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サロメ サロメ
ねねここねねこ/恋の究極、美の極致
「恋の測りがたさにくらべれば、死の測りがたさなど、なにほどのことでもあるまいに。恋だけを、人は一途に想うてをればよいものを。」 (同書引用)  美を強く、殴られた感覚で思うもの。古今変わらず存在する、恋にあるものの究極を描いたひとつに思う。中村うさぎもエッセイで言及していたものなのだが、『幸福な王子』と『サロメ』のこのふたつを同一人物が書いたことは、とても興味深いことであるように思えている。 世紀末芸術というときには、ビアズリィの絵柄とあいまって、この作を思い出すことが僕は多い。退廃と狂喜。赤い月の様相に駆られて進む人々。サロメには赤と黒色が相応しいものに考える。恋の色彩を考える。濃密で、すべ…  全文読む 評価する

人魚姫 人魚姫
ねねここねねこ/人魚姫、彼女の願いはどこに届くか。精神に殉じた存在はこころに深く刻印される。
過剰な装飾を入れず、読みやすいままに原文の雰囲気、美しさを思わせる、金原瑞人氏のすてきな訳。色と質感の視覚からこころが静かになっていき、童話世界の誘惑から陶酔を感じることができる、ビーズ作品の清川あさみ氏。ふたりのすてきなカップリング。リトルモア、ビーズ絵本のシリーズ二作目。『幾重にもかさなる布、丹念に縫いこまれた糸、宝石のように輝くビーズ。 つよく、しずかに息づく絵が、人間に焦がれた人魚の恋を、語り始める――』帯のコピーのそのままに、非常に美しい、すてきな絵本に仕上がっている。¥2000の価格もこれなら納得である。豪華ですてきな絵本として、丁寧に保存し読むを返している。プレゼント用、そして保…  全文読む 評価する

幸せな王子 幸せな王子
ねねここねねこ/それはこの上なく美しく、切ない、祈りに似たこころ
リトルモアのとてもすてきな絵本のひとつ。この上なく美しいと信じる、物語のひとつ。 奥行きとそして味がある清川あさみ氏の作品と、丁寧な愛情がじっとり伝わってくる、金原瑞人氏の翻訳で100年の後にまた、美しく息を吹き返した。たとえばクリスマスの前に、この本に会えたらとても幸運なことだ。 このものには願いと祈りの欠片がある。世界に吹く冷たい風にあるながらの、宝石のような欠片がある。思いがあふれて止まらない。天に運ばれた、世のなかでいちばん大切にあったもの。 美しいものが伝わって、涙流さずにいられない。 童話以上の童話であり、こころ動かずにはいられない。  幸福は物質的なものではなく、精神が感じる状態…  全文読む 評価する

死化粧師 死化粧師
ねねここねねこ/過去と尊厳を死者に。生者に未来と思い出を。
【 embalming(エンバーミング)】 遺体に防腐、殺菌、修復などの処置を施し、生前の姿に近く戻す技術。 日本では「遺体衛生保全」と訳される。 ただ読み流すでなく、思わされること多いもので、一巻からずっと流れを追っている。生と死にあること。この物語はエンバーマ、間宮心十郎の成長と、遺体が伝える物語の…。そして、彼を取り巻く人々のグリーフワークの話でもある。 エンバーミングは米国やカナダでは一般的になってもきているらしい。多く葬儀にあたり、死んだ人々を修復し、生前の姿で世界を旅立たせる。死者が抱えるものは多用だ。そしてそれぞれがオリジナルである。エンバーマの彼は、故人の抱えるもの、彼らの生き…  全文読む 評価する

子供たち怒る怒る怒る 子供たち怒る怒る怒る
ねねここねねこ/できそこないの世界の、神話となる虐殺のために
「ひとりでできることには、限りがあるんだよ」 僕が小さいころ、よくよく言い聞かせられた言葉。 それから時も過ぎ去って、現在ふっと考える。 「幾つか備わる感情が個人に蓄積され続ける。  そのものが許容量を越えてヒートして、内に留まらなくなったら…」 感情が蓄積されていくことは生きることなのだと思う。しかしながら、そのものが暴発されることさえもきっと生きることなのだろう。 その先のやがて壊れ行く定めへと歯車が回転していくことになっても。  人はやがて慣れることにも慣れてしまうが、かなしい不安定が安定になってしまうのなら、それより大きな不安定で破壊をしてそれから創って行くしかない。血みどろの創世神話…  全文読む 評価する

グレーテルの記憶 グレーテルの記憶
ねねここねねこ/蝶の羽化を少女は見たことがあるだろうか
グレーテル。少女の日々。 蝶の羽化を少女は見たことがあるだろうか。  少女という存在。幻想と現実のあいだを漂うもの。 夢と理想を考えて、それでも地面に足があるもの。  少女という業。 それは飛びたいこころであり、されど飛べない枷があるもの。  漂うが、いつも戻ってきてしまう。 それでも日々を旅しながら、あたらしいちいさなすてきを見つけていく。 そのものはだけど脆くて気がつくと、遠くに消えてしまっている。 そのものをぎゅっと抱きしめて胸にしまう。 胸のなかはだあれも入ってこないから。 小さな細い息だけど、ゆるり吐くことができるから。  無力感と、儚さ。それは透明な纏いである、残酷と美しさの代名詞…  全文読む 評価する

あやめ 鰈 ひかがみ あやめ 鰈 ひかがみ
ねねここねねこ/退廃からの誘い、艶めかしく閉じられた夜の世界に
囚われたものたち。 夜と現実と過去と夢にこの者たちは囚われて、創造も破壊も出来ず流される。 停まったままに流される。各々に落魄した彼らは欠けたままうつろうように停まり続ける。 存在しているのか、それとも。 あやふやなそれらはすべてが定かではない。 日常のままに幻想の扉があやしく開かれる。  退廃の魅力、錆びの味。 普遍性からもそれらは芽生える。 現実の日常とそして過去と夢。 異常正常の境界の夜を彼らは彷徨い続ける。 作者は三つのそれぞれをラカンの「想像界」「象徴界」「現実界」へと当たるかとも言っているが、なるほど分かるような気もしてくる。それぞれは近いところから溶けていくのだ。境界であって個々…  全文読む 評価する

二〇〇二年のスロウ・ボート 二〇〇二年のスロウ・ボート
ねねここねねこ/僕は世界を生きる。サヴァイヴと愛の物語。
古川が送る、村上春樹作品『中国行きのスロウ・ボート』のトリビュート。ハードカヴァ『中国行きのスロウ・ボートRMX』(2003.7発刊)改題。 若き日の自己。僕の場合のそれは、囲いを出られぬ無力な存在だった。されど若さはエネルギで、そうして向かう力であった。失敗を続けた僕の『出トウキョウ記』。そしてそのものとリンクする、東京を出られぬ僕が出逢った3人の女の子について。 その思い出が綴られる。等身大のままで語られるクロニクル。生きて笑って失った、記録がページに刻まれる。 僕の歩んだ記録。躍動感と、そしてかなしみ。 かなしみは無力感と、世界への敵意、挑戦に充ちるのだが、とにかく僕は向かっていく。自分…  全文読む 評価する

おおきな木 おおきな木
ねねここねねこ/ほんとうのやさしさと愛はどこか切ない
「愛とは、惜しげなく与えるもの」 これは誰の言葉であっただろう。 この本をはじめて読んだとき、一生忘れないだろう衝撃を受けた。 人生を変えてしまうほどのもの。生きるということは、人を愛するということは、どれほど孤独に身をやつしそして美しいものであるのか。この愛はある種絶望と向き合っている。絶望とは計り知れない孤独であり、しあわせをそれでも感じていられること。そのものを包み込むよう愛するとき、自らの打算は消えるのかもしれない。…いや、あるのか。おおきな、孤独のなかの愛。そのものが笑ってくれればそれでいいと。ほんとうに大切なものが、救われるならいいのだろうと。自己犠牲という一言では、間に合わせられ…  全文読む 評価する

女の子ものがたり 女の子ものがたり
ねねここねねこ/少女はやがて大人になる
自分でもちょっと意外なことだったのだが、当書『女の子ものがたり』を読んでいたら、岡崎京子の『リバーズ・エッジ』を思い出した。 クールである岡崎。彼女には鋭角なエッジを思わせる純度の高さがものに溢れ、そこに一瞬の間だけ、存在としての個が入り込む。冷徹である、温度を低くした主観。そのものは客観としてさえ感じさせる。見えているということ。そのなかで見えにくいものと震えのあること。世界が空虚であることを、藍い帳のある夜の風景で思わせる。  しかしながら、西原理恵子のそのものは至極パステルな色で在る。突き刺すようなものでなく、包み込むような空気が語る。空気が、風が物語る。草原にある黄緑と緑がとても印象的…  全文読む 評価する

だからドロシー帰っておいで だからドロシー帰っておいで
ねねここねねこ/葬制による創世。ファンタジィが現実にあるということ。
牧野版、『オズ』。それはかように過酷で、そして残酷な美しいもの。現実と空想世界とのリンク。ファンタジィはファンタジィであるゆえ美しく、現実は現実であるゆえ過酷である。過酷であり、そして残酷。そして現実世界にファンタジィを垣間見たときから、残酷はその色彩を増していく。湿度と粘度の増したもの。色合いを牧野は暗色の赤で示した。帰っておいで、ドロシー。現実の隙間から漏れ出た、呼んだ声。呼応する相補世界。どちらがしあわせか、なんて、牧野にとっては自明のことか。せかいにせかいをつくること。創造、そして創生。あらたなるすべて。終焉からなる、はじまりのとき。現実がそして始まる。終えた旅から、残酷な現実が新たに…  全文読む 評価する

ボトルネック ボトルネック
ねねここねねこ/完璧になった世界で、絶望を叫ぶ
米澤の最高傑作のひとつ。軽やかな文体でさらりと書くまでも、現代の、個人の禁忌を抉る漆黒。生きる個人は世界を映す鑑である。内的世界のうちに外部世界も映し出すから。もしもその構築が、すべてが、否定されるものだとしたら。それを事実のうちに、深く理解してしまったならば…。無力どころかマイナス。己が世界の元凶と、わかりすぎるほどわかったならば。「書きやがった」と思う本に、出あったのは久しぶりかもしれない。 桜庭の『私の男』以来だろうか。 テーマ、モチーフのこともあり、桜庭は女性的だった。 ボトルネックは男性的、よくよく少年的である。 両者とも、しかし似ているような気がした。 どこか似ている。しかしながら…  全文読む 評価する

わるい本 わるい本
ねねここねねこ/わるいー。そして愛しい。
わるいなあ。うーっ!わるくて、そしてたのしい。 こころがうきうき、そしてほわほわ。 わるいやつ。 たまにはんせいしたりもする。 だけどわるいのこんなにも、いとしくおもえるのはなんで? いたずらずきのわるものくん。 たのしい、かなしい、いきていく。 なんでかちょっと、げんきになれる。とってもすてきな、やさしいほん。いつもてもとにおきたくなる。  全文読む 評価する

死神の精度 死神の精度
ねねここねねこ/高い精度と上質、洗練に充たされた方程式
上手いなあ、とつくづく。そしてわかりやすい。エンタテイメントに徹したプロの作業であると思う。「旅路を死神」が白眉。「死神と藤田」「死神対老女」もやはりいい。うるっと来るようなところも確かにあり、ミステリ仕立ての語りではそつない仕上がりのものに思う。全編を通してのものもすばらしい。精度は高く、とても上質。 しかしながら、例えば数十年持つだけの耐久力があるかと云われれば、答えに詰まる。軽妙洒脱と云われること多い伊坂に思うが、この作も短編集という構成を置いたところで、そのものは思えど、太さ、のようなものはあまり感じられない。物語は物語として上手であるが、熱の入り方がドライである。淡白、というのも違う…  全文読む 評価する

赤いヤッケの男 赤いヤッケの男
ねねここねねこ/現と霊界の狭間に
山の怪談実話。こっそりとかしこで聞いた山の怪談。打ち明ける秘密の話。そうした隠微のなかにある、ぞっとする、畏怖の感情を起こすもの。このなかには都市のものにはない、温度と湿度、土の匂い、雪の匂いがするものがあった。古くからの信仰の対象、山への畏敬。山を愛する者たちはどうしてそこに登るのだろうか。あの世に最も近い場所、霊のまします頂を目指して。怪談。そのものは多く、畏怖と恐怖を伴う霊の話が多いものだが、収録この本にはどこか、身にどこか馴染んだ土着のもののようなぬくもりを思った。日本人気質、馴染みがあるとでも云うのだろうか。手触り、ぬくもりのようなものさえも。勿論怪談だから怖い、しかしながらもその上…  全文読む 評価する

赤朽葉家の伝説 赤朽葉家の伝説
ねねここねねこ/時代と生の息吹。せかいが美しくあるために。
まるで歴史書を見るようだ。丁寧に、重厚に紡がれた物語。神話にあるごとき静と動。主に動とする蘇芳の赤、たまに混じり来る青の色彩も美しい。その時代と時代に生きた人々の鼓動、息吹が伝わってくる。史書のようであり、伝記でもある。赤朽葉と周辺に生きた人々の生の鼓動と世が見える。各々の赤朽葉の時代。世界が提示される。語りで世界が切り出されると、読み手に抗う術はない。受動客体たる読み手は、そのまま世界に運ばれていく。その時代へと誘われ、すうっと心身溶けるがごとく。 『最後の神話の時代』『巨と虚の時代』『殺人者』。語りの口調も穏やかに紡がれた赤朽葉の三人。現代『殺人者』の項は伝記の意味合いに満たぬものだが、前…  全文読む 評価する

ブラッドハーレーの馬車 ブラッドハーレーの馬車
ねねここねねこ/願わくば祈りを
1.14計画。パスカの羊。過酷な潮流に巻き込まれた少女たち。罪の物語。無垢に対する残酷の話。歌劇団を擁する、格式ある公爵ブラッドハーレー家の養女へ。華やかな舞台への進出に孤児たちの喜びはどれほど大きかっただろう。人生が転換する時。無残なる別舞台の幕が開かれる。 少女たちの夢。美しい未来が拡がっていると信じて止まなかったこと。夢が叶った瞬間。希望は無残に踏み躙られる。肉体的、精神的に極限の蹂躙。穢れ汚されてしまうこと。物語の力。画力に定評ある作者は、作中でこころを切り取りそれを写した。夢と誇りについても。現実の残酷を以って対比とし震えるものを作品として。一片の絵には物語があるように、憂いが細部に…  全文読む 評価する

キャンディーの色は赤。 キャンディーの色は赤。
ねねここねねこ/キャンディの、削り取られた、露の
私的で詩的な世界。現実のリアル。世界ってものはここにいる自分が思うもので、だけどあいつにとっては、今ここにいるあたしがなくても平気なもので…。痛みを伴う現実。感じる…。すべてだったものの消失とか、過去のこととか。未来を思えないこととか、それでも未来に向かうこととか。魚喃の描く世界は、個人の錆と核を映し出す。その核は多くが向かっていた恋愛による。そのものの歓喜と破綻。そしてその後の人の姿。彼女が匂いで映すもの。映写で写し、削り取る。抽出し、残った姿を露に見せる。削って削って削って。余計なものがすべてなくなるまで削ぎ落として。そして過剰が消えて残った。残ったものはしかし、もしかしたら、まだ余分かも…  全文読む 評価する

不気味で素朴な囲われた世界 不気味で素朴な囲われた世界
ねねここねねこ/前作を引き継ぐ二作目。そして病院坂、いいなぁ。
『きみと僕の壊れた世界』西尾維新の作品でいちばんすきなのがこの前作。シリーズ二作目のこのものは、推理小説への想いと考察という点で、前作からの提示に補強というものがなされていた。表面の学園という空間と病院坂一族だけじゃない。中間までを読み、半ば予期していたのだが、やはりそうかといった感。登場人物のキャラクタを思って見てみれば、納得に近い(現在の推理小説において、作者たらん読者のそれぞれに究極の納得などできよう筈もない)ものを感じられるだろう。なるほどね。そうして書かれていたのなら帰結で飲み込みやすくもある、と。ある意味、多く悪い意味において「現代らしい」ものを基盤に扱った作品に思う。つまりは「素…  全文読む 評価する

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね
ねねここねねこ/クールで透明なひとりへ。それは水晶の光に似た、
「いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。 いつも。たった一人の。ひとりぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを。 一人の女の子の落ちかた。 一人の女の子の駄目になりかた。 それは別のありかたとして全て同じ私たちの。 どこの街、どこの時間、誰だって。 近頃の落ちかた。 そういうものを。」                       『「ノート(ある日の)」』より  岡崎京子のことば。 彼女の言葉には表現者の確たる美しさが感じられる。不遜と大いなる思い込みを承知で述べてみるなら、僕のなかにある似たものに、それは触れてきて振れる気がする。一人の女の子はわたしたち、そして僕たちのものである…  全文読む 評価する

独白するユニバーサル横メルカトル 独白するユニバーサル横メルカトル
ねねここねねこ/饗宴の刻、喰らう宴の触覚
現代の人という種の生態的に…、一般普及が広められたもの。多く「善良なる」市民が持つ、倫理は無いが論理がある。 幻想から肌身に迫るゴシック、赤黒い褐色の血とぬらぬらしたもの。妙なる闇黒の饗食。蟲の視点の世界観。それは論理ではありつつ、肉感的に個人に迫る。匂いと触覚を伴い、おぞましい、醜く妙なる生体を通して…。異世界には異世界なりの統合がある。 傑なる芽生えと眼映えの録。論理と行為の間隙のもの、闇の存在と状態を映す。 異世界から手を引く誘惑、高い鳴き声。他界であるところの高さ。鳴き声は絞殺された鳥の叫びか鳥葬の愉悦か。不規則な数列の中で素数が自己主張を始める快と不快。 夢魔の退廃的悪夢。現実の構成…  全文読む 評価する

日のあたる白い壁 日のあたる白い壁
ねねここねねこ/音楽さえ聞こえる、絵画のような感性で
「出会った絵について書くことは、でも勿論私について書くことでした」 「書くことも読むことも絵をみることも(そしておそらく絵をかくことも)、すこし旅に似ています」 (当書より)江國香織と絵の出会い。 文章を通す息づかい。彼女のことを思ってしまう。孤独と旅をわかる人。かなしさも、そして連れてくるさびしさも。 そして彼女は知っている。 そこにある、美しいものと空気のことを。 江國香織はやはり、音楽のような、絵画のような人かもと思う。そのような彼女が触れた絵のそれぞれ。きれいな艶がある石みたいに、バッグのなかにそっと入れておきたい本のひとつ。透明でまるくてある、風を思う温度をずっと味わっていたい。 物…  全文読む 評価する

方舟 方舟
ねねここねねこ/終末。うつしだされるもの。
たぶん善悪を越えたもの。 状態。単なる状態。 それを残酷と捉えるか、美しいものと捉えるか、それは個人の天秤だろう。 現実というもの、リアルと肌身に迫るもの。 考えるではなく感じること。 皮膚で思って臓器で動く。 骨でぶるぶるそれを感じる。  終末は近くにも存在するのかもしれない。 僕らは各々それぞれに、天秤に乗せられるものを乗せるだけだ。 人の本質はどこにあるのか。 何を乗せ、何を削ってしまうのか。  状態に左右されるもの、されないもの。 信じられないもの。 そのなかで持って迎えるもの。 哀切を感じてしまうのはどうしてだろう。  恐ろしい、そして畏ろしい作品だ。人が映っている。すべての光景が帰…  全文読む 評価する

グラスホッパー グラスホッパー
ねねここねねこ/「洗練」という「エンタテイメント」
ノワールなど呼ばれるジャンル。しかしこの当書、グラスホッパーでそう呼ぶことには抵抗があって、くどさ、けばけばしさ、妖艶、グロテスクはあまり感じなかった。肌で感じてくる、生理的・肉体的なものが薄いのだろうか。暴力にも、幻想にもやはり思えない。好みはあると思う。洗練と構成の妙はやはり感じる。一貫したエンタテイメント、ストーリの上手さとスピード、リズムはある。伊坂らしいというならば、確かに伊坂らしいのだろう。この話は、ある意味掛け離れた世界の話かと思うが、それでも日常に盤がある。その割には「生活」というものの滲みが少なく感じてしまう。 洗練が確かにあるのだと思う。それはまた、良く云えば瀟洒、悪しかれ…  全文読む 評価する

はてしない物語 はてしない物語
ねねここねねこ/物語を愛する人々へ
究極の物語だと思う。物語を愛する者への物語。物語を、かつて愛した者への物語。すべてのものがすべて以上でここにあり、ひとりだけのやさしい温度で抱き締めてくれる。本を開くとある、どこにでも行ける物語。そこにしっかりといながらも、どこまでも拡がる物語。つながる終わりのない永遠。この本に出会えたことに感謝する。物語の力をそして信じる。 最初は中学生のとき。そして今、大人になってもう一度。空想は…、どこまでも世界が拡がって行く。子供のころ夜遅くまで読んでいた。そして今も、色褪せぬ美しさをもって、こころをファンタージエンへと飛ばしてくれた。大切な人との出逢いがあるように、感謝して、震える思いで本に入る。震…  全文読む 評価する

澁澤龍彦幻想美術館 澁澤龍彦幻想美術館
ねねここねねこ/美の世界。幻想の夢と彼の愛
感嘆のため息…。美しい世界、美術。澁澤の愛したものが並んでいる。幻想、美の収録…。この本を待ち望んでいた。澁澤の愛した美が、巖谷が振り返って残す彼への記録とともに備わる。 その地点、佇む人はどこにいるのか。ページを捲る、手が停まる。写っている美のものの鼓動が伝わって、それは声として聞こえるよう。ざわめく肌が冷たくなる。頭はぼうっとして、皮膚は脊髄を伝い、脳裏と共振を図り始める。とろけて一体化する。一は全となり、有は無と化す。幻想、まどろみ。現実と夢の境が薄くなり行く。色を思わせるかたちが、かたちを思わせる色の世界が大気を変える。妖艶な幻。美というその世界が、実存危うい現世を揺さぶる。 夢幻のこ…  全文読む 評価する

すぐわかる画家別幻想美術の見かた すぐわかる画家別幻想美術の見かた
ねねここねねこ/まだ見ぬ世界の夢をみる
本書各章。「ルネサンスからロマン主義」「ラファエル前派と周辺」「フランス象徴主義」「世紀末各国の象徴主義と周辺」「ビアズリーなどの近代版画」「20世紀ルソーからシュルレアリスムへ」監修千足伸行。(成城大学文芸学部教授。国立西洋美術館勤務を経る)タイトルに「幻想美術」とあるが「画家別」の通り、収録は幻想絵画である。彫刻、建築、インスタレーションなどはない。人形や日本の墨絵、巻物等は掲載なし。あくまで西欧に特化してアジアのものは収録がない。しかしながら、この限定にあった場合、大分網羅があったと思う。価値、満足度は高かった。 ページはオールカラー。わかりやすく絵画の点数も多い。章別それぞれの分類、こ…  全文読む 評価する

チムニーズ館の秘密 チムニーズ館の秘密
ねねここねねこ/英国の風。理知と洗練、ユーモアの調和
漫画家、榛野が描くクリスティのそれぞれ。収録は3本。「チムニーズ館の秘密」「追憶のローズマリー」(原題:忘られぬ死)「ソルトクリーク秘密の夏」(原題:ゼロ時間へ)(上記原題、早川書房刊より) 榛野の描く絵には、涼しく凛とした風を思わせるものがある。それなのにどこかあたたかい。こころがあり、軽やかに微笑むパステルの風。それは繊細でありつつも智を纏う優雅な女性のものとして、風を切る光を思わせるものがある。興味深い組み合わせのものに、うーんと唸った。クリスティの理知と空気感のある榛野の画風が、調和を醸し溶け込んでいる。洗練、都会的。貴族風にあるエスプリとユーモアの映しだし。ソフィスケイトされた男女、…  全文読む 評価する

1000の小説とバックベアード 1000の小説とバックベアード
ねねここねねこ/小説、言葉の賛歌ある世界へ
佐藤友哉、彼は本気だ。あたりまえすぎて笑ってしまう。知っていることを敢えて、馬鹿みたいに至極当然のことを言うようだけれど、「世界」という、又は「小説」というものに佐藤は全力を持って、そして本気で向かおうとしている。無論、本気で向かわないものに価値はない。ポーズは真っ平、百も承知。そんなもの自己も読者も許さない。そのことを誰よりも思い、痛感し、抱えて、自分のものとして向かっている作家が彼なのではないだろうか。無謀な試みかもしれない。掛け替えない1000の小説には影すらも届かないかもしれない。それでも彼は書く。そのことを、純然たる至高のものと信じて。その真摯さ。本気で向かう決意。こころを指先に込め…  全文読む 評価する

魔的 魔的
ねねここねねこ/思考。切り取られた言葉で、一瞬の世界は美しさを留める
思考は世界を顕す。イメージの喚起、そして歓喜。具象と抽象の光。遠くの星が歌い煌く。輝きの光、理知と思考の文字の感触。 詩。ちいさな世界の切れ端のものが86篇。それぞれ鉱石のような、星のような、水分子が胎動するような、固まって、きらめくことばと世界に酔う。世界そのものであること。見えるもののなかに見えないものがあり、見えないもののなかに、ひっそり耀くものがあること。そのものを思う。見つめる。時折あらわれるそれらは、きらきらした光ですべてを映してそっと消える。 対象に永遠はない。消える。だけど僕たちは消えない残像に息を止め、ひっそり見つめてため息をつく。美しいものを思う。切れ端で残った、世界の光を…  全文読む 評価する

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