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ぼくらのサイテーの夏 ぼくらのサイテーの夏
エルフ/400円でこの内容はお買い得としか言いようがありません。児童書なので子供はもちろん大人にもオススメ。
本書は著者のデビュー作らしいのですが最初から児童書だけにするには勿体無いくらいの本を書かれる作家さんだったのですね。小学6年生、12歳の少年の視線から見た友情、家庭、社会をその等身大の心で書いてある作品なのでふと12歳の頃、一体自分は自分の周りをどんな風に見ていたのだろう?と考えてしまう一冊なんですよね。私自身近所付き合いの濃い地域に住んでいたので(単に田舎だったので)道で出会う人が誰でどこの家に住んでいる人なのかすぐに分かるような狭い社会でした。だから家の内情も結構バレバレで、桃井が友だちでも自分の「ナマズになってしまった兄貴」について口を閉ざしている気持ちも何となく分かるのですよね。何とな…  全文読む 評価する

しゃぼん玉 しゃぼん玉
エルフ/加害者を加害者として切って捨てるのではなく、社会に戻す方法を丹念に考えて書いた作品
幼い頃から母親にお前には最悪な父の血が流れていると叱咤され、親からも誰からも愛情を受けることなく、また帰る場所もない主人公・伊豆見翔人。気がつけば23歳で街を転々とし犯罪を繰り返す日々を送る。そんな翔人が逃亡の途中で老婆・スマを助けそのまま山奥の村へ滞在する。決して良い行いをしようとしたわけではなく、スマや村の人々の勢いに押され気味になってした事だった。だが初めて人から頼りにされ優しさに触れるうちに翔人の中では少しずつ何かが変わっていく。明日に希望はなく、どこにも属さない人生を送る若者。主人公は23歳なのに考えることの安易さは15.6歳の少年のように幼く成長をしていない。通り魔や強盗など悪い事…  全文読む 評価する

青空の卵 青空の卵
エルフ/読了後、とても気持ちのよい気分になれる一冊です。
*あらすじ*主人公・坂木司は外資系の保険会社に勤務しています。友人の鳥井真一はひきこもりのプログラマー。一人暮らしが長いせいか料理の腕はプロ顔負け。鳥井はほっておけば何週間でも家に閉じこもっている、そんな彼を外の世界へ連れ出すために僕は鳥井の家へ足を運んでいる。僕が街で見た気になることを不思議なことを鳥井に話すと彼はその鋭い観察眼で僕が見えなかった真実へと導いてくれる。そんな二人の前に現れたのは不自然なまでに化粧をした女性、誰かにストーカーされているという視覚障害者、知能に障害があるのか言葉が上手く話せない少年・・・・。彼らに隠された真実とは??1.夏の終わりの三重奏2.秋の足音3.冬の贈り物…  全文読む 評価する

アジアンタムブルー アジアンタムブルー
エルフ/静かな優しさに溢れてます。読む時はハンカチの用意を忘れずに・・・
実はこの本感想を書くのが凄く難しい。あまりにも本に感情移入すると文章でその時の感情を表現するのって困難なんですよね。最初は葉子と出会って恋愛をしている山崎と彼のちょっと辛い過去であるR.Y.の時代と、そして葉子を失った後の現在とか交互に書かれています。正直泣けるほどの物語ではないなぁ・・・と思っていたら!!ラストの章は涙腺刺激されまくりで涙が止まらなくなっちゃいました。愛する人を失うときが迫りながら1秒でも一緒に生きている瞬間が延びるよう祈る。これは耐えられない辛さでしょうね。私なら出来ないです。想い出を作っていくことよりも1日も早く自分を忘れてもらえるよう先に目の前から去ることを願うかもしれ…  全文読む 評価する

太陽と毒ぐも 太陽と毒ぐも
エルフ/「あーわかる」「うひょーそれは最悪だ」「えーそんなことで」と色々な感想を持ちながら読んだ11組の恋人達の物語、読み終えた後は「そうそう完璧な相手なんていないのだから目くじら立てるのはやめよう」と寛大な気分になれる1冊
大好きでこの人が自分のベストな相手だと思っていたのにある日突然相手の性癖が気になり始め、一度目につくとそこだけが目に入りイライラしてしまう。でも別れるにはとても小さな事・・・・11組のカップルの小さくて大きな悩みを書いた短編集です。きっと誰にでもどうしても好きになれない性癖というのはあると思うのですよね。完璧な相手などいないですし、作中にもありましたが100%の相手なんていません。この中に出てくる11人の性癖も深刻なものから笑えるものまで様々。その中で私が特にダメだと思ったのは万引き女と風呂に入らない女。犯罪者なんてもっての他だし不潔で臭い人なんて一緒にいたくない。後は記念日に拘る人も嫌いです…  全文読む 評価する

赤い指 赤い指
エルフ/タイトルの「赤い指」の真相を知った時、読者の胸には衝撃が走ることは間違いない
前原家は外から見たらどこにでもある家庭、しかし内から見たら崩壊してしまっている家庭。あの時、もっと話あっておけばこんな状態にならなかったのか、こんな最悪な事態を招くことはなかったのかと何度か悔やむ昭夫、息子が犯したしまったのは幼女殺害、反省するどころか自分が犯した罪の重さも全く気付かない彼を溺愛し守ろうとしか思わない妻の八重子。そして彼らの家にはもう一人、昭夫の母で痴呆の政恵が住んでいる。救いようのない親子が自分達の生活を守るために下した結論は普通なら考えもつかないくらい酷いこと、しかもそんな作り話が通用すると思っているのかというくらい杜撰な計画にも関わらず彼らは決行していくのです。この物語は…  全文読む 評価する

少女七竈と七人の可愛そうな大人 少女七竈と七人の可愛そうな大人
エルフ/何とも言えぬ切ない余韻の残る恋愛小説であり、人が人を許す難しさも感じた一冊。
淫乱な母親から生まれた七竈。父親が誰なのかわからないまま淫乱な母は七竈を産み、そしてその男を求める旅は子供が産まれてもなお続きいまだ旅人である。旭川に田舎で七竈は小さいころからその産まれにより友達ができず、唯一の友は七竈と同じく鉄道を愛する美しい少年の雪風のみ。雪風との穏やかな時間は望んでも望んでも決して続くものではなく、美しい少女と少年の切ない青春の時間は好むと好まざると終わりを迎えてしまう。認めたくなくても認めざる終えない事実。時間の流れは、なにより大事なはずだったものをすべて、容赦なく墓標にしてしまう(P252)あまり感情を表に出せない七竈の心に痛みがすべてこの一行に込められる。なんとも…  全文読む 評価する

義八郎商店街 義八郎商店街
エルフ/良い話が読みたい人にはオススメ。
神様が住んでいるような街、「義八郎商店街」。ここは何かに守られているかのように悪者から寸前のところで救われる出来事が続いていました。その「何か」というのとホームレスの「義八郎」が何者なのかは物語が進むうちに自然とわかってくるのですが、実は最後の「消滅」では思いもしない真実がわかってしまうのです。何を書いてもネタバレになってしまうのですが、ラストを読んでから最初の「義八郎商店街」を読むと最後の子供たちの会話「神様が守ってくれているような街だね」で全てが語られていたのですよね。途中までは個性溢れるお店の人々たちで笑いながら読めましたが、次第にあまりにも大きな悪が義八郎商店街を襲い、最後はその街の今…  全文読む 評価する

地に埋もれて 地に埋もれて
エルフ/「死」から「生」を語る珍しい物語。
17歳の忌まわしき過去から「生きる」ことに対して執着心のなくなった主人公・優枝。いつもどこかで「死」に憧れ、自分と一緒に「死んでくれないか」と言った男の言葉に甘美ささえ感じていた。人がどれほど恐ろしい、どれほど見えない敵意を撒いているのかを幼き頃に知った優枝には最後に遺書を残すほどの友人さえいない。だが肝心の心中の日、優枝は自分だけが土の中へ埋められていくことを知る。恋人のような男に見捨てられ、一人土の中に朽ちて行く・・・・そんな優枝を救うのが謎の少年・白兎。悪魔のような死神のような存在の白兎から言い渡されたのは残り7日だけの猶予期間という言葉。果たして優枝は既に死んでしまっているのか、黄泉の…  全文読む 評価する

古道具中野商店 古道具中野商店
エルフ/噛めば噛むほど味が出る、スルメのような一冊
主人公の「わたし」は小さな古道具店でアルバイトをしている、店長の中野は三回も結婚し子供もそれぞれにいるのに愛人とのことですったもんだのあるダメ男、店長の姉マサヨさんはいい歳なのに愛に生きている少女みたいな不思議な人、彼氏なのか同僚なのか分からないタケオ。この4人の中で起きる日常の出来事が書かれているだけの作品にも関わらず何故か惹かれるものがある。しかもこの本、人情ものかと思えばその芯にあるものは直球の恋愛ものなのだ。ダメ店長の憎めない恋愛騒動、歳の離れたマサヨさんの愛の告白や、わたしとタケオの不器用なのだか何なのだか分からないけれどうまくいかない恋。普通に想像すると生々しい男女の恋愛なのに何故…  全文読む 評価する

銀行総務特命 銀行総務特命
エルフ/主人公の指宿がとにかくいい。こういう出来る男と一度は仕事がしてみたいものです
銀行小説と言えば池井戸潤氏。今回も行内に起きた不正をバシバシと暴いていく主人公の指宿(いぶすき)の切り具合が気持ちよく楽しめた短編集なのですが、やはり短編だけあって物足りなさがどれもついてきました。どうせならば長編で読みたい!と思ってしまったので評価は★4つです。しかし銀行ってこんなに不祥事が日常的に起きているのているのかしら?とか銀行員の人としてのモラルってこんなに低いものなのかしら?と少し疑いをかけてしまいたくなるくらいリアルな人間模様がこの本には描かれています。特に最後の「ペイオフ」騒動は年寄りを狙った悪質なものでいかにも現実にありそうな話なんですよね。やはり以前の会社でも銀行との揉め事…  全文読む 評価する

漢方小説 漢方小説
エルフ/心と身体に良い一冊
芥川賞は受賞していない作品のほうが優れている・・・島本理生氏のときからずっと私が感じていることです。不思議なことに受賞した作品は私にとっては理解不能なものが多いのですよね。そんなわけで今回も候補作に上がり受賞しなかった「漢方小説」は私にとっては五つ★の面白さで何故この本が受賞していないのか不思議でならないのでありました。主人公のみのりは一言で言えば「負け犬」の31歳。元彼の結婚話を聞いたその日から体調は不良、原因のわからないドキドキに悩まされてしまいます。動悸や食欲不振、一体私はどうしちゃったの?と病院通いの日々が始まり、辿りついたのが「漢方診療所」。少しずつ回復していったみのりですがまたまた…  全文読む 評価する

間宮兄弟 間宮兄弟
エルフ/読み終わったあと、きっと「間宮兄弟」がいるといいなと思えます。
範疇外、絶対にぜーったいに恋愛なんてアリエナイ間宮兄弟。心根は優しく人は良い間宮兄弟だけれども二人を評価する言葉は「恰好悪い」「むさくるしい」「おたくっぽい」「気持ち悪い」と散々なもの。そもそも30歳を過ぎた兄弟二人で住んでいるのもアリエナイ。そんな評価を素直に自分に受け入れた間宮兄弟はもう女の尻は追わないと決めたその日から実に心安らぐ日々を過ごすようになる。そんなある日、弟は奮起して同じ学校の先生とビデオ屋の店員さんを家に呼ぶことに、その日から兄弟の安泰の日々は少しずつ変化していき・・・。このアリエナイ兄弟二人というのが本当に目に浮かぶ、いや隣の家にでも存在していそうなくらいリアルなんですよ…  全文読む 評価する

100万回の言い訳 100万回の言い訳
エルフ/恋愛中は結婚したくなり、結婚すると恋愛したくなる・・・・夫婦とは何かを考える一冊
出会った時は恋人になることを考え、恋人になった時は夫婦になることを考え、では夫婦になった後はどんな未来を考えるのでしょう。子供がいれば自然と「家族」という形になる、でも二人だけだと「家族」としての絆はあまりなくしかし恋人時代の甘さもなく、どこか親友という雰囲気になってゆく。確かにそうなんですよね、夫婦だけだと離婚すればただの他人、子供がいれば離婚しても子供の父・母としての繋がりは途絶えないから家族だった過去は残ってゆく。一人でいる気楽さと二人でいる煩わしさ、決して家族とは思えない私達はどうして別れないのか?と疑問に思う結子と志郎。多分結婚後にこういう気持ちになる人は多いと思います。別に何が不満…  全文読む 評価する

ララピポ ララピポ
エルフ/小説は最後まで読まないと分からないと思わせてくれた一冊
この本の何がすごいかと言えばこの内容で最終的には哀愁を醸し出しているところなんですよね。最初の短編だけ読むと非常に腹立たしいと言いますか、奥田英朗よ、手を抜いたのか?と思わず問い掛けたくなるようなものなのです。昔取った杵柄ではないけれど良い大学を出たことだけが心の支えとなっているフリーターの杉山博。女性にモテナイのはこの引き篭もりのような生活が理由。最近上の階に引っ越して来たホストのような男の部屋の盗聴までして自分の快楽を満たしているのですが、彼の容姿が最後まで隠されていてそれが分かった時には何ともシュールな内容に。正直ダメ男のダメっぷりでこの先読むのはどうしましょうという第一話。ところが第二…  全文読む 評価する

ねじの回転 ねじの回転
エルフ/人間の人間らしい醜さを実に美的に描いている、恩田陸氏らしい一冊でした。
2.26事件と時間旅行を取り扱う作品と言えば宮部みゆきの「蒲生邸事件」を思い出し、かなり前にこの本は買っていたのですがずっと積読本でした。同じような題材で書かれた小説・・・というイメージがありましたがやはり著者の色がそれぞれ出ていて全く別の出来上がりになっていますね。別に比較する価値はないのですがそれぞれに面白さの違う作品でした。ただその時代の緊張感が漂っているのは宮部氏の方かなと思います。恩田さんの場合はSF色が強いので。さて何故2.26事件が日本人にとって忘れられない事件であるのか。基本的に歴史に疎い私ですが、多分この事件を後に日本は一気に軍国主義へと傾き、そして第二次世界大戦へと進む歴史…  全文読む 評価する

晩鐘 晩鐘
エルフ/胸が痛くて痛くて仕方がないのに読んでしまう一冊です
「風紋」を読んだ後、真裕子の涙壷と孤独感が私の心の中に強く残りました。そして今回続編の晩鐘を開く時、真裕子が少しでも幸せだったらいいなと思い読み進めたのですが・・・。やはり被害者・加害者ともに事件が風化しても元の生活には戻れないのだという現実を思い知らされた気がします。ですから読んでいて凄く辛いんですよ、この本。胸が痛くて痛くて仕方がないのに読んでしまうのです。被害者の遺族・真裕子の壊れかけている心、誰か真裕子を救って欲しいのに周りに現れるのは真裕子を傷つける者ばかりで読んでいて腹が立つやら泣きたくなるやら・・・それでもやっと最後の辺りで義弟や建部の存在により少しずつ真裕子の涙壷が大きくならな…  全文読む 評価する

てるてるあした てるてるあした
エルフ/繰り返し繰り返し読みたくなる一冊
「ささらさや」の姉妹編ということで舞台だけ一緒の「佐々良」だと思っていたのですが、これが大間違いでした。「ささらさや」に出てきた人たちが今回も同じく登場しますので姉妹編ではなく続編だと思って前作が未読の方はあちらから読まないとちょっとこの本を読むのは難しそうです。ロクでもない両親の元で育った照代。頑張って頑張って志望の高校に受かったものの浪費家の両親は入学金を払っていないどころか、借金まみれで夜逃げすることに。しかも両親と一緒に行こうと思っていたのに遠い親戚の鈴木さんという人を訪ねなさいと「佐々良」の地までやってきた照代を待っていたのは、魔女と呼ばれるおばあさんとの生活なのです。15歳なのに誰…  全文読む 評価する

闇の子供たち 闇の子供たち
エルフ/問題作であり衝撃を受け、更に一気に読ませながらも最後は読者を突き放す一冊
何とも言えぬ救いのない物語であり、読み終えた後ずしりと重い気持ちになりながらも非日常の出来事として忘れ去れる物語がこの本なのだと思います。きっとここに描かれていることは現実に起きていることであり、今もどこかで少女や少年は売られ、病気になれば生きたまま捨てられ、性の処理だけでなく内臓すらも売買される対象になっているのでしょう。それが伝われば伝わるほど、目を背けてしまうのが日本という国で生まれ本当の意味での貧困が遠い国の出来事としてみている今の自分だからかもしれません。物語に登場する少女や少年たちは人として扱われることなくモノとして扱われ、大人たちは都合よく搾取していく。貧困がすべての原因だとして…  全文読む 評価する

もやしもん もやしもん
エルフ/目からうろこの漫画です。
某番組で紹介されていて気になっていた「もやしもん」。この歳で漫画を読むのもなぁとためらっていたのですが、妙に惹かれたのと内容が「菌」ということで難しい本を読むよりも漫画のほうがさくさく読めるかなと思い読んでみることに。これが微妙な揺るさの中で「菌」について詳しく書いてあり、知識を増やすにはもってこいの漫画でした。漫画もすてたものではないものですね。「もやしもん」を読むと実に私たちの周りは「菌」たちでいっぱいなのか、除菌なんてしても無意味なくらい菌に囲まれています。そして「菌」って決して悪いものではないのですよね。目からうろこのような漫画でした。  全文読む 評価する

対岸の彼女 対岸の彼女
エルフ/胸が痛みながらも止まらない。
まず最初に感じたのは何と生々しく心が痛くなる作品なのだろうという事です。しかしあまりにも共感できる二人の現在と過去に読む手が止まらず、痛いなぁと思いながらも一気読みさせられる1冊でした。しかも女性ならではの陰湿さを包み隠さず、また目を背けたくなる部分を真っ直ぐに見て書いてあるので読むタイミングが悪いとヘコんでしまいそうなんですよね。でも少々落ち込んでも読む価値はかなりある本です。学生時代も社会に出てからも大変なのは勉強や仕事ではなく人間関係。特に女の友情は脆い、そして上辺だけの事が多い。同じ時間・空間を過ごさなければいけないから必死で一緒にいる仲間を探す。教室移動や弁当を食べる時に独りになるの…  全文読む 評価する

ママの狙撃銃 ママの狙撃銃
エルフ/好きな作家さんなだけにあえて辛口に・・・。意外さはあったけど勿体無さが強く残った作品でした。
好きな作家さんの新作は読む前にすごく期待してしまうので好きになればなるほど評価自体は辛口になってしまう傾向があるので今回もやや辛目に。さて、今回は珍しく「女性」が主役の荻原作品。今まではちょっと情けなくて、世間で言えば「負け組」の中年男性が主役だったことが多かったので意外と言えば意外でした。しかも彼女の仕事は「殺し屋」ですし荻原氏の女性像なのでしょうか強く生き抜く逞しさをもっているのですよね。25年前、陽子は祖父を守るために一つの仕事をしてしまう、その過去を隠しながら築いてきた平穏な暮らしの中に突如訪れた危機。それはKからの電話であり、弱い夫の失敗や、子供の世界の陰湿な虐めなど日常と非日常が交…  全文読む 評価する

アナン、 アナン、
エルフ/冒頭から引き込まれる、その吸引力の強さに驚かされた1冊です。
冒頭の一行目から否応なく物語に引き込まれてしまう本というものは稀に存在しますがこの本はまさにその1冊。吸引力に逆らえず、そしてその力は物語のラストまで私を離さずに一気読みさせられた本でした。初雪が降ったら死のうと決めていた記憶喪失でホームレスの流。最後の晩餐を食べた後、彼が耳にしたのはゴミ置き場に捨てられていた赤ん坊。「死」を決めた流の元に今生れ落ちたばかりの「生」がやってくる。ホームレス達の元に来た赤ん坊のアナンには不思議な力があり、アナンの前では人々は自然と心の奥底に隠していた闇の部分を語ってしまうのです。主人公はもちろんアナンなのですが、私はアナンだけを必死で守ろうとする流の方に感情移入…  全文読む 評価する

一千一秒の日々 一千一秒の日々
エルフ/恋愛小説でありながら単なる恋愛小説で終わらないのが島本理生の作品なのです。
短編のうち1話~6話までは主人公が一人ずつ脇役とバトンタッチしていきグルリと一回りしてまた1話目の主人公の物語へと戻っていく連作短編集と番外編(?)の7作からなる本作品。正直1話目の「風光る」を読んだ時は「ナラタージュ」の激しさと比べてかなり小さく纏まってしまったなぁ~という印象でちょっと読むテンションが下がってしまったのだが、次の「七月の通り雨」を読んでテンションは一気に上がってしまった。「風光る」に出ていた主人公が今度は脇役になり登場していたからだ。これは面白い展開になっていきそうだと思っていたら予想以上の面白さ。まず次に誰が主人公になっていくのかが楽しみなのと、脇役だったときには分からな…  全文読む 評価する

楽園 楽園
エルフ/宮部みゆきらしい問いかけに心にずっしりと重く残る一冊。
どの家庭にも存在している他人には決して入れない領域、底なし沼のように暗い場所。そんな暗部にいつの間にか辿り着いてしまったのが「模倣犯」事件のフリーライター・前畑滋子。あの事件から9年が経ったにも関わらず事件のショックから立ち直れずにいた彼女の元に依頼にきたのはどこにでもいそうな婦人・荻谷敏子。裕福ではなく傍から見ると不幸を背負っている荻谷敏子だが息子の萩谷等との二人きりの生活は楽園そのものだった。そんな等は12歳にして事故で亡くなる。絵の上手かった等が残した謎の絵の数々。それは16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたというものだった。12歳の息子は「事件」を予告して死…  全文読む 評価する

木洩れ日に泳ぐ魚 木洩れ日に泳ぐ魚
エルフ/謎と感情の渦に巻き込まれていく一冊。
どれだけ疲れた時でも恩田陸氏の本だけは序章を読んでしまうとその吸引力に負けてしまい止めることができない。アパートの一室で引越し前の最後の日を迎える1組の男女がいる。明日から男のほうは別の女と暮らすアパートへ、女の方は友人の家へ。今夜しかお互いに残された時間はない。この1年間お互いに過ごした地獄のような日々を終らすために、そして明日からの新しい日を迎えるために決着をつけないといけない「ある出来事」。彼に、彼女に「あの男を殺した」のだと言わせることができるのか?緊張感に満ちた一室で行われる男女の会話。しかも二人の背景を小出しにしているので一体二人がどういう関係なのか、「あの男」とは誰なのか、謎が謎…  全文読む 評価する

ゆらぎの森のシエラ ゆらぎの森のシエラ
エルフ/出来ればもっと長い物語として読みたかった一冊。
塩を含んだ霧に囲まれ作物は育たず、また狂暴化した動植物に度々襲われ次第に滅びの方向へ向かう地、キヌーヌ。全ては創造主であるパナードにより創り上げられた世界。異形であり禍々しい姿でありながら救世主とした現れた守護神・リュクティもまたパナードが創造したものでしかない。そんなキヌーヌの森の深くに住む少女シエラ。自らを妖精伝説を伝えるために生まれた巫女だと名乗るが下手物喰いのため人々が森の奥にある小屋へと追いやった少女。そしてシエラが金目と呼ばれる殺人鬼と出会ったとき、静かにそして急速に創造された世界は動いていく、それは破滅への道でもあり救済への道でもある。世界の原理とは一体何なのか。全ての生き物が行…  全文読む 評価する

しゃべれどもしゃべれども しゃべれどもしゃべれども
エルフ/文句なしに「良い」。ただ一言「読むべし」といいたくなる一冊。
1997年に単行本で出版されその年の「本の雑誌」で年間ベスト1に輝いた作品。前評があまりのも良いと期待し過ぎて逆に評価が下がることがありますが、この作品に限ってはそんな心配は不要です。評判・話題になって当然期待以上の面白さでした。読んいる間中楽しさと切なさとそして爽快さに包まれていて読了後自然と笑みが浮かぶ作品なのです。もしこの本を読んで悪評を書く方がいたらならば、それはただの偏屈としか呼びようがないのでは?と思うくらい兎に角一言「良い」作品なのです。本好きの方の中には社交性のある方もいますが、私にとっては本の世界はいわば現実からの逃避行のようなものでこの本に登場する話しベタで付き合いベタの4…  全文読む 評価する

通天閣 通天閣
エルフ/西加奈子という作者に見事にやられたと思ってしまう一冊です。
なぜかホモの中年男性に好かれ壊れた時計に囲まれた部屋で夢もなく深く関わり合う人もおらず家の近くの工場で働く男と、二年間同棲していた恋人のマメが留学するために去っていったことで夜の寂しさを紛らわすためと、恋人を自分にひきつけるためにスナックのチーフとして働き始めた女。物語の中盤まではちょっと偏屈な男と閉鎖的な女の日常生活に読んでいてこちらまでトホホとした気分になってしまいます。トホホとした気分なのに何故だか妙に可笑しい。二人の独り言や心の中の言葉に「あぁ分かる」と思わず笑いがこ込みあげてくるのです。そしてラストに起きる珍事件は笑いが止まらない、笑えるのにジーンとくる、ジーンとくるのに脱力するくら…  全文読む 評価する

甘栗と金貨とエルム 甘栗と金貨とエルム
エルフ/装丁とタイトルに騙されてはいけません、この作品ハードボイルド系ミステリなのです。
装丁があまりにも可愛らしいですしタイトルも何のことやらサッパリ?ということで書店で目にはしてもなかなか手にとることがなさそうな一冊なのですが、これが意外なくらいしっかりとしたハードボイルド系ミステリなのです。主人公が17歳の高校生だということを途中ですっかりと忘れそうになるのですが、時々出てくる同級生二人の会話で「あぁまだ高校生なのね」と思う程度で後はひたすら大人の世界。父親の突然の事故死で天涯孤独になった甘栗晃。亡き父の仕事は探偵。その事務所を整理しているところに現れたのは小学生の少女。金貨一枚で失踪した母親の行方を捜してくれと依頼していたらしい、そして肝心の金貨は紛失、生意気な少女は父にし…  全文読む 評価する

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