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百歳 百歳
栗山光司/一冊の詩集が少子高齢化時代の不安を癒すか?
 敬老の日に老母や仲間たちから評判の良い大ベストセラーズになっている詩集『くじけないで』に続く第二詩集『百歳』を購入してしまいました。店頭のいたるところに陳列されていた。老母に渡したら、すぐに読み終わって老人仲間たちで回し読みしている。『くじけないで』もそうやってみんなで読んだのに150万部売れ部数とは、ひょっとして読んだ人は200万人超えかと想像したくなる。 僕としては詩集の中身以前に「社会現象として」90歳から詩作を始めたトヨさんの「詩集」が何故ここまで人々の心を惹きつけたのか興味津々で分析したくなる。 読んだお婆ちゃんに感想を聞くと素直に涙を流し、感動している。老母なんか自分の体験と重な…  全文読む 評価する

原発報道とメディア 原発報道とメディア
栗山光司/ジャーナリズムの公共性の名に値する作業とは?「基本財としての安全・安心」を実現すること
 鉢呂吉雄前経済産業相が「放射能をつけたぞ」、「死の町」発言で辞任したけれど、「トンデモない大臣だ」と瞬間的に僕は反応したのですが、暫く時間が経つと「待てよ」となってしまった。どのような経緯での発言なのか、単なる言葉狩りではないのか、俗情に媚びた作文ではないか、大臣の辞任より、ジャーナリストとしての記者のことが気になる。「メディア報道」の依って立つところ「公共性」とはなんだろう? 政官財だってそれぞれの文法で「公共性」に立って「正心誠意」やっていると思っているでしょう。ただそれぞれの背中に組織としての「既得権益」を背負わされている。国民一人一人だってそうです。喜んで増税を歓迎しない。 だけど、…  全文読む 評価する

津波と原発 津波と原発
栗山光司/原子力日光の下に微睡み、歌を忘れたカナリアは「いい国つくろう」とトカトントン
 9月2日の朝刊を広げると、見開き二頁に某出版社の全面広告が掲載されていた。キャッチコピーは「いい国つくろう、何度でも」。1945年8月30日、連合国総司令官ダクラス・マッカーサーが専用機ダグラスC54「バターン号」から姿を現しコーンパイプをくわえサングラス、まさに花道で見得を切った歌舞伎役者のようなかっての赤鬼の凛々しい姿に「これがアメリカ」なんだと何度も讃嘆した少年時代の思い出が蘇った。 それに引き替えこの国の大人たちの臆面のなさ、だらしなさに少年の僕は「自虐的な気分」になったのは当然であった。 自虐史観は学校教育を通しても助勢されたが、そんな去勢のエポックの中に「高度経済成長」という共通…  全文読む 評価する

逸見小学校 逸見小学校
栗山光司/出撃前の「隠れ家」(アジール)なのか、桜の花びらが言った。
 読んでいるうちにいわゆる「戦争小説」というある種の先入観があったのですが、知らぬ間に吹っ飛んでしまった。読後感は爽やかで横須賀の逸見小学校に終戦の年の春、五つの海軍部隊が、赴任地に配備される前に集まったのですがそこでの短い期間での千野隊長、同僚の若い少尉達、部下の兵士達のエピソードが作者の暖かい眼差しによって活写される。 逸見小学校という空間が束の間の「幸福なアジール」となって、戦時中であってもここに「青春」があり、「友情」、「家族愛」があり、日常生活の哀歓がある。 羨ましいと思ってしまうような濃密な将校たちを含んだ兵士達との交歓がある。 誤解を恐れずに言えば「平和」時の競争社会の戦場の方が…  全文読む 評価する

アーカイブズが社会を変える アーカイブズが社会を変える
栗山光司/アーカイブズが時を貫く夢を見る
新書として一般向けに刊行されたのでしょうか。僕のような不案内なものにとってだいぶ敷居が高いのではないかと構えてページをめくったが、とても読みやすかった。ところどころで挿入される著者の取材に基づいた「日本のアーカイブズの世界」に棲む図書館員、博物館員、学芸員、レコードマネジャー、アーキビスト、ボランティア、企業人、政治家などを含めて様々な人々のアーカイブズという森の中で奮闘している様がバランス良くドキュメントされている。なかなかかような時間をかけた地味な活動は僕らの目に触れにくいし、感動的な物語が随所にありました。今年、4月に施行となった公文書管理法によって何がどう変わるのか具体的なイメージが浮…  全文読む 評価する

欲望のメディア 欲望のメディア
栗山光司/7月24日、地デジ化…懐かしきかなアナログテレビ
 もうじきテレビのデジタル化が実施されるけれど、どうなるんだろうねぇ。猪瀬直樹の『欲望のメディア』は戦前からのテレビ開発、普及、そして社会評論家の大宅壮一に「一億総白痴化」と嘆かしめたが僕らの青春時代でもあったテレビというメディアを総括する。 勿論、真空管も懐かしいアナログですが。でもそんなアナログ画面を通して僕たちは世界に触れていたと言っても過言でなかった。 現在のネット社会の「世界の触れ方」とは違いテレビによって放映された大きな物語に僕たちはナイーブに感化されていった。力道山、鉄腕アトム、60年安保、「地球は青かった」も東京オリンピック、東大安田講堂、連合赤軍あさま山荘、ベトナム戦争、アポ…  全文読む 評価する

不可能 不可能
栗山光司/ゾンビのmishimaが見えを切って登場!
 1970製・三島由紀夫の頭部が27年後出所した平岡公威の尾っぽを噛んで8編の連作短編が稼働したのか、それともウロボロスのごとく頭と尾っぽはつながり、生身の平岡公威の頭か、それとも石膏の三島由紀夫の頭か、そんな三島由紀夫≒平岡公威の切れ目にミステリアスな怪奇とも言える事件が起こる。 それは終りのない事件かもしれない。世界のどこからか、三島の哄笑が聴こえる、そんな読後感がある。 平岡老人は手品を操る人でもあるのです。「地下室」と「塔」の大掛かりな二つの建物に設えた舞台装置で「不可能」な事件が起こる。 僕にとっても三島由紀夫事件はいまだに未解決な謎の記憶として刻印されている。 三島の存在そのものが…  全文読む 評価する

原発のウソ 原発のウソ
栗山光司/安全な被曝量は存在しない!って、ホント?
 本書を読むと目からウロコ状態になって僕自身の無知であったことを次から次へと気づくきっかけになりました。文章は平易でわかりやすい。それだけでなく、小出さんが何故、原子核工学を専攻しながら、反原発運動にシフトしていったのかと言う動機、履歴が素直に語られ一人の人間の生き方として好感を持ってしまう編集構成です。 無駄のない章立てで興味のあるところから読んでもいいと思う。 第一章(福島第一原発はこれからどうなるのか)第二章(「放射能」とはどういうものか)第三章(放射線汚染から身を守るには)第四章(原発の常識は非常識)第五章(原子力は未来のエネルギー」か)第六章(地震列島・日本に原発を建ててはいけない)…  全文読む 評価する

思想としての3・11 思想としての3・11
栗山光司/原子バクダンを発見するのは、学問じゃないのです。子供の遊びです。これをコントロールし、適度に利用し、戦争などせず、平和な秩序を考え、そういう限度を発見するのが、学問なんです。(坂口安吾)
 17人の論者たちのトークポジションは微妙に違い最後の「『来るべき蜂起』翻訳委員会 反原発のしるし」はメッセージ過多で編集上なくてよかったのではないかと違和があった。 印象に残ったのは佐々木中著『砕かれた大地に、ひとつの場処を 』、吉本隆明著『これから人類は危ない橋をとぼとぼ渡っていくことになる』、 中井久夫著『戦争から、神戸から』、加藤典洋著『未来からの不意打ち 』、森一郎著『世界を愛するということ』、池田雄一著『われら「福島」国民 』、 廣瀬純著『原発から蜂起へ』と言うことになる。共振もしくは読解の触手が届いたということです。 加藤典洋の「核抑止」ならず「技術抑止」という鍵概念には目からウ…  全文読む 評価する

原発労働記 原発労働記
栗山光司/30年前の原発労働、しかし現在とほとんど変わらないのではないか?
原発の下請け労働者として1978年、79年と働いた著者の貴重な記録で、『原発ジプシー』に加筆修正して緊急復刊したものですが、30年前頃の出来事なのに、とてもリアリティがあって、いまだに同じようなことをやっているんだろうと言った切実感があった。労災隠しだとか日常的に起こる、事故、怪我、著者も作業中に骨折する。だけど結局労災申請をしない。孫請け、ひ孫請け、協力社員という名の「非正規雇用」者のいろんなところからかき集められた労働者、手配師たちの人間模様。そんな描写も暖かい筆致で言及している。顔の見える一人一人の原発労働者たちの生き様に触れるとあっけらかんと「反原発」と切り捨てるおめでたさを呑み込みた…  全文読む 評価する

無痛 無痛
栗山光司/黙って座ればピタリと当たる。占い師ではありません。お医者さんです。
 現役の医者でもある作者の推理小説なのですが、次々と仕込んでいる医療の最先端からトンデモ的科学的知見、心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為は軽減する刑法39条の問題と、てんこ盛りで、医療情報小説としても面白いところがあった。 主人公の医師為頼は犯罪人類学の創始者ロンブローゾの系譜を引き継ぎところがあって、人の表情、身体に「犯因性」、「病気」の症候を観測出来る特異な診断能力を持っている。 病気は自然現象であって、ほとんどの病気は「治るべきして治る」、「治らない病気は治らない」、医者の出来ることはほんのわずかであるというわけ。 最先端医療技術の一つに遺伝子診断ってあるが、遺伝子情報を解析し…  全文読む 評価する

がん生と死の謎に挑む がん生と死の謎に挑む
栗山光司/放射線もがんも制圧出来ない科学技術の罪と罰
本書はNHKで放映されたスペシャル『立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』の完成台本を資料に書籍化されたもので、そのような経緯から付録として、番組のDVDが添えられている。懇切丁寧に「がんの最前線」にも触手を伸ばしたルポライター立花隆の真骨頂が随所に見られる奥の深い「がん情報本」になっている。でも知れば知るほど「がんの正体」がわからなくなる。あるレベルで了解したつもりが、当事者として治療をスタートし、ネットや、医者や患者から様々な情報を収集するにしたがって段々と闇が深くなる。患者としての作者の悩みに同じく僕自身も共振するところがある。癌になったある科学者は科学者としての決断から積極…  全文読む 評価する

私たちはこうして「原発大国」を選んだ 私たちはこうして「原発大国」を選んだ
栗山光司/原子力日光の陽だまりの中で微睡みながら
僕たちは恐らく「原発大国」というメニューを選んだのであろう。ヒロシマ、ナガサキという被爆国でありながら、何故、「原発大国」を国策として採用したのか。戦後の焼け野原からの復興が最優先で「経済大国へ」の国民的コンセンサスが疑念なく信じられた。日米安保という核の傘の下であろうとも「豊かになれば」いいのだと、ナイーブにお金稼ぎに邁進した。所得倍増を唱えた池田勇人がド・ゴールフランス大統領に「トランジスターラジオのセールスマン」と揶揄されようと、経済重視は国民こぞっての路線であった。そして、とうとう変動為替相場に移行。本家のアメリカさを脅かす経済成長を遂げた。日米安保≒国体という骨格が戦後天皇制に支えら…  全文読む 評価する

パンとペン パンとペン
栗山光司/「パン」をメタに「ペン」をマジに
 教科書的に堺利彦と「平民社」は幸徳秋水、大杉栄、荒畑寒村達の文脈で知っていたが、「売文社」のことは寡聞にして知らなかった。 平民社の週刊「平民新聞」が創刊されたのが、1903年11月で「自由・平等・博愛」を旗幟として、社会主義を宣言、日露開戦にも反対、共産党宣言の邦訳を掲載するなどして、とうとう1905年1月発禁となる。 その後、日刊「平民新聞」として発刊されるが(1907年1月)、4月に発禁。そうした流れのなかで危機感を持った国策捜査で1910年の大逆事件が起こり、幸徳秋水らが一斉検挙される。 年開けて1月24日、25日に12人が処刑される。入獄していたがために大逆事件に連座を免れた出獄し…  全文読む 評価する

「今泉棚」とリブロの時代 「今泉棚」とリブロの時代
栗山光司/今泉棚って何のこと?かって、夢のようにあり得た書店のトポス
 少なくとも、もう20年前の書店伝説ではないか?本好きの若者にとっても、現役で働いている若い書店員にとっても『今泉棚』がいまだに生きた言葉として流通しているかどうかわからない。でも、数年前、本屋でアルバイトしていた女子学生が『伝説の「今泉棚」に思うこと』というタイトルでブログ記事をアップしていたことがありました。棚構成も任されていたのですが、そのモデルとして「今泉棚」があって棚を一つのマンダラのように作り上げたということでした。面白いことに彼女は、いつどこで「今泉棚」のことを知ったのか記憶が定かではないと書いていたことです。 地方から出て来た彼女のビビッドな脳内にインプットされていたキーワード…  全文読む 評価する

ヘヴン ヘヴン
栗山光司/作家の勝負服は「文体」
川上未映子の『ヘヴン』はとても面白かったが、もし、作者の名前を隠して読んだら絶対に川上未映子だとわからなかっただろう。芥川賞作品『乳と卵』にしろ、最初に読んだ『わたくし率 イン歯ー、または世界』でも、川上以外は考えられない文体が僕の脳内に粘着保存されて、「川上未映子だぁ~!」という文体が彼女の小説の真骨頂であり、誰も真似のできない文体世界がここにありと、自己主張し、彼女と文体の不即不離の関係性の強固さに、最早この文体で書きつづけるだろうと言う僕なりの強い思い込みがあった。それが、見事に裏切られたわけ。改行の長い文体は息継ぎも思うようにゆかず結構息苦しくなって遅速読になるけれど、延々と濃密な独白…  全文読む 評価する

書棚と平台 書棚と平台
栗山光司/果たしてハードとしての書物の存在理由は?デジタルコンテンツが出版流通のメインストリームになる時代がもう目の前にあるのかも知れない。
本書を読んで新鮮な驚きがあったのは、「出版流通」をメディアとして論考している視点でした。出版・書店・読者としての文化を語りながら、メディア論を展開することにはそれなりの蓄積があり、了解があるけれど、むしろ取次機能を歴史的に検証しながら、取次のメディア性を特化して出版→取次→書店→読者(消費者)を串刺したダイナミックなメデイア論に着地する手際は見事でした。先日、堺に巨大流通倉庫を発足させたアマゾンや、グーグルによる書籍デジタル化の動きと相俟って「出版流通問題」をグローバル経済の枠組みの中で検証しがちなのですが、著者は研究者として地道に近世から民俗、習俗にまで目配りしながら、文化としての「出版流通…  全文読む 評価する

フリーター労組の生存ハンドブック フリーター労組の生存ハンドブック
栗山光司/「働く現場」でサバイバルする実践の書
学者や評論家の書いたものではなく、あくまでアクティビスト達の手になる実践の書です。運動を通して獲得したノウハウを分かりやすく章立ても工夫しながら、丁寧に編集しています。第一章:「働く」、第二章:「生きのびる」、第三章:「仲間とつながる」、第四章:「ステップアップ」と構成されているのです。最終章で言及しているように国境を越えて海外の人々とも手を結んだ運動まで広がっていかなければ、我々の求める「自由」と「生存」は、他国の人々を搾取・排除によって成り立つアブノーマルなものになるであろうというまっとうな見取りもあります。勿論、このあたりのことについては編者、執筆者は繊細な感受性を持っており、だからこそ…  全文読む 評価する

本の現場 本の現場
栗山光司/本書は希望小売価格1800円+税【非再販】
本を取り巻く流通は主流も支流も複雑怪奇でわからぬことが益々増えているが、本書は本屋の今を困難な問題(1)再版維持制度、(2)委託制度に対して迂回しないで正面から、業界以外の人にも見通しの良い出版流通地図を懇切丁寧に説明してくれている。雑誌『図書館の学校』の2005年4/5月号から2007年2/3月号まで連載した「本はどのように生み出されているのか?」「本はどのように読まれているのか?」をまとめたものです。付記としてそれぞれの項目ごとに連載記事以降の情報を検証して著者なりの考えが変わったところ変わらなかったところを誠実に追記している。それによって本に奥行きが出来、長い時間のスパンの中でやはり何が…  全文読む 評価する

我輩は施主である 我輩は施主である
栗山光司/縄文建築団実話物語
磯崎憲一郎の芥川賞作品『終の住拠』でとてもカリスマ性のある建築家が登場するのです。磯崎はあるところで荒川修作について書いたことがあったのを思い出し荒川かなぁと思ったのですが、何か違う。そんな時、偶然、本書を読むことになり、ここに登場するF森さんという建築家は『終の住処』の建築家そのものではないかと思ったのでした。本書と『終の住拠』の上棟式の場面は圧巻ですよ。本書の初出は週刊読売96年11月17日号~97年6月22日号連載『源左衛門の夢』を改題、一部修正して読売新聞から単行本として97年発刊されたものです。実と虚が入り乱れて、赤瀬川自身はあとがきでこの小説はフィクションであると強調するがそこのと…  全文読む 評価する

終の住処 終の住処
栗山光司/戦後日本を魔術的リアリズム手法で描ききった全体小説ではないか。
『終の住処』は新潮6月号に発表されたときに 読んでいたので今回単行本で収録されている書き下ろし作品『ペナント』をまず読んで『終の住処』を再読してみると、初読の時とは印象が違った。『肝心の子供』、『眼と太陽』、『世紀の発見』につながる『終の住処』だと俯瞰して余裕の磯崎ワールドを楽しみ、『終の住処』は成熟した破綻のない完成された小説だなぁと思ったのでした。だのに、短編『ペナント』を読むことによって、何やら不穏な空気が立ち込めだし初読と違って僕は『終の住処』を全体小説として読み始めていました。全体小説という言い方は誤解を生みやすいけれど、例えば野間宏、近いところで小田実は全体小説作家として意識的であ…  全文読む 評価する

ひばり伝 ひばり伝
栗山光司/いまだに歌い続ける、生き続ける「ひばり」の不思議
今年3月30日の朝日新聞朝刊によると「昭和といえば何を思い浮かべますか?」でアンケートをとったら、人物なら(1)昭和天皇(2)田中角栄(3)美空ひばりだったらしいですね。本書の最後に「昭和84年(2009)年5月15日」と記されている。齋藤にとって「ひばり」は生き続け、昭和はまだ終わっていないどころか、延々と続いているだなぁと思う。明治維新後の近代化(欧米化)へのいわば文化高速道路の文明建設は良くも悪くもこの国の周辺を覆わなかった。だけど、覆わなかったけれど、非欧米化の装置から溢れ出たものを思想としての天皇制が支えたのであろうし、民俗・芸能としての前近代の受け皿が「ひばり」的なものに回収された…  全文読む 評価する

眼と太陽 眼と太陽
栗山光司/太陽が二つ、眼の物語
冒頭、一筆書きで一気に吐き出した呼気が風を呼び、作者のグルーブ感に乗せられて読み始めると長い改行の文体に時として息苦しくなるが、ゆっくりと噛めば噛むほど風景がどこまでも広がって行く。出足の力強いイメージは離陸するために最小限必要なものなのだろう。《日本に帰るまえに、どうにかしてアメリカの女と寝ておかなければならない。当時の私はそんなことを考えていた。そんなときに出会ってしまったのがトーリだった。人間は無防備な状態であればあるだけ、自分でも気づかぬうちに既知のものを引き寄せている、ということらしい。》トーリの青い眼に射抜かれてか、いや、そうでないだろう、ただ、聖書の時代から変わらぬ太陽の光と影に…  全文読む 評価する

1Q84 1Q84
栗山光司/終わりではなく始まりの物語
「1Q84」であれ、「1984」であれ、作者の手になるフィクションであるのは自明であって、月が二つ空にかかっていようがいまいが、読み手が奥深いところから、感染して行く一種の症候に犯されたと身震いするような作家の言葉に浸されて時、その作品はリアルなものとして立ち上げる。読者の僕は逃げることの出来ない当事者性を獲得する。多分、すぐれた作品はそのような意味で読者を拉致するのであろう。拉致され得ない安全地帯で村上春樹の小説を批評しても見当違いか砂を噛むような思いになるのは春樹の小説にはある種のイニシエーションが要請されるのかもしれない。アイロニカルな僕は春樹ワールドの住人の資格はないかもしれない。にも…  全文読む 評価する

「当たり前」をひっぱたく 「当たり前」をひっぱたく
栗山光司/貧しい者でも、望めば家族を得られる平等を。/もしくは、すべての人間にとって家族の存在が、自尊心や既得権益にならない平等を
本書はデビュー作『若者を見殺しにする国』以降にネットや雑誌に発表されたものと第一章それでもまだ、「希望は、戦争。」に収録されている書き下ろし「家族という権利を疑え」を加えたものです。第二章のライブドアニュース『眼光紙背』はネットでほとんど閲覧できるみたいですが、追記修正している。この章は時事評論で、著者が武田徹のジャーナリズム学校で勉強した成果が垣間見えて色んなところにアンテナを拡げていたんだと新しい発見がありました。特に筆者が共鳴したのは、大阪の橋下知事が府立国際児童館を廃止に追いやった件に関し『評価可能性のない「努力」などさせてはいけない』という記事を書いているが、《「努力すれば何とかなる…  全文読む 評価する

金融危機の資本論 金融危機の資本論
栗山光司/アメリカがこけたら世界がこける?
ここまで、アメリカ型金融資本主義は世界を覆っていたのかと、日々身近な暮らしまで、影響を及ぼし始めて投資とは無縁の庶民にとっても対岸の火事ではなくなった状況が迫って来ましたね。サブプライムローン問題、リーマンブラザーズの破綻と、信じ切っていたアメリカ型資本主義の脆弱な正体が露わにされるにつけ、いわんこっちゃあない。アメリカにオンブにダッコしたツケだよと僕なりに哄笑して、これからは、新興国・ブリックスで、アメリカは終わりで、これを奇貨として日本は自立出来ると前向きに解釈したが、そうは問屋が卸さない。逆に、アメリカはここまで、すべての国に影響を及ぼしていたのか。金本位制度はアメリカ本位制度として駆動…  全文読む 評価する

街場の大阪論 街場の大阪論
栗山光司/串カツソース二度づけお断り
著者は、かって『「街的」ということーーお好み焼き屋は街の学校だ』という本を上梓したが、「街的」とは著者の造語であり、感覚ではわかるような気もするが、いざ言葉で説明しようとすると絶句するものがあった。本書は、月刊誌『ミーツ・リージョナル』の「江弘毅の街語り」と、WEBマガジン『だいたい月刊 パジリコパジリコ』の「大阪からワシも考える」を中心に編集したもの。ここでの「街的」は「大阪」にフォーカスしたもので全国区的に了解済みのカタログ化、情報誌的記号の「大阪」に回収されない「生活者の大阪」を書こうとしている方向性はある。だけど、僕が感じた、又、感じている大阪の臭みが本書から立ち上がっては来なかった。…  全文読む 評価する

Webクリエイターになる!? Webクリエイターになる!?
栗山光司/Webクリエイター≒生活≒労働?
最早、就活には縁もなく、年金生活者である僕にとって、かような就職のための手引き書は「かんけぃ~ない」のだが、Webクリエイターって、そんな肩書きのある名刺をもらったことがないし、どんな職業なんだろうと、好奇心でページをめくったのでした。本書によると、Webクリエイターの平均年収は【1】Webデザイナー/25~29歳(356万円max650万円)、30~34歳(390万円max800万円)、35~39歳(424万円max650万円) 【2】Webプロデューサー ・Webディレクター/25~29歳(412万円max700万円)、30~34歳(505万円max1000万円)、35~39歳(533万円…  全文読む 評価する

ボクの哲学モドキ ボクの哲学モドキ
栗山光司/生きるとは死者とともに延命する営為なのか
本のタイトルにしてから、何やらアヤシゲで、トンデモ本かと思いきや、さにあらず、読み進むにつれて身につまされた。というのは、1巻目は1999-2002年にぶんまおというハンドルネームでネットアップされたもので、ホームページのアーカイブで今も読むことが出来るが、ボク自身はちょうどこの頃からネットをはじめたのに、「ぶんまお」さんのこのHPのことをまるっきり知らなかったのです。ひょんなことで、1巻、2巻と読む機会を得たのですが、ぶんまおさんは、ご迷惑かもしれないが、ここにボクの分身みたいな人がいるって奇妙な既視感があったのです。勿論、ぶんまおさんのような教養と知見がないけれど、感覚的に同質的なものを感…  全文読む 評価する

おまえが若者を語るな! おまえが若者を語るな!
栗山光司/誰であっても若者を騙るな!
 騙ると語るは違う。騙るは(うちとけて親しげに「語る」ことから)安心してだます。だまして金品などを得る。(広辞苑) 著者が本書で怒っているのは、その様な騙りで若者論を語り、多少の金品ならまだしもマスメディアに持て囃され、何とか諮問委員、ちゃんと論文を書かなくてもどこかの大学の教授に収まってしまう処世に対してでしょう。 その「ミラクルコミュニケーション力」って言うか、ちゃんと社会調査に基づいたデータ、フィルードワーク、臨床など、科学的な検証がなされないで、単なる思いつきウケを狙った口舌の徒ではないかという疑念が基底にあるのであろう。 『ゼロ年代の想像力』で華々しいデビューをした若手評論家宇野常寛…  全文読む 評価する

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