、タイム・ワーナーの上級副社長というビジネスでも成功しているオラフ・オラフソンのO・ヘンリー賞受賞作を含めた12の短編集である。 表紙にはずらりと指輪が並んでいるが、一つだけ赤い宝石がついており、とても目立つ。人が人を最初に愛する時もそんな感じだろう。数多いる人間の中で、自分にとって特別な人だけが輝いて見える。ところが時が経つにつれて、その宝石の輝きは色褪せる。見る側が見飽きてしまったのか。それとも、見られる側が変質していったの…  全文読む 評価する

スケバン刑事 スケバン刑事
星落秋風五丈原/和田慎二さん逝去~戦うヒロインを描き続けた漫画家の代表作~
 別冊マーガレットで『クマさんの四季』というほのぼのした作品を描く一方で、財産を狙った親戚にはめられて犯罪者となったヒロインを主人公に据えた『大逃亡』を著すなど、純然たるラブストーリーが少女漫画で人気だった時代に、コメディ・ミステリー・アクション・神話・ホラーと幅広いジャンルで作品を発表していた漫画家の一人でした。別マ時代から復讐譚『銀色の髪の亜里沙』など、戦うヒロインを描く傾向が強かったのですが、その魅力が花開いたのは『花とゆめ』で連載され、TVドラマ化、映画化もされた『スケバン刑事』ではないでしょうか。くしくも、未だ未完である美内すずえさんの『ガラスの仮面』と同じ号で連載開始されていました…  全文読む 評価する

刀伊入寇 刀伊入寇
星落秋風五丈原/光源氏のモデルとなった貴族は 日本で初めて外敵を撃退した男だった
 皆さんは、タイトルを一瞥して、「また随分と難しい、なじみのない言葉ばかりが並んでいる」とは思わなかったろうか?本書を読んで初めて知ったが、日本に外敵が攻めてきたのは元寇よりはるか昔、まだ武士も台頭せず、貴族達が閨閥政治にうつつを抜かしていた平安の頃だった。大宰府なるものがあるにはあったが、没落した貴族の左遷先のような扱いで、本当の意味で防衛機能があったとは思えない。その時大宰府にいたのは藤原隆家。彼もまた、没落貴族の末路としてこの場にいた。しかし他人と異なるのは、予言により「あなた様が勝たねば、この国は滅びます」と言われたこと。つまり、左遷も一族の没落も、全ては異国と戦うがための伏線であった…  全文読む 評価する

下町ロケット 下町ロケット
星落秋風五丈原/挫折から立ち上がる 夢を持ち続ける これから生きる企業に必要なことは全てここにある
 本作の主人公・佃航平が社長を務める佃製作所は、東京都大田区にある従業員200名の会社だ。大手から取引終了を言い渡され特許侵害で訴えられる一方で、水素エンジンのバルブシステムの特許を持っていたことから、大企業・帝国重工に特許譲渡を持ちかけられる。かつて高度経済成長時代、こうした多くの特殊技能を持つ町工場が、資源のない日本人が誇れる技術をばねにして、大企業を支えてきた。しかし今、世界の工場と言われる中国に大手メーカーは製造現場を移し、対抗するために町工場は製造コストを下げざるを得ない。どんなに技術が優れていても、どんなに主張がまっとうでも、中小企業は生きていくために大企業の前に涙をのまざるを得な…  全文読む 評価する

すばらしい墜落 すばらしい墜落
星落秋風五丈原/今の日本人に必要なのは こういう逞しさなのかもしれない
真っ青な空。下からはむくむくと入道雲。でも、上からは黒い雲。タイトル作を彷彿とさせる表紙だ。主人公は寺で二年以上武術の講師をしているが、給料未払いで首になり、更にビザ更新も叶わないため、不法滞在でアメリカを追われる。八方ふさがりの彼は、ある行為に走る。ところが、事態は彼が意図したものとは逆の方に転がってゆく。チアン・ウェンあたりを主演にして、映画になりそうな悲喜劇だ。 『すばらしい墜落』以外の短編でも、かつかつの生活を送っている中国人が主人公であるが、みなとても逞しい。『年金制度』はヘルパーとして仕えている48歳の女性が主人公だ。ある女性が偽装結婚を持ちかけられるが、その実は認知症の老人の世話…  全文読む 評価する

オーダーメイド殺人クラブ オーダーメイド殺人クラブ
星落秋風五丈原/死を媒介に結びつくリア充女子と昆虫系男子
 解説文をまず読んで、「リア充って何?」と辞書を調べると、「実際の現実生活が充実していること」とあった。それが本当なら、「リア充女子」のアンが、そもそも自殺なんて考えるはずがない。彼女は専業主婦の母と会社員の父との間に生まれた一人ッ子で、自分の部屋を持っているし、友達もいる。ところが、物語が進むにつれて、アンの「リア充」が上辺だけのものに過ぎないことが明かされていく。赤毛のアンにかぶれて名前をつける母親のことも嫌、アイドルグループに熱狂している友達にも完全には共感できないけど、仲間はずれにされるのは嫌。どこにも居場所がないけれど、一人ではいられない。そんなあやふやな中二病の女子の心情が、アンの…  全文読む 評価する

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星落秋風五丈原/一つが足りないわけじゃない 二つ持っても確かじゃないから
 青木薫は医療事務の派遣社員として、ある病院で働く26歳の女性。大学時代の後輩・城田と出会ったことがきっかけで、かねてからの夢だったネイルショップを始める。一方、病院で働く肺外科医・矢飼を、ある言葉で苛立たせてしまった薫は、突然キスされる…。 前作『サプリ』では、広告代理店でバリバリ働く女性がヒロインだったが、本作のヒロインは「金を得るための仕事」のほかに「自分のやりたいこと」をも、仕事として成り立たせようとする。恋愛面では、城田は大学時代からずっと彼女に夢中であり、矢飼も何かにつけて彼女を構う。アオリ文句【恋も仕事も、ふたつずつ?】の通り、二つの選択肢を持つ彼女は、一見、昔ながらのヒロイン像…  全文読む 評価する

渋谷区円山町−百花繚乱− 渋谷区円山町−百花繚乱−
星落秋風五丈原/円山町でたくましく生きる女性たち
渋谷区円山町といえば、駅から少し歩いた所にあるホテル街が、今も昔も有名な場所。そんな場所で芸者を目指す晴千代ことハルの物語。典型的ギャルの彼女と、これまた典型的お嬢様のサオリが、一人の男性を巡って恋のさや当てを繰り広げるタイトル作、かつての恋人を探しにきた女性を助けようとする『忘れな草』、二人の共通の知り合いが、恋人と不和になってしまう『あだ花』、ハルが脇役として登場する『祭一夜』の4話収録。代表作『サプリ』でも、それぞれ違ったタイプの女性達が登場するが、それぞれ違いを認め合いながらも、ある時は協力し、ある時は本音をぶつけあう彼女達がとてもカッコ良い。また、ハルが踊りのお師匠さんに言われる「転…  全文読む 評価する

かばん屋の相続 かばん屋の相続
星落秋風五丈原/丁寧な解説が素晴らしい短編集
銀行員を主人公、銀行を舞台に次々と作品を発表している氏の、文庫版による短編集。表題作は、実際の企業で起こった遺言書偽造事件に材を取った作品。どうみても怪しい遺言書を手に、家業を継ぎに乗り込んできた大手銀行員の長男。何も文句を言わず、黙って店を明け渡す次男。そこに、融資先として長年つきあってきた信金の人間が絡む。多くの場合、池井戸作品の主人公は、上司や重役が企業の利益を優先したため、自らの正義との狭間で苦悩する。本作収録作品においても、表題作、『十年目のクリスマス』『芥のごとく』で、彼等は二者択一に悩む。いや、企業人としてならば、答えは初めから決まっているのだ。しかし、そちらに決められないところ…  全文読む 評価する

ばんば憑き ばんば憑き
星落秋風五丈原/憑く・付く・ぼうし
「あの人に何かが憑いているんだよ」と言えば、何だか恐ろしいことを想像します。しかし、「あれには何かが付いてるんだよ」と言えば、どうでしょう?何だかお得な感じはしませんか?「憑く」と「付く」。どちらもくっついて離れない状態を指しますが、言葉一つで微妙にニュアンスが違うのです。では、そのニュアンスの違いはどこからくるのでしょう?くっついているものをどう感じるかという、受け手側の問題ではないでしょうか。迷惑に思うようなら「憑く」、ありがたいと思っているなら、「付く」のように。同じものでも捉え方によって使う漢字が異なる、つまりは憑いていると思っている人の心持ち一つで、怖くも愛しくも哀しくもなる、それが…  全文読む 評価する

花さき山 花さき山
星落秋風五丈原/心のどこかにある山で
幼い妹があれこれと喋るようになってから、親が私に与えた本です。ちょうどその頃、親からは「お姉ちゃんだから我慢しなさい」とよく言われていたものです。今から思えばこの本を手渡して読みなさい、と言われたことは「親に図られたな」と思い当たります。口で言っても、仁王様みたいな顔をして、歯を食いしばっていた私には、好きな本で教え諭すのが一番だと考えたのでしょう。今までは「何でも良し」だったことが、「あなたがそういうことをすると、~ちゃんが真似をするからだめ」「~ちゃんは小さいんだから、あなたが我慢しなさい」と言われて戸惑ったこと。歯を食いしばって我慢したこと。長女、長男だった方なら一度ならず経験があるので…  全文読む 評価する

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