|
サイケ
|
|
ひろぐう/サイケでナイーブな70年代を描く傑作短編集
|
ナイーブは恥ずかしい。いや、恥ずかしいということがナイーブなのか‥‥。 万博、安田講堂、スタジオ102、ハレンチ学園、スカートめくり、Tレックス、ボイン、オー・モーレツ!‥‥。『オー、モーレツ!』『少年ジャンプがぼくをだめにした』は、モーレツでサイケな70年代に思春期を迎えた少女の、性的アイデンティティをめぐる心の冒険物語です。『オー、モーレツ!』の小学5年生の主人公は、円の面積の公式の円周率3.14に納得できない。「なぜみんなは、半径×半径に円周率を迷いなくかけられるのか」と、腹を立てて混乱します。そう、まぎれもなく彼女は「ナイーブ」なのです。当然のように自己の性についても混乱します。なぜ…
|
|
|
ライ麦畑でつかまえて
|
|
ひろぐう/大人になって再会したホールデンは…
|
この本を読んだのは19歳の時だったと思います。本好きで、人づきあいがヘタで、心の傷と劣等感を抱えていて、大人になることへの漠然とした不安をもっていた。そんな自分にとって、世の権威や大人の欺瞞や「りっぱ」なことを、「インチキ」だと自己の感性のままにことごとく断罪してゆくホールデンに共感し、同時に彼同様、そういう自分は生産的・創造的なことは何もしていない(できない)のだということに気づかされて、やりきれないような複雑な思いをしたことを覚えています。 それから十何年か経って、いま読み返してみるとどう感じるだろう、というのはずっと思ってはいたのですが、これまで手が伸びませんでした。自分が「インチキ」…
|
|
|
発動!N.Y.破壊指令
|
|
ひろぐう/「ランボー」+「羊たちの沈黙」?
|
「米陸軍の特殊部隊の精鋭だった軍曹が精神に異常をきたし、ニューヨークをモスクワと思い込んで、単身で巨大都市を破壊しようとする‥‥」というお話。(初期の)クーンツのホラ話のファンとしては荒筋だけで四つ星!という感じですが、内容も前半は期待通りにいい調子で飛ばしてくれました。まず主人公のキャラが笑えます。まるでランボー+ハニバル・レクターで、精神病院から脱走するくだりなどは、まんま『羊たちの沈黙』! ところが、肝心の後半のNY襲撃がトホホにショボい感じで、膝カックンでした。期待しすぎたからというのもあるでしょうが、やはりひとりで立ち向かうにはニューヨークはデカすぎたか。風呂敷を広げずに、郊外のスモ…
|
|
|
理由
|
|
ひろぐう/宮部作品が面白く読める「理由」
|
これまで読んだ宮部みゆきの小説は、僕にはキャラクタもストーリーもあまりリアルな感じがしませんでした。このリアルさというのは、現実にあるとか、あり得るということでの「リアル」ではなくて、たとえばファンタジー小説の世界や登場人物が「リアル」だという意味でのことです。本来ならそういう話には没入できないはずなのですが、この作家の場合は退屈せずに面白く読める。犯罪ノンフィクションという体裁でルポルタージュの手法で語られるこの『理由』を読んで、その辺のこの作家の特色がよくわかったような気がします。 一概には言えないかもしれませんが、フィクションのキャラクタやストーリーににリアルさを感じるのは、登場人物が…
|
|
|
レイモンド・カーヴァー傑作選
|
|
ひろぐう/意識と無意識の境界の辺がそわそわする
|
中公文庫で出ていた『ぼくが電話をかけている場所』を読んだのですが、この傑作選にはそこからの作品が多く収録されています。さすが春樹さん、翻訳の文章はひじょうに読みやすかったです。お話も、もうちょっとで捉えられそうで捉えられないというか、意識と無意識の境界の辺がそわそわするみたいな話で、いい感じにブンガク心をくすぐってくれます。何か特別なことが起きるわけでもないのに、なぜか惹き込まれるように面白い。言葉ではハッキリ説明できないけど、日常の裏に潜んで普段は目に見えない、得体の知れないリアルなものに触れたような感覚です。(→ホームページ)
|
|
|
蜘蛛女のキス
|
|
ひろぐう/忘れがたい読後感
|
ウィリアム・ハート主演(アカデミー受賞)の映画の原作です。映画は昔観たけど、どんな話だったかほとんど忘れてました。でも、この原作は忘れることはないでしょう。読んでる最中より、むしろ読後に忘れがたい印象を残す、そんな感じの本です。南米の現代文学ということで、最初パラパラとページをめくってみたときは、観念的で難解な話かなという先入観でしたが、ほとんど全編が監獄の中でのふたりの男のダイアローグで、思ったより読みやすく、精神分析的なテーマもそれほど難解なものではありません。 まったく正反対の個性・嗜好を持つふたりの男。ひとりは硬派な左翼テロリスト、ひとりは映画好きのホモセクシュアル。そのふたりが監房…
|
|
|
タナトノート
|
|
ひろぐう/「死」をめぐる冒険?ファンタジー
|
これはベストセラーになった『蟻』の著者による、「死」をテーマにしたファンタジー(というか立派なSF)です。タナトノートとは、死を意味する接頭語thanato-と、航行者を意味する接尾語の-nautを組み合わせた造語。遊体離脱して死後の世界を探訪し、再び蘇生してその模様を語るパイオニアたち、すなわち、アストロノート(宇宙飛行士)ならぬタナトノート(死後世界航行者)たちの物語です。 まるで素潜りダイバーたちが世界記録を競って次々と記録を塗り替えていくように、死後の世界の真実に一歩一歩迫ろうとする模様が、漫画的でありながらも妙に説得力のある筆致で描かれていきます。神話から宗教、伝説、歴史、科学、医…
|
|
|
クリスマス・キャロル
|
|
ひろぐう/たまにはイヴの夜に読書なぞ…
|
ディケンズは読んだことがなくても、このお話はほとんどの人が知っているでしょう。読み返してみて、やはり良くできたお話だと思いました。強欲で冷酷な金の亡者スクルージが、クリスマスイヴの夜に現われた三人の亡霊によって、自分の過去・現在・未来の姿を見せられ、改心するというお話。 他愛のない話といえばそれまでですが、そこに真理のようなものが書かれているから、世紀を超えて読み継がれ、愛されてきたのでしょう。現実には、わかっていても照れや見栄を捨てて、思い遣りや親切を行なうのは難しかったりします。電車で席を譲るのだって、自然にふるまうのは結構難しい。だからこそ、世知辛くて無関心な今の時代に、この物語の教訓…
|
|
|
フラニーとゾーイー
|
|
ひろぐう/大人になりきれない人に贈る、鋭敏な感性の書
|
通称グラース・サーガと呼ばれる、グラース一家をめぐる連作短編、『フラニー』と『ゾーイー』の2編が収められています。このグラース家の7人の兄弟姉妹はみな子供の頃に、ラジオのクイズ番組に出演して神童と呼ばれていたという、ちょっと変り種の一家です。 『フラニー』はグラース家の末娘の女子大生。お話はほとんど、彼女がボーイフレンドと待ち合わせ、フットボールの観戦に行く前に立ち寄ったレストランでのふたりの会話から成り立っています。鋭敏で頭でっかちで、世の中や人間や自分自身に対して懐疑的になっているフラニーは、かっこいいけれども要領よく現実に適応している俗的な彼氏とのコミュニケーションに齟齬をきたして破綻…
|
|
|
ハリー・ポッターと炎のゴブレット
|
|
ひろぐう/早く第5巻が読みたい!
|
結論から先に言えば、今回も期待を裏切らない素晴らしい作品でした。ちょっと値段は高かったけど、キッチリ元を取って、まだおつりがくるほどの満足感が得られました。このシリーズのスゴいところは、物語世界の設定やストーリーだけでなく、毎回新たに魅力的なガジェット(小道具)や魔法、キャラクタやイベントがふんだんに登場することです。ストーリーがどうなるのかということと共に、今度はどんなものが登場するのかということも大きな楽しみになっています。 さて、お話の方はクィディッチ・ワールドカップや魔法対抗試合という大イベントを柱に華々しくスタートしますが、ストーリー展開はゆったりとした印象で、途中に少々もどかしく…
|
|
|
風と共に去りぬ
|
|
ひろぐう/キャラの魅力も、お話の面白さも最高!
|
はい、すいません、未読でした…と思わず謝りたくなるほど。いやー、面白かったです。文庫で5巻の長大な物語ですが、『<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=00165239&volno=0000" target="_blank">モンテ=クリスト伯』同様、読み始めたらその物語世界に没入して、思わず我を忘れてしまうほどの強力なものでした。 まず、なんといってもキャラクタの魅力! 個性の強烈さでは、スカーレットに及ぶヒロインはいないでしょう。そのヒロインに真っ向から勝負?を挑む、彼女に負けず劣らず強烈なレット・バトラー。そして、善良で知的…
|
|
|
妄想
|
|
ひろぐう/元FBIプロファイラーによる異常犯罪ドキュメンタリー
|
これは一時ブーム?になった『FBI心理分析官』のような犯罪ドキュメンタリーです。著者はロバート・K・レスラーと同じ元FBIのプロファイラー(このふたりは共著もあります)。この手の本がいっぱい出たので、「またかいな」という感じもありますが、やはり異常犯罪(者)のドキュメンタリーというのは基本的に面白い。ただし、良く(真面目に)書けていればですが。この本は原書の半分程度の抄訳のようですが、作者の純粋な犯罪者に対する怒りと、被害者に対するシンパシーが伝わってきて好感が持てました。 この本で取り上げられている犯罪は、ストーキング、レイプ、幼児虐待といった、弱者に対する理不尽な暴力です。そして、犯行を…
|
|
|
ホテル・ニューハンプシャー
|
|
ひろぐう/ポストモダン的寓話と19世紀的物語の絶妙な融合
|
『ガープの世界』と『サイダーハウス・ルール』のあいだに位置する本作は、出世作である前者のヴォネガット的寓話世界を一層ソフィスティケートさせ、後者の19世紀ディケンズ的「物語」のリニアで明快な小説世界へとつながる好編だと思います。スタイルの模索による橋渡し的作品という意味ではなく、両者の良いところを取ったような感じです。ちなみに、これら三作はいずれも映画化されています。 『ガープの世界』同様、この作品も「こんなヤツいない。そんなことあるわけない」のに、現実以上にリアルで生き生きとしています。レイプ、近親相姦、同性愛、暴力、死、といったグロテスクで過激なテーマやエピソードにもかかわらず、独特のや…
|
|
|
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
|
|
ひろぐう/物語も佳境で、いよいよ面白い
|
シリーズ三作目の本作は物語も佳境に入り、ストーリーも小説世界も作者の筆も一段と成熟したという印象です。第ニ作ではハリーのスーパーマン的要素が減り、より等身大のキャラに近づいた感じでしたが、ここではさらに弱みや失敗、悩み苦しみなどをさらけ出します。そしてそれと戦って成長していく姿が描かれます。ハリーは13歳になり、彼自身の思春期の葛藤と、はじめて詳しく描かれる父親とその友人たちの学園時代のエピソード(スネイプ先生がハリーを憎む理由も明かされる)が交差して、より深い物語が紡ぎ出されています。今回は前ニ作にあったような宿敵との対決による派手なラストの活劇はなく、完全なハッピーエンドとは言えない解決の…
|
|
|
クール・クールLSD交感テスト
|
|
ひろぐう/60’sサイケのバイブル
|
はっきり言って、いま万人が読んで面白いような本ではないと思います。でも、シスコサイケ、アシッドテスト、マジックバス、プランクスターズ、ヘイトアシュベリー、グレートフルデッド…これらの言葉にピンときた人には基本中の基本のバイブルのような本だと思います。『<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01344181&volno=0000" target="_blank">カッコーの巣の上で』の作者ケン・キージー(ケーシー)と、そのグループのメリー・プランクスターズたちが繰り広げたLSDによるドラッグ体験と冒険を、実名・実話で綴ったドキュメン…
|
|
|
赤毛のストレーガ
|
|
ひろぐう/現実世界を舞台にしたダークファンタジー
|
ひさびさのハードボイルドでしたが、最初のエピソードからシビレてしまいました。本作は前科27犯のアウトロー私立探偵バークが主人公のシリーズ2作目。ハードボイルドというのは、ある種SFやファンタジーに通ずるところがあって、現実(科学)に基づきながら、作家がイマジネーションを駆使して、もうひとつの社会(宇宙)を構築する、その小説世界のリアルさが作品の良し悪しの重要な鍵となると思います。そういう意味で本作は「リアル」な感触でした。現実世界を舞台にした良質なダークファンタジーという感じです。キャラクタは、特に主人公の仲間たちなど、超がつくほどユニークで、会話や行動もブッ飛んでいるのですが、違和感を感ずる…
|
|
|
レベル7
|
|
ひろぐう/ストーリーの面白さは保証できますが…
|
どんなお話か。連想したのは『野生の証明』でした。かなり現実離れしたブッ飛んだ設定と展開で、いわゆるクーンツ的エンタテイメントを日本に移すとこういう感じになるのかなという印象です。クーンツ大好きの僕としては、最初のサスペンスの部分は、話の展開の期待もあって楽しめました。全体のストーリーも意表を突くツイストの連続で大変面白いものであることは保証できます。ただ、特に後半は、キャラクタの言動や話の展開がストーリーの辻褄を合わせるために終始する印象で、リアルで魅力あるキャラクタ主導のお話が最近の好みである僕にとっては、物語の中に没入できない真逆のタイプの一冊でした。
|
|
|
黒いアリバイ
|
|
ひろぐう/南米が舞台の異色作
|
これは『黒衣の花嫁』『黒いカーテン』に続く、いわゆるBlackシリーズの第3作(全6作)で、『幻の女』と同じ1942年に出版されたものです。例によってアイリッシュならではの、魅力的な謎、最後まで持続する強烈なサスペンス、スリリングなラストの展開などを楽しめます。謎の解決や展開が強引で、都合の良すぎるところがあるのも変わりありませんが、この作家の場合は不思議に許せてしまいます。いつもの情緒過多ともいえる筆は抑え気味で、舞台も南米の架空の街という少々異色な感じを受ける作品ですが、アイリッシュファンなら満足できるものだと思います。
|
|
|
黒いカーテン
|
|
ひろぐう/才気煥発な時代のアイリッシュ節
|
これは、気づいた時にそれまでの3年間の記憶を失っていた男のお話です。例によって冒頭から最後まで強烈なスリルとサスペンスの連続で、一気に最後まで読ませてくれます。文庫でわずか200ページ足らずのボリュームですが、最近のやたら大部になったエンターテイメントよりもはるかに読み応えと読後の充足感がありました。ラストのトリックが安っぽい本格物みたいなのが残念ですが、『黒衣の花嫁』の次、『幻の女』の前に書かれた作品だけあって、才気煥発な時代のアイリッシュ節を堪能できます。プロット自体はいまやありふれたものでしょうが、1941年作ということで、のちのスリラー/サスペンス小説やドラマに与えた影響は少なくないと…
|
|
|
聖書物語
|
|
ひろぐう/難解な聖書をわかりやすい物語に
|
本作はノーマン・メイラーが1997年に発表した新作で、単行本では『奇跡』の邦題で出されていたもの。イエス・キリスト自身が2000年の現代から、(新約)聖書の福音書に記された「自らの物語を自らの言葉で」語るという趣向になってます。冒頭でイエスは、マルコ、マタイなどの福音書作家は自分の姿を歪めて伝えている…と文句をつけてますが、本筋の物語は聖書に書かれていることに忠実で、死者を蘇らせたりと、しっかり奇跡も起こします。福音書のイエス像よりは人間的で、最期に「神は全能ではない」と悟ったりしますが、イエスを「人間」として捉えた「私小説」のようなユニークなものを期待するとハズされます。それよりも、難解で読…
|
|
|
神の鉄槌
|
|
ひろぐう/未来ドキュメンタリーという感じ
|
これはスピルバーグの映画『ディープ・インパクト』の原作。とは言っても、映画の方は1951年の『地球最後の日』のリメイクにこの話を合体させたものなので、まったく別物と考えていいでしょう。はっきり言って、「地球に衝突せんとする大彗星との壮絶な戦い」みたいなスペクタクルを期待すると肩すかしを食らってしまいます。お話自体はしっかりしてるけど、彗星衝突回避のプロジェクトをめぐる未来ドキュメンタリーといった感じで、派手なエンターテイメントを読み慣れた読者には不満が残るかもしれません。解説に「彼が描きたいのは人間ではなく、あくまでも宇宙なのだ」とあるように、登場するキャラクタにも大して魅力は感じられませんで…
|
|
|
フィアー
|
|
ひろぐう/第一級のホラーサスペンス
|
「男は、気付かないうちに人生の4時間を失っていた。空白の4時間を探し求める未知の旅が始まる…」なんて帯の惹句を見ると、スリラー/サスペンス好きは読んでみたくなってしまいますが、スティーヴン・キングやブラッドベリが絶賛しているとおり、第一級のホラーサスペンスでした。ぜひ最後まで読んでください、損しないことは保証します。特にトワイライトゾーンなどのホラーファンタジーがお好きな方にはお勧めです。1940年作ということで、この作品がロッド・サーリング(トワイライトゾーンの制作・脚本・ホスト)らに与えた影響は大きかったのではないかと思います。作者のロン・ハバードは、最近では「バトルフィールド・アース」や…
|
|
|
ダブリン市民
|
|
ひろぐう/土地に呪縛された精神的死
|
ジョイスといえば『ユリシーズ』ですが、これはそういうやっかいな代物ではなく、ごくフツーの短編小説集です。これといったオチもない、アイルランドのダブリンの人々の「夢のない」日常が淡々と描かれているだけですが、最後の『死せる人々』という中編に全体が収束して、土地に呪縛された精神的死といったビジョンが浮かび上がってきます。
|
|
|
湖底の家
|
|
ひろぐう/『警察署長』を期待してはいけません
|
最高に面白かった『警察署長』の作者がゴーストストーリーに挑戦した「現実と幻影が錯綜するゴシックサスペンス」という売りだったので、期待はずれの感が強かったのですが、普通のB級サスペンスとして読めばそれなりに楽しめると思います。ただ、『警察署長』ではストーリーの面白さに隠れて気にならなかった御都合主義が、この作品では鼻について、お話を非常に安っぽい感じにしているのが残念です。
|
|
|
地球の上に生きる
|
|
ひろぐう/実用になってもならなくても楽しい
|
まず、ISBNコード以外にはまったく活字が使われていないことに驚かされます。これは手書き文字の原著の雰囲気を伝えるためです。この本は自然とともに生き、すべて自給自足で手作りの生活をするためのガイドブックのようなもので、へその緒の切り方から火葬の仕方まで載っています。いわゆるヒッピーの座右の書という感じで、実用書として捉えると現代の日本の実情にはそぐわないことも多いでしょう。しかし、「困った隣人たちとどうつきあうか」の欄で、蚊に対しては、「…イワツバメ(鳥)は1日に千匹のカを食べます。イワツバメの巣を作ってやりましょう」といった雰囲気で、思わず「いいなぁ(^^)」と思ってしまいました。
|
|
|
ファイアボール・ブルース
|
|
ひろぐう/前作同様一気読み
|
この第二作(完結編)は前作のようなミステリ長編ではなく、連作短編という形の普通小説です。ミステリ的なエンターテイメントを期待すると物足りなく感じられるかもしれませんが、女子プロレスの小説世界やキャラクタ(女性)の心理・葛藤などはリアルさと深みを増しており、前作同様一気に読めて楽しむことができました。ただ、連作短編ということもあって、一編一編のストーリーがイマイチ中途半端な印象も受けました。
|
|
|
ハリー・ポッターと秘密の部屋
|
|
ひろぐう/やっぱり面白い!
|
第1巻にくらべると、この第2巻は地味な印象を受けますが、その分ストーリーやプロットに一層の成熟が感じられ、作者の才能と手腕にあらためて感服させられます。ハリーのスーパーマン的要素が控え目になり、より一層等身大のキャラクタに近づいたことも好感が持てました。 前半はハリーポッターの世界とキャラクタを紹介するとともに、謎や伏線を巧妙に配置させているのですが、前作を読んだ読者には少しおとなしく感じられそうになるところを、少々過剰ともいえるような狂言回し的新キャラのギルデロイ・ロックハートを登場させることで救っています。後半は第1巻から持ち越された謎を含めて次々とサスペンスが解決していき、ラストの宿敵…
|
|
|
熊を放つ
|
|
ひろぐう/後に花開く才能の萌芽
|
最初に翻訳は村上春樹だということを紹介しておかないといけないでしょう。なんせ作者名より翻訳者名の活字の方が大きいので。でも、実際は他の5人との共訳です。本作はアーヴィング26歳の時の処女作で、アイオワ大学創作科の修士論文として書かれたものです。指導したカート・ヴォネガットの影響が強い印象で、後の作品のようなリーダビリティを期待すると、かなりツラい部分があります。特に登場人物の誕生をめぐる大戦時のヨーロッパのお話の部分(第二章)は退屈で、ここで挫折してしまう人も多いかもしれません。ただ、後に開花するこの作家独特の小説の密度・磁力のようなもの、「物語」に対する誠実さのようなものはすでに垣間見られま…
|
|
|
火車
|
|
ひろぐう/退屈させない面白さ
|
純粋に面白かったです。巻措くあたわざるというか、謎やサスペンスが魅力的で出し方がうまいので、長い話だけど退屈することはありませんでした。ローン地獄がテーマの社会派サスペンスですが、キャラクタが“柔らか”でチャーミングなこともあって、それほど重くは感じませんでした。本格物のつもりで読むとラストに不満が残るかもしれませんが、アンチ本格派の僕としてはOKでした。ただ、キャラクタにリアリティが欠ける部分があって、ときおり後ろで操っている作者が見えてしまうようなところがあるのと、少々説教くさい部分が鼻についたりしますが、伏線の張り方など良く練られているストーリーが面白いので、ほとんど気になりませんでした…
|
|
|
鍵のかかった部屋
|
|
ひろぐう/完成度の高い佳作
|
ニューヨーク三部作の中では最も小説らしい小説。この作で初めて物語は「僕」という一人称で語られます。また、人物描写や行動もより普通小説に近いものです。幼い頃からの親友の妻から、夫が失踪したという知らせを受けた「僕」は、彼が残した膨大な原稿を出版する決心をする。親友は死んだものとみなされ、「僕」は彼の妻と恋に落ちて結婚するが、しだいに「僕」と「彼」とのアイデンティティが交錯していき…。というストーリーで、テーマは前二作を踏襲するものになっています。主人公の「僕」は物語の中で『ガラスの街』『幽霊たち』という本を出しているので、作者の分身でもあります。また「彼」も大学で学んだ後に船員となり、フランスに…
|
|