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僕のカラダは考える 僕のカラダは考える
大笹吉雄/演劇人生30年のベテラン俳優が書きおろした自伝的エッセイ。舞台の楽しさと苦しさを語る人生への応援歌
 本書は俳優市村正親の自伝的エッセイである。 今もっとも輝いている舞台俳優の一人である市村は、一九七三年の劇団四季公演、ロック・ミュージカル『イエス・キリスト=スーパースター』(再演から『シーザス・クライスト=スーパースター』と改題)のヘロデ役がデビューだから、三十年になろうというキャリアを持つ。わたしはこの初舞台を見ているし、以後もずっと市村の仕事を見てきたので、本書を手にしてひとしおの感慨がある。 若いファンを想定して語るごとく書かれているから、とても読みやすい。父親が地域の新聞を主宰しているもののそれだけでは生計を立てられず、母親が居酒屋を経営していたという家庭の一人っ子として育った著者…  全文読む 評価する

歌右衛門合せ鏡 歌右衛門合せ鏡
大笹吉雄/昨年没した稀代の名女形中村歌右衛門の人生と芸のありかを、多くの関係者へのインタビューとともに浮彫する
 四月の歌舞伎座は一代の名女形、六代目中村歌右衛門の一年祭が開催されたが、それに合わせるようにして、長年にわたって歌右衛門の舞台を見てきた著者による歌右衛門追悼の本書が出た。歌右衛門をよく知る人の、歌右衛門への思いがあふれんばかりの本である。 歌右衛門が没した日は、まことに不思議な日だった。平成十三年三月三十一日。 例年より早く桜が満開になり、夕方からその花に雪が降り積もった。そして歌右衛門が自宅で息を引き取ったころには、雪がやんで月が出た。こういう気象条件が重なる日は、百年に一度あるかないかと言っていいのではなかろうか。 著者のインタビューに、晩年の歌右衛門としばしばコンビを組んだ現市川団十…  全文読む 評価する

京劇 京劇
大笹吉雄/清朝下での誕生時からプロレタリア文化大革命期まで、京劇は政治権力と密接に結びついていた。その実態報告
 中国の代表的な演劇である京劇は、しばしば来日公演を持つから、わが国でも多くのファンがいると同時に、解説書の類いも少なくない。が、中公叢書の一冊として出された本書は、従来のそれらとは異なる角度からの京劇の案内書であり、京劇をめぐるノンフィクションとしてとても興味深い。 副題に「『政治の国』の俳優群像」とあるように、著者が取った方法は、京劇の俳優たちのエピソードを軸にして、京劇と政治との関わりを説いていく。そこにはわが国の演劇とはまるで違った環境と展開があり、京劇と政治との深い関係に驚嘆せざるを得ない。 京劇は中国の標準語である北京語で演じられるが、その北京語は満州人が創始したという記述がページ…  全文読む 評価する

音楽少年誕生物語 音楽少年誕生物語
大笹吉雄/著名な音楽評論家の東京音楽学校(現東京芸大)に入学するまでのおもしろおかしい自伝的回想の物語。
 新国立劇場のオペラ部門の初代芸術監督を務め、音楽評論家として著名な著者の、音楽との出会いを回想した自伝的読み物が本書である。 今は北九州市の一部になっている門司市で生まれ、洋楽は限られたレコードを聞くのがせいぜいだったという著者が旧制中学の四年生になった新学期早々、受験志望校を知らせよと担任の教師に言われ、苦手の数学が受験科目になかったという理由だけで、東京音楽学校(現東京芸術大学)と書いて出す。と、教員室で教頭をはじめ数人の教師に囲まれて、「上野を受けるって? ははは……。やめろやめろ」とあざ笑われる。これへの反抗と意地が現在の著者を生む──という物語で、数々のエピソードが面白いというにと…  全文読む 評価する

マエストロ、時間です マエストロ、時間です
大笹吉雄/オーケストラや音楽ホールのステージマネージャーとは何か。本書ははじめてそれをエピソードをまじえて語る
 それぞれのオーケストラや音楽ホールに、ステージマネージャーと呼ばれる人がいることを本書を読むまで知らなかった。ステージマネージャーはコンサートの開催、しかもそれがいいコンサートになるかどうかの、キーポイントにもなりかねない大事な仕事を担当する。その内幕をはじめて明かしているのが本書だが、筆致はあくまで淡々としている。これがかえって効果的だ。クラシック音楽のファンには、コンサートを楽しむに際して別の視点をもたらすだろう。 その世界では「マーちゃん」と呼ばれて親しまれている著者は七十代の半ばで、戦後、近衛秀麿が近衛管弦楽団を組織した時にそのステージマネージャーに就いて以来、日本フィルハーモニー交…  全文読む 評価する

狂言サイボーグ 狂言サイボーグ
大笹吉雄/狂言界の貴公子であり、各世代から広く支持されている野村萬斎が独自の視点で語る狂言についてのエッセイ集
 あるジャンルに偉才や人気者が出現すると、とたんにそのジャンル全体が活性化するのは、今も昔も変わらない。狂言という古典演劇における野村萬斎は、さしずめかつての歌舞伎界での坂東玉三郎のごとき存在だと言えば、おおかたの納得を得られやすいのではなかろうか。玉三郎の登場がどんなに歌舞伎を活性化させたか、今さら述べるまでもあるまい。 野村武司という前名のころから、萬斎は狂言界のホープとして知られてはいた。が、その世界を超えて人気に火がついたのは、萬斎を襲名して三年後、九七年のNHK朝の連続テレビ小説『あぐり』で、ヒロインの夫役を軽妙に演じて以来のことになる。以後の萬斎の活躍が、文字通り八面六臂であるのを…  全文読む 評価する

お七火事の謎を解く お七火事の謎を解く
大笹吉雄/芝居や小説でおなじみの恋のために放火した八百屋お七の正体と、火事をめぐる将軍綱吉治世下の江戸挿話集。
 本書を読んで改めて驚くのは、江戸という街にいかに火事が多く、また、その被害が大きかったかということだ。 この本の一つのポイントは、歌舞伎や文楽などで親しまれている八百屋お七が、御家騒動の渦中にある恋人に宝刀のありかを知らせるために町の木戸を開かせようと、火の見櫓に登って太鼓を叩く場面に集約される可憐な少女と、その名前を取った火事との関係を探ることだ。いうところのお七火事。 そう呼ばれる火事は、天和二(一六八二)年の十二月二十八日に起きた。午前十一時過ぎに駒込の大円寺の庵室から出火し、折からの強い北風にあおられ、火はたちまち本郷から湯島、神田、日本橋、浜町、さらには隅田川を超えて両国から深川一…  全文読む 評価する

こんな美しい夜明け こんな美しい夜明け
大笹吉雄/デビュー以来40年、舞台で、映画で、テレビで活躍する俳優加藤剛の、心あたたまるさわやかなエッセイ集。
 「文は人なり」ということを、しみじみと、心優しく改めて伝えてくれるのが、俳優・加藤剛のエッセイ集たる本著だ。タイトルは加藤がいつもふとつぶやくという草野心平の詩、『空気祭』の一節から採られているが、これがまたまことに著者の人柄にふさわしい。 おそらくテレビの『大岡越前』の主人公としてあまねく知られる著者だが、このヒーローは、ある意味で著者の分身のようでもある。決して冷徹な法の番人ではなく、血も涙もある情にあふれたさわやかな正義漢。本書の読後感もこれに等しい。とにもかくにもさわやかな著書だ。 早大を卒業して俳優座の養成所に入り、一九六二年にテレビドラマ『人間の条件』(五味川純平原作)の主人公・…  全文読む 評価する

蜷川幸雄伝説 蜷川幸雄伝説
大笹吉雄/現代演劇を代表する演出家の一人、蜷川幸雄のデビュー以来の全仕事を追い、時代の歩みの中でみつめ直す。
 本書は今もっとも輝いている演出家の一人である蜷川幸雄の、デビューしてから現在までの、全軌跡を追ったドキュメントである。 昨年の半年あまり、毎日新聞の朝刊「わたしの生き方」シリーズとして連載されたものに加筆してまとめられたが、改めて通読すると、この演出家の自分に正直であろうとする生き方に、いまさらながら感銘を受ける。 蜷川幸雄が演出家としてデビューしたのは、それまで俳優として所属していた劇団青俳を退団し、青俳仲間の石橋蓮司や蟹江敬三らと現代人劇場という集団を結成して、一九六九年に『真情あふるる軽薄さ』(清水邦夫作)を今はなき映画館、新宿文化劇場で映画上映が終わった後の、午後九時半からの夜間公演…  全文読む 評価する

第二幕 第二幕
大笹吉雄/ブロードウェイのコメディーのヒットメーカーであるニール・サイモンの、おかしくて哀しい自伝の第二部。
 『おかしな二人』や『はだしで散歩』などの作者で、二十世紀後半のブロードウェイのストレート・プレイ、つまり対話劇の最大のヒットメーカーがニール・サイモンだ。その戯曲はわが国でも始終日の目を見ているし、サイモンの作品しか上演しないプロジェクトもある。日本でもっとも親しまれている外国の劇作家の一人であるのは間違いない。 そのニール・サイモンの半自叙伝『書いては書き直し』が一九九七年に刊行されたが、このほどそのつづきである『第二幕』が出て、われわれは現在七十四歳になるこの愛すべき劇作家の、全生涯を見渡せるようになった。同時にそれはブロードウェイという世界最大級のコマーシャル・シアターの、どういう意味…  全文読む 評価する

オペラの運命 オペラの運命
大笹吉雄/オペラとは何か、そしてその魅力はどこにあるのか。この難問を独自の視点と歴史的な見透しの下で解明する。
 黙って座ればぴたりと当てる……だったか当たるだったか、こういう占いのコピーがあったように覚えるが、このヒソミにならうと、本書を読めばオペラがわかる。しかも記述が平易で面白く読めて、読み終えた時にはオペラのすべてがわかっている。オペラへの案内書として最上のものの一つだろう。 一部に熱狂的なファンを持つ反面、食わず嫌いを通り越して嫌悪感をさえあらわにする人が珍しくないのが、今もなおオペラへの一般的なリアクションだと言って間違いではない。なぜそうなのか。この謎を本書は見事に説き明かしてくれる。 著者によれば、オペラとは絶対王制(バロック時代)が始まる十七世紀に、中央ヨーロッパのカトリック文化圏にお…  全文読む 評価する

さんずいづくし さんずいづくし
大笹吉雄/「さんずい」の付く動詞─一例に流れる─を約50取りあげ、それをネタに奇想を展開するエッセイ集。
 別役実は劇作家であるとともにエッセイストとしても知られていて、わたしは戯曲同様に、この著者のエッセイも好きだ。わけても発想が飛んでいて、虚を突かれることが多い。戯曲と共通の持ち味である。 わが国には古来、「物尽くし」という楽しみがある。その伝統を踏まえて別役にはすでに『虫づくし』『けものづくし』『病気づくし』『道具づくし』というエッセイの連作があるが、本書もそのシリーズの一環で、「さんずい」の付くほぼ五十の動詞にまつわるエッセイである。一端をしめせば「落ちる」「流れる」「溶ける」「消える」「泣く」「泳ぐ」「決める」「演ずる」「汚す」「潜る」「浴びる」「塗る」「減る」「滴る」「混じる」「漁る」…  全文読む 評価する

役小角読本 役小角読本
大笹吉雄/実像のはっきりしないわが国古代史の役小角とは何もので、何をしたのか。その謎を追った興味の尽きない読本
 役小角(えんのおづぬ)あるいは役の行者といえば坪内逍遥の大作戯曲『役の行者』をただちに連想するものの、その実態についてはわが国の修験道の開祖という漠然としたイメージしかなかった。ただ、気にはなる存在で、役の行者関係のイベントを一、二度見た経験がある。それでもよくわからなかったというのが正直なところだ。本書を手に取ったのは、役の行者を知る上での、何らかの道しるべになればという程度のことがきっかけである。 一読して驚いた。表紙のカバーが流行の陰陽師ものを思わせるおどろおどろしく妖しい感じで何となく手を引きそうになるのとは反対に、中身は真摯な研究書と呼んでいいものであり、著者の記述に強い説得性があ…  全文読む 評価する

夢の江戸歌舞伎 夢の江戸歌舞伎
大笹吉雄/全盛期の江戸の中村座の顔見世興行はこうあったろうとの想定を、学問的な裏付けを得た絵でリアルに再現する
 いろいろな意味でとてもぜいたくな絵本である。 文章は歌舞伎研究家の第一人者である服部幸雄が担当し、絵を漫画家の一ノ関圭が描いている。本書はこの二人が協力して、江戸三座の一つだった歌舞伎劇場、もっとも古い中村座の、文化・文政期の顔見世興行の初日があいて幕が閉まるまでの一日を、劇場の機構や芝居のしきたりや演出などを紹介しつつ、こうであったろうと思われるぎりぎりの線を踏まえながら、忠実に再現する。歌舞伎ファンなら思わず絵のおもしろさと迫力に心を奪われるだろうし、一人歌舞伎ファンのみならず、江戸文化に関心があったり演劇一般に興味のある人にとっても、十分楽しめるに相違ない。 それにしても、本にするまで…  全文読む 評価する

漫才作者秋田実 漫才作者秋田実
大笹吉雄/萬才ないしは万才から漫才へと表記が変わるとともに芸も変化した。その変革をになった台本作者の生活を追う
 一九八六年に刊行され、その後絶版になっていた本書が、平凡社ライブラリーの一冊として復刊された。今回はじめて読んだが、復刊されただけのことはあると納得した。 秋田實という漫才作者の評伝である。といっても、今の若い人たちはその名を聞いたこともないかも知れない。それどころか、漫才に作者がいることさえわからなくなっているのではあるまいか。 秋田實が登場するまで、漫才に作者はいなかった。本書はその事情にスポットを当てたものでもあるが、一九七七年の秋田の他界後、秋田に匹敵する漫才作者は出ていないと言っていいだろう。つまり、秋田は漫才の世界で空前絶後の存在であり、秋田の死とともに漫才作者という職業も、あた…  全文読む 評価する

浅草フランス座の時間 浅草フランス座の時間
大笹吉雄/昭和三十年代前半の渥美清や井上ひさしらが活躍していた浅草とストリップ劇場の興味深いエピソード集
 珍しい本だと言っていい。「踊り子」をテーマにしている。「踊り子」という言い方が今やほとんど消えたに等しく、だからそれをテーマにしているということは、ただ今現在のことがらが対象ではないという意味でもある。タイトルはこのことを表している。 連名の編著者は、こまつ座という演劇制作体の座付き作者が井上ひさしだという関係で、この二者が本書を編んだのは、劇作家としての井上ひさしの修業の場が、浅草フランス座というストリップ劇場だったからである。ただし、「ストリップ劇場」にも今や注釈が必要だろう。女性のヌード・ショーを売り物にし、かたわら軽演劇風のコントをも上演していた娯楽を至上とする小劇場のことで、コント…  全文読む 評価する

シェイクスピアを盗め! シェイクスピアを盗め!
大笹吉雄/シェイクスピアの活躍する17世紀はじめのロンドンを背景に、孤児のウィッジの奇想天外な生を描く青春小説
 読後感の非常にさわやかな青春冒険小説である。わが国の最近の小説について語る資格を持たないが、テンポがよくてさらっとしていて、どぎつい描写がなくてユーモアがあって、生き生きしていて活力をくれる……というような、いい意味で楽天的な本作のごとき小説は、あまりないのではなかろうか。ふとサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を連想させる。そういえば、この作者もアメリカ人だ。 加えて、演劇にも関心のある人にとってはもう一つの楽しみがある。十七世紀初頭のロンドンを舞台にする本作は、主人公のウィッジという少年が俳優になるので、シェイクスピアの活躍していた当時の演劇界の裏側を、ウィッジとともに垣間見ることが出…  全文読む 評価する

寺山修司・遊戯の人 寺山修司・遊戯の人
大笹吉雄/今も高い人気と関心を持たれつづけている寺山修司の決定的評伝。傑出した本能と時代のかかわりの徹底解読
 死後二十年近くになろうというのに、寺山修司の人気は一向に衰えない。生前どんなにもてはやされても、死ねばたちまち顧みられないのみならず、早急に忘れ去られるのが普通になった現在、これは例外的な「現象」である。 そればかりではなく、寺山の戯曲のみを手掛ける若い劇団もあり、寺山の作った映画の特集や寺山に関する回顧展も後を絶たず、寺山修司と寺山が主宰した演劇集団「天井桟敷」についての著作も次々と出る。あえて言えば、ちょっとした「寺山修司ブーム」である。 そういう中で刊行された本書は、寺山修司の評伝である。寺山の評伝もまたこれまでに何冊かあるが、本書はそれらを凌駕して、読者に寺山の「実像」を納得させる。…  全文読む 評価する

日本の歴史 日本の歴史
大笹吉雄/倭人は日本人ではなく、百姓は農民ではなく種々の生業を営んでいた。日本史の「常識」に挑む大胆な日本論。
 講談社から全二十六巻の「日本の歴史」が刊行されはじめたが、本書は雑誌で言えば「巻頭言」に該当する総論とも言うべき巻である。これが従来の多くの説に対して挑戦的で、根本的な書き換えを求めている。その意味で刺激的で、歴史学の素人にも納得させられるとともに、薮を拓かれることがたくさんある。 まず「日本」および「日本人」について。 国号としての「日本」が誕生したのは七世紀末のことであり、これが対外的に使われたのは、七〇二年にヤマトの使者が唐の国号を周と改めていた則天武后に対してだった。 「倭」から「日本」への国号の変更とともに、ヤマトの支配層は「王」の称号を「大王」から「天皇」に変えた。したがって「日…  全文読む 評価する

歌舞伎漫筆 歌舞伎漫筆
大笹吉雄/軽く読みながしているうちに歌舞伎に関する知識が増え、その本質や役者の工夫が見えてくる最適の入門書。
 元NHKのアナウンサーで、現在「山川静夫名人劇場」を主宰している著者は、一方でエッセイストとしても、無類の歌舞伎好きとしても知られる。何しろ学生時代から歌舞伎座に通いつめ、大向こうから舞台に声を掛けていたというから、中途半端ではない。 NHK時代にも「邦楽百選」や歌舞伎の舞台録画の解説、あるいは俳優へのインタビューなどを担当し、かたわら中村歌右衛門の聞き書きや中村勘三郎に関する随筆などをまとめていたので、『歌舞伎漫筆』と題するエッセイ集を出したとしても、このこと自体は別に驚くほどのことはない。が、これが読みやすくて面白いものに仕上がっているのはひとえに歌舞伎への愛ゆえであって、その熱の熱さは…  全文読む 評価する

萩家の三姉妹 萩家の三姉妹
大笹吉雄/チェーホフの『三人姉妹』に想を得て、今、ジェンダーを真正面から、しかも笑いにまぶせて問う新作戯曲
 見る側は圧倒的に女性が多いにもかかわらず、作り手は圧倒的に男性の手によっているのが、現代芸術の一般的なあり方である。文学、音楽、美術、無踊、映画、そして演劇もまたしかりだ。 中で女性の劇作家、演出家として気を吐いているのが、二兎社というプロデュース体を主催している永井愛で、近年の活躍はまことに目を見晴らせるものがある。 まず九五年に『パパのデモクラシー』で芸術祭の大賞を受賞したのを皮切りに、九六年の『僕の東京日記』が紀伊国屋演劇賞を、九七年の『ら抜きの殺意』が第一回鶴屋南北賞を、この戯曲と同年発表『見よ、飛行機の高く飛べるを』で芸術選奨文部大臣新人賞を、九九年の『兄帰る』で岸田国士戯曲賞をと…  全文読む 評価する

江戸の見世物 江戸の見世物
大笹吉雄/何となく軽視しがちな見世物文化の意外な規模と広がりを、豊富なエピソードをまじえて語るビックリワールド
 本書は見世物文化研究の第一人者が、近世後期の見世物の実態とその背景を、豊富な知識を踏まえてかみくだいて書きおろした労作で、読みやすく、かつ、実におもしろい。 近年の、祭礼の添え物のようなうさんくさく、チャチなものが見世物だという先入観の持ち主には、本書の内容はともかく驚きの連続だろう。かくいうわたしも本書を読むまで、それから遠い所にいたわけではない。まさに目からウロコの例に等しい。 「まえがき」以下、第一章「浅草奥山の籠細工」、第二章「奇妙な細工の楽しみ」、第三章「珍しい動物のご利益」、第四章「軽業のよろこび」、第五章「生人形の想像力」、そして「むすびに代えて」という流れで、読者をして一気に…  全文読む 評価する

小沢昭一的流行歌・昭和のこころ 小沢昭一的流行歌・昭和のこころ
大笹吉雄/藤山一郎、ディック・ミネ、美空ひばりら、昭和時代を代表する13人の歌手の人生と曲によるオモシロ昭和史
 小沢昭一がTBS系のラジオで放送している『小沢昭一的こころ』は、1973年の放送開始以来7000回を超す長寿番組であると同時に、これまでにも適宜、同名の単行本としてまとめられてきた。本書もまたその一冊だが、これは流行歌をモチーフにして昭和という時代を語る内容で統一されている。その視点が興味深く、語り口も面白い。 ここでは十三人の歌手が取り上げられている。藤山一郎、美ち奴、楠木繁夫、松平晃、杉狂児、二村定一、小唄勝太郎、灰田勝彦、霧島昇・松原操夫妻、ディック・ミネ、美空ひばり。 もっとも、杉狂児は歌手というより俳優だが、こういう人たちのヒット曲や持ち歌、あるいは小沢昭一が好む歌を軸にして、昭和…  全文読む 評価する

ミュージカルの時代 ミュージカルの時代
大笹吉雄/1993年から本年まで、東京をはじめニューヨークやロンドンで著者が見た88本のミュージカルのエスプリ
 二十世紀を特色づける舞台芸術は何かと問われて、ミュージカルだと答えたとしてもだれも反対しないだろう。その誕生と現在のごとき隆盛は、この世紀の舞台芸術を華やかに彩っていると言って過言ではない。 その二十世紀の最後の年に、ミュージカル・ファンにとっては願ってもないプレゼントがもたらされた。タイトルもそのものズバリの『ミュージカルの時代』である。 著者は必ずしもミュージカルの専門家だというわけではない。というよりも、長く新聞の演劇担当記者を務めていたので、ミュージカルのみならず、さまざまなジャンルの演劇に接し、劇評を書いてきた。この著者が「発見」した若い劇作家や演出家や俳優は無数と言ってもいいほど…  全文読む

21世紀の歌舞伎俳優たち 21世紀の歌舞伎俳優たち
大笹吉雄/団十郎、幸四郎、玉三郎から八十助、勘九郎まで、新世紀の歌舞伎を中心的に担う16人の歌舞伎俳優論
 今ちょうど旬の季節にある歌舞伎俳優、十六人の俳優論集が本書だ。取り上げられたのは登場順に片岡仁左衛門、松本幸四郎、中村梅玉、尾上菊五郎、市川団十郎、市川猿之助、中村福助、中村橋之助、中村松江、中村時蔵、坂東八十助、中村吉右衛門、中村鴈治郎、中村富十郎、坂東玉三郎、中村勘九郎。 こういう俳優たちが二十一世紀の歌舞伎の実態を担うのは、疑いがない。本書のタイトルのゆえんもここにある。ただし、もし「21世紀」ということに重点を置けば、実績のあるもう一世紀若い俳優──たとえば市川染五郎や市川新之助ら──を、対象にしてもよかったという思いがちょっとよぎる。あくまでも望蜀だが……。 それにしても、これだけ…  全文読む 評価する

明治のおもかげ 明治のおもかげ
大笹吉雄/いろいろな意味であっと驚く明治時代の奇譚集。人間は変わらないと痛感するとともに、何と変わったか!
 著者の名前を知る人は、今では圧倒的な少数派だろうと思われる。落語や都々逸、狂句や狂歌、戯文や小唄や民謡の作者として活躍する一方、明治十年に創刊された漫画雑誌のルーツとも言うべき『団々珍聞(まるまるちんぶん』)を手初めに、萬朝報(よろずちょうほう)、やまと、現在の東京新聞の前身である都新聞などに記者として籍を置き、ジャーナリズムに約五十年ほどかかわってきた。 この間、六十年にもおよぶ日記を残し、昭和二十九年に八十五歳で没したが、死後、この膨大な日記の記述のうち、東京の変遷や演芸界の出来ごとなどを中心に編まれたのが大冊『鴬亭金升日記』で、これはこの方面の第一級の資料として珍重されている。 その著…  全文読む 評価する

小松方正俺は元気な大病人 小松方正俺は元気な大病人
大笹吉雄/糖尿病、慢性腎不全、脳梗塞、直腸ガン、そして大腸ガン・・・。これらの病魔に次々と襲われた時どうするか
 生まれてこのかた、病気になったことなどないという人は、おそらくいないに違いない。というよりも、病気になるのは生きている証拠だとも言える。死とは永遠に病気との関係を断つことでもあるからである。 とはいえ、やはり病気は避けたい、健康でいたいというのが多くの人の本音だろう。年を取れば取るほどにこの思いが強くなるのは、健康への自信がなくなるからにほかなるまい。別の言い方をすれば、病気といかに付き合うか、人生も後半にさしかかると、これが大事だと思う人がゴマンといるに相違ない。本書はそういう人にまず勧めたい。大きな勇気を得るはずである。 著者の一人である小松方正は、改めての紹介がいらないほどの、映画や舞…  全文読む 評価する

光州事件で読む現代韓国 光州事件で読む現代韓国
大笹吉雄/1980年5月に起きた光州事件という窓を通して、韓国民の心意伝承と現代の政治のあり方を追求した力作
 韓国へはたびたび行く。が、現代劇を見るのが主目的だから、知っているのはソウルないしはその近辺に限られ、南部地方には足を踏み入れたことがない。 天童よしみが大ヒットさせた『珍島物語』で歌われている珍島が、韓国の伝承芸能の宝庫であることは承知だし、珍島を含む韓国南西地方の全羅道に、今なおシャーマニズムの気風が色濃く残っているのは知っている。伝承芸能にも関心があるから、かねて訪ねてみたいとは思っていた。 行ったことがないのはたまたまとも言えるが、光州事件がわたしの中で落ち着き悪くひっかかっていて、彼の地へ向かわせなかったところがないでもない。1980年の5月、全羅道の中心都市の光州で市民と軍隊が戦…  全文読む 評価する

モダニズム出版社の光芒 モダニズム出版社の光芒
大笹吉雄/1920年代の大阪に誕生し、わずか6年で幕を閉じたプラトン社、ここから発刊された雑誌の刺激的な全貌
 以前からプラトン社という出版社が気になっていた。というのも、専門にしている近現代の演劇史上の重要人物の一人として、演出家であり劇作家であり、演劇理論家でもあった小山内薫がいるが、この小山内が編集顧問として深くかかわっていたのがプラトン社だからである。 が、プラトン社がどういう出版社であったのか、これまでまとまった研究がなされた形跡はない。だから本書が最初の斧になる。そして本書を通読すれば、大正期の大阪を中心とする上方文化のあり方という大きな傘の下に、出版界の動向や盛衰、雑誌や著作物のイラストの近代化、この時代の知識人の趣向性といったような広い範囲の問題が、ごく短期間で終わったプラトン社という…  全文読む 評価する

命
大笹吉雄/妻ある日本人男性への恋とその果ての妊娠と出産、一度別れた死をかかえる男との共棲を通じて凝視する命。
 登場人物を知っていて、顔なじみ著者がその人のことを書いているのを読むというのは、一言ではいわくいいがたい複雑な感情にとらわれる。そうそうあることではないのだけれど、めったにない一冊が本書である。 柳美里が現在のようなよく知られる小説家になろうとは、まったく思いもよらなかった。わたしが彼女を知ったのは、「青春5月党」という劇団を主宰し、ここで書き下ろしの戯曲を上演していたころなのだが、柳美里が女優になるために、1970年代に一世を風靡した東京キッドブラザースというミュージカル劇団に在籍していて、劇団に入ってほどなくして、ここの主宰者で、劇作家で演出家だった東由多加と同棲しはじめたなどというの…  全文読む 評価する

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