現実を崩壊させる力を持った作家が好きだ。私たちは今のこの毎日の生活が永遠に続くような感覚にともすれば陥りがちであるが、それは錯覚にすぎない。しかし、彼らは知っている。そして、虚構の力で現実を震撼させる。私は薄氷の上を歩いていたことを思い出し、愕然とするのだ。森 博嗣は、確かにそうした力を持った作家である。また、随所にちりばめられた、彼の人生に対する洞察はきらきらときらめきを放ち、心の中でわだかまり、くすぶり、もやもやと行き場のなかった思いに形を与えてくれる。 主人公カンナミ・ユーヒチは、戦闘機乗りである。彼がかろうじて生きていることを実感するのは、空で戦闘機を操り、人を撃ち落とすとき。しかし…
|