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果断 果断
ドン・キホーテ/竜崎署長のしきたりを破る面白さ
 今野敏の新シリーズである「隠蔽捜査」の第2弾である。『果断』というタイトルであるが、副題に「隠蔽捜査2」とある。前回、家族絡みの事件で、警察庁長官官房総務課長から、警視庁の大森警察署長に配置換えになった主人公竜崎。配置換えというよりは明らかに大左遷である。通常、このような異動はない。 ここまでは前回の『隠蔽捜査』での進行であった。警察署長は副署長、警務課長、刑事課長、警備課長などに囲まれて仕事をする。別のテレビドラマで、船越英一郎の演ずる副署長は承認の印鑑押しに多忙だが、本編では竜崎署長が印鑑押しに忙しい。 強盗事件が発生し、緊急配備を行ったが犯人に逃走された。打つべき手を打ったのだが、ミ…  全文読む 評価する

夕暴雨 夕暴雨
ドン・キホーテ/収穫の多いエンターテイメント警察小説
今野敏には警察を描く作品が多いが、本編はテレビ化されているので、馴染みのあるキャラクターである。テレビの方は神南署であるが、こちらは東京湾臨港署である。主人公はもちろん、安積警部補である。私はテレビも見ていないし、この安積班のシリーズは初めてだった。警視庁樋口警部のシリーズ、警察庁竜崎警視長のシリーズも各々魅力のあるキャラクターの描き方であった。今野は多作家らしく、これ以外にも警察とは関係のある、あるいはないジャンルにおいて、多数の作品が出版されている。したがって、私が好んで読んでいる樋口警部のシリーズはこのところ新作にはお目にかかっていないのが残念である。 初めて読んだ班長安積警部補のシリー…  全文読む 評価する

陰陽師 陰陽師
ドン・キホーテ/超長編『陰陽師』の奥深さを知る
お馴染み陰陽師の安倍清明のお話である。いつもは7、8編の短編集であるが、今回は珍しく長編である。短編は短編の良さがあるのだが、長編もやや冗長な部分はあったにせよ、長編らしい構成になっている。何しろ文庫本2冊であるから、長編の中でも長編であろう。 さすがに、長くするには話の下敷きが必要になるわけである。今回は歴史上名を残す平将門の乱がベースに利用されている。したがって、それに付随する平貞盛、藤原秀郷、源経基などの在郷の武士。さらに当時中央の貴族として権勢を奮っていた藤原忠平、藤原師輔などの政治の中心人物まで揃って登場する。 このストーリーを読んでいると、これらの歴史上の人物が歴史の教科書に登場す…  全文読む 評価する

奈良の寺社150を歩く 奈良の寺社150を歩く
ドン・キホーテ/趣味の古寺巡礼へいざなう
 これも平城京遷都1300年にちなんで出版されたものであろうか。奈良周辺の寺社150ヶ所を実際に歩いて回った際の、記述である。私が寺社巡りに初めて出会ったのは、社会思想社の現代教養文庫『大和古寺巡礼』であった。コンパクトではあるが、寺社ごとに区切られており、寺社のガイドブックといった趣であった。 この『大和古寺巡礼』が昭和37年の出版であったから、それ以後もう47年が経過したことになる。著者の槇野氏は京都についても同じように歩いて回った記録を残している。徒歩で巡る京都と奈良の違いは、京都は寺社の密度が高いということであるという。一方、奈良の場合は寺社が離散して存在しているので、きわめて効率が悪…  全文読む 評価する

検証平城京の政変と内乱 検証平城京の政変と内乱
ドン・キホーテ/奈良時代の位置付けが見えてくる好著
今年は平城京遷都1300年だという。bk1の書評フェアでも、つい最近「大和は国のまほろば」という特集が企画された。今年は奈良で多種多様なイベントが賑やかに催されることであろう。本書もその流れに乗って発刊されたものと思われる。 平城京、つまり奈良時代に発生した政変や世を騒がせた乱について、これらの史上の意義などを確認しようという試みである。政変などは立場によって全く逆の文脈にのって解釈されることもあるから、遠山氏の考えは如何にと紐解いてみた。 奈良時代の初頭は藤原一族の勢力が絶大なもので、皇室と親族関係を結び、天皇を支配するまでになる。ところが、天然痘がはびこり、あっという間に藤原不比等の息子た…  全文読む 評価する

皇帝の嗅ぎ煙草入れ 皇帝の嗅ぎ煙草入れ
ドン・キホーテ/心理学者キンロス博士の名推理
 密室もので有名なカーの推理小説である。本作品は1942年に書かれたものである。舞台はフランスの別荘地であるが、主人公の若くて美しい女性は英国人であるし、博識で、頭脳明晰な探偵役も英国人である。地元警察の署長、検事、その他はフランス人であるが、主人公に絡む隣人一家はやはり英国人という設定である。 日本語訳はやや古風な日本語である。現代の日本語にしては簡素で、飾り気がない点に気付かされる。本書はもともと『世界推理名作全集』として1960年から翌年にかけて出版されたものを文庫化したもののようで、おそらく翻訳はその時代であろう。時代を反映した翻訳、あるいは日本語といえよう。 推理小説の翻訳は大変難…  全文読む 評価する

犯罪不安社会 犯罪不安社会
ドン・キホーテ/犯罪による社会不安ではなく、犯罪過敏社会が治安悪化と誤認識?
 浜井は犯罪学が専門であるが、以前は法務省の職員であった。芹沢は社会学者で、丁度近年の犯罪傾向について二人の考え方が近かったので、共著という形で本書が出版された。章単位で分担を決めている。 大まかな本書における主張の展開は次のとおりである。1章で浜井が統計を使ってわが国の治安悪化について疑問を呈している。2章で芹沢が犯罪の中でも、凶悪犯罪について人々の口で語られる有り様を紹介する。とりわけ子供が犠牲になった犯罪や猟奇的な事件についての一般の人々に関する感情を類推する。 3章も芹沢で、安心、安全、街づくりが喧伝される、地域防犯活動についてのコメントである。最終章は再び浜井が自分の刑務所勤務の経験…  全文読む 評価する

陰陽師 陰陽師
ドン・キホーテ/清明、博雅の名コンビによる平安時代の神秘な世界の謎解き
 久しぶりに夢枕獏の陰陽師を読んだ。この文庫本シリーズは飽きが来ないようにという配慮なのか、集中して出版しない。忘れた頃に次が発刊される。確かに飽きが来ることはないのだが、忘れ去られてしまわないのだろうか? もう少し間隔を詰めた方が良いような気がする。 今回は9編の短編が集められ、「夜光杯ノ巻」と題して出版された。いずれのエピソードも、清明邸の庭を眺めながら、安倍清明と源博雅の二人が風流にも、庭の草花を愛でながら酒を酌み交わすところから始まる。 そして、事件が起きた現場に行こう行こうということになり、二人が揃って馳せ参じるわけである。清明が博雅から話を聞いた段階で、清明の方ではもうあらかた原因…  全文読む 評価する

「極み」の日本旅館 「極み」の日本旅館
ドン・キホーテ/旅館というものを解剖した旅館考現学の書
 歳を取ってくると和風好みに変わって行くのか、宿舎もホテルよりは和風旅館の方が寛げるようになった。年齢にかかわらず、旅館でもホテルでもどちらでも良いという人もいるであろう。 本書は日本旅館の良さはこういうところにあるという著者の考え方を記したものである。好みなので必ずしも多くの読者がこれに納得するとは思えない。しかし、先ずは宿泊してみて、自分にあった旅の楽しみ方ができればどちらでも良いと思う。 著者の柏井は京都で歯科医院を開業する一方で、旅館についての著書も多数あるというマルチ人間である。 以前読んだ新書の中に『旅館再生』というものがあった。どちらも近年の和風旅館のあり方を述べたものである。本…  全文読む 評価する

世界の10大オーケストラ 世界の10大オーケストラ
ドン・キホーテ/オーケストラと指揮者を世界的なスケールで描く歴史ドラマ
 世界の十大オーケストラを並べて、それぞれの歴史を取りまとめたもので、新書500頁の労作である。労作というのは見るからに分厚いので、これだけのボリュームを執筆するのは大変だったであろうということである。しかし、それだけではない。実に中身の濃い新書であった。 十大オーケストラを選ぶ際には何らかの基準が必要であるが、オーケストラの基準といっても人によってどんな要素を重要と見るかがかなり異なるであろう。しかし、本書では思い切って誰もが納得するオーケストラを選択しているようである。ここに登場する十大オーケストラは主に欧州の都市に存在している。 例外はニューヨーク・フィルとイスラエル・フィルだけで、あと…  全文読む 評価する

看守眼 看守眼
ドン・キホーテ/横山の意外性の発想に感嘆する
 横山秀夫の短編集である。六編が収められている。主人公や背景はいずれも異なるが、推理小説には違いがない。警察署、フリーライター、裁判所、新聞社、県庁など、舞台の多様性が今までの短編集に比べると、この短編集の特徴かもしれない。 それはともかく、いずれも巧妙な筋立てで大変面白く読むことができた。タイトルになっている『看守眼』は、警察署の留置場の看守が主人公である。刑事になれなかった看守が定年退職を迎える。その看守はどうしたかが、物語のモチーフである。 新聞社は横山秀夫のかつての職場であった。ヒット作である『クライマーズ・ハイ』も舞台は地方紙の新聞社であった。さすがに迫力がある。新聞社も警察と同様、…  全文読む 評価する

棄霊島 棄霊島
ドン・キホーテ/浅見の探偵以外の生活や性格を描いてみるヒントとなる作品
 浅見光彦が活躍するシリーズの一作である。本編は内田が解説欄で自ら述べているように、政治色が多分に含まれた探偵譚である。同じ類に属するものとしては、『贄門島』とさらにさかのぼって『氷雪の殺人』があるという。後者は忘れてしまったが、前者は本編と同様北朝鮮による拉致問題を扱っていた記憶がある。 内田としては、今回はさらに踏み込んで北朝鮮との関係が現実には完全に行き詰まっている点を分析し、新たな提案をしているところが新鮮である。ただし、この提案は現在のわが国では到底受け入れられないもので、多くの国民から袋叩きにあることは間違いなかろう。 本編が上下2編に分割されているほど長編になってしまった原因も、…  全文読む 評価する

温泉法則 温泉法則
ドン・キホーテ/温泉の本格的な楽しみ方、活用の仕方の手ほどき
 世はまさに温泉ブームである。それだけに温泉にまつわる悪い話も時折報道されている。一時は温泉の質に関するスキャンダルが世間を騒がせた。ブームに乗ってこれだけ掘削が盛んになると、いよいよ温泉自体の枯渇だってありうる話である。都内の温泉で爆発事故があったのもそれほど昔の話ではない。 著者の石川は、先ず温泉の表示について疑問を呈している。我々がよく耳にする「原泉掛け流し」という言葉、さらに「循環方式」、「加水方式」など旅館やホテルのパンフレットを見れば書かれており、目にするのだが、これらの定義となるとどこにも書かれていない。勝手に定義しているという。本書ではこれらの見分け方などを伝授している。 温泉…  全文読む 評価する

なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか
ドン・キホーテ/宝塚歌劇の楽しみ方 貴方を宝塚の虜に!
宝塚歌劇団の歴史は長い。阪急電鉄の創始者である小林一三が宝塚歌劇の生みの親である。企業家として傑出した存在であった小林一三であるが、もともと芝居などの趣味をたしなむ人であった。 宝塚歌劇は長らく阪急グループの中では利益を度外視した部門であったと思う。近年はそういうわけにもいかなくなったのか、公演の入場料もようやく世間並みに高くなってきた。私はしばらく宝塚に通うファンの一人であったが、チケットが取れないので遂に止めてしまった。チケット発売の当日には電話にかじりついて、朝から晩まで電話をかけまくる。これに耐えられなくなってきたのである。 さて、中本さんは宝塚歌劇に関する本を何冊も出す大ファンである…  全文読む 評価する

悪人列伝 悪人列伝
ドン・キホーテ/近代の悪人を集めた海音寺の傑作集
海音寺潮五郎が著した歴史上の悪人を棚卸した作品である。本書は江戸時代から近代へかけての悪人たちが描かれている。小説ではないが、史料を基にして悪人たちの行いを検証しようという訳である。本書で取り上げられた悪人は次の人物である。・大槻伝蔵・天一坊・田沼意次・鳥居耀蔵・高橋お伝・井上 馨 有名な人物とあまり知られていない人物が混在しているといえよう。大槻伝蔵とは誰のことであろうか? 私も聞いたことがないが、ほとんどの読者はご存知あるまい。数十年前のいっとき、「加賀騒動」と大槻伝蔵は知らない人がいないほど有名だったようだ。 加賀騒動の中心人物が大槻伝蔵である。出世のために藩主暗殺を企てて、まんまと成功…  全文読む 評価する

ペルシャの幻術師 ペルシャの幻術師
ドン・キホーテ/当時の短編作品群で司馬遼太郎の将来を窺わせる一冊である
司馬遼太郎が昭和30年代に書いた短編を集めたものである。このタイトルにある短編「ペルシャの幻術師」が司馬の最初の小説という説もある。「ペルシャの幻術師」は小品であるし、ごく初期の作品なので、全集には収録されているものの、単独では初めて文庫本に搭乗したと腰巻に書いてあった。いずれも幻術がらみの作品である。現実離れしている点で、珍しいものであり、歴史小説の構えを見せているものである。この中で注目すべき作品を上げてみる。 まず「ペルシャの幻術師」であるが、ときは西暦1253年、場所はペルシャ高原のとある町である。蒙古兵に蹂躙された街である。占領軍の大将はチンギスハンの孫である。幻術師アッサムとの駆け…  全文読む 評価する

週末はギャラリーめぐり 週末はギャラリーめぐり
ドン・キホーテ/ギャラリーとはどういう場であろうか? 行ってみようかという気にさせる
 ここでいうギャラリーとは、販売目的で絵などの美術品を展示している場所を言う。美術館は展示するための場であるが、ギャラリーはそうではない。勿論、見るためだけに入場してもよいのだが。著者の山本氏はもう30年以上も前から単なる鑑賞ではなく、ギャラリーを訪れて絵画などを購入しているという。 いわばコレクターではあるが、自分と同世代の画家の絵を購入して、自分と同時進行でその画家の成長を見ていくことに楽しさを見出している。これ以外にも著名画家の若き日の作品を集める楽しみもある。私も「週末は美術館」には行くが、ギャラリーには行ったことがない。 山本氏が本新書で強調していることは、単に美術館で有名画家の作品…  全文読む 評価する

風の盆幻想 風の盆幻想
ドン・キホーテ/狭い地域の無形で貴重な観光・文化資源を知る
 内田康夫の浅見光彦シリーズである。今までも作者自身がこのシリーズに登場することはままあったのだが、今回は出ずっぱりである。こうなると、浅見以外の他の登場人物は不要となってしまう。現に今回は兄の刑事局長の出番すらない。 その代わりとなるのは内田自身である。自分の名前で自分の小説に登場するというのも臆面もない話である。舞台は富山県の八尾である。私は全く知らなかったが、注意して見ると、新聞の旅行広告には季節になるとこの「風の盆」を見に行くツアーが所狭しと掲載されているのを目にすることができる。 一集落の季節の盆踊りが情緒があり、一般受けするというので狭い街に大集団が押し掛けることになってしまった。…  全文読む 評価する

悪人列伝 悪人列伝
ドン・キホーテ/松平忠直、これほどの悪人はいない
 海音寺潮五郎が日本史上で悪人を選び、史伝を試みるシリーズの近世編である。近世とはいっても、時代は室町時代から江戸時代までの幅がある。時代が現代に近付くにつれて悪人の所業も生々しくなってくる。ここで登場する悪人たちは以下のとおりである。・日野富子・松永久秀・陶 晴賢・宇喜多直家・松平忠直・徳川綱吉 以上6名である。 日野富子などはその専横ぶりが有名で、民や社会を顧みない結果、応仁の乱をおこした張本人だという点で、悪人であるという納得がいく。松永久秀、陶晴賢、宇喜多直家等は武将として著名であるが、どこが悪人なのかは読むまでは分からなかった。 綱吉は生類憐みの令で決まりであろう。そして、松平忠直は…  全文読む 評価する

悪人列伝 悪人列伝
ドン・キホーテ/単なる人物史料の記述にとどまらない背景説明に価値がある
 海音寺潮五郎の史料による悪人伝シリーズのうち、中世の悪人を6名選択して記載したものである。その6名とは以下のとおりである。 ・藤原兼家 ・梶原景時 ・北條政子 ・北條高時 ・高 師直 ・足利義満 古代編とは異なり、何かの兵乱を起こし、世間を騒がせた張本人という基準で選ばれたわけではなさそうである。兼家は平安時代、梶原と北條の2名は鎌倉時代、高、足利は室町時代というバランスのとれた選択である。 この中では藤原兼家と高師直とがやや知名度が落ちるかも知れない。そんな事を言えば、梶原景時だって天下を取ったわけでもない。義満、高時は最高峰の地位に達したわけだし、政子は尼将軍と呼ばれるくらいで、事実上国…  全文読む 評価する

悪人列伝 悪人列伝
ドン・キホーテ/興味深い内容であるが、読み手の興味はやはり小説か?
 海音寺潮五郎が古代に名をはせた歴史上の人物を選んで、史料等から得られた知見を取りまとめたものである。史伝と呼ばれているジャンルのようだ。決して小説ではない。小説を書くために調べた史料をもとに、その人物像を描いたのであろう。 小説ではないので、読みものとしての面白さ、娯楽性はほとんどない。しかも、選んだ人物を伝記風に描くというのでもなく、あくまで作者が集めた史料を基本にして描いている。したがって、本人のエピソードから外れることもあるし、描きたいように描いたということである。 本書で選ばれた「悪人」は、以下の6名のラインナップである。 ・蘇我入鹿 ・弓削道鏡 ・藤原薬子 ・伴大納言 ・平 将門 …  全文読む 評価する

鎌倉の橋と路 鎌倉の橋と路
ドン・キホーテ/鎌倉の土木遺構、橋と路と切り通しを史料をもとに紹介する
 鎌倉の橋といえば、鎌倉十橋が知られている。なぜ十橋なのかといえば、著者の大西さんの職業は橋梁エンジニアであった。もう現在は引退されているが、やはり橋についての興味は尽きないらしい。 大西さんは鎌倉在住七十年以上になるという。そこで言わば郷土である鎌倉の橋について調べてみたということだ。本書は今まで古典を調べて書き綴ってきた大西さんのWebサイトのコンテンツをまとめて、それを書籍にして発刊したものである。 鎌倉には十にまとめたものがいくつかある。鎌倉十橋以外には鎌倉十井がある。十橋は十井に比べれば今でも全て行ってみることができる。十井の方は、私有地になっていたり、拝観不能なお寺の境内にあったり…  全文読む 評価する

火の路 火の路
ドン・キホーテ/清張の歴史勉強の成果が小説として公開されている
 本書は文庫本2冊(上・下)になる長編小説である。松本清張が描く推理小説ではあるが、とくに殺人事件が発生するわけでもない。推理とは何の推理かといえば、歴史上の建造物の起源を推理するわけである。それにしても長編である。 歴史と言っても色々だが、今回は飛鳥にある歴史的な遺跡である。遺跡と言っても飛鳥にある特徴的な遺跡といえば、謎の石造物である。古代の石造物が飛鳥に集中している。石で造られているせいか、現代まで遺されているのである。 岡の酒船石、出水の酒船石、石舞台、益田岩船、亀石、猿石、鬼の雪隠、須弥山の石など何の目的で造られたのかは分からない石造物が点在している。近年の発掘で岡の酒船石に近接する…  全文読む 評価する

古代庭園の思想 古代庭園の思想
ドン・キホーテ/古代の庭園とは何かを感じ取る手掛かりになる
 本書は、古代における庭園の有り様が、主として発掘からの成果をもとに、書かれたものである。また、2000年6月に行われた『いま探る古代の庭園』というシンポジウムの内容を再構成したものである。したがって、金子裕之氏が編者となってそのときに参加した学者が再執筆して出版されたものである。古代の庭園に関する時事的な出来事で、最初に思い浮かぶのは7,8年前に飛鳥の岡寺の近辺で発掘された亀形石造物ではないだろうか。この石造物は丘陵に囲まれた谷あいにあるのだが、その丘の上には酒船石があった。亀形石造物は、石の間に水が流れるようになっている。実はこの水が酒船石から落ちてくると推定されている。箱ものが好きだった…  全文読む 評価する

執念谷の物語 執念谷の物語
ドン・キホーテ/海音寺の短編時代小説と西郷隆盛に関する評論集
 本書は海音寺潮五郎の短編集である。全部で8編が収められているが、前半の4編までが短編の時代小説である。後半の4編は海音寺が生まれた薩摩の歴史を物語るように、西郷隆盛に関する小説というよりは海音寺が考えた西郷論あるいは西郷と関わりのあった勝海舟、島津家の藩主などとの関係を描いた評論集とでもいうべきものである。 前半の4編はタイトルにもなっている「執念谷の物語」が中心になるが、執念谷とは現在の渋川から出ているJRの路線が走る渓谷を指している。ここは群馬県吾妻郡でこのJR吾妻線は、渋川を出ると、中之条、長野原を経て万座賀沢口、大前までであるが、この渓谷を納めていた武将の物語である。武田、上杉、真田…  全文読む 評価する

戦国風流武士前田慶次郎 戦国風流武士前田慶次郎
ドン・キホーテ/上杉家とも縁のある型破りな戦国武士前田慶次郎を海音寺が描く
 久しぶりに海音寺潮五郎の作品を読んでみたが、相変わらず大変面白く読めた。それはテーマとなった主人公の面白さもあるのだが、描き方や逸話の面白さなど、作家の腕によって、それは大きく変わるのであろう。海音寺潮五郎の作品、分けても時代ものに関しては外れがないのである。 本編はタイトルに「戦国風流武士」が入っている。戦国時代に風流などと言っていられるのかと思われるであろうが、芸能や詩歌などに造詣が深く、古典なども読みこなすという主人公である。前田慶次郎という武士であるが、加賀百万石の前田家の縁戚である。豊臣秀吉の重臣であった前田利家の甥にあたる。 この型破りな主人公の逸話を集めてつなぎ合わせたのであろ…  全文読む 評価する

平城京遷都 平城京遷都
ドン・キホーテ/平城京誕生までの歴史を概観する格好の新書
 本書は日本国際研究センターの千田名誉教授が、平城京に都を移すまでの動乱の時代を「ヤマトの時代」と位置付けて振り返ったものである。直前にも平城京に関する新書を読んだものだから、関連したものを読みたいと思い、手にとったものだが、新書にしてはボリュームがたっぷりの上、内容が充実していて、おろそかには読めない書である。 「ヤマトの時代」の「ヤマト」は、大和朝廷の大和を意味しているのではない。それは律令制定など国家の基礎が出来上がるまでの苦悩の時代である。千田氏は欽明天皇の時代から紐解き始める。仏教が導入され、神世の時代と衝突する。蘇我氏が姻戚関係を軸に天皇の親政を阻害し、実権を握る。乙巳の変を経て蘇…  全文読む 評価する

武士の紋章 武士の紋章
ドン・キホーテ/魅力にあふれる伝記風傑作短編集
 池波正太郎の短編小説集である。この短編集は時代物だけではなく、大相撲の三根山と植物学者の牧野富太郎が加わっているのが特徴であろう。池波がまだ若い頃の作品群である。三根山に関しては、初めて世に問うた作品だという。 その2編を加えて合計8編の短編集である。短編集とはいっても、無名の人物を主人公にしたものではなく、名のある人物が主役となっている。いずれも実在の人物なので、小説というよりは、伝記のようなものであろう。 中でもタイトルにもなっている「武士の紋章」が白眉である。武士は「おとこ」と読ませるようで、主人公滝川三九郎の物語である。その他は黒田如水、真田幸村、真田信之、中山安兵衛、永倉新八といず…  全文読む 評価する

ルパンの消息 ルパンの消息
ドン・キホーテ/横山秀夫らしい工夫が随所に見えるデビュー作品
 この小説は、横山秀夫が作家として初めて世に問うたもので、第一作に相当する作品である。この小説で『サントリーミステリー大賞』の佳作に選ばれて、文壇にデビューしたわけである。 それだけに自信に満ちた長編である。やや冗長な面もなくはないが、十分に楽しめた。冗長な面とは、極端に言うと作品に登場する人物が平等に役割を持っており、めりはりが感じられないので、読んでいても主人公が誰だったか思い出せず、存在感が欠けるというのがその一つであろうと思う。 ストーリーと舞台設定は、警察の犯罪捜査に関わるものである。15年前に発生した事件で、高校の女性教師が自殺したが、どこからか不明だが、実は殺人事件だったという通…  全文読む 評価する

曾我兄弟の密命 曾我兄弟の密命
ドン・キホーテ/後世に名を残す曽我兄弟の仇討ちと取巻く陰謀
 高橋直樹が描く鎌倉時代である。有名な曽我兄弟の仇討ち話がベースになっている。仇討ちは時代劇でも中心的なストーリー展開が見込めるものである。ちなみに三大仇討ちは、曽我兄弟の仇討ち、荒木又衛門の鍵屋の辻、忠臣蔵であるそうな。本編は高橋が曽我兄弟の仇討ちをかなりのボリュームをもって描く大作である。 曽我兄弟の仇討ちは、曽我の十郎、五郎が父親の敵である工藤祐経を、巻狩りという格好で本懐を遂げたものであると知られている。十郎、五郎の兄弟は、曽我家ではなく伊東氏の出身である。この伊東氏と工藤氏では相続にまつわる領地争いが絶えなかった。この場合もたまたま曽我兄弟の父親である伊東氏が領地争いの果てに殺されて…  全文読む 評価する

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